2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(2)教育的指導

「な、なんだというのだね、君は⁉」

 

「俺は仁子日光! このクラスの副クラス長だ!」

 

「! 君が噂の……なるほど……」

 

「そちらも名乗ったらどうだ」

 

「そうだな……僕は出席番号3番、井伊谷朱雀(いいのやすざく)! この2年B組の『四天王』の一角だ!」

 

「ほう、四天王……」

 

 朱雀と名乗った男装の女子を見上げて、日光は笑みを浮かべる。朱雀が顔をしかめる。

 

「……動揺しないようだね」

 

「なにを動揺することがある」

 

「なかなか珍しい反応だね」

 

「いや、嘘だ。少しばかり動揺している……」

 

「うん?」

 

 朱雀が首を傾げる。日光が声を上げる。

 

「なんだ、その全身赤いブレザー姿にズボンは⁉」

 

「これか。赤色で統一するのは家の決まりでね」

 

「ど、どんな決まりだ!」

 

「しかし、色以外はきちんと学園指定の制服と鞄だよ?」

 

「色が最大の問題なのだろうが!」

 

「問題あるかい? 諸君?」

 

「問題なーし!」

 

「朱雀さんは今日も麗しくて凛々しい!」

 

 他のクラスメイトから賛同の声が上がる。顔を見てみると日光が今まで会ったことのない生徒も混ざっている。日光が呟く。

 

「なるほど……影響力のある存在というわけか……」

 

「なにか?」

 

「いや、なんでもない」

 

「仁子くんとやら……」

 

「日光で構わん」

 

「日光くんとやら……僕は自分を戒め、他人にも厳しく接するのが信条なんだ」

 

「……そもそも戒められていないような気がするのだが?」

 

 朱雀は呆れ気味の日光の顔をビシッと指差す。

 

「よって、君のその学ラン姿を看過してはおけない!」

 

「……どうするというのだ?」

 

「昼休みに校庭に出たまえ、教育的指導を行おうではないか!」

 

「教育的指導?」

 

「ふふっ、楽しみにしておくがいい!」

 

「久々ね、井伊谷さんの指導!」

 

「こいつはのんきに昼飯食っている場合じゃねえぜ!」

 

 井伊谷とその取り巻きはそれぞれ自らの席につく。日光は呆然とする。

 

「な、なんなんだ、一体……」

 

「撒き餌の効果が早くも出たわね」

 

 照美が苦笑気味に呟く。

 

「む……確かに四天王と言ったな。これほど早く接触出来るとは予想外だった……」

 

「どうするの?」

 

「そもそもどういう奴なんだ?」

 

「ご、ご説明いたしましょう!」

 

 聡乃が声を上げる。日光が驚く。

 

「うおっ⁉ 聡乃、いたのか……」

 

「は、はい、いました……」

 

「聡乃さん、説明をお願い」

 

「は、はい……このクラスは四天王それぞれを中心に四つの大きな派閥が存在します。その内の一つ、『強硬派』をまとめているのが、あの井伊谷さんです」

 

「強硬か……」

 

「規律に厳しいところがあるのよ……」

 

 照美が肩をすくめる。日光が尋ねる。

 

「それは、クラス長としては望ましいことではないのか?」

 

「少し厳し過ぎるという声が上がっていてね……彼女のやり方についていけないという生徒も結構いるわ……」

 

「ふむ……」

 

 日光が顎に手を当てる。聡乃が口を開く。

 

「し、しかし、このタイミングで動き出したということは……!」

 

「少し声のボリュームを落とせ、聡乃。ひそひそ声が丸聞こえだぞ」

 

「あ、こ、これは失礼! 陰キャ故に声のボリューム調節が下手くそで……」

 

 聡乃は次第に小声になる。日光が頷く。

 

「……うん、それくらいでいい」

 

「そ、それではあらためて……井伊谷さんがこのタイミングで動き出してきたということは……つまり! 狙いは貴方です、日光さん!」

 

「俺か」

 

「え、ええ! このクラスに新たに派閥が出来上がってしまっては厄介だと考え、潰してしまうか、取り込んでしまおうと考えたのでしょう」

 

「それが教育的指導か……」

 

「感化するどころか、看過出来ない存在になれたわね」

 

 照美が笑う。日光が後頭部を掻く。

 

「人気者たちの辛いところだな」

 

「うん? 人気者たち?」

 

「まあ、昼休みを待とうじゃないか」

 

 首を傾げる照美を自らの席に座るよう促し、日光は朝のホームルームと授業に臨む。そして昼休み、校庭で日光は朱雀と向かい合う。

 

「逃げずによく来たじゃないか!」

 

「別に逃げる理由などないからな」

 

「教育的指導を受ける覚悟があるようだね」

 

「その教育的指導がよく分からんのだが……」

 

 日光は困ったように首を捻る。朱雀が問う。

 

「一人で良いのかい?」

 

「いや、三人だ。照美と聡乃が助けてくれる」

 

「ええっ⁉」

 

「え、ええ……!」

 

 日光の両隣に立つ照美たちが驚きの視線を向ける。日光がキョトンとする。

 

「なにをそんなに驚くことがある……」

 

「いや、驚くでしょう⁉」

 

「ま、全くの初耳です……」

 

「友達なわけだから協力してもらう」

 

「もっと別のことだったら喜んで協力するけど!」

 

「なんだ、そんなマズいものなのか?」

 

 日光が首を傾げる。聡乃が言葉を濁す。

 

「マ、マズいというかなんというか……」

 

「ふむ、クラス長の照美に……本荘さんを引き込んだか……これはやはり捨て置けないね」

 

「ならばどうする?」

 

 日光は朱雀に問う。朱雀は笑う。

 

「何度も言うが教育的指導だよ」

 

「生徒同士でなにが教育的指導なのかが分からんのだが……」

 

「これ以上の問答は無用……!」

 

「⁉」

 

 朱雀が手をかざすと日光が膝をつき、照美がうつ伏せに倒れ、聡乃が仰向けに転がる。

 

「ふむ、出来れば女子には手荒な真似はしたくなかったのだけど……」

 

「な、なにを……⁉」

 

 不敵な笑みを浮かべる朱雀を、日光は驚いた顔で見つめる。

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