奏はCHARM受け取ると、帰宅する為校内の廊下を歩いていた。
CHARMは、専用のケースに入っており、3センチ幅の紐がついているが、長さを調整することで肩に掛けれたり、リュックのように背負うことができるようになっていた。今は肩にかけている。
奏は、受け取った時に言われた注意事項を思い出しながら、一人呟いていた。
「えっと、CHARMは出来るだけ肌身離さず持っていること。」
「戦闘、訓練による消耗・破損は学院側で修理可能。それ以外は、個人負担。半年間は無償でメンテナンス・修理は可能と。」
「訓練以外では、人にCHARMを向けない事。」
「CHARMを手放すことは、引退もしくは、死を意味する。」
「あとは、細かいことは、教本と取り扱い説明書が一緒にはいってるんだよね。」
ふと、我に返った奏は気が付いた。
「ここ、どこ?」
あたりを見回しても誰もいない。案内図を取り出すが、現在地がわからないので、どうみたらいいのか、判らなくなっていた。
「まじかぁ・・・。入学初日、学校内で迷子とは。ま、でも、学校の中だし、誰かに出会ったら助けてもらおう。」
見知らぬ土地であれば、困ったかもしれないが、学校という狭い空間であれば、どうにかなるだろうという考えが働いた。で、とりあえず適当に歩いていると、どこからともなく声が聞こえて来た。
「陽子、あなた、本気で、それやるつもりなの?」
「当たり前でしょうが、一年我慢したのよ。一年。それに、物的証拠も手に入ったし。今やらずしていつやるの?」
「いや、その証拠って言っても、私たちのレギオン部屋に置いてあっただけで、だれが置いていったのかわかんないでしょ。信憑性はあんの?」
「ある。」
「いやいやいや、っていうか、その自信はどこから来るのよ。」
奏は声のする方に近づいていくと、丁度角を曲がった辺りに二人の女生徒を見つけた。
恐らく、一年生ではなく、先輩であることは間違いないだろう。だが、このまま声も校内を彷徨うより、助けてもらうべきだと判断した奏は、意を決して、
「あのぅ・・・・。すみません。教えてほしいんですけど。」
と、恐る恐る声をかけてみた。
すると、一人の女生徒が、
「あら、あなた、一年生?。どうしたの? こんなところで。」
優しそうな声で、にっこりと笑いながら、手招きで奏を呼んだ。
三つ編みで編んだ髪が胸の辺りまであり、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
奏は呼ばれた先輩に近づきながら、制服のスカーフの色を確認していた。
『スカーフの色が、えっと・・・・こんぺき?だっけ。ということは、2年生の先輩。』
先輩しかいないだろうと思ってはいたものの、やはり緊張感してきて、呼ばれたけど近づいていいのか迷ってしまい、歩くスピードが落ちていた。
それを察したのか、女生徒の方が、奏に近づいてきた。
「もしかして、道に迷ったの?」
奏の肩にそっと手を置いて、優しい口調で語りかけてきたが、奏は緊張のあまり答えることが出来ず、ただ小さく頷くのが精一杯だった。
「万一、校内にヒュージが入ってきても、逃げられるように、あちこち通路になってるからねぇ。」
突然、三つ編みの女生徒の後ろから、もう一人の女生徒が声をかけて来た。
肩にかかっている長い髪を手で、後ろに払いながら・・・・・。
その仕草に、奏は一瞬目を奪われた。
『綺麗な黒い髪、黒というより、漆黒と言った方がいいのかも・・・』
動きの止まって、奏を見て、
「大丈夫?。怖かったの?」
背中まである長い髪の女生徒は、少しかがんで、奏の顔を覗き込むように言った。
その声で、我に返った奏だったが、偶然にも視線が合ってしまい、見つめられていたことに気付くと、体の奥底から熱くなり、自分の顔が赤くなっていくのを感じた。そして、何か言わなければと思い、
「あっ、いえ、その、しゅ、しゅみません。」
言い直しても、さらに噛んだ奏だった。
すると突然、
「こらっ!。田中陽子、授業中なのに、どこいってんの!!」
奏が歩いてきた方から、女性の声が聞こえてきた。
奏を見ていた女生徒が、小さな声で、
「ちっ、やかましいのが来たか。」
そう呟くと、かがんでいた姿勢を元にもどして、
「明花葉(あげは)。あんたこそ、なんでここにいんのよ。授業中でしょ。さっさと・・」
その言葉を遮るように、
「やかまわしいわ。あんたを探すように担任に言われてきたの。本来なら、これって、聡子の仕事なんだけど、彼女、CHARMの受け渡しの手伝いに行ってるでしょう。だから、私が言われたの。」
奏は声がした方を振り向くと、二人の女生徒が近づいてきていた。
「あなた、こっちへ。」
最初に声をかけてきた、三つ編みの生徒に腕をひっぱられて、奏を自分の後ろに隠した。
近づいてきた、女生徒の一人が、
「どうせ、陽子のことだから、なにか良からぬことをしようと企んでいたのは明白。何をしようとしてたの。」
そう言いながら、陽子と呼ばれた女生徒に絡んでくるのは、ツインテールの髪型をした女生徒だった。
「別に明花葉を巻き込もうなんて、これっぽっちもおもってないわよ。」
といいつつ、視線を明後日の方向に向ける陽子に対して、
「陽子、今、視線そらしたわよね。ね。ね。あんた、巻き込むつもり満々で・・いたっ!。」
パシィ!!という音が廊下に響いた。
奏はなんだろうとよく見ると、
ツインテールの女生徒の少し後ろを歩いていた、もう一人の女生徒が、手に持っていた扇子で、明花葉と呼ばれた女性の後頭部を叩いていた。
ほんの一瞬だったが、奏と目が合った時、にっこりと微笑んで、頭を少しだけ下げたので、奏も、同じように、チョコンと頭を下げた。
「澪、なんで私を叩くの、叩くのは、陽子でしょうが。」
澪と呼ばれた女生徒は、手に持っている扇子を自分の顎辺りに当てながら、ゆっくりとした口調で、
「だってぇ、明花葉さぁん、言ってる事とぉ、やってることがぁ、違うんですものぉ。お仕置きですわよ。巻き込まれたくて、ここまで来たんでしょぉ。ダメですよぉ。自分に素直にならなくてはぁ。だって、もう、高校2年生なんですからねぇ。」
先ほど視線が合った時の仕草や今の口調から、奏は幼い子供をあやす母親のような人だと感じた。
澪は、明花葉より、あたま半分くらい背が低く髪は肩にかかる程度、ただ、ふわっとして、カールがかかっていた。
「なんで、澪までいるの。そもそも私たちとクラスは違うでしょうが。」
不思議そうな顔で尋ねる陽子に対して、澪は、
「紫音ちゃんがいないからぁ、みおも、担任に探すように言われたのよぉ。何か変なのに巻き込まれてるんじゃないかって・・・。」
奏の傍にいる女生徒が、
「まぁ。確かに巻き込まれているはするけど。変な事じゃなくて、変なのには正解だけど。うちのレギオンのメンバーだから、仕方ないでしょ。澪。」
レギオン。数名から数十名のリリィたちで構成される戦闘集団。絶対にレギオンに加入しなければならないという決まりはないが、仲間と協力してヒュージを倒す集団。生存率を上げるためにもレギオンに加入するリリィは多い。
この月華学院でも、レギオンを自分たちで組織して教導官に許可を得る、教導官認可制を採用している。
教導官とは、リリィに特化した授業を専門に教える教師の事であり、引退したリリィが務める。
レギオン結成の方法は月華学院では、教導官認可制だが、他校(ガーデン)では、トップレギオン制があり、教導官がメンバーを選出する制度もある。
扇子は開かずに、澪は自分の首辺りに何度も当てながら、
「あっ、でも、そうねぇ。陽子ちゃんと一緒にいるのだから、大丈夫よねぇ。」
大きな声で笑うことはないが、満面の笑みで、言う澪に対して、
「いや、澪、そこおかしいでしょ。陽子だから危ないんでし」
バチン!!
「っいった~~~い!!」
澪の右横に移動していた明花葉が澪を見ながら言ったものだから、澪の扇子が明花葉のおでこをスナップを利かせた手で叩いていた。いわば、クリティカルヒットである。
「明花葉ちゃん、すこぉしだけ、黙っていようね。いい子だから。」
明花葉は、おでこを抑えたまま、しゃがみこんでいた。
澪は、陽子の方に改めて向き直ると、今までの雰囲気がガラッと変わり、目元も険しく、口調も鋭く変化した。
「陽子ちゃん、勝算は?」
「ある。」
「証拠は?」
「ある。」
「見せて。」
「やだ。」
その瞬間、澪は自分の扇子をおでこに当てて、上を見上げ、
「そこで、ボケるのかぁ。みお、一本とられたなぁ・・・。」
そして、再び鋭い眼光で陽子を睨みつけると
「みせなさい。」
鋭い口調で扇子を陽子の前に突き出した。
奏は、澪の豹変ぶりとその鋭い視線に恐怖を感じたが、その視線にさらされても、当たり前のように対応する陽子も凄いなと感じていた。
ふと、隣から小さな声で、
「三流の芸人みたいなコント。つっこむべきなの、それともこのままにしとくべきなの。」
と独り言のようにつぶやいている紫音がいた。
奏はその声に
『え?コント?これが?で、放置するの?』
驚きの表情で紫音を見つめるが、服の擦れるような音が聞こえたので、音の方を見た。すると渋々ながら、陽子が制服の中から大き目の茶色い封筒(A4サイズの紙が入るいわば、定形外の封筒)を取り出した所だった。
「陽子、どっからそんなもん取り出してんのよ。っていうか、どうやって、しまっ。」
その陽子の動作に驚いた表情で明花葉が質問するも、再び、澪の扇子が明花葉の後頭部にヒット、
う~~。と、後頭部を押えながら唸っている明花葉には特に気にせずに、陽子は、
「いや、制服の裏に、ちょっとした細工」
言葉を全て言い終わらないうちに、澪が陽子のセーラー服の裾をまくり上げながら、
「陽子ちゃん。それ、みおにも教えて。みおにも必要だとおもうの。」
「陽子、それ私にも作り方教えて」
気づけば、紫音も一緒に覗き込もうとしていた。
「ちょ、ちょっと、紫音に澪、ちょっと、上げすぎだって、ブ、ブラ見えちゃうから。後で教えるから、ちょっと、二人とも、待っててば。」
教えるからという言葉で、ようやく二人から解放された陽子だったが、
「紫音ちゃん、見た?」
「ええ、見た。澪より大きかったんじゃない?」
「紫音ちゃんとみお、同じくらいだったとおもってたけど。陽子ちゃんのは、その上をいってたわよ。」
「澪、それは間違いない。恐らく陽子は着やせするタイプなんだと思う。」
そして、澪と紫音は、ゆっくりと振り向きながら、明花葉を見て、
「明花葉ちゃん。がんばろうねぇ。」
「明花葉、胸だけで女の価値は決まらないから、大丈夫。」
澪は悲しそうな目で励まし、紫音は親指を立てて、大丈夫よ。というような目で明花葉を見つめていた。
明花葉は、両手をクロスさせて、胸を隠すようにして、
「あんたたち二人、そんな目で私をみるなぁ~。」
天井に向かって、一人叫ぶ明花葉だった。
そんな明花葉を誰も気にする様子はなく、
「明花葉ちゃんを弄るのはこのくらいにして。資料見るわよ。陽子ちゃん。」
気付けはいつの間にか、封筒を手にしている澪だった。そして資料の中身を取り出そうとしたとき、
「澪、紫音、陽子、ちょっと待った。」
どうにか精神的に立ち直りかけている明花葉がストップをかけた。そして、奏を指さしながら、
「見るのはいいけど、その子、巻き込んじゃっていいの?」
「「「あっ。」」」
澪、紫音、陽子の三人は、奏を見ながら同じように声を上げた。
紫音は奏に近づくと、
「ごめんね。変なコントにつき合わせちゃって。」
手を合わせて、申し訳なさそうな顔をしながら言い、
「えっと、出口だったよね。ここからだと・・・・。」
出口の方を指さしながら、陽子が説明をしようとしたとき、
「あなた、お名前、教えてくれる?」
と澪。
「東(あずま) 奏(かなで)です。」
澪に問いかけられて、素直に答えた奏だった。
「そう、奏ちゃんというのね、いい名前だわぁ。みおは、2年生で、大目黒(おおめぐろ)澪(みお)。レギオン、ロイヤルナイツで隊長してるのよ。みおのことは、みおって呼んでいいわよ。」
「えっと・・・・澪先輩?」
確認するような感じになったので、語尾が少し上がった奏だったが、澪は目を輝かせながら、
「奏ちゃん、お願い、もぅ一回、呼んで。ね。ね。お願い。」
「澪先輩。」
「うん!!いい!!あぁ、私、2年生になったのねぇ。先輩って響きが心地いいわぁ。」
体を震わせ、至福の喜びを表現している澪の後頭部を、平手で明花葉が叩く。
「いった~~い。明花葉ちゃん、どうして叩くの。みお、何かした?」
「今のその行動自体に問題があることを理解しなさい。澪。」
澪を叩いた手を、痛かったみたいな感じで、擦りながら、
「ごめんね、やかましくて。」
優しく微笑んでから、陽子を指さして、
「私は、そこのバカと同じクラスの下口(しもぐち)明花葉(あげは)。明るい花に葉っぱで、あげはっていうの。レギオンは、エンジェルスピア、よろしくね。」
「はい。明花葉先輩ですね。よろしくお願いします。」
奏は頭を下げた。
明花葉も先輩と呼ばれたことで、一瞬、悦に浸りそうになったが、そこは澪を恐れて我慢した。
バカと言われた陽子が、何か反論しそうになっていたが、紫音に
「ここは、我慢しなさい。まずは奏ちゃんを開放するのが先よ。」
紫音にささやかれたことで、明花葉を睨みつけただけだった。
紫音と陽子は、奏の背中を押しながら出口へ向かおうとしたが、奏から、
「あの、お二人の名前、教えてくれますか?」
奏が立ち止まって訪ねてきた。
「今は、奏ちゃん、校舎を出ることを考えましょうね。」
と紫音が優しく話しかけ、その横で陽子も頷いてその場を離れようとしたが、
「あらぁ。後輩が先輩の名前を尋ねているのにぃ。教えてあげない、って意地悪な先輩だこと。」
煽るように、澪が言い、奏もとなりで頷いていた。
額に手を当てて、困った顔をしながら、紫音は、
「那智(なち)紫音(しおん)よ。2年生。で、そっちは、田中(たなか)陽子(ようこ)。同じく2年生よ。」
隣で陽子も微笑みながら、もういいわね。という表情で、出口に向かおうとした時、澪が、
「はい、そこの三人、こっちに来る。来なければこの資料、勝手に見ちゃうわよ。それでもいいの?」
険しい表情で、紫音、陽子、奏を睨む澪。
特に、口調が変わった時の澪の怖さは、同じクラスの紫音は良くしっている。
レギオンの隊長として、訓練・戦闘時にしか出さない表情と口調。本当の素の澪はどちらなのだろうかと思ったこともある。
ここは奏を逃がすことを優先すべしと紫音は判断したが、
「私の許可なしに、勝手に見るな!。」
陽子が、澪に飛びかかって資料を奪おうとした。
奪われないように澪は封筒を高く上げたり、くるっと背を向けたいしてかわしていたが、二人揉み合ううちに、封筒の中から資料が飛び出して廊下に散乱してしまった。
澪もさすがに申し訳なく思ったのか。、
「陽子ちゃん。ごめん。」
謝りながら、散乱した資料を集めようとして手を止めた。
「なに、これ。陽子、あなた・・・。」
傍にいた明花葉も澪の持っているものを見ながら、
「これ、噂では聞いたことあったけど、まさかそこまで非人道的なことはしてないだろうって・・・。」
紫音と奏も澪の元に駆け寄り、澪の手のものを見た。
奏は、思わず口元を手で覆い、紫音も苦虫をつぶしたような顔でそれを見ていた。
「あんたたちには、出来るでけ見せたくなかったんだけどさ。」
陽子は、澪からそれを受け取ると、封筒の中に素早くしまった。
「陽子、覚悟、決めた?」
突然、背後から声をかけられて、全員が声の主の方に向き、澪、明花葉、紫音の順に、
「オッテンハイムちゃん。」
「モルデリンテ」
「イザヴェル」
全員が違う言葉をいうものだからが、奏は、首を傾げていた。
その様子を見た陽子が説明をしてくれた。
「彼女の名前は、オッテンハイム・イザヴェル・フォン・モルデリンテ。ドイツからの留学生よ。」
長すぎて覚えきれなかった奏だが、名前であることは理解した。そして、改めてその女生徒を見て驚いた。
背がかなり低い。高校生には見えない。だが、スカーフの色は紺碧なので、2年生に間違いはなかった。
目はオーシャンブルーのように透き通るような青。髪は綺麗な銀髪。幼い顔立ち。
ひとことで言えば、可愛らしい女の子に見えた。
その女生徒は、奏に軽く会釈したあと、
「陽子。連絡。ない。来た。」
片言の日本語で話す彼女。一瞬奏は日本語が通じるのだろうかと考えてしまったが、
「イザヴェル、ごめん。ちょっと手違いがあって、長引いた。でも、行動はするから。」
「うーーーー。イザヴェル。その呼ばれ方、嫌い。陽子。いつになったら考える?」
とりあえず会話は成立しているようなので、日本語は通じると理解した奏だった。
「いや、今、その話はいいから、準備は?」
「ん?出来てる。遠隔で操作可能。呼び方、早く考えて。もう一年になる。」
ふくれっ面で陽子に絡むイザヴェル。呆れた表情をしながら、紫音が、
「陽子、なんの約束したの?呼び方ってなに?。」
「いや、その、長いからさ、名前。だからもっと短くしたいなって思って提案したんだけど、ご納得いただけなくてさ。」
困った表情をしながら、紫音を見つめるが、冷めた目で紫音は陽子を見て、
「どうせ、変なの提案したんでしょう。具体的にはどんなのを。」
「オッテンハイム。イザヴェル。モルデリンテ。イーちゃん。モルちゃん。リンちゃん。ヴェルちゃん・・・あと、フォンちゃん。」
「ま、最初の三つと最後のフォンちゃんはどうかと思うけど、あなたにしては、真面目に考えたのね。センスないけど。」
呆れた表情で陽子を見ながら、イザヴェルを見る。そして、
「イザヴェルはどんな感じのがいいの?」
やさしい表情でイザヴェルに問いかけると、
イザヴェルは少し考えながら、
「わたしの存在全てを表現したもの。で、短く。」
困惑した表情でイザヴェルをみつめながら、澪が呟いた。
「難易度、高いわねぇ・・・・。」
奏は、もう一度彼女の名前を思い出しながら呟いた。
「オッテン・・イザ・・・モルデ・・・。オ・・・イ・・モ?」
「いやいや、それはいくらなんでも、奏ちゃん。いもはないでしょ。」
と明花葉が笑いながらイザヴェルを見た時、イザヴェルは目を潤ませながら奏を見つめると、
「あなた、私の名付け親。私のすべてが入ってる。紫音、陽子、レギオンでも、それで呼んで。」
そういうと、その場から離れていった。
「ドイツ人の感性ってどうなってんのかしら。」
「明花葉ちゃん。今、世界中のドイツ人を敵にまわしたわよ。」
澪は去っていくイザヴェルを見ながら、明花葉に忠告し、紫音はなんとも言えない表情で、
「あのこの感性の問題よね。」
その場にいた全員が、去っていく彼女の背中を見ながらうなずいていたが、突然、イザヴェルは振り向くと、
「陽子、やるなら時間ない。あと15分。授業。終わる。急げ。あなたの覚悟。見た。」
そう陽子に告げると角を曲がって姿を消した。
「いや、イザヴェル、覚悟って何?。私、覚悟決めなきゃいけないこと、あなたに頼んだ覚えないけど。」
と言いながら、後を追いかけようとしても、澪に腕を握られていて動けなかった。
「陽子ちゃん、やるならやりましょ。みおもあの方々には、御退場していただいた方がいいと思ってましたら、良い機会ですわ。」
やるき満々の表情で陽子を見つめている澪がいた。
明花葉も紫音も同様に陽子を見ながら頷いていた。
その時、突然澪が、
「あ、立ち眩みが・・・・・。」
そう言いながら、バランスを崩して、陽子の背中をあえて押した。
その拍子でバランスを崩した陽子が、文句を言おうと澪を見た時、鋭い眼光で、素早く一度だけ、首をあるものに向けて振った。
その首の先には、廊下には所々にある、赤く光るランプがついてて、通常時には絶対に押してはいけないボタンがある設備。
そして澪の眼光には、
『やれ!』
という意味も含まれていた。その意図を察した陽子は、
「あっ、澪、バカ、何すんの」
と言いながら、素早く奏の肩にかけていたCHARMが入っているケースのファスナーを開けて、CHARMの先端をケースから少し出すと、火災報知器のボタン部分を先端で突き破っていた。