もしも五十嵐栗夢がガチの『マリーシア』使いだったら   作:MAX

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蜂楽 廻とかいう変人と夜の一対一したら寝れなくなったんだが?

意識が醒めて最初に目にしたのは無機質なコンクリートの天井。

シーツの手触りと、背中越しに感じるマットレスの感触で自分が何処のベットの上で寝かされていた事を把握する。

あーそっか俺、吉良に殴られて意識を飛ばしたんだった。流石に実力行使に出てくるのが予想外だったぜ……。

とりあえず、こういう時のお約束をやっておくとしますかねぇ。

 

「知らない天井だ……」

「あ、起きた」

「んあ?」

 

すぐ横で声がした。

声の方へと顔を向ければ、そこには丸椅子の上で胡座をかいて、何故かボールを抱えている黒髪お河童金メッシュの少年とバッチリ目が合った。

見覚えがあるな。

ああコイツ、入寮テストの時に床に寝転がってた奴だ。

 

「おはようブレイブマンっ♪」

「おう、おはよう」

 

俺は起き上がり、ベットの上で胡座をかく。

 

「えっと……」

蜂楽 廻(ばちら めぐる)ね」

 

自身を指差しながら名乗る、蜂楽。

 

「蜂楽ね、俺は──」

「──知ってるよ。ブレイブマンでしょ?」

「それはノリで勝手につけられたあだ名な!! 本名は、五十嵐 栗夢!」

「ふーん、そんな名前だったんだ。ところでブレイブマン」

「結局、ブレイブマン呼びかよ……で、なんぞ?」

「今から俺とボール蹴ない? てかさ、蹴ろ!」

 

そう言って、俺に見せつけるようにボールを持ち上げ、楽しそうに口元を吊り上げ笑う蜂楽。

 

なんなん? このマイペース変人……。

 

これが俺と、これから先、青い監獄(ブルーロックで)競っていくことになる蜂楽 廻との最初のやり取りだった。

 

 

□□□

 

蜂楽に案内され、青い監獄(ブルーロック)チームZ トレーニングフィールドにやってきた。

 

「すげぇ。これ、各チーム事にフィールドが割り当てられてるってマジ?」

「らしいよ。他にもトレーニングルームとかミーティングルームとか、サッカーに必要なものは全部揃るんだって」

「青い監獄やべぇな……」

「それより早くストレッチして、ボール蹴ろうよブレイブマン」

 

蜂楽は既に準備運動を始めている。俺もちゃっちゃと済ますか。

 

 

準備運動をしながら、ここに来るまでの道中、話題提供と情報収集を兼ねて、蜂楽に聞いた俺が意識を失った後の話を思い返す。

 

どうやら俺は結構長い時間気を失っていたらしい。今はもう夜になっちまってるようだ。青い監獄での説明はもう終わっちまったらしい。

 

蜂楽から話を聞いて、一番驚いたのは、日本の宝、吉良涼介の話だ。

やつは、俺を殴って意識を刈り取った直後、ハッとした顔になると「……僕はどうしてこんなことを……ごめん五十嵐くん!!」とまるで人が変わったかのように、倒れた俺の事を心配して、担架で医務室へ運ぶのを手伝ったというものだ。

 

スポーツドクターによる応急処置を終え、俺がベットに寝かされたあとも、吉良くんは「残って、ちゃんと彼に謝罪したい」と頼んでいたんだとか。

 

まぁ、絵心が「帰れ(ファック・オフ)」と一蹴し、帰らせたみたいだけど。

帰らざるを得なかった吉良は、何故か医務室に一緒についてきていた蜂楽に言伝を託した。

 

──五十嵐くん。本当にごめん。あの時、僕はどうかしていた。自分でも何故あんなことをしてしまったのか分からない。ただあの時は何故か無性に君の顔面を殴らなければならないという黒い衝動に駆られて……。多分あれはそう、きっと名探偵コ〇ンであるような突如として衝動に駆られ殺ってしまった犯人みたいな世界の強制力に違いない! あの時の僕は僕であって僕じゃなかった。……でも、これは言い訳だな。君に暴力を振るってしまったことに変わりは無い。本当にすまなかった。後日、必ず君に会いに行き直接謝罪することを誓う──って言ってたよあのクリーム髪の人。

 

絶対に許さない! とか言ってたじゃん吉良くん……。

普通に考えれば、説得力なんて無い馬鹿げた弁明だ。でも俺には何故か凄く腑に落ちたし、それこそが事の真相なような気がしてならなかった。

 

「よし、準備運動おーわりっと。よっ」

 

準備運動を終えた蜂楽が足元に転がっていたサッカーボールを右の素足で救いあげ、両足でリフティングを始める。

インフロントキック、アウトサイドキック、インサイドキック、ヒール、頭、肩、胸、太もも……自由自在かよ。

ある程度の年月サッカーをやっていれば、相手が上手いか否か、その人物がボールを触った瞬間にわかる。

蜂楽は間違いなく今まで俺が生で見てきた選手の中で一番ボールの扱いが上手い。

 

「あのさー、聞きたいんだけどよ」

「ん? なに?」

「なんで俺とボール蹴ろうと思ったん?」

「そんなの決まってんじゃん……」

 

蜂楽は地面にボールを落とし、ボールの上に右足を置くと、俺の方を見据える。その目は完全に据わっていた。

 

「俺の中の『怪物』が言ったんだ。ブレイブマンの中にいる『怪物』とサッカーしたいって」

「『怪物』?」

 

なんかの比喩か?

 

「入寮テストの時、目が覚めてすぐ、俺、見たんだよね。ブレイブマンが誰よりも最初にボールに反応して、あの中でいっちばんっ強かったヤツに、ボールをぶち当てる瞬間をっ! ちょー痺れた! ああ、『怪物』はここに居たんだって!!」

 

うん、やっぱり『怪物』がなんなのかよくわかんねぇわ。とりあえず俺とサッカーやりた言ってことは理解したけどよ。

ここは適当の話を合わせるとするべ。

 

「それで俺が目覚ますの待ってたってことか」

「そうそう。……準備運動はもういい?」

「ああ、ばっちしだ」

「よし、じゃあ行くよブレイブマンっ!!」

 

蜂楽はボールを蹴りだし、右足でボールをドリブルしながら、俺の方へと向かってくる。

一対一ってことかい!

細かく素早いボールタッチ。明らかにボール運びがドリブラーのそれだ。

迂闊に間合いに飛び込めんで足を出せば、簡単にかわされ、抜かれる! そんな直観が働く。

定石は、リトリート*1しながら距離を保ちつつ、裏をぶち抜かれない守備。

……けど、そんなんで止められる程度の奴が青い監獄(ここ)に呼ばれるわけねぇよなぁ!!

ここは前に出て、勝負一択だろっ!!!

 

俺は前へ出て、蜂楽からボールを積極的に奪いに行く。

 

「っ!!」

「やっぱ、出てくるよねっ!」

 

蜂楽は楽しそうに口角をあげる。

右の足裏で一度ボールを止めると、アウトサイドでボールにタッチ。

左……いや、左へ行くと見せかけて、右。

エラシコ。アウトサイドで外へ持っていくと見せかけ、素早くインサイドで逆方向へ持っていく為のフェイント。

だが読んでいるぞっ!! 俺は、ドリブルする蜂楽の足元のボールへと右足を伸ばし……

 

「よっ!!」

 

次は、右軸のルーレットで反転!? やべっ、背中を取られたッ!? でもまだだっ!!

俺は重心を低くし、左手を地面につく、そして、左脚を後方へ真っ直ぐ伸ばすことで、背後のボールを狙うが……

 

「もういっちょ!」

 

そこから更に逆っ!? 俺の体勢は完全に崩され、足を出せる訳もなく……。

蜂楽は華麗なマルセーユルーレットを決め、完全に俺を抜き去った。

 

「くっそーうめぇ……」

 

蜂楽はそのままドリブルで10mくらい直進すると、足裏でボールを停止し、俺の方へ振り返り、楽しそうに笑う。

 

「イエーイ! まずは俺の1勝ね」

「ちくしょう、絶対とってやるっ! もう1戦だっ!!」

 

それからだいたい30戦くらいやったが、蜂楽からは最後のたった1回しかボールを奪えなかった。

これで292位とか青い監獄(ブルーロック)魔窟すぎんだろ……。

こんなんじゃアンリちゃんとの約束を果たすなんて……。

いや、弱気になっちゃダメだ俺! 諦めない心とマリーシアだけが俺の武器!

世界一のストライカーになるためにも、もっと精進せねばっ!!

 

とりあえず明日に備えて今日はもう寝よう。

……。

………。

…………寝れねぇえええ!!

気絶時間による睡眠と、蜂楽との対人戦によって分泌されたアドレナリンで、目がバッキバッキに冴え渡っていた。

 

翌日、コンディションが最悪の状態で受けた身体能力テストで、チームZの中で俺が全ての科目で最低値を叩き出したのは、まぁ当然の結果と言えるだろう。

 

 

 

【蜂楽 廻】〜回想。

 

夢を見ていた。

子供の頃の俺が、世界最高の選手たちとサッカーをしている。

ノエル・ノア。 ロナルド。メッチ。ゼーコ。

ずっと一緒にプレイしたいと思っていた怪物たち。

怪物と一緒にサッカーできるなんてめちゃくちゃテンションが上がった!

 

「へい、ゼーコ! パス!」

 

パスを要求する。

でも、ゼーコは俺の方を一瞥すると、他の怪物たちと共にドリブルしながら何処かへと行ってしまう。

 

「おい待てよ! ちゃんと出せ! 俺を見ろゼーコ!」

 

ボールが硬い地面を跳ねる音で、俺は目覚めた。

寝起きのぼーとした頭で考える、ああそう言えば、待ち時間が暇だったから仮眠とってたんだった。

大型のモニターに絵心が映っている。

やっと青い監獄(ブルーロック)で何をするのか教えてもらえるのかな?

『ボールに当たったやつが鬼となりタイムアップの瞬間に鬼だったやつが帰る野郎(ファック・オフ・やろう)です。あと、ハンド禁止ねー』

 

簡潔なルール説明。

なーんだ。サッカーじゃないんだ。試合じゃないならあまり気分乗らないなぁ。

青い監獄(ここ)に来ればもしかしたら怪物とあえるかもしれない。そう思って来たんだけどね。

怪物がいるかどうか知るなら、試合するのが手っ取り早いのに。

もうちょっと仮眠とろうかな……。

 

そう思って目を半分閉じかけた時、視界の隅で一人だけ気配を消すようにして動いている影を捉えた。

この場にいる誰もがサッカーとはあまり関係無さそうな『鬼ごっこ』というゲームに困惑して、動けないでいる中、たった一人、ソイツは他の参加者の死角を縫うようにボールのある方へと向かっていく。

 

鬼ごっこということはこの場にいる誰かが鬼になるということ。

それはきっと絵心が指名する。他の参加者たちは誰が鬼かを確認してから行動に移すに違いない。

そんな中、ひとりボールを目指して動いているってことは……開幕同時に、誰が鬼とか関係なしに他の参加者にボールを当てようとしてるってこと?

 

ドクンッと自分の胸の鼓動が高鳴る。ぼんやりしていた頭はすっかり目覚めて、半目気味だった目もちゃんと開いていた。

いったいどんなやつがそんなイカれた事をしようとしているのか興味が湧いた。

寝っ転がったまま、顔を少し上げて、足元から、視線を上げていって、ソイツの顔を拝んだ。

そこに居たのは、坊主頭の一見平凡そうな容姿の男だった。

公開告白した人だ。名前は確か、ブレイブマン!

笑ってる?

嘲笑? 違う。愉快? 違う。悪役が悪巧みを企んでる時に浮かべるような薄ら笑い。

 

『これは俺がストライカーの【本質】を見極めるために俺が用意した「エゴイズムテスト」。覚悟して戦え。これはただの鬼ごっこではない』

 

ピッという電子音が鳴り、ほぼ全員の視線がボールからモニターへと移る。

ブレイブマンはその瞬間、計ったかのようなタイミングで、ボールの元へ駆け出し、右脚を振り抜いた。

ブレイブマンに、世界最高の選手たち(怪物)の姿が重なる。

この場に居る参加者で、一番順位が高いクリーム色の髪の人の【右手】にボールが直撃した。

ボールが地面を何度か跳ね、コロコロと転がった。

「怪物……」

 

──いる。あいつの中にも、怪物が……。

 

俺の中の怪物が、そう囁いた。

*1
後退





イガグリが潔くんの立場に成り代わる? ……ないわぁ。
てことで、早いとこ潔くんにはチームプレイ洗脳を受ける前のエゴイストな自分を取り戻してもらいましょうよ!
嘘次回予告
次回、馬狼死す! レスバ最強 潔 世一爆誕!? イガグリのマリーシア炸裂!!
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