その時、生徒全員の端末が一斉に鳴った。
生徒が持っている端末は、学院支給の端末で、これはリリィも一般科の生徒も所持を義務づけられている。
学校からの連絡や授業時間の変更等で連絡、生徒同士のコミュニティとしても利用される。そしてヒュージ出現の際は、出現した場所や数と近隣のシェルターの場所等が表示される仕様となっている。
一般科の生徒はそれを見ながら避難。リリィは、それを見て討伐や警護にあたる。
紫音は、奏が端末を持っていないことに気付くと奏の傍に近寄った。
陽子は心の中で、
『このタイミングで、ヒュージ出現?、空気読めないやつよね。』
と思いつつ、自分もスカートのポケットから端末を取り出した。
しばらく、画面が暗いままなので、他の生徒達も訝しげな表情で端末をみていたが、端末に映像と音声が再生され始めた。
「おい、あんたらさぁ・・・あいつ、一年の田中のファンなんだってぁ。」
「い・・・いえ、ち、違います。」
上からの映像ではあるが、女生徒が5人。場所は、どこかの女子トイレ。どうやら、天井からの隠し撮りのようである。
それでも、映像の解像度は高いため、女生徒のうち3人は、生徒会長と副会長の2名であることは明らかだった。
その3人で他の2人の生徒を囲んでいた。
生徒会長は副会長の二人に任せて、後ろの壁にもたれて、眺めている。
副会長のショートカットの方の生徒が、
「あんたたち二人があいつの事を話してるって聞いた奴がいるんだよ。」
「い・・・いえ、そ、それは、その。」
もう一人の肩までの長さの髪の副会長が、
「その、なんです?。あなたたちが、嬉しそうに話をしてたというのは事実だよね。」
二人の生徒を追い詰めていく。ようやく一人の生徒が、
「実は、先日ヒュージに襲われそうになった時に助けてくれたのが、あの方がいたレギオンの方々。」
「はぁ?お前、今なんて言った?。あの方?。」
ショートカットの副会長が、睨みつけるようにその女生徒の顔を覗き込む。
「あ、い、いえ、そ、その。」
「あいつは、一年だぞ。わかってんのか、お前の後輩だぞ。それをあの方って。お前バカか?」
陽子は、その映像を見ながら、
『イザヴェルの仕業よね。これ。こういうこと出来るのはあの子ぐらい。やってくれたわね。この映像あること知ってて、だからあの時。』
陽子の頭の中に、先ほど、イザヴェルと会った時の言葉が過ぎった。
『覚悟見た。』
陽子は頭の中で、彼女の言葉の意味を考えていた。
『おそらく、覚悟決めろとか、覚悟見せろって、言いたかったんだろうけど・・・。』
そして、端末に視線を移すと、映像の中の生徒会長がなにやら取り出して、トイレの床になにかを放り投げていた。
「ま、いいや、ファンじゃないっていうんなら、それ、踏めるでしょ。さっさと踏んでね。」
にこやかな笑顔で言う生徒会長に対して、女生徒達は、
「いや、顔写真を踏むって、それは人として・・・。」
肩までの長さの髪の毛の副会長が、
「大丈夫なんじゃない?だって、あの子は人じゃないでしょ。人じゃないものは踏んだって問題ないでしょう。」
優しい口調でそっと女生徒の肩を抱きながら、耳もとで囁く。
その映像を見ていた明花葉が、
「いや、陽子、いつから、なにかの宗教の教祖様になったの?」
「そうねぇ・・・澪、思いついたわ。陽子狂信教の教祖。」
「そんな、生半可なもんじゃないわよ。澪。悪魔以上の何か得体のしれない、恐怖心を煽る何かの教団の教祖ってとこよね。」
最後は紫音だった。
その紫音達の言葉に、生徒会長は、
「あんた、お仲間にもそういう風に思われてたんだ。所詮、あんたは、化け物なんだよ。」
勝ち誇った顔で言う生徒会長には、見向きもせず、陽子は映像を見続けていた。
「で、でも、ここトイレだし。上履きだって・・。」
「別にいいじゃん。なんなら、ピーとか、ピーを踏んだ上履きでそいつの顔踏んじゃってよ。ねぇ、ほら、早く。」
笑いながら、言う副会長に対して、ためらう女生徒だが、
「さっさとやれよ。会長もお待ちなんだからさ。いつまでも待たせんじゃねぇよ。」
そういうなり、無理やり女生徒の体を押して、写真の上に足を置かせた。そして、さらにその女生徒の足の上に自分の足を置き、力強く踏みつけた。
「い、痛い。やめて。」
という女生徒に対して、さらに、足を踏みつけ、その様子を楽しそうに見つめている生徒会長が映っていた。
そして、そこで映像は終わった。と同時に、陽子は、生徒会長へ向かって走った。
生徒会長も一瞬身構えたが、その横を陽子は通り過ぎ、生徒達の方へ向かっていた。
『お願い、あの先輩方、まだこの学校に残ってて・・・。辞めてないで。』
そう呟きながら、生徒達を見ながら走り、他の生徒達とは少し離れたところで二人が一緒にいるのを見つけると、自分のスカートが汚れるのも気にせず、二人の前で土下座して、
「ごめんなさい。申し訳ありませんでした。先輩方にあんな思いさせてしまって、本当にもうしわけありません。」
地面に頭をつけて謝る陽子に対して、
「ううん。貴方が、あの時、助けてくれなかったら、私たちはヒュージに殺されてた。あなたは命の恩人なの。」
「ごめんね。私たちが、あの人達に逆らえないばかりに、逆にごめなさい。辛い思いさせてしまって・・・・。」
そう言いながら、陽子の傍にしゃがみ込む。
「いえ、私たちは、リリィです。ヒュージと戦うのが私たちの役割、皆さんを守るのも私たちの役割ですから。」
陽子は、顔をあげ二人を見て、
「私は守りたい。いえ、私たちに守らせてください。まだまだ、未熟で頼りないかもしれないけど・・・。」
その陽子の言葉に、二人は顔を見合わせてから、陽子に、
「お願い出来る、私たち、いえ、ここにいるみんなを守ってくれる?」
陽子の手を取り、立ち上がらさると、他の生徒達に向かい、
「この学院、いえ、全てのリリィはきっと私達を、皆んなを守ってくれる。彼女達はそのために命を懸けてる。」
「確かにリリィは私たちとは違う、でもみんな背や体格、顔も思考も違う。誰一人だって同じ人はいない。それは個性であって、否定していいものじゃない。」
「彼女の手を取って分かったの。温かい。私たちと同じ血が通ってる同じ人間なんだって。化け物なんかじゃない。私たちは戦えない。だけど、同じなんだって・・・。もう、見下すのはやめようよ。みんな・・・。」
涙ながらに訴える二人の女生徒に、周りの雰囲気も変わってきていた。
「先輩、ありがとうございます。これで少しはこの学院のリリィも学院生活を楽しめそうです。」
陽子は、もう一度二人に頭を下げてから、ゆっくりと歩きながら、表情は険しく、
「さてと、生徒会長さんよ。あんたは、人としてやっちゃなんねぇことをやったことぐらいは理解してんだろうな。」
周りの雰囲気が変わったことで、生徒会長達も戸惑っていたところに、さらに陽子の気迫に委縮し、小さくなっていた。
場の雰囲気は完全に陽子達の流れになっていたところに、その空気を読めない者、教頭(二次元バーコード頭)が、
「田中、年上に対してその口の利き方、なっとらんなぁ・・・・。お前、退学だ。今、この場で退学」
陽子の怒りというか、リリィ科生徒全員の怒りが頂点に達した瞬間、
「そこの二次元バーコードは黙ってろ。」
校内のスピーカーから別の女性の声が校庭に響き、さらに、
「田中、そこを動くな。それ以上は手を出したら、私が許さん。」
毎度お読みいただきありがとうございます。 鵺夜深です。
入学式編第8話です。
予定より早くアップできて、ホッとしています。
継続してお読みいただいている方がいるので、そこは励みとなってます。
文章とか表現とか至らない部分が多いので申し訳なく思ってますが、
自分では限界です。本当、語彙力なくて・・・・・。
さて、入学式編はあと、2~3話で終わる予定です。
次の編に行く前に、簡単な人物紹介を入れる予定です。
頭の中では色々な話は作れてるのですが、いざ文章になると難しくて。
まだまだ、なが~いお話になると思ってます。
どうか、末永くお付き合い頂ければ、幸いです。
鵺夜深