異世界イズク   作:規律式足

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 キャラ改変というかキャラブレイク有り。
 彼のファンは閲覧注意。
 おじさんアパートの住所は行こうと思えば行ける位置にあるとしてください。

 おじさんサイドです。


9話 セガユーザーな警官とおじさん。

 

 某市某アパート。

 そこには異世界帰りのゲームソフト一本に八万円払っちゃうおじさんと、年上の身内を叱るという詰問をするはめになった青年が生息している。

 が、彼らは現在人生何度目か(本気で何度目だろう)の危機に陥っていた。

 藤宮さんか宅配業者くらいしか訪ねる者のいないアパートにチャイムが響いていた。

 鳴らしたのは大衆の味方である警察。

 ヒーロー以上に頼りになる彼らが通報も無しに自宅に訪ねてくる。これ即ち、とてもヤベえ事態であるということだ。

 

「警察って、何か心当たりありますか?」

 

 藤宮さんの当たり前の疑問に心当たりアリアリな二人は冷や汗をかく。

 

「やっぱり解剖かな?」

 

 魔法がバレて、国のなんかが来てしまった。捕まったら解剖されるアレなアレである。

 

「いや魔法での移動がバレたんでしょ」

 

 配送料無料のための飛行、それが個性の無断使用に引っかかったのだろう。

 

「あるのかよお前ら」

 

 愕然とする藤宮さん。

 流石に犯罪はマズいだろうと彼女も思う。

 

「とりあえず藤宮さんをベランダへ、アレな機関だったら二人で逃げて。精霊にお願いしとくから」

 

「個性の使用についてだったら?」

 

「確かどっかに無個性証明書がある筈だからそれで押し切るよ」

 

「魔法は使わなければバレないしね」

 

「かなりグレーだろそれ」

 

 そんなやり取りのち、自分で呼んでいない警察を自宅に招くという恐怖体験がはじまった。

 

「はじめまして、僕は警察官の塚内直正。嶋㟢(シバザキ)陽介さん、訳あって貴方を探していたんだ」

 

「訳ですか(やっぱり敬文達逃がすべきかな)」

 

「だがその前に別件で一つ貴方に尋ねておきたいことがある」

 

(別件、おじさん他に何かしたの)

 

(どうすんだこれ)

 

 その真剣な塚内氏の様子にゴクリと喉を鳴らしベランダから中を窺う。

 

「人を手にかけたね」

 

(え、おじさんやらかしてたの?!)

 

(ヴィランとか絡んだ奴を返り討ちにしてそう)

 

「僕と同じで」

 

(ええ!!ヤバい情報じゃん!!)

 

(現職警官がっ!?)

 

「最愛のあの人」

 

((アレ?))

 

「七瀬 楓を」

 

((ってゲームの話かよっ!!))

 

 七瀬 楓。

 敵首領に殺害され自我を奪われた彼女。

 敵として現れた彼女を手にかけた瞬間自身が何を失ったのか、彼らは思い知らされたのだ。

 

 エイリアン○ルジャーというゲームのステージ3のボスキャラである。

 

「そんな、君もあの悲劇を乗り越えたのか」

 

「ああ、彼女に引導を渡した悲しみが今の僕を形作っているといっても過言じゃない」

 

 震えながら口元を押さえて言うおじさんと、涙を堪えながら答える塚内直正(36歳独身)。二人は今同じ感情を抱いていた。

 二人の男。否、悲しみを超えた漢達が固い握手を交わす。同じ女を愛した友として。

 

「それでセガユーザーな警官さんが何のようですか?」

 

 まさか同好の士と語り合うために来たわけではないだろう。ベランダから移動した敬文青年はコーヒーを入れるためキッチンへと向かう。

 

「敬文、私が持ってきたクッキーをお茶請けにだしても良いよ」

 

「ありがとう藤宮」

 

 なんか解り合っている二人のオッサン。これなら逮捕とかではないだろうとコーヒーとお茶請けをテーブルに並べる。

 

「ありがとうね、うん美味しい。うちの署の泥水みたいなコーヒーとは大違いだ」

 

 一口飲んだコーヒーの味に満足する塚内。

 

「いやあ塚内警部。ここだけの話、泥水ってマジで泥水なんだぜ」

 

(いや何言ってんだおじさん)

 

(確かに何度も飲んでそうだけど)

 

「流石は異世界グランバハマルに17年間行ってただけはあるね」

 

「「「?!」」」

 

 塚内警部の口から出た、異世界という言葉。

 おじさんの重大な秘密を知られていると3人に衝撃が走った。

 

(やるか)

 

 頭を抑えて記憶消去 イキュラス キュオラ。それしかないと右手に力を込めるおじさん。

 

「緑谷出久君が言っていた通りだよ」

 

「なーんだ、出久君の知り合いか。なら異世界を知っててもおかしくないですね」

 

 だが続けられた言葉に込めた力を霧散させる。

 

「えっと緑谷出久君て、一年近く前の無個性騒動の子ですよね」

 

「あの差別問題改革に踏み出すきっかけになった中学生だっけ?」

 

「「なんでおじさんが知っているのっ?!」」

 

「無個性騒動?いや出久君は半年間グランバハマルで一緒だったけど?あと一緒に帰れた筈」

 

「異世界に行ってたんだ、可哀想に」

 

「ヒーロー志望の無個性中学生が生き残れる世界じゃないでしょう」

 

「実際に狩られかけてたしな彼」

 

 緑谷出久とはじめて会った時の事を思い出すおじさん。

 トレントの幼生体扱いされた彼。

 自分と違って問答無用で殺されそうだった。

 

「大変だったよ、最初は魔物討伐や暴力振るうことに反発してたし」

 

「ヒーロー志望だからね」

 

「普通は抵抗ありますよね」

 

 二人の視線はあっさり倫理観を放棄した普通ではないおじさんに向いていた。まあ彼の経験した状況なら仕方ないだろうが。

 

「三日くらいは抵抗あったなあ」

 

 そんな変化をわかりやすく見せるために記憶再生の魔法を発動する。

 

『暴力は駄目だよおじさん!!言葉が通じる僕達はわかりあえるんだ!!』

 

 ↓ 三日後。

 

『命には優先順位がある、先ず自分、続いて親しい身内、赤の他人?それは力と余裕があったらだ』

 

 画風すら別人な劇的ビフォーアフターである。

 

「早いよ」

 

「何があった三日で」

 

「言ってるだけで自分より他人を優先する良い子だけどね出久君」

 

 そんな緑谷出久についての情報共有が終わった所で、豆から違う美味しいコーヒーを堪能した塚内警部は口を開いた。

 

「僕は警察内でオールマイト関連の仕事を担当していてね、その関係で彼と知り合ったんだ。貴方を探していたのは緑谷君に頼まれたからです」

 

「そうですか、出久君はご家族と無事再会できましたか?」

 

(おじさんは一家離散してたけど記憶消去済みだから黙っておこう、鼻血でるし)

 

「ああ君に感謝してた」

 

「良かった」

 

 おじさんは彼の無事を知り心から安堵した。

 

嶋㟢(シバザキ)陽介さん、緑谷出久君は雄英高校を受験しヒーローを目指しています。異世界の技能と託された個性でヒーローになる事を決意しました」

 

 緑谷出久は諦めた夢を目指しだしていた。

 

「そんな彼をどうか応援してあげてください」

 

「勿論ですよ」

 

 半年間面倒を見た少年。あの心優しい少年がどんなヒーローになるかは楽しみだ。

 

「間違いなく合格するでしょうから、その時に再会できるようにしましょう」

 

(異世界を越えた再会かあ、良いなあ)

 

(普通に良い話だ、普通に)

 

「そして嶋㟢(シバザキ)陽介さん、貴方のその力をヒーローとして社会に役立てる気はありませんか?」

 

 警察官、この国の安全を司る立場として緑谷出久から嶋㟢(シバザキ)陽介の存在を知った時から考えていたことだ。異世界にて鍛え抜かれた戦闘能力、記憶再生などの便利な魔法、そんな力を持つ彼をヒーローとして勧誘しようと。現状も動画投稿者という不安定な仕事だから彼にも利点がある。

 

「お断りします」

 

 だがおじさんは断る。いつになく本気で真面目な顔をして。

 

「え?」

 

「どうして?」

 

 困惑する二人の声を聞きながら彼は答える。

 

「ヒーローが素晴らしい職業なのは今更語るまでもありません。けどそれは暴力を振るう職業です、力をひけらかす職業です。大きな力を持つ者は反発される、その事実を嫌という程知る私は自らがその仕事に就くことを選べません」

 

 あの偉大なオールマイトとて嫉妬にやっかみや反発の声は大きい。強大な力を持っていることを知らしめることは持たざる者に忌避されることでもあるのだ。

 

「もし私が一人だけなら飛びついて応じたでしょう、けど今は甥である敬文が、その友人である藤宮さんがいます。大切なこの子達に累が及ぶ可能性がある以上ヒーローになる事はできません」

 

 そして本人に手を出せぬなら狙うは身内。そしてその過去に不幸なネタがありまくりな彼はメディアにとって美味しすぎるご馳走だ。

 ネット知識ばかりに偏った過激な自意識、妄想に等しい想定だが、ありえないわけではないのだ。

 

「なのでお断りします」

 

 テーブルに額が触れる程頭を下げておじさんは塚内警部の申し出を断る。

 単に興味がないからではなく、自分達を大切に思っての行動に甥とその友人はこそばゆいような嬉しさを感じていた。

 

「なるほど良くわかったよ。なら無理強いはできないかな。ヒーロー飽和社会なんて言われるけど、君みたいに考えてなった人はどれだけいるだろう」

 

 ヒーロー飽和社会と呼ばれながら、オールマイトがいないと回らない。そんな矛盾を誰より知る塚内直正は頼りになりそうな存在の拒絶を残念に思うがその考えに納得した。

 

「なら一切表にでないで記憶再生の魔法だけ使いにきてくれるアルバイトはどうかな?勿論それをそのまま証拠には使わないから」

 

 だがその有用性は放置できない。彼個人の勘だがヒーロー公安委員会が動いていると感じた。連中が何かしでかす前にオールマイトや根津校長など後ろ盾に成り得る人格者な存在と彼は関係を持つべきなのだ。

 

「いや、でもな」

 

「やろうよおじさん」

 

「そうですよ、配慮はしてくれてますし」

 

 渋るおじさんに敬文達は後押しする。

 頭がおかしいところがあるが慕うおじさんが認められるのは彼らも嬉しいのだ。

 

「分かりました、契約内容を確認してからお引き受けします」

 

「ああこれからよろしくね、陽介君」

 

 再び二人は握手をして今回の話は終わった。

 

 

 

 こうしておじさんに定期収入と友人ができた。

 おじさんが僕達を大事に思ってくれてることが知れて嬉しかった。

 塚内直正さんはこの日から、仕事や、オールマイトやオールマイトとかオールマイトの事で疲れると、ウチに来てコーヒー飲んだり、セガ談義したり、異世界の記憶見たり、おじさんとセガサターンをプレイしにくるようになった。

 かつて出来なかった協力プレイや対戦ができて二人とも感動でむせび泣きながらゲームをしている。

 あと窓の向こうでオールマイトが「塚内君を盗られた」とか言ってハンカチを噛む幻覚が見えたけど多分気の所為だろう。

 

 




 
 塚内直正さんのファンの皆さんごめんなさい。
 
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