もしも五十嵐栗夢がガチの『マリーシア』使いだったら   作:MAX

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よぉ、久しぶりぃ!

あんまりにも久しぶりだから、キャラブレしてるかもだけど、ご容赦くだせぇぃ!


目覚める怪物

青い監獄に入寮して4日目、体力テストの集計結果が出た。

ランキングが変動するとかでモニタールームに集合をかけられる。

 

俺は、300位から275位に上昇。

しかし、相変わらずチームZで最下位(それどころか、全5号棟あるらしく脱落者25人ということで全体でも最下位だった)。

 

入寮テストでは存在感を示したんだけどな。体力テストで全項目スコア最下位だったのがよくなかったか……ちくしょう。

 

最初は俺の実力を警戒していたチームZのメンバーたち(蜂楽を除く)も、体力テストが進むごとに「あれ? こいつ思ったより大したことなくね?」みたいな雰囲気になり、金髪ギザ歯野郎、雷市 陣吾に至っては露骨に煽ってくる始末。

 

ランニングテストでは、わざわざ俺と同じタイミングを選んで受けて、スコアに大差をつけ圧勝し、勝ち誇った顔で

 

「そんなんでよく世界一のストライカーになるなんて啖呵を切れたなぁああwww 入寮テストでちょ〜っと上手くやったからって調子のなんなよ!」

 

とか馬鹿にしてきやがって……あのスタミナお化けめっ!

入寮テストの時みたくサバイバル方式の勝負があった時は、煽ったことを絶対後悔させたやらァ!

 

 

─────

 

そう思っていたんだが……

 

『1次選考は同じ棟に居る、55名、全5チームによる総当たりサバイバルマッチだ。上位2チームのみが2次選考へと勝ち上がり、残りは青い監獄から強制退場。そして、退場者はこの先、日本代表としてプレーする権利を失う』

 

サバイバルはサバイバルでもチーム戦だった。

巨大モニターに姿を映すおかっぱ頭の眼鏡の男、絵心は説明を続ける。

 

『ただし、敗れた3チームからもチーム内得点王のみ勝ち上がることができる』

 

『チーム内で最多得点数が並んだ場合は、フェアプレーポイントを採用し、ペナルティポイントの少ないものだけが勝ち上がりとなる』

 

『己のゴールか、チームの勝利か、そんなストライカーとしての宿命がこの1次選考では試される』

 

全員がFWのチームなんて、某動画サイトとかであるようなサッカーゲームのネタ企画でしか見た事ない。

 

そう思ったのは俺だけじゃないらしく、チームZの他メンバー(蜂楽以外)も困惑していた。

 

『いいですかァ? サッカーは元々点を決めるスポーツです。お前らの中に馬鹿みたいに刷り込まれているポジションや戦術なんてのは、サッカーの歴史の中で進化してきたただの役割であって、サッカーとは元来全員がストライカーであることから始まった』

 

俺たちの様子をモニター越しで見ていた絵心が愚か者を見るような呆れたと嘲りの感情が滲み出た表情で言葉を紡ぐ。

 

『その原点からサッカーをやれ。お前らの頭の中で0から創り直すんだよ』

 

0からサッカーを創る?

 

『今までの常識なんて信じるな、捨てろ。新しい概念を脳みそにぶち込め。今、日本が世界一になるために最も必要なのは、11人のチームワークではない、たった1人の英雄なんだよ』

 

「英雄……」

 

英雄という言葉で脳裏に浮かんだのは、ブラジル代表の10番──ロイマール。

数々の強豪国の相手選手を遊び心のある華麗なテクニックと抜き去り、マリーシアで出し抜き、0からゴールを生み出すあのファンタジックなストライカー。

 

『メッチ、クリスチャン・ロナルド、ロイマール。そんな1人の存在によって、サッカーは無限に進化する。ソイツを止めるためにDFシステムが想像され、それを凌駕するためにまた新たな戦術が生まれる。たった1人のプレイがチームを、国を、世界を変えていく、それがサッカーというスポーツだ』

 

悔しいが、絵心のその言葉に俺は胸を打たれた。

 

『戦う準備はできているか? その全てが──青い監獄にある!』

 

俺はどうして自分がここに来たのか、再認識する。

 

世界一のストライカーに、英雄になるためだ!

 

英雄となって、アンリちゃんと結婚を前提にお付き合いするためだ!

 

煽ってくるヤツに構ってる場合じゃねぇえ!

 

俺は世界一のストライカーになるために全力を尽くし、限界を何度だって超えて、進化する! と、今は会えないアンリちゃんに心の中で再度誓ったのだった。

 

『第1試合は、2時間後、チームX vs チームZ』

 

──────

 

【チームZ ロッカールーム】

 

チームZのビブスは青色だった。

 

青い監獄にいる選手は全員FW。必然、皆の希望ポジションは一列目だ。

俺を含めて、チームZ全員FWのポジションを譲るつもりはなく、話し合っても埒が明かない。

結局、公平にジャンケンで勝った順でポジションを選ぶことになった。

 

「クッソ! 潔かよっ!」

 

じゃんけんに負けた雷市が悔しさのあまり声を荒らげる。

 

「俺はFWがいい!」

 

勝ち残ったのは、潔 世一。

 

旋毛から双葉みたいなくせっ毛が生えているのが印象的な男。

 

順位は274位と、俺より1個上。身体能力の差も俺とどっこい。

 

なんで、入寮テストで結果を残した俺より潔の順位が上なのか、入寮してから4日経つが、未だに分からない。

 

情報収集と信頼度をあげて後々油断を誘えるよう、話しかけてみたりしたが普通な印象しか抱かなかった。

 

目に見えてわかりやすい武器があるわけではないなら、サッカーIQが高いとか視野が広いとか、オフ・ザ・ボールの動きが良いとか、そういう試合でしかわからないような俺より優れた『何か』があるんかねぇ?

 

あるいは、青い監獄の順位自体あまり意味はないとか……。

 

まぁ、結局、世界一のストライカーになるには、この青い監獄で最後まで勝ち抜かないといけないわけなんだし、やることは変わらないよな。

 

青い監獄(ここ)に居るやつら全員ぶっ倒して、勝ち残る。それだけだべ。

 

「次は、五十嵐くんが選ぶ番だよ。もう残っているポジションはDFのCBかGKだけだけど……」

 

糸目の長身男、久遠 渉が聞いてくる。

ポジション決めをじゃんけんで決めようと提案し、フォーメーションの考案もこの久遠がしたことだ。実質、今、チームZを仕切っている温厚でリーダーシップのあるやつ。そして、抜け目のない男。それが俺の久遠 渉の印象だった。

 

他のみんなが俺のメッキが剥がれるや否やイガグリ扱いしてくるのに(蜂楽は相変わらずブレイブマン)、久遠だけは俺のことをちゃんと名前で呼んでくれるし、一見して良い奴にしか見えないが……入寮してからの動きは何かと俺と被った。

 

積極的に他の奴らに声をかけ、仲を少しでも深め、さり気ない会話の中からそいつの選手としての情報を探る。

 

勝つために準備し、駆け引きができるタイプの人間。

 

同族嫌悪ってほど大層なもんじゃないが、俺は、久遠 渉をチームZの中で一番警戒していた。

 

フォーメーションは4-4-2

サッカーではオーソドックスなフォーメーションで攻守のバランスが取れているのが特徴だ。

 

「そんなのもうCB以外選択肢ねぇーじゃんか」

 

「右と左どっちにする?」

 

「そーだなぁ。じゃあ、右で」

 

「五十嵐くんは、右CBね。……君なら右を選ぶんじゃないかと思っていたよ」

 

ボードに俺の名前を書きながら、そんなことを言ってくる久遠。

 

「どういうこっちゃ? CBなんてどっちでも同じだろ?」

 

とか俺は言いながらも、久遠への警戒をさらに高めた。

 

俺が右CBを選んだの実際の理由は右SBにいる千切 豹馬という長髪の中性的な容姿の男の情報を試合の中で少しでも引き出せないかと企んでいたからだ。

 

千切は冷めた男だった。なんでこんなやつが青い監獄に入寮しようと思ったのか不思議なくらい。そして、あまり自分から喋るタイプではなく、聞かれれば最低限のことは答えるが、あまり自己開示をするやつではない。

 

チームZの選手たちの中で、最も情報が得られなかった存在だからこそ、この試合で近くから選手としての能力を少しでも把握しておきたい。

 

「……まぁ、それもそうだね。……それじゃあ、次は成早くんだけど」

 

その後、じゃんけんで勝った順で、左CBはチーム一の低身長、成早朝日、GKは180後半の身長で江戸っ子顔の伊右衛門 送人になった。

 

フォーメーション

 

潔(CF)

蜂楽(ST)

 

我牙丸(LMF) 雷市(CM) 國神(CM) 今村(RMF)

 

久遠(LSB) 成早(CB) 五十嵐(CB) 千切(RSB)

 

伊右衛門(GK)

 

「よし、みんな。第1試合はこの布陣で行く。CFの潔くんを中心に勝ちに行こう」

 

久遠の言葉に「了解」と答えたのは俺と蜂楽くらいなもので、他は自分のポジションに不満を述べたり、勝てばいいみたいなノリであまり気概は見えない。

 

意外だったのは、雷市が特に文句を言わなかったことだ。あの金髪ギザ歯ならもっとCFになった潔に噛み付くと思ったんだが……なんか、嫌な予感がするなぁ。

 

よく観察してみれば、雷市の目はギラついた……エゴイストの目で……同じ目をしたやつを数人見かける。

 

潔はともかく……なんでお前までそんなん目をギラつかせてんだよ國神……。

 

いや、表に出してるやつも出てないやつも気持ちはみんな一緒ってことかい。

 

──俺が英雄になる。

 

ストライカーしかいないチーム。そんな中、ストライカーの本能を全員が刺激された状態で、試合が始まれば、どうなるかは想像に難くない。

絵心が言っていた、己のゴールかチームの勝利か。

 

この試合で0から1を創り出したストライカーがその答えを決めるってことでいいんかね?

 

それなら、俺は……

 

「あのよぉ、ちょっといいか?」

 

 

───

 

上手いやつはボールを持った瞬間にわかる。蜂楽なんかはその最たる例だろう。

 

だが、強者は見た瞬間にわかる。ただそこに立っているだけで、選手としてのオーラが、存在感があるのだ。

 

「来たぞ、チームX」

 

國神の言葉で俺たちチームZの視線が、対面方向の出入口へと注がれた。

 

俺たちとは反対側からピッチへと入場してきた対戦相手であるチームXの白いビブスの10番の着た選手を見た瞬間……まずい、あいつ俺より強くね? と幾度も試合(ゲーム)で役に立って来た直感が警鐘を鳴らした。

 

堂々とした佇まいで歩く、髪を逆立てたガタイのいい男。鋭さを見せる赤い眼光は百獣の王を彷彿をさせる。

 

ずっと見ていたからだろうか、こちらの視線に気づいた相手10番の逆髪男は一瞬俺を一瞥し、すぐに興味無さそうに視線を他へ移した。

 

俺様にとってはお前なんぞ眼中のない、有象無象。そう言わんばかりの態度だ。

 

絶対的強者故の自信からくるものなんだろうか? あるいはただの慢心か?

 

自信と驕りは紙一重。

 

百獣の王か裸の王か、きっと、すぐにわかる。

 

試合はすぐに始まるのだから。

 

 

────

 

チームZVSチームXは、軽くウォーミングアップを済ませたあと、それぞれ指定された自陣へと向かい、青のビブスと、白のビブスの選手たちが布陣(フォーメーション)をとる。

 

チームZは442のフォーメーションに対し、相手のチームX 433の前線に厚みを持たせる攻撃的なフォーメーション。

 

あの逆髪の10番は、DMF 中盤の底、アンカーか。

 

まぁ、開始時のポジションなんて多分、アテにならんけど……。警戒はしておこう。サッカーで俺の直感はほぼ外れた試しがないんでね。

 

先行はチームZだった。

 

サークルの中で潔と蜂楽が中心に置かれたボール横に立って、ホイッスルが鳴るのを待っている。

 

Piーーーーーーltu!!!

 

ホイッスルが鳴った。

 

同時、蜂楽がキックオフ。

 

「潔!」

 

隣の潔にボールが渡る。そして潔はなんの迷いもなく

 

「雷市!」

 

事前の打ち合わせ通り(・・・・・)雷市を信じて( ・・・)、ボールを下げる。

 

「ちっ……くそが、なんでこんな……これで負けたら、一生てめぇを恨むぞ、イガグリ」

 

雷市は舌打ちしながらも、自分に巡ってきたボールを、右サイドでワイドに移動する今村へボール振る。

 

今村はボールを受けると、右サイドを駆け上がり、守備が詰めてきたところで、「よろしくっ!」スペースに顔を出した國神へと、パスを出し、ボールを繋ぐ。

 

ボールを受けた國神は、顔を上げ周囲を確認し、蜂楽が降りてきて、相手チームのCMとCBの間のスポットに移動しているのを見つけ、強烈なキックで、素早い楔の縦パスを入れる。

 

蜂楽はトラップで、懐の深い位置にボールを納め、反転、前を向き、舌なめずり……。

 

「痺れるパスどーも……っ」

 

テクニカルな跨ぎで、プレスをかけてきた相手CMを1人交わし、そして……あのアンカーに居た10番が横から凄まじい鬼プレス。

 

蜂楽がアウトサイドで、ボールを動かした瞬間、奪うために脚を伸ばす。

 

「ひょいっとっ」

「っ……」

 

アウトサイドからインサイドへエラシコ。

 

しかしまだ相手は体勢を崩しつつも、もう片方の脚を広く伸ばし、進路を妨害する。

 

「もういっちょっ!」

「なっ、さらにそこからダブルタッチ……!?」

 

さらに逆方向へボールを動かし翻弄し、あっさりと相手10番をぶち抜く。

 

アンカーである白10番が抜かれたことで、潔についていたCB2枚のうち、左CB1枚が蜂楽にあっさり、釣り出される。本職ではないが故の、判断ミス。

 

ポッカリと釣り出されたCBと、絞る動きもせずに、上がってきていたRSM定位置に居たLSBとの間にスペースができる。それを蜂楽も潔も見逃さない。

 

「決めろ、潔!」

 

潔がオフ・ザ・ボールで、マークについていた右CBを一瞬、振り切りそのスペースへと走り、蜂楽は釣り出された相手CBの頭上にふわりと浮いたループパスで、DFのスペースにボールを落とす。

 

「ゴールの匂い……これが、俺の──」

 

潔はそれをトラップすることなく、落ちてきたボールに、右足を振り抜く。

 

ループパスからのダイレクトボレー!

 

ボールはゴールマウスの左上隅へと吸い込まれていき、ゴールネットの揺れる音に次いで、巨大モニターへGOAL文字が表示さられ笛の音が鳴り響いた。

 

俺の背筋に悪寒が走る。CBからは自陣のゴール以外のほぼピッチ全体が見渡る。

 

遠目から、ただ、見ていただけだが、潔がボールを右足で撃ち抜く瞬間、恐ろしいストライカーが目覚めてしまったような、そんな感覚に襲われた。

 

───

 

このゲームの1試合目の先制点の重要性に気づいている奴らはどのくらいいただろうか?

 

久遠は気づいていたからこそ、公平なじゃんけんによるポジション決めや、フォーメーションを立案していたが、俺を除いた他のメンバーたちは気づいていなかった。

 

先制点をとれば、チームで勝つという道が開ける。二点差をつければさらにその雰囲気は加速するだろう。

逆に先制点をとられれば、取り返さなければならないという焦りに繋がり、二点差をつけられればチームで勝つことよりも、個人で他のチームメイトを出し抜き得点王を目指して生き残るという思考が強くなることだろう。

 

大抵のやつはきっとこう考える。なら最初から得点王を目指しつつ、先制点を狙えばよくね? それでチームも勝てたら万々歳、負けても得点王になれば勝ち残れるじゃないか、と。

 

だが少しでも知恵が回るやつはこう考える、大抵の人間が思いつくということは、大半の人間が得点王を目指し、自己中なプレーに走るということだ。そうなれば連携なんてあったもんじゃない。

連携が生まれるのは先制点をしたチームの選手たちが勝てば自動的に勝手に次のステージへ進めると理解した後。

ならば、【相手が個人プレイに走りもたついている間に、先手必勝で最初からチーム全員で連携し、点を取りに行き、点差をつけてしまえばいいじゃないか】、と。

点差が増えれば増えるほど、相手チームの選手は自分が得点王になるために自己中なプレーに走り、勝手に自滅するのだ。

 

『ってことだからよ、先手必勝。相手が連携が取れていないうちに、連携でボコちまおうぜ。それとも、お前らは勝てる試合を自分のエゴで台無しにするような馬鹿なんか?』

 

俺はこの1試合目だけに有効な必勝法を語ってみせた。

 

『だがそれはあの絵心ってやつが言っていたのと矛盾するだろ! 必要なやつはたった1人の英雄だってあいつは言ってただろうが!』

 

反発したのは、雷市だった。まぁ、こいつは俺が言ってた大半の人間の側のやつだから不満も持つだろう。

 

『何も矛盾してないだろ、日本が世界一になるためには最後まで勝ち続けないといけない。だったらチームを勝てせ続けるからこその英雄、世界一のストライカーだろ? ……わざわざ勝てる試合を落とす馬鹿が世界一になんてなれる訳ねぇだろ』

 

その俺の言葉に反論するやつは……いや、できるやつはいなかった。もしできるやつがいるならそいつは世界一のストライカー様当人くらいなものだろう。

 

そして、俺たちは初手から連携に重きをおき、まんまと相手チームを『出し抜き』、先制点をあげたのだった。





潔「これが俺の──ストライカー、潔 世一の始まりのゴールだ!」

エゴい目ギンギンで、バチコーン!(無意識版ダイレクトボレー!)

次回予告
自称キング馬狼照英さん、逝くwwwww

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