2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(1)B組、すなわち……

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「おい待て! おさげ女!」

 

 教室からさっさと出ていった少女を日光が呼び止める。無視しようかと思った少女は足を止めて、ため息を一つついて日光の方に振り返る。

 

「東……」

 

「え?」

 

「私は2年B組、出席番号1番、東照美(あずまてるみ)。おさげ女なんて名前じゃないわ」

 

 照美のはっきりとした物言いに日光がたじろぐ。

 

「ふ、ふむ……」

 

「気が進まないけど、こういうことも内申点に響くならキチンとこなさないとね……」

 

「ん?」

 

「えっと……仁子日光君だっけ?」

 

「闇の支配者と呼んでも構わないぞ」

 

 日光は片手を額のあたりに添える。

 

「闇の支配者気取りが随分とさんさんとしたお名前ね……」

 

「む……」

 

「この学園には色々と不慣れなんでしょう? 私で良かったら案内してあげるわ」

 

「そ、それは大いに助力になるな……」

 

 照美の言葉に日光は頷く。その態度を見て、こちらがペースを握れば、案外素直なのかもしれないなと照美は思った。照美は教室を指し示す。

 

「今出てきたところが私たちの教室、移動教室以外はあそこで授業を受けるわ。まあ、その辺はどこの学校でも同じだと思うけれど……」

 

「うむ……?」

 

「なに? なにか質問があるのかしら?」

 

 首を傾げる日光に照美が尋ねる。日光が再び教室に入り室内を見回す。

 

「うむ……」

 

「どうかしたの? 教室なんてどこの学校も変わりないでしょう?」

 

「俺は……俺も含めて、このクラスは30人のクラスだと聞いていたのだが……」

 

「あ、ああ……」

 

「さっきのはどういうことだ?」

 

 日光が両手を広げる。先ほどのホームルームは三分の一ほどしか登校していないように見受けられたからだ。照美は頭を軽く抑えた後、本題に入る。

 

「えっと……クラス長としてこういうことを言うのは憚られるのだけど……皆サボりよ」

 

「サボり?」

 

「ええ、流行り病とかそういう類での集団欠席ではないわ」

 

「なんでまたそんなことに……」

 

「やる気……モチベーションが無いのよ」

 

「モチベーション?」

 

「仁子君」

 

「日光で構わん」

 

「ああ……日光君、このB組だけ建物が違うということにはさすがに気づいたわよね?」

 

「それは当然な。コンクリートの建物からいきなり、古めかしい木造建築校舎へ連れてこられた。今時、なかなか珍しいのではないか?」

 

「……これが私たちB組の置かれている現状よ」

 

「話が見えるようで見えないな」

 

 日光の言葉に照美は再びため息をつく。

 

「……転校の際に、何も説明はされなかったの?」

 

「特にないな。あったかもしれんが聞く必要がないと思ったから聞いていない」

 

「……適性検査は受けた?」

 

「ああ、それは受けさせられた。妙なことだ。単純な編入試験だけかと思いきや、体力テストを行なったり、俺の体に怪しげな機器を多数付けて……あれは検査だったのか?」

 

「そうよ」

 

「何の為に?」

 

「振るい分けを行うためよ」

 

「振るい分け……?」

 

 日光が首を傾げる。照美が説明を続ける。

 

「そう……この『能力研究学園』、通称、『能研学園』は全国から様々な能力を持った少年少女をこの栃木県に集めて、学園生活を送らせるかたわら、生徒たちについての色々な研究を推進しているのよ」

 

「色々な研究だと?」

 

「ええ」

 

 照美が再び廊下に出る。日光がそれに続き、頷く。

 

「なるほど……そういった研究の成果があの立派なコンクリート造の校舎とこの木造建築の校舎ということか」

 

「へえ、なかなか鋭いわね」

 

 照美が意外そうな視線を日光に向ける。

 

「研究の成果、検査の結果が露骨に生徒たちの扱いを分けているわけだな」

 

「そういうこと」

 

「教師も代理だとか言っていたな、そういえば……」

 

「ええ、私たちB組には、職員室の先生方も大して期待していないのよ……」

 

 照美が寂しそうに窓の外を眺める。日光が首を傾げる。

 

「ふむ……様々な能力……」

 

「なに? どうかしたの?」

 

「ならば俺だけでなくお前も何らかの能力を持っているということか?」

 

「この学園の生徒なら大抵はね、何らかの能力持ちのはずよ」

 

「ふははは!」

 

「⁉」

 

 急に不気味な高笑いを上げた日光に照美が露骨に怯む。日光は顔を抑える。

 

「つまりはあれだ! そういうことだろう⁉」

 

「何がよ⁉」

 

「俺の能力も『超能力』だと認められたということだろう⁉」

 

「! い、いや~えっと……それは……どうかな~?」

 

 日光の問いに照美は苦笑を浮かべる。対照的に日光は不敵な笑みを浮かべる。

 

「やはり、伝説の始まりとなるのはこの地であったか……」

 

「あ⁉」

 

「どうした⁉」

 

「いや、下を見て!」

 

「む⁉」

 

 照美が窓の下を指し示すと、ブレザー姿の小柄な生徒がそれよりはやや大柄な生徒たちに絡まれている様子が見える。照美が叫ぶ。

 

「恐らく、1年B組の子が他のクラスの子に絡まれているのよ! なんとかしないと!」

 

「B組とは、この木造校舎の……」

 

「ええ、後輩よ!」

 

「ならば助けに行かねばなるまい!」

 

「ええっ⁉ ここ3階だけど⁉ 窓から飛んだ⁉」

 

「この能力が超能力だというのなら、俺はまさに翼を得た堕天使! 空中から颯爽と駆け付け、小さな悪をくちぐぬうっ⁉」

 

 日光が着地を盛大にミスり、地面を転がる。下にいた生徒たちが戸惑う。

 

「な、なんだ⁉」

 

「あ~やっぱりそうなるわよね……」

 

 階段から降りてきた照美が頭を抱える。日光が痛みをこらえながら、照美に向かって叫ぶ。

 

「お、おい! これはどういうことだ! 俺は超能力の持ち主ではないのか⁉」

 

「詳しくはまだ分からないけど、能力の持ち主ではあるのでしょうね……ただし、B組に振り分けられたということは『微能力(びのうりょく)』……『微妙な能力』の持ち主だということよ」

 

「び、微能力⁉」

 

 日光が照美の説明に愕然とする。

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