とある聖槍の人理保存    作:ネシエル

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真 第十五話 潔白

潜水艦内部

「ロンゴミアンド!?!?」

 

モニター画面に映し出される映像に、風鳴司令の声が震える。

SONGの職員たちも、一様に息を呑んだ。

 

「確か……アーサー王伝説に出てくる、あの……」

職員Aが困惑しながら言葉をつなぐ。

 

「まさか……予想が当たったのか?」

職員Bが信じられないような表情を浮かべる。

 

「今すぐ、解析せよ!」

職員Cが慌ただしく動き出す。

 

だが、モニターの向こう――フロンティア内部にいる風鳴翼にとって、

その事実はすでに目の前にあった。

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

フロンティア内部

 

「ロンゴミアンド……アーサー王の槍。

意思を持つ完全聖遺物なのか。」

 

翼は刀を強く握りしめ、目の前の純白の竜

――救世の獣、ロンゴミアンドを見据える。

 

その巨大な躯は、

神々しさすら感じさせる威圧感を放っていた。

 

「その通りだ。」

 

竜の口が動き、

重厚な声が響く。

 

「私は王の槍だった。

1500年前――

ブリテン島には清廉潔白、強靭無比の王がいた。」

 

ロンゴミアンドの瞳が微かに光る。

 

「あらゆる騎士を束ね、卑王ヴォーティガーンを討ち倒した王。

騎士王アーサー。

赤き竜の因子を持ち、聖剣と聖槍、数多の宝具を携え、

ブリテンを統べた王。」

 

翼は黙って聞いていた。

 

「誰もが、かの王を“約束の王”と信じ、疑わなかった。」

「かの王に従えば、ブリテンは必ず救われると信じた。」

「――信じた結果、国は崩壊した。」

 

翼は言葉を発せなかった。

 

ロンゴミアンドは淡々と語る。

 

「他国に攻められたわけではない。」

「疫病や天災に侵されたわけでもない。」

「――人間どもの意思の相互不理解によって滅びたのだ。」

 

翼の心が揺れた。

 

「私はその結末を認めない。」

 

竜の瞳が、炎のように燃える。

 

「戦いの最中、私は並列世界へと飛ばされようと、

決して諦めなかった。」

「完全なる救世を。

アーサー王すら成しえなかった、千年王国の樹立を。

それを胸に抱き、私は眠りについた。」

 

ロンゴミアンドは翼を鋭く見つめる。

 

「――後は貴様が考えた通りだろう?」

 

翼は静かに息を整え、応えた。

 

「……」

 

「その様子だと、意思を持つ聖遺物に出会うのは初めてか?」

 

翼は小さく頷く。

 

「そうだな。

今まで、多くの奇々怪々を見てきたが

……これは、さすがに驚いた。」

 

ロンゴミアンドが小さく鼻を鳴らした。

 

「そう思うなら、

リアクションの一つも起こしたらどうだ、風鳴翼。」

 

翼は眉をひそめる。

 

「私が復活することができたのは、貴様のおかげでもあるぞ。」

 

「私のおかげだと?」

 

翼が疑問を返す。

 

ロンゴミアンドは冷静に語る。

 

「2年前――

天羽奏が絶唱を起こさなかったら、私はここにはいなかっただろう。」

 

翼の心臓が一瞬、跳ねた。

 

「……」

 

「すべては、天羽奏が絶唱を放ち、貴様と民衆を救ったからだ。」

「あの絶唱が無かったら、私は再起動しなかった。」

「――感謝するぞ、風鳴翼。」

 

翼は拳を握る。

 

「それで……

貴様をあれほど大事に扱った奏の尊厳を破壊し、死体を利用したのか。」

 

彼女の声には、怒りが滲んでいた。

 

ロンゴミアンドの表情は変わらない。

 

「失敬な。

死霊使いと一緒にするな。」

 

竜の声は低く、威厳に満ちていた。

 

「私は“完全なる死者蘇生”を行った。

天羽奏の肉体は完全に灰となったが――

魂と、微かに残った魔術回路だけは私と繋がり、命を紡いだ。」

 

翼は息を詰まらせた。

 

「私の権能により、天羽奏は新たな肉体を得た。」

「――そして、神の地位へと誘った。」

 

ロンゴミアンドの眼光が鋭くなる。

 

「私が恩を仇で返すと思うか?」

 

翼の怒りは、しかし消えない。

 

「ならば、なぜ奏は目を覚まさない。」

 

ロンゴミアンドが小さく目を伏せた。

 

「魂の定着に手こずったからだ。」

 

翼は息を呑む。

 

「いくら私でも、死者の蘇生は容易ではない。」

 

「神代ならまだしも、今の時代は“無の否定”やら、

魔術の構造が複雑になりすぎた。」

「定着はしても、意識が戻らんのだ。」

 

翼はその言葉を飲み込み、ゆっくりと刀を構えた。

 

「……そうか。」

 

刀がわずかに輝く。

 

戦闘の構え。

 

ロンゴミアンドが微笑むように言った。

 

「――そうだな。無駄話は、そろそろ終わりにしようか。」

 

風鳴翼 vs 救世の獣、ロンゴミアンド。

 

この戦いが、今まさに幕を開ける。




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