毎日残業で書けませんでした。
しかし一日4時間残業させて体調管理をきちんとしろというのは最早ギャグでは?
オリジナル設定かつ、ご都合主義あり閲覧注意です。分かりにくいので内容は後書きでザックリとまとめます。
『目の前に困っている人が現れたら貴方はどうしますか?』
とあるテレビ番組の企画である街頭での質問、この問いかけに大半の人はこう答える。
『ヒーローを呼びます』
と、自分でなんとかしようとせずにヒーローを呼ぶ。それが世間一般の考えであり一番正しいとされる回答だ。
これを見た、異世界おじさん嶋嵜陽介は、
「いやすぐに助けるでしょ普通っ?!間に合わなかったらどうするのっ?!」
と叫んだ。
だが、同意を求められた甥っ子である敬文とその友人である藤宮さんは「「?」」と首を傾げて不思議そうに答える。
「余計なことしちゃ駄目でしょ」
「でしゃばりとか言われますし、その時に個性使ったら犯罪ですから」
別にこの二人が薄情な気質という訳ではない。
彼らの世代が生まれてきた頃にはこの価値観が常識であり、これが普通の価値観なのだ。
「ええーー」
ヒーロー以外が人助けをしてはいけない。人助けしたら批難される。だからヒーロー以外は助けようとも思わないし、助けない。
ヒーロー飽和社会とはそんな時代。
だからだろうか、その場の誰もが信じがたいモノを見るような目を彼に向けたのは。
子供に助けを求められたからといって、その子供を助けようとするなんてこの社会において普通の行動ではない。
ましてや見るからにヤの付く自由業そのものなガラの悪い男達に囲まれて、さらに刃物と銃火器と個性を向けられている状況。こんな状況では武闘派ヒーローでも怖気づいて引き下がるだろう。もっとも、彼らヒーローは明確な証拠が無ければ民事不介入の原則の下引き下がらざるを得ない。
人助けはヒーローにしか許されない。
けれど免許が必要な職業であるがゆえに法に縛られ行動が制限され、為すべきことが出来ない状況も多々ある。
そして『エリ』、死穢八斎會の切り札である少女はヒーローには助けられない存在。
まず法律を悪用できる程に頭が切れてさらに大抵のヒーローを返り討ちに出来る個人武力を持つ極道に囲いこまれていて、意識不明とはいえトップである組長の血縁者であり、過去に個性暴走で身内を殺めてしまった、使い方次第では有用な希少個性を持つ存在。
助けるために戦う相手が強大で、助けた後もその危険な個性の制御は困難であり、ヴィラン以外の組織からも国からも狙われる可能性が高い。
如何にヒーローとて、この場ではなんとか助けることは、現状を変えることくらいはできたとしても、その先の彼女の人生を救いきることはできない。
ヒーローが助けた後に国に保護されたとしても、ヒーロー公安委員会の為していることを考えれば、彼女の人生に日向のような暖かな日常は望めないだろう。
「コイツ」
もっともそれは助けた者がヒーローであればのもしもの話、仮定の未来。
人助けのためなら極道どころか国家にも平然と喧嘩を売るであろう、考え無しのお人好しである異世界おじさんはそうではない。
死穢八斎會若頭・治崎廻の研ぎ澄まされた個性操作による分解と修復で生み出された石槍を容易く躱す。
トップヒーロー達がチームアップしてようやく渡り合える死穢八斎會の武力も、当然のことだが彼には通じない。
「この子を助ける。それ以外のことは、まあ後で考えるよ」
国家権力の恐ろしさは知っている。だが緑谷出久を通じて知り合ったヒーロー達と警察官の友人の人柄を知るがゆえになんとか出来ると信じている。
それに国家権力とは個人武力で捻じ伏せられるものであるのだと彼はよく知っていた。事実グランバハマルで捻じ伏せてきたからだ。
「なんでやす、この強さ」
だから躊躇わずに助ける。
何もしなければ助けられないし救えない。
動き続けること、歩き続けることが望んだ先に辿り着くことに必要だと彼は実体験を経て誰よりも知っているのだから。
その果てに不可能を可能にしたのだから。
「俺達は極道だぞ。こんな時代を生き抜いてきた、ヴィランなんてチンピラじゃねえ本物だぞ」
ちなみに極道でヤクザだからと彼が怯むことはない。セガで何度も倒している存在だし平気でしょ、と現実とゲームの区別を付けてない頭のおかしな所が彼にはある。なお犯罪者をヴィランと呼ぶようになってから長い月日がたった結果、最近の子供は極道やヤクザの名称すら知らなかったりする。知っている者はヒーローを目指して勉強している者か、ドラマ・小説・ゲームやらの娯楽から知っている者くらいらしい。
「なのになんで、ゴミみてえに呆気なく吹き飛ばされてんだあっ?!」
左手で少女を抱きかかえ、右手で光剣振るうアラサー(四捨五入したらアラフォー)を極道達は捕らえることすら出来ずに一方的に撃退される。
勝てる道理が無い。
異世界おじさんを知る者は全員口を揃えてそう言うだろう。
グランバハマル生活十七年、その経験は伊達ではない。この世界でそれだけの実戦経験を積むことは不可能だろう。
そして嶋嵜陽介本人のぶっ飛んだ思考も侮れない。その独特な思考により転移一週間にして飢えた凶悪な魔獣達を殲滅し、弱っていたとしてもあのエルフが敗北しかけた魔毒竜ヴェノムドラゴンを討伐したのだから。
「フザケるな!!なんでこんな事で俺の計画が台無しになろうとしている!!」
治崎廻は吠える。
冷静な彼らしからぬ叫びを上げる。
彼の計画、彼の目的。
極道の、死穢八斎會の復権。
準備はしていた、来たるべき日のために。
機が熟した。
神野決戦が起きたことにより闇の帝王という重しが無くなり、平和の象徴という蓋が消えた。
それを逃がす訳にはいかない。
戦力は充分、切り札はまだ安定こそしていないが、それはより良い機材と施設があればなんとか出来るだろうと目処はついている。
机上の空論は達成可能な計画へと至っていた。
野望は叶う。
恩返しは果たせる。
あの人の苦難の日々は終わる。
あの日あの人に与えてもらった居場所を守ることが出来るのだ。
それを邪魔する存在、なんとしても排除すべき外敵。
「なのになんで」
治崎廻の目にはエリを守り戦う男の姿が、かつて自分の手を引いた恩人の姿と重なって見えた。
「俺はこんな事を思い出してやがる」
それは、異世界おじさんと死穢八斎會組長の理由が同じだからだろう。
打算ではない、職務だからではない、ただ救いたいから救う。
泣いてる子供を放ってはおけない、大人のワガママ。
「大切なことだからだよ」
鉄砲玉八斎衆すら一蹴し、異世界おじさんは治崎廻の吐き捨てるような呟きに言葉を返す。
なお『窃盗』窃野と『結晶』宝生と『食』多部は纏めて光剣で一閃され、『強肩』乱波と『結界』天蓋と『吸活』活瓶は放たれた炎魔法を防ごうとしたり耐えようとしたがあえなく撃沈、『本音』音本は「なんで助ける」という問いかけに「泣いてたから」と返され絶句した所で一撃をくらい気絶、唯一異世界おじさんを打倒出来たであろう『泥酔』酒木は本部長である入中と共に不在である。
「苦しい時に思い出すのは大切なことなんだ」
治崎廻にとって大切なこと。
彼自身のオリジン。
それは何も無かった自分の手を引いてくれた恩人の姿。
「俺にとってセガがそうであるようにね」
「「「「?」」」」
幸いなことに続けられた異世界おじさんの本音はその場に居る全員に理解されず幻聴として処理された。
「参ったな」
どう足掻いても勝てない。
本来なら受け入れられないその事実に治崎廻は納得してしまった。納得できてしまった。
「ヒーローならともかく、親父と同じなら勝てるわけがない」
ヒーローの英雄症候群は体質的に受け付けない。しかし、あの差し出してくれた手を拒むことは彼にはできないのだから。
治崎廻が袈裟斬りに振るわれた光剣を受け入れたのと同時に見張っていたサイドキックから連絡を受けていたサー・ナイトアイ達が現場に到着。
死穢八斎會の騒動はこれにて幕引きとなった。
治崎廻は光剣によるダメージを自身の個性にて修復し、その場で児童虐待の罪を認め警察に出頭するとヒーロー達に宣言。
それは法により行動が制限されるヒーローにとっては最悪の手段。
事実としてそれ以上の死穢八斎會への関与が不可能になってしまったのだから。
またサー・ナイトアイの個性にて死穢八斎會対策、行動を抑制してしまったのが悪い方向に働いた。現状判明している具体的な罪状が、『エリ』への個性を用いた虐待と異世界おじさんへの暴行(しかも彼自身は無傷)なのだ。他の組員にしても個性使用は私有地で押し通せるので銃刀法違反で引っ張れるかどうかだろう。
準備があると言って館内に戻った治崎廻はやるべきことを済ますとそのまま抵抗すること無く警察署まで連行された。その姿はどこか憑き物が落ちたように、張り詰めたナニカが解けたように見えた。やるべきこと、親父である組長の修復の後でそうなるナニカがあったのだろう。真実は親子である二人のみ知る。
「お疲れさまおじさん」
トレンドール・緑谷出久の言葉で異世界おじさんはホッと一息つくのであった。
「もう痛いことされないの?」
異世界おじさんに必死にしがみつきながら顔だけ向けてエリは言う。
「ああ、もう大丈夫だよ」
そんなエリに嶋嵜陽介は異世界おじさんオリジナル笑顔を返す。グランバハマルだけではなく、こっちの世界でも見た人がヒッ?!となる例の笑顔で。
「フフ、変な顔」
それを見て怯えることなくエリは笑う。年相応の自然な朗らかな笑みを。
まだやるべきことはある。
これからしなければいけないことはある。
それでも笑い合う二人の姿こそが、望まれた救いの形なんだろうと緑谷出久は思った。
なお完全な余談であるが、事後処理を全て終わらせた後サー・ナイトアイは一週間ほど自室に引き篭もり延々とオールマイトの活躍シーンの動画を見続けることになる。
世界の未来、自身の死、ルミリオンの将来、起こるべき悲劇を打倒せんと決意し用意した万全の対策と準備が全て流れ弾のような要因で無駄に終わったのだから仕方ないことだろう。
補足。
原作よりヒーロー以外の人助けは問題となる風潮。
エリちゃんの境遇について。
おじさん無双。
おじさんと親父を重ねる治崎さん。原作だと改心の類がないのはヒーローが打倒したからだと思ってます。
治崎廻自首で逮捕、死穢八斎會存続。
組員も逮捕だが一部だけ。
親父再生、治崎の盃は割りませんでした。
ヴィラン連合、死穢八斎會と接触せず終了。個性破壊弾は原作水準で完成してません。
おじさんは帰宅後敬文から説教。
エリちゃんは次話にて。
サー・ナイトアイ、精神ダメージにてオールマイト治療へ。
こんな感じです。
エリちゃんを救ったのがヒーローではないおじさんだから治崎廻は納得できた、多分それだけの話です。