とある聖槍の人理保存 作:ネシエル
真 第一話 覚醒
深い深い森の中
朝の薄明かりが差し込む深い森の中、
赤髪のロングヘアをなびかせた少女が必死に走っていた。
その名は天羽奏。まだ幼い彼女は、
全身を使って草木を掻き分け、涙を流しながら叫んだ。
「パパ、ママ!?」
しかし、彼女の必死の逃亡も虚しく、足が石に躓いて転倒する。
奏は右足から血を流しながらも、痛みに耐え、震える足で立ち上がった。
振り返った先からは、不気味に草が揺れる音が聞こえてきた。
目に飛び込んできたのは、アイロンのような形をした手を持つ謎の人型生命体。
十体もの「ノイズ」がそこに立ち塞がっていた。
「嫌だ、来るな!このやろう!」
奏はその場に転がる石を拾い、必死に投げつけた。しかし、それはノイズにとって何の効果もない。
ただじりじりと迫りくる彼らを見て、奏の顔には絶望が浮かんでいた。
「誰か助けて」
その時、不意に低く威厳のある声が響いた。
『小さきものよ――』
「!?」
奏は驚きのあまり声の方を向いた。そして、かすかな希望を胸に抱き、再び走り出した。
血を流す足を引きずりながらも、森の奥へと逃げる。
ノイズは追ってくるが、その速度は奏ほど速くはなかった。
息を切らせながらたどり着いたのは、巨大な樹木だった。
その高さは百メートルを超え、森の支配者とでも言うべき威圧感があった。
あまりの大きさに圧倒され、奏は思わず見上げてしまう。
『こい、我が元に――」
再び響く声。その声に導かれるように木の根元を見つめると、
そこには大きな洞窟があった。
「くそ、追いかけてきやがった!」
迫るノイズに追われながら、奏は洞窟の中へと飛び込んだ。
だが、洞窟の奥で行き止まりに突き当たり、そこで一振りの槍を見つける。
それは錆びつき、茶色く変色した一振りの槍だった。
だが、奏はその姿に心を奪われる。
「これを使えば――」
彼女が槍を掴み、引き抜こうとした瞬間、
槍は光を帯びて輝きだした。
「きゃああ」
『聖槍抜錨――』
次の瞬間、槍から放たれた眩い光が洞窟を埋め尽くし、森全体を爆風が包み込んだ。
▲▲
高速道路で走る車内。
朝の光が車内を照らす中、赤髪ロングの女性が後部座席で突然目を覚ました。
天羽奏は顔に汗を浮かべ、激しく息をついている。
「うわぁぁ!」
その声に驚き、隣に座っていた青髪の女性、
風鳴翼が声をかける。
「奏、大丈夫か?」
「大丈夫だ、翼。私なら平気だ。」
「私?」
「え?」
そのやり取りに、助手席に座る緒川も振り返りながら言った。
「いつもなら“あたし”って言いませんでしたか、奏さん?」
奏は少し気まずそうに顔を逸らす。
「いや、その、ノリだよノリ。
別に“あたし”が“私”って名乗ったところで、何が悪いのよ。」
そう言うと、外の景色に視線を移す。
「どのくらい寝てた?」
「30分よ。」翼が答える。
「そうか。」
奏は窓の外に見える巨大なスタジオをじっと見つめた。
「道理で早いわけだ。さあ、今日も頑張るぞ。翼!」
「本当に大丈夫なのか、奏。」
「平気、平気。心配するな。今日は大事な日でしょう。
弦十郎の旦那やファンたちに心配かけたくないさ。」
奏は笑顔を見せ、翼を安心させた。
▲▲
ドームの裏側。
控室でアイドル衣装に身を包む奏と翼。奏は衣装の細かい調整をしながら翼に問いかけられる。
「奏、そういえば、何であんな声を出したのだ?」
「夢を見たんだ。」
奏はバッグから一本の槍を取り出した。
長さ50センチ、幅5センチの槍。
茶色く変色し、先端はかなり摩耗し凸凹の状態になった
「それは、確か……」
「あたしが拾ってきたものだ。」
翼は驚いた表情で槍を見つめる。
「あたしがノイズに殺されかけたとき、
これを拾ったらノイズが消えた話だ。」
「消えた話、奏は見たことがないのか。」
「あたしはただ無我夢中で、何か光が出たら、
吹っ飛んだみたいな感じ、たぶん、スゲーものだぜ。」
奏は槍を振り回す。
「奏、あんまり、武器を振り回さないほうがいいぞ。
あとそれは、完全聖遺物なのか。
私の目から見てもただのガラクタだが、不思議とただならぬ気配がする。」
「たぶん、そうじゃないかな。
あたしにもよく分からないわ。一応、櫻井さんに見せたけど、『ただの鉄くず』って言われた。」
「櫻井女史がそういうなら、なぜ、捨てないのか?」
「言ったでしょう。これはあたしの恩人だ。
嘘でも本当でも、あたしは恩人を見捨てない」
「二人とももう直ぐ始まるわよ」
「はい。翼。そろそろ行こうか。」
「うん、そうだな。」
「大丈夫だってあたしたちなら、どこまでも行けるぜ。」
その言葉を残し、奏は槍をバッグに戻す。
『エネルギー充填、60パーセント突破』
「!?」
「どうしたのだ、奏」
「いや、何でもない。」
▲▲▲▲
ステージ上
二人のアイドルが歌う。彼女たちの声は人々を励まし、希望を与える。
奏と翼の歌声がステージを響かせる中、控室のバックに置かれた奏の槍が輝き始める。
『エネルギー充填率70、80パーセント突破。
外部損傷を確認、再構築を開始します。』
それは光を放ち、錆びついた外装が白く変わり始めていた。
▲▲▲▲
制御室
「フォニックゲイン限界値突破。ネフシュタンの鎧の覚醒を確認。」
職員たちの声が飛び交う中、櫻井が冷静に指示を出す。
「これで完全聖遺物の起動に成功ね。
みなさん、お疲れさま。」
「みんな、よく頑張ったな。」
「これで、完全聖遺物の起動に成功。
本当に苦労するわ。」
「しかし、それに合う対価は手に入れた。
これで、人類はノイズに対する対抗手段を増やすことに成功した。」
そのとき、警報が鳴る。
「何が起きた」
「大変です。ノイズが現れました」
▲▲▲▲
荒廃したステージ
ノイズとの激しい戦いの中、奏と翼は傷だらけになりながらも立ち向かう。
しかし、奏は限界を迎えた。
「ごめん、翼。やっぱり私は――」
奏は手に持つ槍を高く掲げ、禁忌の言葉を唱えた。
「Gatrandis babel ziggurat edenal……」
「やめろ、奏!」翼が叫ぶ。
槍が放つ光は全てのノイズを消し去ったが、その代償に奏の体は光となり、
塵と化した。翼は奏の亡骸を抱きしめ、涙を流した。
「知ってるか、翼。
思いっきりうたうとな、
すっげえ腹減るみたいだ。」
▲▲▲
『システムの修復を確認。
警告、天羽奏の生命反応の消失を確認。
直ちに修復を開始します。
最果ての加護を起動。
生命維持装置を発動。
全工程終了。
聖槍抜錨、
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