とある聖槍の人理保存 作:ネシエル
煙が漂う倉庫
倉庫内には煙が漂い、弾倉が飛び散っていた。多数の武装した集団が床に横たわり、動かなくなっている。
「ば、化け物め……」
意識を失った者たちの中で、唯一まだ息のある男が声を震わせながらライフルを構えた。狙いはただ一人、天羽奏だった。
バンッ!
引き金が引かれ、弾丸が音速を超えて天羽奏に向かって飛ぶ。
奏は一言も発さずその場に立ち尽くす。
――しかし、弾丸は奏の体に届くことなく、弾道が逸れて後ろの壁に穴を開けた。
「ば、ばかな!?」
男が狼狽する間もなく、その体は何かに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
▲▲▲
研究室
奏は重い扉を開き、研究室へと入った。すると、切歌と調がタオルを持って駆け寄る。
「お疲れ様デス!」
「怪我はしていないですか?」
奏は黙ってタオルを受け取り、顔を拭くと、奥にいたナスターシャ教授が声をかけてきた。
「侵略者はどうですか?」
「殺してはいない。じきに目を覚ますだろう。それにしても、こんなにも簡単に見つかるなんてな」
奏の答えに、ナスターシャはため息をつきながら言葉を続けた。
「相手は世界最強の軍事国家です。ここにもまた、兵を送り込んでくるでしょう。」
奏は肩をすくめながら苦笑する。
「まだ撤退か……やれやれ、私、ただの研究員なのに、何でこんな面倒なことをしなければならないのか。」
そう言ってから、切歌と調を振り返る。二人は目を逸らした。
「別に攻めているわけじゃないよ。人には得意不得意がある。汚れ仕事は私に任せな。」
切歌が申し訳なさそうに言う。
「本当に……」
しかし奏は静かに首を振った。
「それ以上は要らない。私に必要ない。」
突然、何かに気づいたように顔を上げた。
「ナスターシャ教授。マリアの姿が見当たらないが?」
ナスターシャは少し困った表情を浮かべながら答えた。
「マリアは買い物に行った。すぐ戻ってくるさ。」
奏は眉をひそめる。
「買い物ね……大丈夫なのか?顔が割れているんだぞ。そういう警戒心の無さが命取りだ。」
ナスターシャは一瞬だけ目を伏せ、呟くように答えた。
「……そうですね。」
海上、上空100メートル付近
透明なヘリが海上を飛行している。その操縦桿を握るのはマリアとナスターシャ。その後ろには天羽奏が立っていた。
「ここか、フロンティアが埋まっている場所か。」
奏がヘリの窓から下を見下ろしながら呟く。
「ええ、見つけるのに時間はかかりましたが、これで計画は遂行することができます。」
ナスターシャの言葉に、奏はヘリの装置に取り付けられた神獣鏡を見つめた。
「本当にこの鏡がフロンティアのカギになるのか。」
奏の問いに、ナスターシャが答える。
「神獣鏡は最弱にして最凶の聖遺物。あらゆる術式を解除することができる。あなたも実際に目にしたでしょう?」
「そうだな。ただの嫉妬だ。」
奏は心の中で呟いた。
『こんな鏡に頼らなければならないとは……』
その時、神獣鏡が光を放ち始めた。次の瞬間、ヘリの下部からビームが海上に向けて放たれる。ビームが着弾すると、海水が沸騰し、波がうねるようにして盛り上がり、やがて巨大な構造物が空中へと浮かび上がった。
「来ました。フロンティアです。」
マリアが感嘆の声を上げる。
奏は何も言わず、その光景を見つめていた。
▲▲▲
フロンティア内部
洞窟のようなトンネルを抜け、ついにフロンティアの内部にたどり着いた。
奏はその構造物の壮大さに目を奪われ、感嘆の声を漏らす。
「素晴らしい……これほどの機能を作れる異星文明が存在していたなんて。」
彼女の目は輝いていた。
『これなら、計画の実行に問題はなさそうだ。魂を保存するのに必要な容量も確保している。少々足りないが、余分な機能を捨て拡張すれば――』
奏が計画を思案する中、
マリアは紫色の手袋を付けて、
不意に強い力で槍を奪われた。
「はああっ!」
マリアが槍を奪い、
切歌と調が奏の両手を押さえつけ、
彼女を地面に伏せさせた。
「……ナスターシャ教授、これはいったい!?」
驚きの中で奏が問いかけるが、
ナスターシャは冷静に答えた。
「さて、お話をしようか、
奏――否、聖槍ロンゴミアンド。」
その言葉が、すべての始まりを告げた――。
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