現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第33話から第35話

第33話

 

 

 タバサさんの受難2

 

 

 麗らかな午後の日差しを浴びながら1人廊下に立ち尽くす……そして再起動に20分を要した。

 この本は危険……何故ガリアの防空の要の連中が既に毒されているの?しかも微妙に人格が壊れている。

 あの団長はもっと厳格だったはずだし竜騎士団は風のメイジの最高峰の連中だ。

 

 ヒャッハーとかモエーとかアヤナミーとか何語なの?

 

 ここはガリアの王宮ではないの?それに何故ジョセフ派の皆が私に普通に話しかけてくるの?

 

 駄目だ……理解不能……兎に角イザベラに会おう。

 

 

 

イザベラ執務室にて

 

 

 

「遅いよガーゴイル!プチトロワに到着したと報告を受けてから1時間以上たってるよ。相変わらず愚図だね!」

 

「……」

 

 相変わらず私には反応なしかい……仕方ないけど遣り切れないね。

 

「それで?成果は有ったのかい?」

 

「……ん」

 

「ふーん……これが噂の著書かい?見た目は普通だね……読んだのかい?」

 

「……いえ」

 

 アレ?何だ?私の前では無表情を貫くこの子にしては分かり易い動揺だね。

 

 さては……読んだのか。

 

「読んだんだね?どうだったんだい?」

 

 意地悪な質問だがこの子の反応を見たい。エレーヌ……もう私達が笑い合う事は無いだろうけど……

 

「読むのは……危険……動揺した……」

 

 おや?会話になるなんてね。なんだろう?秘密はこの本か。

 

「そうかい……アンタが読んで私が読めない訳がないね……こっこれは……エレーヌあんた!」

 

 なっななななんて本を持ってきたんだいアンタ!これはヤバイ……

 婆やから花嫁修業の一環で見せられた春画なんてこれに比べたら……

 

「……?」

 

「……」

 

「……?」

 

「その……何だ。これは本物かい?」

 

「……ん。読むと女性は動揺し男性は服従する……実験した」

 

「実験ってアンタまさかコレを男に読ませたのかい?」

 

「……ん。迎えの竜騎士に」

 

 ばっ馬鹿これはただのエロ本だよ。アンタにコレを見せられた相手がアンタをどう思うのか分かってるのかい?

 

「そいつ等だけかい?」

 

「……ん。竜騎士団団長にも見せた」

 

「なんだって!それでどうしたんだい?」

 

「……遍在でコピーしてた。多分他の竜騎士が欲しいと言ったのをイザベラが欲しいからと断ったから」

 

「ばっ馬鹿じゃないのそれは……って私が?ばっバカー」

 

「……?」

 

 なんだい、この私がエロ本を集めてるって言い触らしたのかい?どんな意趣返しなんだい!

 

「じょ冗談じゃないよ、私はこんな本要らないよ。アンタがお父様に渡しな」

 

「……?」

 

「それと私がこんな本を欲しがってなかったって今迄に言い触らした奴全員にそう言っておいで……これは命令だよ」

 

「……いや、彼らは気持ち悪い」

 

「アンタが言った相手は私をそう思ってるんだよ……とっととお行き……そして全員に言い終わったら報告に来な!早くいけ!」

 

 あの子は……大丈夫なのかい?こんな本を掴まされて騙されたんだよ、それと私の信用を早く回復しとくれ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 やはり女性は動揺した、それに直接この本をジョセフに渡せるチャンスも得た……

 でも……エレーヌなんてもう呼んでくれないと思ったのに……

 

 この本の威力なの?私の従妹姫……友達だったけどあの日以来関係は変わってしまったのに……あんなに嫌がっていた……

 

 仕方ないから竜騎士団にはその様に訂正しに行こう。竜騎士団の詰所は……何だろう?

 

 詰所の扉の内側から凄い怒鳴り声が聞こえる。

 

「バカヤロウ時代は貧乳クーデレの時代だ!アヤナミーイコールシャルロット様だろーが!」

 

「ふん。目先の新しさに走るな!何時の時代もツンデレ最高、つまりアスカーイコールイザベラ様だ!」

 

「あんなの常にツンだけじゃないか?今日のシャルロット様を見せたかったぜ、デレが有ったんだぜ」

 

「はっ!ツンツンツンツンの後のデレが良いんじゃねぇか!」

 

「あの意地悪姫にデレなんてこねーよ」

 

「何だとー!」

 

「やるかー!」

 

 ……しまった。所有者をイザベラと教えたから私の物と思っている者達と対立してしまった……

 

 これは……いける。

 

 この洗脳本は効果が有る!ジョセフに直接見せる!ついにお母様を治す事が出来る……

 

「おおー噂のクーデレアヤナミーが居たぞー!」

 

「……あの」

 

「OHクールガールキター!イェーイKO・RE・GA・クーデレーだー!」

 

「……いや……その……さっきの本だけど……」

 

「「「「「まぁまぁまぁ入って下さい。ムサイ男所帯ですが……さぁさぁさぁ!」」」」」

 

 なに……既に私を支配者として扱うのね。そうなの?でも……でも……

 

「いやっキモイから……怖い……やー」

 

 全速力で逃げる……元来た道を……全速で……全速で……

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 目の前の扉を開けると驚いた顔の……イザベラ?

 

「嫌……気持ち悪い……無理……」

 

 思わずイザベラに抱きついてしまった。

 

「なっなななななんだい?この人形はいきなり抱きついて……なんだい?震えてるのかい」

 

「竜騎士……怖い……部屋に連れ込まれる……」

 

「はぁ?ちゃんと説明しな?ほらお放しったら……誰かこの人形にお茶を入れてやりな」

 

「ほらもう平気だから……ね……落ち着きな……」

 

「……ん」

 

 何だろう、イザベラが優しく背中を撫でてくれる……不思議と落ち着く。

 

「ほらお茶を飲んで……で?どうしたって?」

 

 優しい……イザベラも洗脳してしまったのかな?

 

「竜騎士……目が怖い……部屋に連れ込まれる……いや」

 

「はぁ?アンタを部屋に連れ込むだって……それはどういう意味だい?」

 

 イザベラ執務室の外

 

「ふふん……どうだい!あれがツンデレのデレだ……いつも苛めてる様だが実際は甘々なんだぜ!」

 

「美少女2人……良いな、萌えるぜ!」

 

「このシュチュでゴッドツアイツ先生に作品を書いて欲しいよな……」

 

「タイトルは2人はマジカルプリンセス!……とか?」

 

「サブタイに禁断の従妹姫なんてどーよ!」

 

「「「「「異議なーし」」」」」

 

 駄目だこいつ等(作者も含めて)早く何とかしないと……

 

 

 

第34話

 

 

 無能王ジョセフ

 

 つまらんな、つまらん……この世界には余を楽しませる物が無いのか。

 各国に放った諜報の報告でもどの国にもこれといった人物も出来事も無い。

 僅かに引っ掛かったのがゲルマニアのハーナウ家が親子で乳の大小を争っている位だが……

 余は色事には興味が薄い、なので2つの策を弄した……

 

 1つは我が娘にトリステインにいるハーナウ家次期当主の調査をさせる事。

 もう1つはいけ好かないエロ坊主集団ロマリアの糞坊主を嗾け乳の大小に拘らぬ美乳派を作らせアルビオンから広めさせる手筈だ。

 

 クロムウェルと言ったか……乳の大きさや形などは所詮は女の美醜を競う位の物ではないか。見物よの、己が理想を賭けて争うがよいわ。

 

 ……しかし余はアレか?彼らの括りで行けばミューズしかりモリエールしかり巨乳だな。

 

 ふはははは!そうか余は巨乳派か。ならば巨乳派にも支援をしてやろう。

 

 そうだな……

 

「ミューズ!ミューズよ」

 

「ジョセフ様なんで御座いましょうか」

 

「おおミューズよ!そちはハーナウ家次期当主に接触し力を貸してやれ」

 

「それは……ジョセフ様の操り人形に仕立てよ……と言う事でしょうか?」

 

「そうだな……いや純粋に力を貸してやれ。そして良い時期に裏切ってみろ」

 

「時期とは?クロムウェルを追い詰めた辺りで、宜しいでしょうか?」

 

「それで良い。それと出来るだけ奴の著書を送ってくれ……あれはあれで余の退屈を紛らわす物だ」

 

「お任せ下さい。では今から向かいます」

 

「うむ。そなたの乳ならば奴も喰い付くであろう……なにせ巨乳教の教祖らしいぞ」

 

「お戯れを……我が主以外にこの体を好きにはさせません」

 

「ふふふ……そうか吉報を待つぞ」

 

「ジョセフ様、イザベラ様及び北花壇騎士団7号殿がお見えです」

 

 ふむ?あの2人が一緒にだと……

 

「よし入れ」

 

 なんだ……何時もとは雰囲気が違うな?何だか2人の距離が近い気がするな。

 

「どうした我が娘よ。父に何か報告か?」

 

「はい。お父様……いえジョセフ王、お求めの書籍を手に入れたのですが……」

 

「なんだ歯切れが悪いな?それでどうしたのだ」

 

「ほらエレーヌ、渡すんだろ?」

 

「……ん」

 

「ほぅ?お前が余に直接渡すのか……どれ……なっ!」

 

 こっこれは……得意げに渡されたがエロ本ではないのか……我が娘の前で我が姪がコレを渡すだと……なにか意味か秘密が有るのかこの本は?

 

 ほぅ……ただのエロかと思えばストーリー仕立てなのか……随所に挿絵が入っているが従来の印象派や写実派とも違うタッチだ。

 

 何だかこう?ライトなタッチの絵柄だな……だがこれはこれで中々に劣情を催す図柄だな。

 ふむ……本人は巨乳派と公言しているが貧乳も抑えておるのか……舞台は学園か……なに?

 人外のゴーレムまでが攻略対象だと!なんと節操の無い主人公なのだ。

 

 このセリオとマルチいうゴーレムは中々余の琴線に触れるの……エルフの技術を流用しミューズに作らせてみるか。

 

 なんと!

 

 ここまで心を通わせたマルチを保存の為に取り上げるだと!フザケるな。滅ぼすぞ貴様等……

 

 なんと言うラスト!

 

 しかし読後に心と下半身に残るモヤモヤはなんだろうか……初めてだな。この様な下賎の本に気を奪われあまつさえ続編が気になるとは……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ねぇ?お父様ったら一心不乱に読み耽ってるけどそんなに面白いのあの本?」

 

「それがあの本の効果……直ぐに驚く事になる」

 

「でも娘と姪の前でエロ本を熱読してる父親ってどうなのさ?」

 

「……?エロ本って?」

 

「あんた騙されているんだよ。あれは唯の E・RO・HO・N なんだよ」

 

「しかし……他の皆には効果が有った」

 

「そいつ等は全員変態なんだよ!」

 

「竜騎士団長まで?」

 

「アッチャー……うちの連中は皆ダメダメかも知れないね」

 

「「あっ読み終わった」」

 

「その……なんだ。ご苦労だったな2人共……引き続き任務を続けてくれ」

 

「続編を手に入れたら……お母様の病気の解毒剤が欲しい」

 

「なっ……エレーヌあんた何を言ってるんだい?」

 

「ほう、オルレアン公夫人の病は毒と申すか……」

 

「貴方が飲ませた……」

 

「ふむ……そうか……まぁ良い。ならばこの著書の作者が余に協力をするなら考えても良い」

 

「彼は関係ない……」

 

「どうかな?これからアルビオンで面白い花火が上がるぞ、奴はそれに巻き込まれる」

 

「その動乱を見事押さえ余の元に来るのなら考えてやろう」

 

「イザベラよ。そちも手伝ってやれ」

 

「お父様……エロ本に毒されましたか?」

 

「なっ!その様な事実は無い……が。これは預かる」

 

「もう良い下がれ……」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ふむ、余らしくない対応だったな。

 

 しかし……ツアイツと言ったか。

 

 今迄にこのハルケギニアには無かったあらゆるエロを紡ぎだす男だな、全てが斬新且つ洗練されている。

 これだけの妄想を1人で紡ぎだすとは……変態度ではシャルルよりも上かもな。

 あ奴も危うい程の変態だった……ガリア王宮を巻き込んでの女装趣味などと……

 

 キモイわ……

 

 賛同した貴族どもは全て粛清したが今でも思い出すと怖気が走る……

 

「ジョセフお兄様!大好き(ハート)」などと呼びおって……

 

 なまじ女顔だったので一見美女に見える為に始末が悪かった、男も女も虜にする魔性のオカマ!

 この秘密はシャルロットには教えていない、母親も真実を知り壊れてしまったのだ……

 余が薬を盛った所為と思い余を恨むが良い、余が色事に疎くなったのもその所為だ……

 

 ツアイツよ、期待しておるぞ。全ての敵を下し余の性的興奮を呼び覚ますのだ!

 

 さすれば余の全てを賭けて貴様をハルケギニア一の性の伝道者として末代まで称えよう。

 ブリミルなどとカビの生えた偉人など駆逐してくれるわ!

 

 新たなる偉人……性の伝道者ツアイツ!

 

 楽しみよの、ロマリアのエロ坊主も或いはエロ故に取り込めるかも知れぬな。

 

 

 

第35話

 

 

 イザベラ執務室

 

 

 すっかり毒気の抜けた二人は応接セットに体を預けて溜息をついていた、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。

 

「で?どうするんだい?アンタにそのエロ本を渡したのは誰なんだい?」

 

「トリステイン王国魔法衛士隊グリフォン隊隊長ワルド子爵……」

 

「それは…大物だね。でも何でアンタがそんな人物と知り合えたんだい?」

 

「……その……抱かれた(お姫様抱っこ)時に……」

 

 真っ赤になって俯きボソボソとトンでもない事を言いやがったよこの子は!

 

「ちょちょちょちょっと何だって!アンタ抱かれたって……どうなっているんだい。アンタまさかそれを手に入れる為に体を……」

 

「ちょっと落ち着く」

 

「落ち着けるかー!アンタねぇ女の操をそんな事で奪われたんだよ。どうするんだい?責任取れる相手なのかい?」

 

「責任?(私が)逃げちゃったし……」

 

「相手はどういうつもりなんだい……しかし偽名を使っているアンタじゃ文句も……どうするかね?」

 

「戻ったら相談してみる……」

 

「相談!甘いよ、王族相手にヤリ逃げなんて許さないからね」

 

「ヤリ逃げ?」

 

「アンタはどうなんだい?そいつが好きなのかい?」

 

 あーまた真っ赤になって俯いたよ……どうやら両想いか少なくともエレーヌは悪くは思ってないのか。

 

「取り敢えず学院に戻りな。暫くは北花壇騎士団としての任務は除外してやるよ」

 

「では私は何をすれば良い?」

 

「その子爵をしっかり捕まえてな!あとその本の作者について調べを進めておいておくれよ」

 

「ミスタ・ツアイツの事は大体調べた……」

 

「いやそいつ相当の変態だよ。あんな本を書ける相手だ……まだまだ秘密を持っている筈さ」

 

「分かった……」

 

「その任務は急がないから……あれだ、母親に顔を見せてやりな」

 

「……ありがと」

 

「さぁさぁ早くお行き!」

 

 ……ワルド子爵か……あんなに幼いエレーヌに手を出しやがって……タダじゃおかないよ!

 

「誰か……元素の兄弟を呼びな」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 イザベラが優しい……口は相変わらず悪いが思いやりを感じる。

 ……久し振りにお母様に会える、この本は見せたらどうなるのだろうか?

 

 イザベラには効果が有った……お母様はどうだろうか……

 

「ベルスラン……久し振り……」

 

「おおっ!お久し振りで御座います。どうなさいました?突然お帰りになられて」

 

「イザベラが久し振りにお母様の顔を見て来いと許可をくれた……」

 

「イザベラ様が?」

 

「……ん。お母様は何処?」

 

「今日は容態も良くテラスでお茶を楽しんでおられます」

 

「……そう。暫らく2人だけにして欲しい」

 

「分かりました……ではのち程、お茶のお代わりをお持ちします」

 

 2階のベランダに急ぐ……つい足が速くなる……今日こそお母様の病気を……治す。

 

「……お母様」

 

「シャルロット、良い天気ですね。今日は何をしましょうか?」

 

 お母様は穏やかな表情で人形を抱き話しかけている……

 

「あら何方かしら?」

 

「見せたい本を持ってきた……」

 

「あら?絵本かしら?シャルロットに読み聞かせましょう……」

 

 お母様に本を渡す……これでやっと病が治るかもしれない……

 

「さぁシャルロット……読みましょうね……」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 奥様は穏やかな澄んだ声で本を読み上げていく……

 緑豊かな庭に面するベランダで妙齢の女性が椅子に座り人形を抱き側には美少女が不安げな表情で立つ……

 非現実的なそれでいて美しい午後の情景……しかし読み上げている内容が問題だ!

 

 実の母親に不安げな表情でエロ本を音読させる娘……ベルスランは扉の影で立ち尽くしてしまった……

 まさかシャルロット様もシャルル様と同じく特殊な変態道を突き進んでいるとは……

 

 彼が墓場まで持っていく心算の秘密……シャルル様は女装を愛しあまつさえ実の兄に恋心を抱く変態だった。

 しかも男女共に逝ける変態でも有り多くのシャルル派貴族の男女がその毒牙にかかった。

 

 奥様もジョセフ王が毒を盛ったと思われているが、実は先にその事実を知らされ気の触れそうだった奥様に記憶を弄る薬をジョセフ王が飲ました、と私は思っている。

 正直言ってアレに言い寄られたジョセフ王には同情するし感染された変態を粛清した事には同意する。

 あのまま彼らを放置すればガリアと言う国はエライ事になっていた筈だ。

 しかし薬の副作用か奥様は人形とシャルロット様を取り違えてしまう様になってしまった……

 あのまま発狂されるよりはマシなのだがどうにも後味の悪い結果だった。どうやら朗読も終った様だ……お茶をお持ちしよう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 何故……お母様には変化が見られない?精神作用は既に精神が病に犯されているお母様には無効なの?

 読み終わったお母様が本を差し出した。

 

「有難う。シャルロットも喜んでいたわ」

 

「そう……良かった」

 

 そう言うのが限界だ……やっと治ると思っていたのに効果が無いなんて……失意の内にベランダを離れようとしたらベルスランがお茶を持ってきた。

 しかしお茶を楽しめる気分ではなく辞退して屋敷を去る。

 

 まだ……まだこの洗脳本には可能性は有る筈だ……新作を手に入れよう。

 帰りにベルスランから呼び止められた……言い難そうな顔をしている?

 

「その……その本は何処で手に入れられたのですか?」

 

「……聞こえていたの?」

 

「はい、少しだけですが……」

 

「安心して、次はもっと効果の有る本を探してくるから」

 

「そうではなく……」

 

「これは駄目だった……ジョセフに渡す……新しい本を探してくるのが任務だから」

 

「ジョセフ王がその様な任務を……」

 

「ではベルスラン……お母様を宜しく。また来る」

 

激しく方向性が違ってしまったがタバサの母親を救う為の努力は続く……

 


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