異世界イズク   作:規律式足

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 おじさんを疑う人が居なくてなんか嬉しかったです。まあおじさんですしね(笑)
 スーパー異世界おじさんタイムスタート。



95話 彼女の選択。

 

 死穢八斎會本部、そこに現れた怪しい男。

 敷地内から現れた組員二人から受け取った紙袋に入ったナニカを息を荒くしながら確認して、サイフから(敬文さんが知ったらブチ切れる)万円を取り出して渡す。つまりこの光景が意味することは、

 

「おじさんがプレミアついたセガゲームをネットオークションで競り落としてブツを受け取りに来たんですね」

 

 ということだろう。

 

「いや知り合いだからって、どこの世界にヤクザからゲームソフトを競り落として受け取りにくるおじさんがいるのさ」

 

 画面の向こうの場所、死穢八斎會本部玄関前にですね。

 

「それによく考えなよ、そんな古いゲームに普通(敬文さんが憤怒の化身になる)万円も払うわけないじゃないか」

 

 おじさんが普通じゃないのは前提だけど、オタクにそんな理屈は通用しませんから。

 

「ミリオ、オタクという存在はな。もう手に入らないかも知れないものが手に入るとなると金なんて些細なことに頓着なんてしないものだ」

 

「ソウデスネー」

 

 諭すようにミリオ先輩に語りかけるサー・ナイトアイと、そんなサー・ナイトアイのオールマイトコレクションを見て理解し虚無顔になるミリオ先輩。

 うん、サー・ナイトアイはどちらかというとそっち側の住人ですからね、普通に納得しておじさんの行動に理解を示しますよね。

 

「でも(敬文さんが修羅化する)万円あったら新作ゲームをハード本体ごと買えちゃいますよ?」

 

 なのになんでわざわざ古いゲームに大枚はたくのか彼は理解できないようだ。だがミリオ先輩はやはりゲームをプレイするタイプではないようだ。ゲームとは最新機種が必ずしも遊びたいゲームではないのだから。

 

「古い、新しいじゃない。それがそれである、ただそれだけの事実こそが重要なんだ。」

 

 コレクターの性を語るサー・ナイトアイ。ミリオ先輩はもうそれに関して考えるのを止めたようだ。

 

「だがトレンドール、君の予測でそうだったとしても、もし異世界おじさんが死穢八斎會と犯罪に手を染めていた場合はどう対処する?」

 

 兆に一つもありえないことだけど、想定することは大切だ。だがその場合は、

 

「取るべき手段はただ二つだけ、特攻か自決か、まさにデッドオアアライブ」

 

「両方死ぬよね?どれだけ勝ち目無いんだい」

 

 普通に魔炎竜より強い人になんか勝てるか。

 一撃必殺の攻撃をホークス以上の高速機動で繰り出して、エンデヴァー以上の広範囲攻撃を放つ、相手の的確な攻略法を導きだす、勝つまでゾンビアタックする人なんですよ。

 敵認定=死、ですから。

 

「まあ、おじさんの疑惑は甥っ子の敬文さんにネットオークションの購入履歴を調べて貰えば一発だと思いますよ」

 

 調べたら間違いなく怒りで敬文さんが覚醒しそうだけど。

 

「そこに死穢八斎會の住所が載っていれば確定か」

 

「ですね」

 

「けどネットオークションなら普通は郵送じゃないの?なんでわざわざ取りに行ったんだろう?」 

 

「送料無料のためにですね」

 

「交通費の方がかかるよねっ?!」

 

 空を飛ぶおじさんは手間以外かからないんですよ、それでも普通はやりませんが。

 

「ネットオークションは違法ではない。正規の手順なら極道が利用しても問題は無いからな。少々驚いたが私達はオールマイトと合流しだい死穢八斎會に襲撃をかけてエリちゃんを救うぞ」

 

 そう、おじさんが居ようと僕らのやるべきことは変わらないのだ。いくら強くとも一般人であるおじさんを巻き込む気なんてサラサラないし、トラブルメーカーな不幸ホイホイのおじさんとはいえ極道と揉める事態になることはありえないのだから。そう、いくらトラブルメーカーで不幸ホイホイなおじさんといえどね、と思いながらセンチピーダーがまだ繋いでくれていた画面を見ればそこには、

 額に角の生えた少女を片手で抱き上げながら光剣構えて極道と対峙するおじさんの姿があった。

 

「なんでだよおっ?!」

 

 さっきと違い性格的には納得するしおじさんらしいと思うが、それでも僕はその光景を見て叫ばずにはいられなかった(本日二度目)。

 

 

 時間は少々遡る。

 死穢八斎會邸宅庭にて一人の少女がオーバーホール部下の監視の下、陽の光を浴びていた。

 それは彼女の意思ではない。

 切り札の素材である彼女の身体を健康に保つための処置の一つだ。そもそもオーバーホールの個性で最適な状態に再構築することは可能だ、だがそれはオーバーホールが把握する状態に作り変えるのであって成長させることは出来ない。肉体をより成長させれば個性も成長するだろうと期待もあり、こうして定期的な日光浴を彼女は強いられていた。

 

(助けて)

 

 彼女は常にそう考えていた。

 怖い顔で強く言われることも痛いことをされる事も彼女はもう耐えきれなくなっていた。

 けれど年不相応に精神が成長してしまった彼女は、ここが助けてくれる人が誰もいない場所であることを理解している。逃げればより酷い目に合うことも。

 

(誰か助けて)

 

 それでも願わずにはいられなかった。痛いことをする人、オーバーホールが嫌う存在であるヒーローに。

 そんな時だ、彼女の視界に一人の人物が映った。その人は今まで見たことのない人でナニカを組員から受け取っていた。

 この時、この瞬間、彼女に一つの選択が生まれたのだった。

   助けを求める。

   助けを求めない。

 その人物は決してヒーローのようではない。でもその姿には彼女の焦がれていたモノがあるように感じた。そう穏やかな日常という彼女とは無縁なものを。

  →助けを求める。

   助けを求めない。

 だから彼女は選び、走り出す。

 裸足のまま走り慣れていない身体で精一杯。

 ここで幸運だったことが一つあった。

 それは周りの組員全てが治崎廻派ではなかったこと、強引な動きをすれば治崎廻派の者は古参の組員に見咎められ叱責されること。

 ゆえに彼らは動きが遅れ、彼女は辿り着いた。

 

「助けてっ!!」

 

 その見慣れないおじさんの足に縋り付いて涙を浮かべながら必死な声で叫んだ。

 

「ああ分かった、だからもう大丈夫だよ」

 

 そして彼は、ネットオークションでプレミアムのついたセガソフトを購入してウハウハな気分だった異世界おじさんは一瞬で意識を切り替え、飛びついてきた少女を抱き締めながらそう言った。震える少女を元気つけるように優しく頭を撫でながら。

 

「困りますねお客人。アンタがウチのヘマやらかして居なくなった組員のゲームを高値で買い取ってくれた有り難い人とはいえ、余計なことされちゃあ」

 

「いい年こいたゲーオタ親父はソレ置いて回れ右してサッサと帰んな」

 

 曲がりなりにも友好的に接してきた組員達もまさかの事態に態度を豹変させる。

 若頭である治崎からの命令で居なくなった組員の私物の片付けを行い、小遣い稼ぎのつもりで遺品をネットオークションで売り捌くだけが面倒な事態になりそうなのだ。焦りもありこんな態度にもなるだろう。

 

「帰りますよ、この子を連れて。それで警察に調べてもらい何もなかったらきちんと謝罪と賠償をするつもりです」

 

 だがおじさんは毅然とした態度を崩さない。迷うこと揺らぐこと、それが腕の中の少女がどれだけ不安になるのかを彼は本能で理解していたから。

 

「だからそういうの困るんだって」

 

 焦れた組員が手を伸ばそうとすると、

 

「なにをしている」

 

 その声は響いた。

 組員達は錆びたブリキ人形のようにギギギと後ろを振り向きその人物、ペストマスクをした男性を見る。

 

「わ、若頭これは」

 

「まあいい、お前らの処分は後だ」

 

 冷酷な判断を下し、治崎廻・オーバーホールは言う。

 

「さあエリ、日光浴の時間は終わりだ。サッサとお部屋に戻りなさい」

 

 その言葉に今までの恐怖を思い出し、抱き締めてくれてる人が巻き込まれることを察して彼女は動けなくなる。

 けど、

 

「痛いのも怖いのも、もう嫌、もう嫌なの!!」

 

 日常の空気を漂わす男性の腕の中に居ることで、彼女の心は耐えきれず決壊してしまった。

 それは本来の未来とは違い、サー・ナイトアイの妨害により教育がそこまで進んでなかったせいも、あるいはあるのかも知れない。

 

「困った子だ。ああそこの人も放してくれませんか。コレはウチの問題なんで」

 

 交渉相手を変える治崎。だが、

 

「そんな訳にはいかないでしょう。この子は然るべき所できちんと保護します」

 

 少女の叫びを聞いた異世界おじさんもまた引くことはない。

 

「うっとうしいな、正義感をひけらかすつもりか、ヒーロー気取りのつもりか、全く英雄症候群の病人が」

 

 不快気な言葉に苛立ちと殺意を乗せて言う。

 

「正義感なんて高尚なものを出したつもりはない、ヒーロー、英雄、そんな大それた存在を気取る気もない」

 

 だが彼は少女を悪意から守りながら言い放つ。

 

「子どもが泣いて助けを求めたら、手を取って抱き締めて助けるのが、

 大人ってもんだろうがっ!!」

 

 その言葉に治崎廻はかつて見たナニカを思い出し苛立ちを増し、

 その光景を画面越しに見た緑谷出久はおじさんらしいなと笑う。

 

 エリの選択の結果。

 今日この日、彼女はヒーローではなく大人を知る。頼れる大人という存在を。

 

 





 頑張ったら書けました。
 死穢八斎會編終わるまで止まらないかも。
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