書けました。
エリちゃんの今後と日常回です。
少々長いですが、こんな感じです。
次話投稿は出来たらになります。
色々とオリジナル設定有りなので閲覧注意。
「何かあったのかしら?」
雄英高校教師にしてプロヒーローである十八禁ヒーロー・ミッドナイトこと香山睡は多忙である。
教師とヒーローを兼任しているのだから多忙で当然なのだが、さらに雄英高校にて新学期と全寮制が始まりその仕事量は跳ね上がる。またそれだけではなく、例年通りなら早くとも二年生から実施されるヒーローインターンを一年生が前倒しして行っているためその分の仕事が追加されているのだ。
仕事そのものは苦ではない。
教師とヒーロー、どちらの職にも誇りとやりがいがある。全寮制とヒーローインターンに関しても確かに仕事は増えたがそうなった原因は自分達の不甲斐なさが原因であるし生徒のためだから不満はない。
それに本来なら自分も雄英高校敷地内に住む筈だったのだが、根津校長の配慮により自宅通勤が認められているのだ。仕事が増える程度のことで文句などはない。そこには異世界おじさんとの付き合いを途切れさせたくないという根津校長の思惑もあるのだが、万が一を想定する責任者としては当然の判断だろう。
もっともここ数日はあまりにも仕事が多くて雄英高校に泊まる必要があった。雄英高校は宿泊設備が整っており、食事はランチラッシュが用意してくれて、セガはデヴィッド博士の自宅でプレイ出来るので泊まり込むことに不満はない。けれど想い人に一日でも会えないことは辛いもので仕事が一段落した時はホッとしたものだ。
数日ぶりの帰宅でようやく会えると心が弾んでいると、ヒーローインターンに泊まり込みで参加していた緑谷出久君から至急陽介さんの家に来て欲しいと連絡がきたのだ。
「トラブルかしらね?」
どうせ顔を出すのだからこちらとしては構わないのだが、あの異世界ヒーローが助けを呼ぶのはよっぽどの事だ。自分になんとか出来ることであれば良いのだけどと思う。ベテランヒーローとしてしっかりと人脈を作っているから自分でなんとか出来ずとも大概の事は解決できると思うが、緑谷出久の手に負えない相手との戦闘だとすれば流石に難しい。
「まあ行けば分かるわね」
仕事は足で探す、それがヒーローの基本なのだから。
「ただいまー! なんてね」
想い人のおかえりと、敬文君と藤宮さんのツッコミが活力の源だと思いながら扉を開ければ、
「おかえりなさい。だよね?」
「そうだよエリちゃん!!」
「初めてのおかえりなさい、達成だ!!」
知らない少女がおかえりなさいを言ってくれた(そして藤宮さんとスマホを構えた敬文君がいた)。
「えっとこの娘は?」
嫌な予感が全身を走り、聞いたら駄目だと本能が訴えるがそうはいかない。
どのような真実も知るまでは可能性だ。
「どうも香山先生、この娘は」
「お父さーん。お客さんだよー!」
説明しようとする緑谷君を遮りながら少女は陽介さんを呼ぶ。
OTOUSANN??
「確かグランバハマル語で素敵な男性って意味よね。焦っちゃったわよもう」
いけないいけない、一瞬勘違いするとこだったわ(テヘペロッ☆)。
「焦るどころか顔がオールマイトみたいな画風になってましたよ」
「そしてグランバハマル語でそんな意味じゃないですから」
「あとそれだと少女が「素敵な男性、お客さんだよ」と言っていることになりますけど」
お黙り、事は私の未来に関わることよ。ツッコミ入れてないで至急説明してお願いだから出来れば耐えきれる真実で。
「あー、この娘はエリちゃんといいまして」
「お父さんの娘の嶋嵜エリです。はじめまして」
フ、フフフ。
そう、そうだったの。
気がついたら手遅れってわけね。
私は勝負する前から負けていたのね。
私は敗北者で、私は負け犬で、私はエルフ(超失礼)なのね。
アハ、アハハハ。
「陽介さん、お幸せにーーっ!!オノレ、七瀬楓ええええええっ!!」
私は走りだした。
目の前の現実に耐えきれなくて。
私が居ない間に陽介さんと子作りをした憎き怨敵の名を叫びながら。
「もう睡さんの反応のどこからツッコメば良いのか分からないんだけど」
「エリちゃんの歳とか色々あるけど、おじさんの嫁の最有力候補が七瀬楓なのか」
「ゲームのキャラなんですけど、どうやって子作りしたと思ったんでしょう?」
「個性とか魔法でなんとか出来る認識とか」
「信じられないような事が出来る個性ってあるしね」
「まあとりあえず用事があるので縛動拘鎖(レグスウルドスタッガ)っと。なんか敵より知り合いに使ってるなこの魔法」
「離してっ!!私はもうこんな現実に耐えられないのっ!!」
「「「落ち着け」」」
あまりの出来事に半狂乱になっていると、緑谷君が拘束した後で私に神聖魔法をかけて強制的に落ち着かせてくれた。
「本題は別にありますが、とにかくエリちゃんの説明からですね」
緑谷君から伝えられたエリちゃんの事情。
それはあまりにも過酷で辛い彼女の歩み。
苦痛と恐怖に塗れた悪夢のような日々。
架空を現実にする力『個性』、その果てにある絶望の形の一つが彼女の境遇なんだろう。
けれど、そんな彼女にも救いはあった。
自身の選択が掴んだ、たった一つの救いが。
「なんでネットオークションでヤクザの出品を競り落として配送料をケチるために飛んでいったら少女を助けるためにヤクザを壊滅させることになるんですか」
「おじさんだからね」
「思考放棄すんなよ」
気持ちはわからないでもないけど、陽介さんだからとしか言えないのは事実よ。
「それで事後処理としておじさんの戦闘に関してはサー・ナイトアイが公安にある借りを持ち出して誤魔化して、エリちゃんは祖父である死穢八斎會組長からの意向と本人の希望もあっておじさんが引き取ることになったんです(一部の組員はエリちゃんの個性の詳細に関しての記憶を消したけど)」
エリちゃんの祖父、死穢八斎會の組長は人格者というわけね。やらかした治崎廻に預けたのは失敗だったけどそれも似たような境遇と個性の息子を信頼してのことでしょうし。
「組長さんに養育費を渡されて土下座までされたら断れないからね。エリもあの館に怯えているし」
話の途中からエリちゃんとぷよぷよをプレイしてる陽介さんがそう言った。責任を取るために自分で面倒をみようとしたみたいだけど、娘さんの件もあって育てる自信が無いとのことらしい。怯えるエリちゃんの目に堪えたのもあるようだけど。
「エリちゃんも住むとなるとスペース的に厳しいけど、しばらくはおじさんと同じ部屋だからなんとかなるね」
「なあに、どうしても厳しくなったら俺はベランダで寝るから大丈夫だよ」
「世間的に僕が死ぬからおじさんっ!!」
「え、そう?」
野宿慣れしてるからかベランダでも平気なのね陽介さん。
「それで陽介さんが引き取ったのね。けどエリちゃんの個性に関しては大丈夫なのかしら?発動型の個性なら相澤君なら対処できるのだけど」
個性暴走は周囲だけでなく本人の心も傷つける、エリちゃんの為にもきちんと対策しないと。事情説明して相澤君もこのアパートに住ませるべきかしら、寝袋とゼリー食があれば彼は大丈夫だし。
「それに関してはなんとか出来ました。かなり外法気味な解決策でしたが」
緑谷君が取り出したのは闇の盟約呪符、精霊の名のもとに血判し盟約を結び双方に遵守させるという物だ。
「おじさんがエリちゃんの保護者であるうちは個性を許可無く使用できない。個性は身体能力の延長だから暴走も精霊が強制的に止めてくれます」
あのエルフすら縛りつける強制力なら個性暴走すら抑えきれるのね、そして陽介さんから指輪をはめて貰ったあの商会主が羨ましい妬ましい。
「あ、おじさんが精霊に直にお願いしたからエリちゃんに痛みとかはないですよ。精霊もエリちゃんなら仕方ないよねと要求も無かったらしいです」
エリちゃんなら仕方ないわね。
「というかその盟約呪符って個性暴走を抑えたり、ヴィランを無力化したり出来そうじゃない?量産はしないの」
軽く考えただけでこれだけ出来そうなのだからあれば便利なのだけど。
「回復の呪符の比じゃないくらい作るのに手間がかかりますし、本人の意思が重要で、かつ盟約を破った時のリスクが半端無いですよ」
「闇の精霊は気位が高いから平伏してお願いするならともかく、コレお願いしまーす、みたいに軽い気持ちで仕事頼み続けるとブチ切れて世界を永遠に闇に包みかねないしね」
「精霊ヤバ過ぎでしょ」
「絶対に盟約を悪用したり、裏をかこうとする輩はいるだろうしね」
「というか今回も悪用の2歩手前くらいですから。おじさんが必死に五体投地したのとエリちゃんだからまあいいかと許してくれただけみたいですし」
厳しいわね精霊。
「でもそれだけならエリちゃんに蓄積されたエネルギーはどう発散するの?」
額の角のサイズがそのバロメーターなのよね?発動しなくとも溜まり過ぎたら身体によくないでしょうし。
「そこは許可をだして発散してもらってます。このドラゴンの骨に」
緑谷君が指さしたのはケースに収められて飾られた一欠片の骨。それはグランバハマルで陽介さんが討伐した魔骨竜・ボーンドラゴンの一部、生きた骨ともいえるソレで巻き戻しを発散しているとのことだけど。
「人間と竜は生命力と寿命に差が有り過ぎですからね。元の竜の姿にまで戻るには三十年くらい巻き戻しし続けないと無理ですよ」
発散対象としては最高なわけね。
「なら問題はないわね。けどならなんで私は呼ばれたのかしら?」
エリちゃんの紹介が目的ではないわよね?問題らしい問題はないと思うのだけど、男性所帯だから女の子に必要なことをやって欲しいとかかしら?
「ええこれはなんとしても解決して欲しい、僕にはなんともできない問題でして」
緑谷君達に解決できないこと、ハッもしかして?!
「私にエリちゃんの母親役をやって欲しいのねっ?!」
これは好機!!これは勝機!!私は役とはいえ陽介さんのパートナーになれる!!私はエルフではなくなるのね!!(超失礼)。
「いやまあだいたい合ってるけど、微妙に違うというか」
どうしたの緑谷君、その形容し難いような苦虫を噛み潰したような表情は。
「エリにお母さんは居るよ?」
「❖○⊃???」
「睡さん、反応がバグってますよ」
「多分驚いて、え?とか言ってるんだよね」
ぷよぷよプレイ中の画面からこちらに向いてエリちゃんは衝撃の事実を言う。
駄目よ、これはきちんと大人として説明しないと。
「あのね、エリちゃん。確かに七瀬楓は魅力的な人だけど彼女は敵首領に殺害されて生体コンピューターの頭脳に改造蘇生され救世兵器セブ」
「「もう七瀬楓はいいから」」
「ゲームのキャラなんですよね?なんかガチで存在してる気分になってきたんですけど」
「彼女は居るよ。僕達の心の中に」
止めないで、早く真実を伝えておかないといけないのよ?!エリちゃんが悲しい勘違いをする前に!!
「お母さんはお父さんだよ?」
母親をしてる陽介さん、有りね。一粒で二度美味しいとはまさにこのこと。
「いいんだソレで」
「もう恋する乙女なんてレベルじゃない気が」
「忍た○乱太郎の山○伝子を連想して吐きそうな僕は失礼なんでしょうか?」
なんでよ、普通に有りじゃない。
「お父さーん、お母さんになってっ!」
「もう仕方ないなエリは、少しだけだよ。形貌変躯(ザックトーラキャトルフ)」
あら変身してお母さんになるのね。
ならエリちゃんの生みの親かしら、ちょっと複雑な気分だわ。
そしてカッ、となって現れた姿を見た瞬間再度私は叫んだ。
「○△□←☚∂?!!!」
「だからまたバグってるよ」
「なんでエルフ?!かな今回は」
そこに現れた変身した姿がよりによってあのエルフだったからだ。
「説明して緑谷君」
「何もかも敬文さんのせいです」
口の端から血をたらしながら緑谷君は言う。
「いや元々おじさんがゲームソフトにお金を使い込んだせいじゃんっ?!」
「でもエリちゃんを助けたからそこはチャラになるでしょ」
つまり事の経緯は、
敬文君が陽介さんの使い込んだ額の回収のためエルフマネーを得ようと動画撮影。
変身した陽介さんを見たエリちゃんが誤解。
エリちゃんが動画に加わって超バズる。
目が$になった敬文君がそのネタを継続。
エルフ姿を見た緑谷君がストレスで吐血して瀕死、私に助けを求める。
陽介さんは最高。
ってことね。
「なんか変なの混じってません?」
「お願いします、このままだとストレスで死ぬ。ヤツから、あのエルフ(恐怖と絶望の権化)から母親役の奪還を」
「待つんだ、バズってるんだよこのネタ」
「お前はその$になった目を元に戻せ」
ふ、良いでしょう。
立ちふさがるなら受けて立つ。
エルフよ、その座(エリちゃんの母親役)は私が奪ってみせるわ!!
こうして僕達の日常に新たな住人が加わった。
不思議な巡り合わせで僕達の家族になったエリちゃん。
まだ距離感は多少あるけど、それも時間の問題だろうなと思う。今はおじさんの後ろをトテトテとついてまわり、サターンをやったり、メガドライブやったり、ぷよぷよやったり、動画に参加したりしてくれている。
そして睡さんがエルフ姿のおじさんに張り合ってエリちゃんの面倒みたり、藤宮がエリちゃんを可愛がったり、千秋君がエリちゃんにお兄ちゃん風吹かせたり、緑谷君が吐血して倒れたりと、色々あるけどこれからもっと楽しく賑やかになりそうだなと僕は思った。
あと、エルフとエリちゃんのコラボ動画の再生数がヤバいです。
エリちゃんは原作より大人びてなく、笑顔を忘れたりまではしてません。サー・ナイトアイは落ち込んでましたが、彼の対策はしっかりとエリちゃんを救っていました。
エルフ姿も問題ですが、エリちゃんがおじさんのお嫁さんになると言う前に母親になれるかどうかはミッドナイトの頑張り次第ですね。
まだ暫くは藤宮さんと同じ優しいお姉さんポジになりそうです(ちなみに緑谷君はなんか血を吐いてる人認識です)。