2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(4)ちょっと斜に構える

「……続いては、2年B組による演目です」

 

「へっ、B組かよ」

 

「見なくても良くない~?」

 

 席に座る新入生からは期待されていない声が聞かれる。ステージ袖でそれを耳にした照美は悔しそうに唇を噛む。

 

「くっ……」

 

「……照美ちゃん」

 

 照美の肩に、玄武がそっと手を置く。

 

「はっ……」

 

「熱くなったら負けだよ。心はホットに、頭はクールにね」

 

「え、ええ……」

 

「皆、聞いてくれ。短い間だが、皆一生懸命に練習した。大丈夫、その成果はきっと出る!」

 

「お、おおお!」

 

 クラスメイトたちが手を突き上げる。日光が戸惑う。

 

「クラスメイトたちのテンションが上がっていくのを感じる……これはどういうことだ?」

 

「笠井くんの微能力、『パリピ』によるものさ」

 

 日光の問いに朱雀が答える。

 

「パリピ……!」

 

「ああ、彼のテリトリー内にいる者たちのテンションをアゲアゲ状態にすることが出来る」

 

「それが奴の能力か……」

 

「……よし、そろそろ始まるぞ、皆位置について……」

 

 暗がりのステージにライトが灯ると、円の形に並んだ2年B組の生徒たちの姿がステージ上に現れる。カッコよくオシャレな曲調のEDMが流れる。

 

(~~~♪)

 

「ワン、ツー……ワン、ツー、スリー、フォー! せーの!」

 

「スクープ・ザ・シュリンプ! スクープ・ザ・シュリンプ!」

 

「!」

 

 ステージ上で生徒たちがぐるぐると回りながら、謎の掛け声に合わせて、手足をバタつかせる。どこからどうみても異様な光景に、ステージ下から眺めていた新入生たちはあっけに取られて固まる。玄武がクラスメイトの皆にだけ聞こえる声で告げる。

 

「まだだ! こっからバイブス上げて行くよ!」

 

「スクープ・ザ・シュリンプ!」

 

「もっとだ!」

 

「スクープ・ザ・シュリンプ‼」

 

「そう、その調子だ!」

 

 玄武たちの奇妙な踊りが始まりしばらく経過した。

 

「な、なあ……?」

 

「あ、ああ、意外と良いんじゃね?」

 

「なんて言うの? ダサカッコいいみたいな……」

 

「分かる~!  そんな感じだよね~」

 

 新入生たちの反応が好意的なものに変わってきたことを敏感に感じ取った玄武が円からはみ出して、ステージの前方に飛び出す。

 

「うおお!」

 

「あの金髪の動き、半端ねえ!」

 

(ふっ、ギャラリーの注目が俺に集まっているな……ん⁉)

 

「きゃああ!」

 

「あの赤髪の人、凄いスタイル良い! しかも腰の動きがセクシー!」

 

 いつの間にか玄武の横に朱雀が並びかけていた。玄武は内心苦笑する。

 

「アドリブとは! やるね、井伊谷ちゃん!」

 

「君一人だけ目立とうだなんて、甘いのだよ!」

 

「ならばついてこれるかい⁉」

 

「上等!」

 

「「スクープ・ザ・シュリンプ‼ スクープ・ザ・シュリンプ‼」」

 

「うおおおお!」

 

「きゃあああ!」

 

 新入生たちから野太い歓声と黄色い歓声が入り混じる。玄武は手ごたえを得る。

 

(よし! ここで一気に畳みかける……⁉)

 

「⁉」

 

 次の瞬間、ステージ上の照明がわずかな明かりを残して暗くなり、爆音で流れていたEDMも止まってしまった。新入生たちがザワつく。当然、ステージ上の生徒たちも困惑する。

 

「どういうこと⁉ 機材トラブル⁉」

 

「いえ、恐らく実行委員会の嫌がらせよ……」

 

「ええっ⁉」

 

 照美の呟きにクラスメイトたちが驚く。照美は淡々と続ける。

 

「……大方落ちこぼれのB組が、この日一番の盛り上がりを見せてしまう恐れがあるのを危惧したのでしょう」

 

「そ、そんな……汚いことしやがって!」

 

 クラスメイトたちが憤慨する脇をすり抜け、日光が玄武に問う。

 

「……笠井玄武、お前のパリピは効果が失われたのか?」

 

「え? あ、ああ、俺の声や流す音楽が届く範囲ならば効果は継続されるが、このようにマイクや音楽をストップされてしまうと……正直お手上げだね」

 

「なるほど、微妙な能力だな」

 

「なんだよ、今、その確認必要かい?」

 

 日光の言葉に玄武が珍しくムッとする。日光が眼帯をめくる。

 

「俺の左眼を見ろ」

 

「え⁉」

 

「何色だ?」

 

「えっと……黄色いけど……」

 

「そうか!」

 

 日光が玄武を押し退け、ステージ上の最前に立つ。玄武が首を傾げる。

 

「ど、どうするつもりだ?」

 

「……ふう」

 

「体を少し斜に構えた?」

 

「ラマセ・レ・クルベット! ラマセ・レ・クルベット‼」

 

「⁉ こ、これは……」

 

「そういうことね」

 

「照美ちゃん、分かるのかい⁉」

 

「日光は中二病の微能力者、今回はサブカル系の中二病ってところね」

 

「サ、サブカル系⁉」

 

「やたら斜に構えたり、これ見よがしにフランス語使ってみたり、ああいうところよ」

 

「そ、そういうことか……」

 

「笠井くん、これはチャンスかもしれないよ?」

 

「どういうことだい、井伊谷ちゃん?」

 

「日光くんのエキセントリックな行動を見て、新入生たちのザワつきが収まった。今なら声が通るんじゃないのかい?」

 

「! そ、そうか、よし、皆、彼に続くんだ! ラマセ・レ・クルベット!」

 

「ラ、ラマセ・レ・クルベット‼ ラマセ・レ・クルベット‼」

 

 日光のソロから勢いを取り戻したB組のパフォーマンスは新入生を大いに魅了した。

 

「はあ……はあ……」

 

「君がいなかったらヤバかったよ」

 

 ステージ袖で玄武が日光に声をかける。

 

「うん?」

 

「仁子日光……君なら本当にこのクラスを変えてしまうかもしれないね。笠井玄武、君の活動に協力させてもらおうじゃないか」

 

「ふむ、それは心強い……」

 

 日光と玄武が固く握手を交わす。

 

「まあ、この踊りは出来れば今回限りにして欲しいけどね……」

 

 二人の様子を見ていた照美が小声で呟く。

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