現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第24話から第26話

第24話

 

 使い魔の品評会

 

 つまらん、碌な使い魔は居ないな。まぁ学生だしこの国のボンボン貴族などこの程度だろうな。

 しかし流石は王家の血筋か……こんな退屈な物をさも嬉しそうに見ているわ。

 

 全く早く城に送り返して本の海に溺れたいものだ……

 

「ワルド隊長」

 

「はっ!何でしょうかアンリエッタ姫」

 

「ワルド隊長から見てどのお方が優秀でしたか?」

 

「そうですね……4番目の……」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 先程ワルド隊長の言ったツアイツ先生……ツアイツ・フォン・ハーナウ!ゲルマニアからの留学生。

 

 噂のバストアッパー・巨乳の担い手・そして献上された数々の物語の作者の事では? これはチャンスよ。

 今夜ルイズの部屋に伺い彼との橋渡しをして貰いましょう。

 この中途半端な胸を改善し愛しのウェールズ様のお心をガッチリキャッチしたいのです。

 

 ラグドリアン湖で受けた屈辱……わざと水浴び姿を見せて襲わせようと仕向けたのにもう少し胸が有れば良かったのになどと……

 何としてもツアイツ殿には協力を仰ぎたいのですが彼はゲルマニアの貴族、そして私はトリステインの王女。

 

 この胸はトリステインの最重要機密。

 

 へたに密会などと疑いを賭けられてはウェールズ様に合わせる顔が無くなります。

 これは慎重な対応と高度な政治的駆け引きが必要なのです。

 

「……の3組が最も優れていたと思いますが。姫?アンリエッタ姫?」

 

「アンリエッタ姫、どうかされましたか?」

 

「いえ、ワルド隊長流石ですね。私もそう考えていました。彼らを前に……褒美を取らせたいと思います」

 

 選ばれた者の中にはペリッソンとスティックスも入っていた、彼らも其れなりに優秀なのだ。

 

 

 

 応接室にて

 

 

 

「アンリエッタ姫、お疲れ様でした。暫し休まれてから王宮に戻りましょう」

 

「それが……ワルド隊長、私少し気分が優れませんの、今夜はこの学院に滞在したいのですが」

 

「駄目です」

 

「多分疲れもあると思うのですが……」

 

「駄目です」

 

「ワルド隊長お願いします」

 

「駄目です」

 

「まぁまぁワルド殿。アンリエッタ姫もこう仰っている訳ですし今夜はこの学院に滞在なされてはどうじゃな?」

 

「しかし王宮には……」

 

「王宮には使いを出せば大丈夫じゃろ。それにアンリエッタ姫が夕食会に参加してくれると生徒も喜ぶはずじゃ」

 

「くっ仕方が無い……しかし警備の方は我々に主導権を頂きますぞ」

 

「構いませんぞ。しかし噂に違わずの忠誠心ですな、アンリエッタ姫も鼻が高いでしょうぞ」

 

「ワルド隊長すみません。我が侭を言ってしまって……」

 

「いえ、これも仕事ですから……では学院の警備隊長と打合せをしたいので失礼します」

 

「真面目ですな。なにこの学院には大勢の魔法使いが詰めているのじゃ。賊など入らんよ」

 

「……失礼します」

 

「怒らせてしまったのでしょうかオールドオスマン?」

 

「いや……彼は任務に忠実なのでしょう。ぐふふ白……か、それもまた良しじゃ」

 

「あら?可愛いネズミですね」

 

「さて……どこから入ってきたのじゃ?」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 全く我が侭な姫め。何を企んでいるのだ……おや?あそこに座って本を読んでいる美少女は……

 

「失礼!お嬢さんも本がお好きなのですか?」

 

「……」

 

「何を読んでいるのですか?」

 

「……ん」

 

「こっこれは「恋愛の方程式 男の子に好かれるためには」だと!」

 

「……そう」

 

「失礼、リトルレディには意中の人が居るのですね?」

 

「違う……彼は……」

 

「でも貴女は好きなのですね?」

 

「……分からない」

 

「何故です?」

 

「……手紙を貰った……会いたいと……でも……」

 

「でも?」

 

「……私は彼の好みではない……と思う」

 

「そんな事は無い、貴女は凡百な華より美しい」

 

「……ありがと」

 

「貴女に其処まで思われる相手が羨ましい。何時会うので?」

 

「……今夜外で」

 

「なっ女性との密会に夜で外だと……駄目です罠ですよ」

 

「……罠?何故?」

 

「男は狼なのです危険ですよ!」

 

「……貴方も?」

 

「そうです……いや……いえ違いますよ」

 

「……そう」

 

「私も同行します。貴女1人では危険だ」

 

「……だめ」

 

「何故です?」

 

「……彼の真意を知りたい」

 

「しかし襲われたら危険だ!」

 

「……大丈夫」

 

「しかし……」

 

「……ありがと、心配してくれて。でも平気」

 

 かっ可憐だ……しかもクーデレ?情報を集めよう……アンリエッタの警備?知らんわそんなもん。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 と、いう訳なのだツアイツ殿。彼女の情報が知りたい。

 

「いや貴方のロマンスを語られても全く分かりません。せめて特徴を教えて下さい」

 

「クーデレでチッパイでロリ……あと蒼い髪の眼鏡っ子だ!」

 

「えっ?ミスタバサかな?大きい杖を持っていた?」

 

「そうだ持っていた!そうかタバサと言うのか……してファミリーネームは?」

 

「いえ……訳ありかタバサのみしか名乗らずそれも多分偽名だと思います」

 

「うん!決めた嫁にするぞ」

 

「いや問題が……」

 

「有るだろうね。蒼い髪……ガリアの王家の関係者だろう。あからさまな偽名に名乗れぬ家名とあの年齢を総合し考えれば……」

 

「「シャルロット姫殿下……だね(な)」」

 

「何だ。知っていたのか?流石だな。

私は王家に仕える身なので他国の王族の情報も叩き込まれているのだが……君にしては全く趣味じゃない相手だろう?」

 

「いや……果たし状を貰ってね……本人から」

 

「何時?何処で?」

 

「今夜、場所はヴェストリの広場で……ほら手紙」

 

「彼女は君から手紙を貰ったと言っていた……キナ臭いな。本当に罠だったとは」

 

「本当にとは?」

 

「決まっているだろう。もし邪な気持ちで彼女を呼び出した輩なら……相手が君でも抹殺するつもりだった」

 

「ヤベェ!本気と書いてマジな目だ……」

 

 

 

 

第24話

 

 ヴェストリの広場の近くに隠れる、ペリッソン&スティックス。

 

「結局僕らだけだな」

 

「ああ……軟弱者達め!」

 

「しかし……来るかな?奴ら?」

 

「わからん?しかし上手く行けば大失態だろう……あのタバサって子の髪の色は蒼……つまりはガリア王家の縁者」

 

「そして両人が来た時に僕達が発見し騒ぎ出す」

 

「トリステイン国内でゲルマニアの貴族とガリアの王族の縁者と深夜に密会……これはスキャンダルだ」

 

「女の方は恋文風に男の方は果たし状……くくくっ最初の台詞は何だろうな?」

 

 

「「多分だが命乞いだと思うぞ……」」

 

「「えっ?」」

 

 

 振り返ると既に杖を構えたワルドとツアイツが居た!何故バレたんだ?

 

「風使いは気配を探るのは簡単なんだよ」

 

「大地に立っている限り土メイジなら察知出来るんですよ」

 

「「さて、お前達2人だけか?ブリミル様にお祈りは済ませたかな?ションベンは平気かい?命乞いの言葉は考えたかな……」」

 

「「準備?ちょっと待って……」」

 

「聞く気は無いな……では死ね、屑が!」

 

「ちょ……駄目ですってワルド殿!そのライトニングクラウドでは本当に死んでしまいます」

 

「離せ……ツアイツ殿離してくれ……僕のタバサ殿を罠に嵌めた奴を殺す……今直ぐここで……僕が彼女を守ってみせる」

 

「ちっ……逃げろお前ら!本当に殺されるぞ」

 

「……エアハンマー」

 

 振り返ると何故かおめかしして杖を構えていたタバサが居た、ほんのりと頬を赤く染めている。

 

「ミスタバサ……どうして?」

 

「話は風が教えてくれた……罠に嵌められるところだった」

 

「ダバサ殿……すみません。内々に処理をする心算が……」

 

「……いい」

 

「こいつ等2人の処罰は僕が必ずしておきますから安心して下さい」

 

「……何故?助けたの?」

 

「ワルド殿はミスタバサの事が好きなんだって!だからこいつ等が許せなかったんだ。

 僕の所に君からの偽の果たし状が来てね、罠だと分からなかったらそれこそ君に助太刀していた筈だよ」

 

「ちっ違わないけど違います!ツアイツ殿なにを……」

 

「……そう……あっありがと……じゃ」

 

 ミスタバサは真っ赤になってフライで闇の空の中に飛んで行った……

 

「追わないので?ワルド殿……ワルド殿?」

 

「ツアイツ先生……アレがクーデレのデレなのですね……良い……萌える……萌えるゾー!」

 

「さっさと追わんかボケー!」

 

 ワルドのケツを蹴っ飛ばしタバサを追わせる。ワルド×タバサって……今までに無いよね?

 

 

 このカップリングは……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 まだ心臓がバクバクいってる!

 

 僕のタバサ……守ってみせる……下心を持って心配した様に接してくる貴族はいた。

 

 ジョセフを倒す旗頭として必要だと、でも彼の言葉には純粋な気遣いだけだ。

 お父様が殺されてお母様の心が壊されてから……初めて聞いた……優しい言葉。

 でもあの人はトリステインの魔法衛士隊の隊長……私は汚れ役の北花壇騎士団の7号……

 そしてあの2人を裏切らなくてはならない……これ以上関わると裏切れなくなってしまう……

 

 でも任務だから……せめて任務中は……思わず逃げてしまったけど一度ちゃんと話し合おう。

 

 

 

 男子寮ツアイツの部屋

 

「それで?捕まえられなかった……と?」

 

「面目ない……」

 

「しかし……実際どうします?彼女はガリアの王族……しかも不名誉印を刻まれた家」

 

「そして秘密を抱えているな。彼女の雰囲気には……殺伐として生きるか死ぬかの経験のある目をしていた」

 

「そこまで分かるのですか?」

 

「そうだ。しかも復讐者の目だ!一時期の……サムエル殿に会うまでの僕と同じ復讐を誓った者の目だ」

 

「つまり……ジョセフ王に対して復讐を?」

 

「そうだろう。父親を毒殺され母親が軟禁されている筈だ」

 

「どうします?ハーナウ家次期当主としてはガリアに喧嘩を売るのは避けたいんですが……」

 

「そうだな。大国ガリアに歯向かうのは愚か者のする事だ……だが……しかし……僕は……どうしても彼女を助けたい!」

 

 密談中にノックだと、ドアの外には居ないが誰だったんだ?

 

「はっ誰だ!……ミスタバサ?」

 

 窓の外にはタバサがフライで浮いていた!

 

「……部屋に入れて欲しい」

 

 僕らはタバサを部屋に招いた。

 

「ツアイツ殿魔法をかけさせてくれ……大事な話になる」

 

 頷くと、ワルド殿はディテクトマジックにロックを丁寧に重ねがけし念の為遍在を作りドアと窓の近くに立たせる念の入れようだ。

 

「聞こえた。私の正体も知られている」

 

「そうだね。多かれ少なかれ王家の情報は流れる……そしてガリア王家の特徴的な髪の色の持ち主も限られた人数しか居ない。後は消去法だ」

 

「想像の通り私の本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン……」

 

「やはり……でもどうしてこの学院に?」

 

「仕事……ジョセフから北花壇騎士団に任命されている。その7号が私。今回の任務は……ハーナウ家の次期当主の素性を調べ裏の功績を調べる事」

 

「裏の功績?」

 

「聞けば洗脳効果のある書籍を執筆出来ると」

 

「凄いなツアイツ殿!そんな物騒なマジックアイテムまで作れるのかい?」

 

「いや全く?」

 

「嘘……一年男子に出回っている本だと思う。読んだ者は貴方に好意的になる不思議な本……」

 

 

アイコンタクト発動

 

 

「ワルド殿 TO HEART は今どこに?」

 

「すまん僕の胸に……有る」

 

「不味いぞ誤魔化さないと女性に見せる本じゃない」

 

「しかし今更何処かにしまう訳にもいかないぞ」

 

「僕はバレても知らないぞ!其れはもうワルド殿の本だ」

 

「きっ汚いぞ一人だけ助かるつもりか?」

 

「うん。ワルま第2巻読みたいよね?」

 

「キッキッタネーそれは汚いぞ!」

 

 

この間約2秒

 

 

「どうしたの?」

 

 

「いや何でもないよ。その本とは……」

 

「ツアイツ殿遍在が此方に近付く人物を確認した……ルイズと黒いマントの人物だ」

 

「なっ?取り敢えずワルド殿とミスタバサは窓から外へ逃げてくれ……話はまた後で!」

 

「分かった……とぅ!」

 

 ワルド殿はミスタバサをお姫様抱っこして窓から飛び出した。

 

 方や復讐を諦めて貧乳に走った男……

 

 方や今だ両親の復讐に燃える少女……

 

 どうなるのか?僕はこれからの2人の前途多難な……

 

「いや……離して……エッチ……バカー!」

 

 えっ?まさか劣情を抑えられずタバサに襲いかかったのか?

 急いで窓の下を見るとワルド殿がお姫様抱っこしたまま立っていてミスタバサの手には「TO HEART」が握られていた。

 そしてワルド殿のほっぺたには真っ赤なモミジが……あれ程隠せと言ったのに見られてしまったのか……

 

 哀れな。

 

 あっミスタバサが真っ赤になって逃げ出した!しかし両手にTO HEARTを2冊共持っている。

 

 そうか……

 

 彼女はミッションをクリアしワルド殿は振られた。と言う事だな。

 僕はそっと窓を閉め鍵を掛けカーテンを閉めた。

 

 これから来るだろうルイズと黒マント(多分アンリエッタ姫)を迎える為に……

 外からは男の号泣が聞こえるがそれはサイレントを掛けて頭の隅に追いやった。

 惚れてから僅か一日で振られたワルド殿に心の中で合掌しながら。

 

 美少女にエロ本見せれば普通に振られるわな……

 

 変態のレッテルを貼られるかもしれないがミスタバサは言い触らしたりはしないだろう。

 まぁバレても僕らは本当に変態だし覚悟完了だから仕方ないか……

 それに今更本名で著書だしてるから知る人ぞ知るってか!

 

 

 

第26話

 

 

 少し前のルイズの部屋

 

 パジャマ姿のルイズとキュルケがベットに寝っ転がりながら駄弁っている。

 

「ねぇルイズ。貴方アンリエッタ姫と面識が有るの?随分真剣に見ていたじゃない?」

 

「んー小さい頃に遊び相手として何度か王宮に行った事が有るのよ」

 

「それにしては随分真剣な表情であのお姫様を見ていたじゃない」

 

「んー何か昔会った姫様と違和感を感じたのよ……こう。小骨が喉の奥に引っ掛かっているというか何というかそんな感じの?」

 

「何で最後が疑問系なのよ?」

 

「気になるけど其処まで気にしない……みたいな」

 

「自国の姫様に向かって酷いわね。でもツアイツも昼間アンリエッタ姫を見て違和感がどうとか言っていたわよ」

 

「ツアイツが?変ね接点なんて無い筈よ」

 

「そうなの?彼にしては珍しく女性に対して酷評してたのよ。でも何か疑っているような目だったわ」

 

 扉を賢慮なくノックされたが、モンモランシかしら?

 

「ルイズーいるー?」

 

「モンモランシ?開いてるわよ」

 

「お邪魔するわ。差し入れのワインよ……キュルケも居たのね、グラス足りるかしら?」

 

「あら良いワインね、良いわグラスを取りに行く序になにか摘む物を探してくるわね」

 

「有難うキュルケお願いね、でも何か羽織りなさい。スケスケよ」

 

「ふふふ……良いじゃない女の園なんだから。男は誰も見てないわ、じゃ待っててね」

 

「キュルケってツアイツの前では控えめだけど女同士だと大胆よね」

 

「まぁアレくらい自信が有るワガママバディなら……ね。全く見ているこっちが恥ずかしいわよ」

 

「ルイズだって負けないくらいスケスケのネグリジェじゃない」

 

「えへへ。お揃いなのよキュルケと……ツアイツにねだって買ってもらったのよ。良いでしょ?」

 

「男に下着を買わせるなんて……意味深ね……やるわね今度私もねだろうかしら」

 

「ツアイツにしか見せないから買って……とか?」

 

「それ良いわね」

 

「誰かー不審者が女子寮に入り込んだわー!逃がさないでー」

 

 廊下から大声が聞こえた、女子寮に不審者ですって?

 

「「キュルケの声だわ……」」

 

 激しいノックの音、誰?

 

「ルイズ私ですアンリエッタです。開けてください……急いで!」

 

「姫様?お待ちください。今開けます」

 

 慌てて部屋の中に入り込む黒いフードを被ったアンリエッタ姫。

 

「ルイズ!今不審者が……居たわって……あら、アンリエッタ姫?」

 

「こ……こほん。皆様今晩は、夜分すいません。ルイズとお話が有ったので内緒でお邪魔しました」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 折角抜け出してきたのにまさか見付かってしまい不審者扱いされるとは……

 しかしこの目のやり場に困る赤髪の女性が上手く廻りも誤魔化してくれたわ。

 私を見つけて騒ぎを起こしたのもこの女性ですけどね……

 

 しかし恋人が夜這いに来ただけだったって説明だけで平気なの?

 誰の所に誰が来たって説明が無かったけど良く有る事なのかしら?

 最近の学院は進んでいるの?それとも私が遅れているの?

 

 まさかルイズも既にお付合いをしている殿方が居るのかしら?

 

「ルイズ、私達はお暇するわね。積もる話も有るでしょうから?では姫様……失礼します」

 

 気を使って貰ったのでルイズと二人きりになれました。さてどうやって話を切り出しましょうか……

 

「ルイズ、お久し振りです……その一部が随分とご立派になりましたね」

 

 貴女もスケスケで目のやり場に困りますよ!

 

「はぁ?お久し振りで御座います姫様。今夜はどの様なご用件でいらしたのですか?」

 

「なんと水臭い……昔のようにアンリエッタとは呼んでくれないのですね」

 

「姫様……昔から呼び方は姫様でしたがお忘れですか?」

 

「嗚呼……王宮の籠の鳥の私では貴女の真のお友達にはなれないのですね?」

 

「姫様はお立場と心構えがアンバランスだ!と私の思い人が言っておりました。

あの人も幼き頃から一線級の貴族達と渡り合っていましたが立場が人の心を強くする……だそうです。

姫様は一国の王女としての強さが有りますか?権力ではない自身の強さですよ」

 

 

 くっ貴女はその思い人に散々揉まれたからそのような立派な胸と強き心があるのですね。

 私はその胸が妬ましい……なぜ幼少の頃は共にペッタンコだった胸にこの差がでたのですか?

 

 男ですか?そうですか。

 

 私もその男を手に入れる為に貴女に協力して欲しいのです。

 

「ワルド子爵とは婚約を解消したと聞きいて落ち込んでいると思いましたがルイズが立派になったのはその殿方のお陰なのですね……」

 

「そうです。私に自信とこの「ないすばでぃ」を与えてくれた相手ですから」

 

 惚気?惚気なのね。一国の王女相手に惚気なんてどんな自信を付けられたのですか?

 

「だから私もその自信を付ける為に……ツアイツ殿を紹介して欲しいのです」

 

 ……あら?なぜでしょう?室温がどんどん下がってる?

 

 ダンダン!ダンダン!ルイズ、何故両方の壁を叩くの?

 

「「話は聞く気は無いけど聞いていたわ……泥棒猫が女子寮に侵入したのね?で、殺るの?」」

 

 扉の外に金色と赤色の鬼が……ヒッ、部屋の中にも桃色の悪鬼が……

 

「「「姫様はツアイツを狙っているのね?それで良いわね?言い訳は聞かないわ?」」」

 

 そして私は正座をさせられ3匹の鬼の前で全てを話したわ。

 ウェールズ様狙いと言った所で怒気がこの胸に対する哀れみに変わったけど……

 

 

 一国の王女に対する仕打ちとしては酷すぎるわ。

 

 何時か必ず仕返しするわよ……この屈辱は忘れない。

 そしてルイズの先導でやっと目的のツアイツ殿の部屋に向かっている……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 本当にビックリしたわ。

 

 最初はツアイツ狙いだと思って思わずキュルケとモンモランシと協力して抹殺しようかと思ったわ。

 でもアルビオンの皇太子狙いなら問題ないわね。トリステインとしても両国の結びつきは良い事だと思う。

 

 そしてこれはトリステインの問題……

 

 つまりキュルケは悪いけど巻き込めないわ。そしてモンモランシにも悪いけど姫様は先にヴァリエール家を頼ってきたの。

 だから今回は2人ともツアイツの部屋に行くのは遠慮して貰ったわ。

 しかし姫様に感じた違和感が乳力不足の微妙胸だったとは……

 内容は全て頭の中に有るけど写本は返してしまったから仕方なく深夜に殿方の部屋に行くの。

 夜這い騒ぎになっても責任をツアイツに取らせれば問題無いし何か有れば姫様が居るから平気ね。

 

 しかし……ドキドキするわ。

 

 今回は正当な理由があっての訪問だからツアイツもお部屋に入れてくれるわよね。

 部屋を間違える事はないわよ、何度も3人で襲撃したからね。

 

「ルイズ……何故か男子寮に侵入する手順に慣れを感じるのですが?」

 

「ええ姫様、ツアイツの部屋には何度も夜に訪ねていますから」

 

「ルイズ……もう大人になってしまったのね」

 

「さてこの部屋です。姫様は暫く大人しくして下さい」

 

「ツアイツいる?ルイズよ、大切なお話が有るのでお部屋に入れて下さい」

 

 ふふふっ思い人の部屋に深夜に尋ねるのはドキドキするわ。これは役得だから仕方ないわよね。

 

「ルイズ?どうしたの?こんな夜遅くに男子寮にきちゃ駄目だろ。今開けるから待っててね」

 

 ツアイツが扉を開けてくれたわ。

 

「今晩はツアイツ。1人お客様がいるけど一緒に良い?」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 待ち構えていたらルイズ達が来た、取り敢えず廊下に居ても問題が有るので部屋に入れる。

 誰にも見られてないな、特にギーシュは居ないな。

 

「夜分に男の部屋を訪ねるとは感心しないよ。ルイズ……そしてアンリエッタ姫ですよね?」

 

「何故?って顔だね……先程ワルド子爵の遍在が教えてくれた。そして引き続き周囲の警戒に当ってくれている」

 

「ワルド隊長が?」

 

「そうです、なにか悩みが有りそうだと部屋を抜け出したのは見逃し警備を続けていたそうです。

ですが流石に男子寮のこの部屋に向かったので不審に思い僕に一報を入れてくれました、彼は今部屋の外で警備をしています」

 

「流石はワルド隊長。浅はかな私の行動などお見通しなのですね」

 

 

 いえ違います。本当はタバサに振られて外で号泣してます。

 

 

「それで時間も有りませんのでご用件をお願いします」

 

「そのきょきょきょ「巨乳化したいんだって姫様は」るるるルイズ何を言ってしまってるの、もっと配慮を……」

 

「ルイズ……教えてあげなよ。既に僕より内容は完璧だろ?」

 

「うん。良いわよツアイツが教えて良いって言うなら」

 

 

 あれ?アンリエッタは固まった……

 

 

「ルイズ?先程のお話ではツアイツ殿しか知らない……と?」

 

「えへ!ツアイツのお部屋に行けるチャンスだったから!」

 

「貴女は一国の王女を夜這いのダシにしたのですか?」

 

「一応お断りしないと駄目ですから。」

 

「……私が同行し私の胸の秘密をバラす必要は?」

 

「なかった……でしょうね」

 

 

 睨み合う2人……

 

 カーン!

 

 どこかでゴングが鳴った気がした!

 ルイズとアンリエッタは幼き日々に遊んだ様に僕の部屋で取っ組み合いの喧嘩を始めた。

 

 あっ!

 

 ルイズのボディーブローが決まってアンリエッタ姫が膝を付いた……

 高々と右手を天に突き出すルイズ!

 

 ルイズWIN

 

 開始から僅か36秒のKOにての勝利だった……

 


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