現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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レコンキスタ対決・謀略編
本編18話・第19話から第20話


本編第18話

 

 おはようございます、ツアイツです……

 

 疲れている割には目が覚めてしまったのでぼんやりとこれからの事を考える。

 段々と原作の出来事が前倒しになっていく気がする。物語の中心が自分になっていく感覚も有る……まさかね。

 

 僕はあくまで脇役で物語の中心はルイズとサイトにと考えていた。

 しかし現実はシエスタをフライングゲットした事でモット伯のイベントが一年繰り上がり僕に関係のあるソフィアが拉致の対象になってしまった……

 良く聞くバタフライ効果とか世界の修正力か?原作開始まで一年を切ったけどアルビオンも表向きは平穏だ。

 

 ガリアの粛正も起こりジョセフが王位を継いだ。僕の廻り以外は原作の流れに沿っている。

 しかし僕の廻りにはもうロングビルさんが学院秘書となり関係する登場人物が早めに接触して来る。

 ラグドリアン湖の増水イベントが発生すれば経過状況は掴めると思いモンモランシ家に商売の交渉を始めた。

 交渉が成功すればかの地に確認に行ける事が出来る。

 

 水の精霊との接触は危険だが……多分このイベントも僕が絡む予感がするんだ。

 

 僕の秘密がバレれは異端扱いだ、細心の注意が必要だろう。

 

 ワルド子爵!

 

 こいつが一番の難解と言うか……難敵と言うか……良く解らない行動をしている……何故かウチの父上と懇意にし始めた。

 趣味友?厄介だ。趣味を共有する仲間とは独特の連帯感が発生するから……これは取り込めたと思うべきか獅子身中の虫か?

 彼好みの作品を仕上げて贈ってみるか。

 

 彼を主人公として!

 

 

 

 

 

「失礼します。お早う御座います、ご主人様」

 

 ソフィアが起こしに来てくれたので思考から引き戻される。

 

「おはよう、ソフィアよく寝れたかい?」

 

 時間ピッタリに来たソフィアに声を掛ける。

 

「はい、前と同じ部屋を使わせて貰えましたので……では準備しますね」

 

 ソフィアとは2人の時は敬語はなるべく控えて貰うようにお願いをしてある。

 手際よく洗顔の準備や着替えを用意してくれる、その手際や甲斐甲斐しさも含めて専属メイドにして正解だったと思う。

 

「今日は屋敷の方に仕事に向かうので馬車の準備をして欲しい。それとソフィアも向こうの皆に紹介するから同行してね、出発は2時間後に」

 

「わかりました、御者は私が出来ますからそれで良いですか?」

 

 タオルや着替えをテキパキとまとめて聞いてきた。

 

「それで構わないよ」

 

「はい、ではその様に準備します」

 

 雇用条件の細かい説明はエーファに任せよう、さてそろそろ食堂に行こうかな。

 

 

 

アルヴィーズの食堂にて

 

 

 

 まだ朝も早い為か席もそんなに埋まっていない。見回すと……ルイズが両手を振って全身でアピールしている。

 

 

 

 彼女のこんな行動は本当に愛おしいと思う。

 

 キュルケとモンモンが一緒か……今日は女性陣と一緒に食べよう。

 席に着くと直ぐに料理が運ばれてくる、この辺の待遇の良さは日々の努力で厨房の皆と仲良くしてるからかな。

 

 好感度の上昇とは日々の努力が必須なのですよ。

 

「「「おはようツアイツ」」」

 

「おはよう、折角の休みなのに早いね」

 

「貴族は規則正しくよ」

 

 ルイズは毎朝の豊胸体操の為非常に健康的だ!

 

「私は……変な体操の後にルイズが部屋に乱入して来てね、無理矢理起こされたわ」

 

 彼女達はたまに一緒に寝てるらしい、いやガチレズって訳じゃなくてパジャマパーティーみたいな?

 

 是非ともご一緒したいです、理性が保たず3P濃厚ですけどね。

 

 キュルケとルイズは仲が良い。原作のタバサとの…みたいな関係だ。

 

「私は最近ルイズの体操に参加してるの。ツアイツは胸の大きな娘が好きなんでしょ?」

 

 モンモンは今でも十分脱いだら凄ごそうです、良い嫁になるよね。

 

「僕は屋敷に仕事をしに行って来るよ、夕食迄には戻るけどね」

 

 ふぅと溜息と共に言う。

 

「新しいお屋敷を購入したのよね?凄いわね」

 

 モンモンが羨ましそうに言う。現在進行形で成功をし続けるハーナウ家と赤貧に喘ぐモンモランシ家との違い……

 だからそのハンターの目は怖いから止しなさい。

 

「ツアイツには領地経営のレクチャーをして欲しいわ切実に……手取り足取りでも良いわよ」

 

 モンモン真剣です。

 

「「駄目よ。ツアイツは私のだから!」」

 

「チッ!」

 

 モンモンの貴族の令嬢らしからぬ舌打ちが聞こえたよ、ガクガクブルブルだ。

 

「そっそれじゃそろそろ支度をするかな」

 

「ツアイツのお屋敷に行ってみたいわ」

 

 女性陣ズがお願いして来た!

 

「いや仕事に行くだけだしそんなに構えないから……」

 

「久しぶりに彼女達に会いたいの……駄目?」

 

 信者メイド達か、思えばルイズから奪う形でウチに来たからな。

 

「彼女達って?」

 

 モンモンが不思議そうに聞いてくる。

 

「私の仲間よ!」

 

 胸を張るルイズ!ぷるんと揺れる双子山!でもまだキュルケと違い芯に硬さを残している感じた。

 キュルケはどこまでも柔らかい感じ……でへへ!

 

 それは兎も角本当に彼女達と気持ちが通じてるんだな。

 

「そうだね、久々に会いに来なよ」

 

「「私達も行きたい!」」

 

 うん。そうだね……仲間外れは駄目だよね。

 

「では一時間後に正門前に馬車を用意するから」

 

 僕は部屋に戻り連絡用の鷹で屋敷の皆に僕ら以外にルイズ達も行く事を伝えた。

 そう言えば屋敷にルイズ以外のお客様を招くのは初めてだな。

 ルイズも屋敷の購入と改装の時に来た以来か、世話好きなシエスタ辺りが張り切りそうだ!

 

 などと考えていたりしたら直ぐに待ち合わせの時間だ、レディを待たせる訳にはいかないので少し早めに向かう。

 ソフィアは既に馬車を準備し前で直立で待機していた。

 

 労いの言葉を掛けようとしたら……

 

「お待たせー!」

 

 ルイズが凄い笑顔で走って来る。

 

「一番乗りぃー!」

 

 が、フライで追い抜いたキュルケが先だった。

 

「キュルケずるーぃ!」

 

「あんたは体力が半端ないんだから飛ばないと追い付かないわよ」

 

「そうよ、貴族たるもの慎みを持ちなさい」

 

 モンモンが優雅に歩いて来た、流石は大貴族のご令嬢達だけに華が有ります。

 ルイズは何故かシエスタとのプレイの為に揃えたセーラー服を着ている。

 

「ルイズ、それを何時手に入れたの?」

 

「えっコレ似合う?シエスタがツアイツはこれが好きだからって言ってたので貰っておいたのよ」

 

 クルリと回って可愛さをアピール!うん好きですよ。

 昔出来なかった学生時代のキャハハウフフな気分が味わえるから、でも僕は学生服は着ませんけどね。

 

 

「そうだね。似合っているよ、可愛いね」

 

「「あら私達はどうなの?」」

 

 キュルケは紫から青のグラデーションのシンプル且つボディラインを強調したドレス。

 モンモンは薄緑のベースにフレアーなスカートのふわっとしたドレス。

 

 共にマントを羽織っているが、ハルケギニアのファッションって中世ヨーロッパ準拠ですよね?

 時々突き抜けたファッション有りますよね、例えば烈風の騎士姫だとあのカリン様がへそ出しホットパンツなんですけど!

 

 アリエネー

 

「2人とも良く似合ってるよ。自分の特性を理解しているよね」

 

 兎に角誉めろ誉めチギレ!

 

「では出発しよう。皆馬車に乗って、ソフィアじゃお願いするね」

 

「分かりました、では出発致します」

 

 

 

 

 ゴトゴトと馬車で揺られる事約二時間程で屋敷が見えてきた。

 

「凄いわね、物見の塔に石塀を巡らし水掘迄有るなんて……」

 

「貴族の邸宅と言うよりは出城か要塞みたい」

 

 女性陣鋭い、僕はトリステインと言う国の治安を信用していない。

 盗賊もそうだが近隣貴族だって怪しいくらいだ。

 

 あの屋敷は敵の早期発見と籠城を可能にしているし脱出には何通りも地下通路を設けている。

 ダミーの気球も用意してある、気球はこの時代でも可能な飛行船だ。

 風任せにしか飛ばないけど囮には使えるだろう。

 実際に空を飛んで逃げてもフライや使い魔などにより撃墜される確率が高い。

 屋敷なんか失ってもエーファ達が生き残る手立てを幾つも用意している。

 本当はこんな人目の無い郊外に建てたくはなかった、周りに察知されずに攻められるから。

 だから過剰な迄に防衛力を高めた。

 

 流石にヴァリエール公爵を通しても他国の貴族に利便の良い土地は売ってくれなかったんだ……

 屋敷の前には信者メイドさんがズラリと列んでいる。

 

 それを見たモンモンが呆然と呟いた……

 

「なにアレあんなに一杯居るの?みな乳がデカいわね……特に奥の4人は別格にデカいわ。

ツアイツは本当に大きいオッパイが好きなのね……」

 

 ルイズとキュルケは吹き出し僕は言い様の無い居心地の悪さを味わった、どうせ僕は巨乳が大好きなオッパイ魔神ですよ!

 

 

 

第19話

 

「さて屋敷に着いた、僕はホストをしたいけど仕事があるので出来ないからルーツィアにお願いするから宜しく。

ソフィアはエーファに色々と教えて貰ってくれ、では昼食の時に会おう」

 

「あら手伝うわよ」

 

「いや幾ら君達でも我が家の機密に触れる問題も有るから悪いけど……」

 

「あら残念……折角ツアイツの働いてる姿が見られると思ったのに」

 

 クスクスと笑いながらレディ達はテラスの方に行った。お茶でも飲んでいて下さい、僕は仕事をするよ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「このお屋敷って華美ではないけど洗練されているわね、機能美っていうのかしら?」

 

「はい、ツアイツ様は建築に造形が深くハーナウ家関連の建物の殆どを監修しています」

 

 このメイドの胸凄いわ。

 

「稼げる男って色んな意味で凄いのね、羨ましいわ」

 

「ツアイツはね子供の頃から色々な事を知っていたわ。演劇、執筆そして既に8歳で普通に大人達に混じって領地経営に参加していたわ」

 

 キュルケが自慢げに教えてくれた、この中では一番古い付き合いだからね。

 

「しかし8歳でって凄いわね、私の8歳の頃って何をしていたかしら?」

 

「「「ルイズ様お帰りなさいませ」」」

 

 はっ?何あの乳軍団?それにお帰りなさいませってどういう意味?

 

「ただいま!皆元気にしてた?私は2cm程また大きくなったわよ」

 

「流石です!私達も努力して成果は上がってます」

 

「ルイズ、その乳軍団と凄く仲が良いみたいだけど彼女達はツアイツの家の者じゃないの?」

 

「ううん。違うわ。お母様がウチからツアイツの所に送り込んだのよ」

 

「はぁ?それって……」

 

 ルイズのお母様ってあの有名な烈風のカリン様よね、それが大量の巨乳メイドをあてがうって……

 ヴァリエール家ってそこまでしてツアイツを取り込みたいの?やはり私が見込んだ以上に有能な婿なんだわ。

 もしかしたら他にも秘密が有るのかも……これは絶対に狙うしかないわね。

 

 あら?2人共急に黙り込んでしまった私を不審な目で見てるわ。

 

「何かアヤシい事考えている目だったけど?」

 

「女の勘がイケナい事を考えているって告げてるんですけど?」

 

「「何か企んでいるなら潰すわよ!」」

 

「いっいやぁねぇ……ただルイズのお母様って有名な烈風のカリン様ですわよね?なんでメイドをそんなに送るのかなーって?」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 こっ、この女やはりツアイツを狙ってるわ。

 

 いくら実家が貧乏だからって一人娘がゲルマニアに嫁げる訳がないでしょ、ここは諭してあげるのが友人として大切な事ね。

 ついでに私と貴女の絶対的な差を思い知り絶望しなさい。

 

「おほん……お母様がツアイツにメイド達を送り込んだのは私が嫁ぐ準備の為よ。

ツアイツはお母様に私をお嫁に貰う許可を得る為に戦いを挑んだわ。

結果負けてしまったけど認められて学院卒業後に挙式になったのよ。

彼女達は先発隊としてツアイツのお世話をしているの、ついでにツアイツはお母様の一番のお気に入りでも有るわ。

もう二年間もウチに泊まりがけで遊び(しごきと言う訓練)に来る家族ぐるみの付き合いよ」

 

 ふふん!

 

 どう?ぐうの音も出ないでしょ?貴女は諦めて指を加えて残念がりなさい。ツアイツは私が貰ったわ。

 

「ルイズ嘘をおっしゃい!」

 

「なっなな何よキュルケ?嘘なんて言ってないわよ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ここは退けないわ、周りがそうだと認めてしまっては不利よ。

 

「何言ってるのルイズ!

メイド達はツアイツの豊胸技術(写本のお陰で)の結果で皆豊かな胸を手に入れ彼を慕って(教祖と崇めて)率先的に彼の元に行ったんでしょ」

 

「ちっ違うわよ!」

 

「それにヴァリエール夫人がツアイツを気に入ってるのは事実だけどエレオノール様もバレバレで気にしているし、貴女が最優先ではないし結婚の許可も降りてないわ」

 

「エレオノール姉様が?そう言えばやたらと話したがるし呑みたがるし絡みたがるし……

ふっ、でもあの未来無き胸では無理ね」

 

「それにね、貴女達は他国の貴族の娘でしょ。ツアイツにはゲルマニア貴族の私が一番お似合いなのよ、貴女達は自分の国の男を探しなさい」

 

「ルイズだってモンモランシだってクラスの男子から言い寄られてるんでしょ?知ってるわよ、それらで妥協しなさいな」

 

「特にモンモランシは、ギーシュから熱いアプローチを受けているのは皆知ってるわよ」

 

「はぁ?ギーシュ?冗談でしょ。人は良さそうだけど嫌よ薔薇男なんて。どう見ても見栄っ張りの浪費家で金銭的感覚は親譲りで見込み無く商才無しじゃないの!」

 

 

「男はね……金よ金なの!

金を稼げない男なんて嫁を貰う資格なんかないの!それだけの才能が有って若くてハンサムで優しくて次期領主なのよ。

他国の貴族がなによ。

このままじゃ国内の金持ち貴族の年の離れたオヤジかジジィの後妻に収まるなんてまっぴらお断り!

まして若い相手を見つけても有能でなければ駄目だし、そんな相手周りには彼しか居ないじゃない。

破産して没落かお家取り潰しになるよりよっぽどマシよ!はぁはぁはぁ……」

 

 うわぁ……凄い本音をぶちまけたわ!でも確かにそうね。

 

 没落中のモンモランシ家の一人娘の婿に同等以上の家格の同世代の貴族はこない。

 立て直す自信と能力の有る男もそうは居ないだろう。

 プライドや世間体を考え国内の格下貴族で有能な者を探しても精々年上か下手したら後妻かもね。

 

 それが分からずに馬鹿にしたりする貴族も沢山いるのがこのトリステインだから。

 

 ツアイツ位有能な者を持ってきて実績を見せつけて立て直せば、元々の有力貴族のモンモランシ家を悪くは言えない。

 更にツアイツはヴァリエール家とも親しい、一人娘でも子供に家督を継がせれば……考えたわね。

 

 あとは乙女心ね。

 

 私だって有能でもオジサマは勘弁だし、ただこの子のツアイツに向ける気持ちは動機が不純だけど本物ね。

 こういうミーハーでなく実を求めるタイプはしつこいのよね……厄介だわ。

 

「お嬢様方お茶とケーキの用意が出来ました」

 

「「「…一旦休戦にしましょう」」」

 

 

 執務室にて

 

 

 メイドに囲まれながら仕事をするのも久々だなぁ、もう十分稼いだから現代感覚だったら引き籠もりニートでもOKなのに。

 しかし前なら可愛い女の子の部下なんか出来なかったけどね。

 

 内政特化メイド4人衆。

 

 右からエーナ・ビーナ・シーナ・デーナ……某ベアトリスさんの取り巻きみたいな名前ですね。

 他の子と違い彼女達は下級貴族の次女以下の子達で本来は上級貴族のヴァリエール家に居たのだがなんの因果か今はウチに居る。

 いくらカリン様の命令とは言え彼女達の実家との調整は大変だったよ。

 でも苦労以上に有能な子達なので満足しています。

 

 

 

 

 

 モンモランシ家との交渉はモンモンの強力な後押しで上手く行くだろう。

 

 グラモン家の方は微妙だ……やはり軍人系の貴族はゲルマニアの貴族に対して隔意が有るな。

 まぁこちらはモンモランシ家と違いどうしても接触したい訳ではないのでゆっくり様子を見よう。

 場合によってはギーシュの力を借りてもいいかな。

 ゼロ戦の解析と転用可能な技術の報告書……

 

 装甲の超々ジェラルミンの安定的な錬金に成功した。

 

 これで強度が有りしかも軽い金属の使用が可能となり断熱材のハニカム構造とかも盛り込んだ耐熱・耐衝撃性能を併せ持つ装甲が出来た。

 車輪やサスペンションも転用し乗り心地の改善に貢献しかなりの高性能馬車が出来上がった。

 これを完全装甲馬車として改造し完成した1台をアルブレヒト3世に献上する。

 今後の顔つなぎと中央への進出の足掛かり程度にはなるだろう。

 これらは色々なグレードを用意し貴族から平民まで需要に合わせた性能の商品化を目指す。

 

「失礼します」

 

 控えめなノックの後に、ナディーネが入ってきた。

 

「昼食の用意が出来ました。今日は来客がいらっしゃいますので4人分を中庭のテラス席に設けています」

 

 普段は皆と一緒に食べるのだが今日はモンモンも居るし仕方ないだろう。

 

「ありがとう。では休憩にしよう」

 

 

 

 

 

 僕は女の戦いが繰り広げられている事も知らずにテラスへと向かった……

 

 

 

第20話

 

 眺めの良いテラスで円卓を4人で囲む、風が適度に吹いて過ごしやすい長閑な昼……

 

「おまたせ、では昼食にしよう。メニューは馴染みが無いのも有るけど東方の料理をアレンジしたものだよ」

 

 サラダは胡麻が有ったので胡麻ドレッシングにして米は品種が違うのかパサパサしてたので魚介と一緒にパエリア風にしてみた。

 主菜はヘルシーにチキンをコンソメで煮込み風にした物でパンにはチーズを乗せた一口サイズの物を用意した。

 飲み物はヨーグルトドリンク、デザートはルイズお勧めのクックベリーパイだ!

 

「あっ私の好物ばかり!でも今日は皆で食べないのね?」

 

「皆って全員居るわよ?他にお客様が居るの?」

 

 モンモンが不思議そうに聞いてくる。

 

「ウチはね、少し変わっているけど手の空いた使用人も全員で集まって食べるんだよ。今日はミスモンモランシが居るから別だけど」

 

「それは……変わっているわね。変わり過ぎているかも……でも何故一緒に食べるの?」

 

「んー?何時からだったかは忘れたしきっと深い意味も無いけどね。

僕はパーティとかは別だけど普段は何時も同じものを皆と一緒に食べてるよ」

 

「ツアイツは良く同じ釜の飯を食べた仲って言うわね。東方の諺か何かなの?」

 

「意味が無いなんて嘘よ、お父様が言っていたわ。

貴方の恐ろしい所はそうやって同じものを食べる事で共通意識を植え付け、また同等に扱ってくれているという連帯感と安心感が芽生え、その忠誠心が強固になるって」

 

「考え過ぎだよ、でも仲間だから自分だけ違う物を用意させるのも大変だし独りで食べるのも寂しいだけだからね」

 

「お父様も最近同じ事をしてるわよ、とは言え亜人退治や盗賊討伐などの野外の時は配下の貴族達と火を囲んで話しながら同じ物を食べるって。

戦場で上の者が下の者と同じ待遇まで降りてくれるのは凄い激励になるって言っていたわ、命の危険を同レベルで捉えてくれてると思うから」

 

「ツェルプストー辺境伯がかい?てかあの人まだ自分で討伐に行くの?駄目じゃん立場考えろよ!」

 

「そうやってお父様に駄目だし出来るのも貴方だけよ、普通言えないわよ?だからお父様は自分の息子の様な貴方を年の離れた友人と皆に言うわ」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 凄いわね、同じ食事をするだけでそんな効果があるなんて信じられないし理解できないわ。

 

 私がメイドと同じ物を食べる……

 

 その発想も無かったしそれで忠誠心が上がるのかしら?でもうちでは実践不可能よ。

 貴族が使用人と同じ扱いを受けるなんて恥としか思えないし……

 これが型に嵌った歴史を重んじるトリステイン貴族と新興だからこそ自由なゲルマニア貴族との差なのね。

 ツアイツの屋敷に行って少しでも学ぼうと思ったけど土台が違うわ。

 これが8歳でヴァリエール公爵やツェルプストー辺境伯と渡り合える事が出来るツアイツの秘密か……

 

 今迄の貴族の考えなんて当てにならない自由な発想と行動力……

 

 これよ!

 

 これ位の能力がないとウチの建て直しなんて夢のまた夢よ、しかしまともに考えて私はトリステイン貴族の一人娘……

 ツアイツはゲルマニアの領地持ちの跡取り息子、普通なら無理な婚姻ね。

 でもこのままではお金持ちのオッサンがそれこそジジイの後妻になってしまうわ。

 同世代で有能な貴族なんて居ないし有力貴族の次男以降を婿に取り実家からの援助を貰う……

 

 どこにそんな実家が金持ちの大貴族がいるのよ。

 

 グラモン家……無理ね援助どころか共倒れよ。

 

「ミスモンモランシ?どうしたの黙り込んで?もしかして使用人と一緒の食事は嫌だった?」

 

 はっ、考え事をしていたらツアイツに心配されてしまったわ。

 

「ううん、それとモンモランシで良いわ。同じ物でも全然平気よ、ただウチと随分違う発想なのでビックリしたの」

 

「そうだ!お願いなんだけど一度ウチの領地に来て様子を見て欲しいの。

ウチは開拓に失敗してから色々問題を抱えてるからツアイツの自由な発想で意見を聞きたいの……お願い!」

 

 両手を組んで涙目で見上げる必殺乙女のお願いポーズをする、駄目押しに胸も肘で寄せて強調するわ。

 

「お願い、ツアイツ」

 

「「駄目よ!泥棒猫が……それは私達が認めないから」」

 

「なっなによ!良いじゃない減るものでもなし……一寸貸してよ」

 

「減るわよ、それに貧乏が染るでしょ?」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 こっこれはラグドリアン湖に行く良い口実なのでは?

 でも原作では開始2年前位でアンドバリの指輪は盗まれているはずだが行ってみる価値は有るかな。

 

「提案だけど他国の貴族が領地経営云々に口を出すのは問題だけど、そうモンモランシの領地には有名なラグドリアン湖が有るよね。

 一度行って見たかったんだけど案内して貰いその時にモンモランシと話す分には問題無いよね?」

 

「それで問題ないわ、有難う」

 

「「問題が有るわね、とても大きい問題だわ」」

 

「なっなによ?本人が良いって言ってるのよ、良いじゃない」

 

「「お友達ですもんね、私達も行くわよ。貴女の実家に……文句は無いわよね?」」

 

「なっ……良いわ、ご招待しますわ」

 

「じっじゃ今度の夏休み予定しよう、最初の方は実家に戻るから中旬辺りで調整しようか?」

 

「「「勿論それで良いわ」」」

 

 怖ぇ何をそんなに牽制し合ってるんだか?

 

「さて僕は午後の仕事に行くからもう少し待っていてね。悪いね、招待したのに放っておいて」

 

「「「仕方ないわよ、将来の旦那様の仕事の邪魔はしないわ」」」

 

「そっそれじゃ……ルーツィア後をお願い」

 

「畏まりましたツアイツ様」

 

 殆ど食べ物の味が分からなかった気がする、それにいけないフラグが乱立した気が……しかしモンモンは無理じゃないか?

 勿体無いけど立場的にも跡継ぎ的にも?でも実家思いで経済観念のしっかりした良い娘だし。なによりあの縦ロールは素晴らしい物だ。

 実家の経営の立て直しには助力しよう、さて午後の仕事も頑張ろうかな……

 

 

 

 

 テラスにて

 

「さて……と、午後はどうする?」

 

「お嬢様方、ツアイツ様の今迄に執筆した本が全て書斎に有りますがお読みになりますか?」

 

「あら……良いわね、ルーツィアと言ったわね。ツアイツは男の浪漫本なる本も執筆してるけどそれも有るの?」

 

「禁則事項です……その質問にはツアイツ様の許可が必要です」

 

「つまりは……有るのね?」

 

「禁則事項です……その質問には答えられません」

 

「わかったわ、もう良いわ」

 

「なにキュルケ?その男の浪漫本って?」

 

「最近こそこそと男子共に廻っている怪しげな本の事よ、こんな物は学院中を探してもツアイツ以外に書けないわ。つまりはそう言う事よ……」

 

「ツアイツって本当に多才よね、でも叱っちゃ駄目よ。多分それもツアイツが学院一年男子に君臨する為の布石よ」

 

「それって巷で噂の「メイドの午後」とか「バタフライ伯爵夫人の優雅な一日」みたいなものかな?」

 

「多分それ以上かも、ウチの密偵を根こそぎ裏切らせる程の本よ。

ウチの諜報を何人かツアイツの所に派遣する時にあの本の作者の手助けをしたいって立候補が凄かったって……

頭領自ら行くとか言い出してお母様が呆れて再教育をしていたもの……」

 

「ごくり……ねぇルイズ?」

 

「ええキュルケ……モンモランシも……」

 

「うふふ……もちろんよね……」

 

「「「探すわよ。草の根別けてでも……レッツゴー!」」」

 

 

 

 ……無駄です。

 

 ツアイツ様の男の浪漫本シリーズは全て私達メイド専用の夜伽資料として研究の為に確保しています。

 

 

 

 セーラー服やスク水・体操着(ブルマ)等の特殊衣装や亜人をモチーフとした猫耳やシッポなど数々の装備品を作り上げ絶大な効果を出していますから。

 装着時のツアイツ様の眼はそれこそ……ルーツィアは真っ赤になりながらイヤイヤをしている。

 

 何を思い出しているのかな?

 

 しかしいくら政治的駆け引きの為とは言え貧乳や幼女を扱う本の需要が有るとは本当にツアイツ様以外の男共は度し難い変態です。

 先日秘密裏に会見にきたワルド子爵など最低の部類です。

 

 

 さてダミーをお好きなだけ捜して下さい。

 それなりの写本(全年齢〜15禁)は有りますが原典(18禁)までは辿り着けないでしょうけど……

 

 くすくすくす!

 

 


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