とある聖槍の人理保存    作:ネシエル

16 / 40
真 第十六話 捕食

フロンティア内部

最初に動いたのは、風鳴翼だった。

 

無言のまま、彼女は一瞬のうちに神速の間合いへと突入する。

 

刀を振るう瞬間、空気が裂け、斬撃の熱がこもり――

 

やがて、音速に達した。

 

しかし――

 

「遅い。」

 

ロンゴミアンドの冷たい声が響く。

 

次の瞬間、彼の白き翼が空を裂き、翼の攻撃を薙ぎ払った。

 

そのまま、竜の羽が左右に広がる。

 

――無数の斬撃が飛び交う。

 

翼は即座に見極め、それらを回避しながら距離を詰める。

 

「!!」

 

だが、ロンゴミアンドはそれすら予測していた。

 

彼は羽を盾のように構え、翼の斬撃を完全に防ぎきる。

 

「裁き。」

 

白き竜の羽が振り上げられ、翼の体を空中へと弾き飛ばした。

 

「くっ!」

 

翼は体を捻り、落下する前にバランスを取る――

しかし、その瞬間、ロンゴミアンドの口から光が集まり始める。

 

――ブレス攻撃。

 

「はああああ!!」

 

翼は空中で身を翻し、ぎりぎりのタイミングで回避する。

 

地面が灼け焦げ、巨大なクレーターが残る。

 

「ほう、面白い動きだな。」

 

ロンゴミアンドは興味深げに翼を見下ろす。

 

その瞬間――

 

周囲の空気が震えた。

 

「竜巻。」

 

風の粒子が一斉に動き、秒速200メートルの暴風が吹き荒れる。

 

それは、一つの巨大な竜巻となり、

フロンティア内部の壁を次々と崩壊させ、

天井まで巨大な風穴を穿った。

 

「ぐはぁ!」

 

翼の体が吹き飛ばされ、壁に激突する。

 

――数センチもめり込むほどの衝撃。

 

口から血が溢れ、内臓に深刻なダメージを受ける。

 

『なんだ……この力は……』

 

翼は息を荒げながら思考する。

 

『私と戦っていたときは……手加減していたのか?』

 

ロンゴミアンドが静かに答えた。

 

「いいや、手加減はしていないさ。

 どうも、君と戦うときは、体の調子が悪い。

 君は強いよ。

私が出会ってきた中で、上から数えるのが早いくらいだ。」

 

翼は荒い呼吸を繰り返しながら、かすれた声で言った。

 

「……あ、ああ……」

 

「声も出なくなったか。

まあいい、これで終わりだ。」

 

ロンゴミアンドの体から、枝のような突起が生え、翼へと向かう。

 

しかし――

 

「そいつに触るな!!」

 

クリスの声が響く。

 

直後、爆発的な光が走り、ロンゴミアンドの枝が砕け散った。

 

シンフォギア・イチイバル――圧倒的な射程距離を誇る破壊兵器。

 

その最大出力が炸裂し、枝を破壊するだけでなく、

ついに――白き竜の体にもダメージを通した。

 

「コイ、大丈夫か!」

 

クリスは負傷した翼を担ぎ、急いでその場を離れる。

 

『空はダメだ……羽を持つあいつにとって、

見通しが良すぎる……!』

 

クリスは最適な逃走ルートを探しながら、翼の容態を確認する。

 

「おい、ケガはどうだ?」

 

翼は苦しげに咳き込む。

 

「ごほっ、ごほっ……大丈夫だ。

骨が数本……いってしまったみたいだ……」

 

「大丈夫なわけあるか、バカ!」

 

その瞬間、後方で轟音が響いた。

 

「!?」

 

振り向くと、白き竜が地面を砕きながら突進してきた。

 

「くそ……化け物め!」

 

クリスは後方に銃撃を放つが、ロンゴミアンドは止まらない。

 

竜の目が鋭く光る。

 

「化け物ではない――

“神”だ!!」

 

ロンゴミアンドの口が開く――ブレス攻撃。

 

「!!」

 

クリスは横の通路に飛び込み、間一髪で回避する。

 

『やはり、あの騎士はいない……』

 

クリスは考える。

 

『今のアイツは、“騎士”を生み出さない。いや……生み出せないのか。』

 

理由はわからないが――好都合だ。

 

クリスは走り続け、行き止まりの壁にぶつかる。

 

「ぶち抜く!」

 

シンフォギアの力を解放し、壁を粉砕する。

 

――だが、その先に待っていたのは広大な海。

 

そして――

 

口を開けて待ち構える、白き竜の影。

 

「なあ!!?」

 

「――チェックメイト。」

 

ロンゴミアンドの口が完全に開かれる。

 

クリスの脳内が混乱する。

 

――判断が追いつかない。

 

翼を抱えたまま、彼女は次の行動を選ぶ暇もなく――

 

飲み込まれた。

 

風鳴翼と雪音クリス――捕食。

 

フロンティア内部に響く轟音とともに、二人の姿は白き竜の口の中へと消えた。




次回投稿2/10
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。