現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第72話から第74話

第72話

 

 トリステイン王宮の廊下にて……

 

 ワルドに喰って掛かるアニエスがいた。

 

「ワルド殿、危険だ!アンリエッタ姫をあの男と引き合わせるのは!」

 

 アニエスは真剣だ。愛しのアンリエッタ姫に、あの様な変態を合わせるなんて……

 

「しつこいですな。アニエス隊長、これはアンリエッタ姫が望まれた事。我らは、姫の安全を確保する事が任務ですぞ」

 

「しかし……あの男は危険なのです!」

 

 ワルドはため息をつきながら「では、姫の意向を無視して取り止めるのですな?貴殿が、アンリエッタ姫に説明出来るのか?」アニエスは黙り込んだ。

 

 何故か、アンリエッタ姫はあの変態に絶大な信頼を寄せている。覚悟と決意を教えてくれたと……

 

「……何か有れば、責任を取れるのですか?」

 

 投げやりに言ってしまった言葉に「何も無い様にするのが、我々の仕事では有りませんか?」そう言われては、何も言い返せない。

 アンリエッタ姫もそうだが、ワルド殿も彼に甘い気がする……アニエスは言いようの無い不安を抱えていた。

 

 そして当日!

 

 ユニコーンに引かれた王家専用の馬車は、周りを銃士隊に囲まれてアカデミーまでやって来た。

 馬車の両脇には、アニエス隊長とワルド隊長。今日の表向きな理由は、ツアイツから贈られた演劇の脚本について。技術的に上演が可能か?の検討だ。

 

「真夏の夜の夢」は、精霊王の夫婦喧嘩など大掛かりな魔法効果が必要な場面が多い。上演するなら、色々と準備が必要だった。

 

「久し振りのアカデミー訪問ですわ。前回は私が至らない事が多く、皆さんに迷惑を掛けてしまいましたから……」

 

 アンリエッタは、誰に言うで無く前回の感想を吐露しながら応接室へ歩いて行く。後ろに従うのは、両隊長だ!

 

「ワルド隊長は共に中へ、アニエス隊長は外で警備をお願いします」

 

 何故か、アンリエッタ姫はワルドに対して過剰な信頼を寄せていた……

 

「アンリエッタ姫、危険では?」

 

 最後まで、ツアイツ危険論を唱えるが、聞き入れられなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 別れ話を切り出した後の様な沈黙も、やっと来たアンリエッタ姫によって終わりを告げた!

 こんなに、貴女を待ち望んだのは初めてですよ!取り敢えずは、演劇の話を進める。

 一段落付いて、出されたお茶を入れ替えて貰ってから話を切り出す。

 

「アンリエッタ姫。恋文は書き上がりましたか?」

 

 突然の質問に、一瞬ビクッとしたが既に想定内なのか落ち着いている。

 

「やはりツアイツ殿は、私の師ですわ!もう私の恋文の件をご存知なんて」

 

 アンリエッタ姫が、なにやら感動と尊敬の目を向けている……正直、貴女と関わり合いになりなくないし、貴女の師でもありません!

 

「学院の女生徒達が騒いでますよ。内容は詳しく分からないみたいですが……」

 

 アンリエッタ姫は、王家の血を引く優雅でカリスマを含んだ笑顔を僕に向ける。しかし、先日逢ったイザベラ姫より王族としては見劣りするね。

 

「素敵な内容にするつもりですわ」

 

 嗚呼……花を背負った笑顔だ!普通なら感激だろう……原作と同じかカマを掛けてみようかな。

 

「アンリエッタ姫……ウェールズ皇太子と始祖に愛を誓う内容でしょうか?」

 

 アンリエッタ姫が、息を呑む……図星か。厄介だな……

 

「流石ですね。私の考えでは、既成事実を全面に出して周りを埋めようと思いました」

 

「アンリエッタ姫……なんて腹黒い。そして参考になるわ」

 

 黙って聞いていたエレオノール様が、ブツブツと危険な方向に……何故その様な狩人の眼差しを僕に向けるのですか?

 先程、解決しましたよね?僕達の関係は……

 

 気を取り直して、アンリエッタ姫を説得する。

 

「アンリエッタ姫……敢えて言わせて下さい。ダメダメです!

恋愛とは、高度な駆け引きも重要です。しかし相手からの愛が一番大切なのです!」

 

 アンリエッタ姫は、僕の話に食い付いて来た!ここは、エレオノール様も合わせて一気に行く。

 

「アンリエッタ姫の努力は認めます。既にバストサイズは1センチは大きくなりましたね。

これなら、巨乳大好きウェールズ皇太子の気持ちの殆どは頂きでしょう。しかし……今の時期に、その内容の手紙は駄目です」

 

 アンリエッタ姫とエレオノール様が、僕のでっち上げな恋愛観に聞き入る。

 

「好意的な相手が、その様な腹黒い一面を匂わせては駄目です。喰われた後なら、どうにでもなりますが未だ駄目です」

 

「しかし……座して待つより行動では有りませんか?」

 

 僕は、出された紅茶を飲んで一息入れて、違う話題を振る。

 

「時に、アルビオン国内で不穏な空気が漂っています。ご存知ですか?」

 

 2人は無言で首を振る。

 

「まだ、公では有りませんが……レコンキスタと言う反乱分子です」

 

 彼女達は、一様に驚いて僕が何故その情報を掴んだかを問い質す。

 

「僕は、いえ僕の教団で、このハルケギニアで起こっているオッパイの情報で知らない事はないのです。

 彼らは、折角アンリエッタ姫が努力し巨乳化してウェールズ皇太子と結ばれる事を邪魔する教義を推し進めています……」

 

 アンリエッタ姫は、ウェールズ皇太子とラブラブする為の謀略の相談が、まさかアルビオン内乱の危険を!

 自分の努力が無になる可能性が有る事に、言葉が出ない。

 

「彼らレコンキスタは、巨乳派たる王家を打倒し、自分達の都合の良い国を作ろうとしています……」

 

「そう!美乳派なる彼らは、折角巨乳化したアンリエッタ姫の努力を無にし、ウェールズ皇太子の性癖を変える可能性が有るのです」

 

「なっなんて卑劣な……」

 

 彼女は、自分の未来予想図を壊そうとしているレコンキスタに悪意を抱いた!

 

 良し!掴みはオッケーだ。

 

「しかし、貴女の好きになったウェールズ皇太子も中々の人物。簡単には洗脳……そう!洗脳されないでしょう」

 

「ウェールズ様……」

 

 アンリエッタ姫は、己が思い人が誉められて満更でも無い表情だ!

 

「此処で、話を戻します。レコンキスタは、まだ勢力は小さい。これを報告しウェールズ皇太子への愛を表す行動も良いでしょう。

しかし、彼らは巧妙だ!直ぐに潜伏し次に行動を起こす時は、手に負えないかもしれない……」

 

「しかし、危険を知って黙っているのは裏切りでは?」

 

 アンリエッタ姫は、すっかり恋する乙女の顔だ。反対に、エレオノール様は……ちょっと怖い顔です!

 アレは、私は聞いてないわよ?って拗ねる手前かな。

 

「良いですか?反乱は防ぎ切れないでしょう。ならば、なるべくコントロール出来る状況で起こさせるべきです」

 

「「……………」」

 

 最早、聞くだけの2人。

 

「そこで、貴女の愛が問われます。アンリエッタ姫……貴女は、ウェールズ皇太子の為にトリステインを巻き込む覚悟が有りますか?」

 

 アンリエッタ姫は、目を瞑りじっと考え込んでいた。

 

 そして、静かに目を開くと決意の籠もった目で僕を見て「元より覚悟は出来ています。この国を巻き込んでも、私はウェールズ様と添い遂げたい」国をも犠牲にしてまで、愛欲に走る女……

 

 一番輝き、一番手に負えない女が此処に居た!

 

「良い覚悟です。僕も巨乳派教祖として、彼らを許せない。アンリエッタ姫、手を組みましょう」

 

 僕は、ソファーから立ち上がり彼女を握手を求めた!アンリエッタ姫は、迷う事なく僕の手を握り返した!

 

 ここに、トリステイン側からは「稀代の謀略王女」アルビオン側からは「防国の聖女」と言われるアンリエッタ姫が誕生した瞬間だった!

 

 

 

第73話

 

 

 アカデミーの応接室!

 

 ここで、これからのハルケギニアの未来を決める悪巧みが進行していた。

 アンリエッタ姫は、怒涛の展開にイマイチ理解が怪しかったが、ツアイツの話に乗ればウェールズ皇太子と結ばれる事を本能で理解していた。

 エレオノールは、ツアイツの悪巧みを聞いて一時は怒りを感じた。

 しかし、彼が悪意が有ってアンリエッタ姫を……このトリステイン王国を巻き込むつもりが無い事は、信じていた。

 

 後でしっかりO・HA・NA・SHIするつもりだが、今はこの話の内容を把握する事に努める。

 何だかんだと、ツアイツの事を信頼し、自分が何か手伝えるかを探す為に……

 

「話を進めますね」

 

 あれから、紅茶を入れ替えて貰い一旦休憩してから謀を再開する。

 

「アルビオンの内乱は決定事項です。そして、これは我々だけの秘密……良いですね」

 

 アンリエッタ姫は頷いて先を促す。

 

「多分、アルビオン北部から反乱の狼煙は上がります。そして国を二分する戦いは熾烈を極めるでしょう。しかし、アルビオンの腐敗貴族はこれでハッキリとしますね」

 

「つまり、国の膿は全て敵になるのですね?」

 

 僕は頷いて肯定する。

 

「そして、状況は拮抗するでしょう。この辺は、僕らも協力しますから……」

 

「そして、この拮抗した状況を打破するのが……アンリエッタ姫の愛です!」

 

「私の愛が、アルビオンをウェールズ様を救うのですか?」

 

「そう!この状況でこそ、貴女の愛が唯一正当にアルビオンとトリステインに伝わります。今、貴女がウェールズ皇太子に愛を囁けば……」

 

「囁けば?」

 

「トリステイン貴族達は、アンリエッタ姫が国を差し出して愛を手に入れようと思いますね。つまり属国化です」

 

「そんな……」

 

「残念ながら、始祖の血を引く王家の最弱はトリステインです。しかもトップは空位。

そんな状況で、王位継承権一位の貴女がアルビオンに輿入れ。この国は割れ、貴女は売国の姫の烙印を押される」

 

 アンリエッタ姫は、この結末は想像してなかったのだろう……真っ青な顔になりソファーに深く座り込んでしまった。

 

「アンリエッタ姫……状況が違えば、貴女は防国の聖女にもなれて、ウェールズ皇太子の愛も手に入りますよ……」

 

 ここで、突き落とした後に悪魔の囁きをする。

 

 売国の姫から防国の聖女……ウェールズ皇太子の愛。ツアイツの謀は最高潮に達した!

 

「レコンキスタとアルビオンの戦いが拮抗した時に、貴女が無償の愛を持ってアルビオンに協力を申し出るのです」

 

「……それと恋文が関係するのですか?」

 

 アンリエッタ姫は、イマイチ理解が追い付かない。それはエレオノール様も同じようだけど……

 

「事実等はどうでも良く、このタイミングで貴女とウェールズ皇太子が始祖に愛を誓った(と、貴女が捏造した)手紙の存在が広まる。

アルビオンにとって、トリステインの助力が欲しい。しかし、面子等が邪魔して言い出し辛い。そこで、覚えは無いけどその様な手紙の存在を知れ渡れば……」

 

「これを信じ(ようとし)たジェームス一世は、ウェールズ皇太子との婚姻を進めようとしますね。向こうから、お願いしてでも……つまり立場は此方が上で」

 

 エレオノール様が、正解に近い回答をする。実際は、滅亡か婚姻か!まで、追い込んでからこの話を持って行くつもりだけど。

 

「そうです!アンリエッタ姫が、自らがウェールズ皇太子の愛の為に、アルビオンの国民の為に、高貴な始祖の血を引く王家を救う為に、愛する人を助ける為に、アルビオンに援軍を自ら指揮して送るのです!」

 

「それは……私が、愛を掴む為に!」

 

 良し!駄目押しをもう一つ!

 

「この国にも、レコンキスタに取り込まれた裏切り者が居ます。彼らは反対するでしょう!しかし、反対する連中(リッシュモン達)こそ裏切り者なのです。

そして賛同する貴族は貴女の味方(ヴァリエール、ド・モンモランシ、多分グラモン)です。

貴女が彼らを処罰し、この国をトリステインを正し、そしてアルビオンをも救う……どうです?」

 

「私、やります!両国を救ってみせますわ!」

 

 アンリエッタ姫は、僕の両手を握り締めて騒ぎ出した。そのはしゃぎっぷりは、外まで聞こえてしまった。

 

 バタンっと扉が力強く開けられアニエス隊長が飛び出してきた。

 

「姫様、ご無事ですか?きっ貴様ぁー姫様から離れろ!変態が移るわー!」

 

 アニエス隊長が、応接室に乱入し抜刀して僕に切りかかって来た……

 が、ワルド殿が剣杖で彼女の剣を払い、速攻転移してきたシェフィールドさんがアニエス隊長の首を掴んで取り押さえた。

 本来は、所属する姫の方を守らねばならぬワルド殿。王族の会話を盗み聞きして、魔法で乱入したシェフィールドさん。

 逆上して、アンリエッタ姫を危険に晒したアニエス隊長。

 

 そして、咄嗟に反応出来なかった僕とエレオノール様……

 

 この緊張感を壊したのは、いえ更に緊張感を引き上げたのはシェフィールドさんだった。

 

「女、ツアイツ様に剣を向けたな……言い訳も理由も今は聞かないわ。だって、これから拷問して聞き出してから殺す」

 

 壮絶な笑み……これが、黒衣の魔女たる彼女の本来の姿。こんなシェフィールドさんは嫌だ!

 

 そして僕の方を振り向き、一転して穏やかな笑みを浮かべ「怪我は有りませんね?すみませんでした。驚かせてしまって……この女は処理しておきますから安心して下さい」そう言うと、アニエス隊長を引き摺って転移しようと……

 

「ちょちょっと待ってー!凄く助かったけど、彼女は単にアンリエッタ姫を守りたいだけだっから、ね?」

 

 シェフィールドさんの手を握り、彼女の目を見て懇願する。人が苦労しているのに、当のアニエス隊長は恍惚の表情をしている。

 

 何か「お姉様、素敵……」とか聞こえているのは、気のせいと思いたい。

 

 シェフィールドさんは、ヤレヤレ的な表情でアニエス隊長を離すと「女、次は無いわよ。私もツアイツ様と出会ってから随分丸くなったわね……」と呟くと、颯爽と転移していった。

 

 まるで台風の様な、そして良いトコ取りな彼女……何故、恍惚の表情なんだアンタ?ワルド殿が、アニエス隊長の腕を掴み、取り敢えず外へ出した。

 

「「……ツアイツ殿。今の女性は?」」

 

 アンリエッタ姫とエレオノール様が、再起動して聞いてきたが……

 

「……僕の護衛です。とある人から派遣して貰ってます。そして、派遣してくれた人の寵妃(予定)です」

 

 それしか言えなかった。流石に、ガリア王の腹心で彼を填めようと共に暗躍してます!は、言えませんし。

 

 こうして、最後はグダグダだったが、アンリエッタ姫と足並みを揃える事は出来た。

 そして報告では、アニエス隊長はガチレズだが、お姉様属性のSの筈が、M要素も有りと分かった。

 なんで、トリステイン関係の女性達は面倒臭いのだろうか……

 

 僕も疲れて帰りたいのだが、アンリエッタ姫を送り出した後で、エレオノール様に捕まった。

 アンリエッタ姫みたいには騙せないって事だ。そして一連の事件を彼女にだけは、直接話してなかったのを思い出した。

 

 そう、カトレア様の件も含めて……

 

 

 

第74話

 

 

 アンリエッタ姫を見送る。

 

 怒涛の展開で、最後は腹心の筈の銃士隊の隊長が乱入するなど、普通では考えられない展開だったが……

 何事も無かった様に、アンリエッタ姫の馬車を両脇から護衛している隊長ズ……

 それと、何か企んでいてそれが成功した時の顔のツアイツ。

 

 絶対何か企んでいる……危険と分かれば、関係者にも黙って処理する。極力巻き込まない。この子は、そういう子だ。

 

 多分、先日知らされたガリア絡みなのだろう……お母様からの手紙では、カトレアの治療の目処もたったらしい。勿論ツアイツが、だ。

 今まで私達が散々苦労して探し回っても駄目だった事を何の対価もなく、ポンと提示したらしい。

 

 条件は有ったが、無いに等しい物だ。ルイズと婚約してしまったが、危なかった。

 カトレアの病気が治れば、次女だし他国の貴族に送り込む事は可能だ。

 

 少々年は食ってるが、カトレアの怖さはあのホワホワしてるけど、押しが強く勘が良い事だ。

 ヴァリエール家の血筋を顔しか受け継いでない、性格と乳は誰に似たのか分からない三姉妹最強の乳を持つ女……

 しかも、今まで男性との接点も少なく超箱入り娘だし、自分を救ってくれた男に尽くせと言われても断らないだろう。

 ルイズよりも、手強いのがカトレアだ。

 

 知らない内に「あらあら、まあまあ」とか言って、関係を結んでしまうかも知れない……

 

 それはさて置き「ツアイツ殿……ちゃんとお話をして貰いますよ?」彼の首根っこを掴んで、再度ラボに入る。

 

 納得する迄、話し合わないといけないわね。今夜は帰さないから……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 豪華な馬車の中、アンリエッタはソファーに埋もれながら先程の話を吟味する……流石は我が心の師。

 まだ二回しかお話していませんが、会う度に人生を変えさせられる……

 

 前回は、決意と覚悟を!

 

 今回は、我が婚姻について……しかも両国の膿を出す事まで視野に入れている。

 

 凄いわ!そこに痺れるし、憧れてしまう。謀略では、ウチの王宮雀など足元にも及ばないのではないでしょうか。

 しかし、私の考えの甘さには本当に嫌になるわ。

 同じ事をするにしても、時期を誤るだけで、こんなに差がでるなんて……

 ミスタ・ツアイツには、どんなお礼をすれば良いのかしら?

 

 それと、彼に剣を向けたアニエス隊長……少し、お仕置きが必要ね。

 

 何となく、ワルド隊長も私よりミスタ・ツアイツを優先した様な……それは考え過ぎね。彼の忠誠心を疑ってはいけないわ。

 

 そうだ!恋文の内容も、ミスタ・ツアイツにチェックして貰いましょう。その方が、安心だわ。

 

 ふふふっ!

 

 ウェールズ様以外の殿方の事を考えて楽しくなるなんて初めてね。

 ルイズと結ばれるらしいし……私達と合同結婚式なんてどうかしら?

 これなら、トリステイン、アルビオンそしてゲルマニアの友好に貢献出来ないかしら?

 

 うん。ミスタ・ツアイツには内緒のサプライズになるわね。

 

 これ位しかお礼が出来ないのが、今の私の立場……やはり、もっと発言力を高める事を探さなくては。

 ツアイツが抑えたと思った、アンリエッタ姫の独走癖はパワーアップして彼にリターンされていく……

 

 

 

 

 その脇を馬に乗り護衛しているアニエス隊長は、馬に揺られながら思考に耽る……感情的に、あの変態に切り掛かってしまった。

 あの間合いで止めたワルド隊長の力量も凄いのだが、この私を良い様にしてくれた……あの、黒衣のお姉様は何方なのだろう?

 

 あの怜悧な瞳に、全身から漲る殺気。嗚呼……どうにかなって、しまいそうだ。

 

 あのお方のお名前は何というのかしら?あの変態との関係は?部下?まさか恋人?いやいや、そんな事は無いだろう。てか、それは嫌だ。

 

 

 

 アカデミー見送り組

 

 

 王宮組が帰る中、ツアイツの首根っこを掴んで引き摺っていく。

 今度は私専用のラボに通して、先程よりも小さめの応接セットのソファーに座らせる。

 

「ツアイツ殿……貴方の事ですからアンリエッタ姫に話した事が全てでは無い事は分かってます。さぁキリキリと話しなさい」

 

 誤魔化されないように、真剣な表情で問う。貴方は、私達を裏切らない……それは信じている。

 ツェルプストー辺境伯やお父様に話した事と同じ内容で有ろう事を話してくれた。

 まさかガリアのジョゼフ王のナニが、アレでこの事件を引き起こしたなんて……流石に、淑女だから粗チン云々と罵らなかったけど。

 彼もその件では、何故か周囲を警戒していたわ。

 

 シェフィールドとか言う女が乱入するとか何とか……彼女は、絶対何処かで聞いてるらしい。彼のプライバシーって……深く、本当に深く溜め息をついた。

 

「貴方という人は……確かにそれなら上手く行く確率は高いわ。ド・モンモランシとグラモンの取り込みの目処も有るのね。」

 

 彼は、黙って頷く。

 

「ド・モンモランシの娘を誑かして、実家を建て直して嫁にするのね?」

 

 ルイズ以外に既に女を作ってるなんて、何で私にコナを掛けないのよ?何かムカムカするわ……

 

「えーと……怒ってます?」

 

「ええ、かなり怒ってます!」

 

「しかし、かの家の協力は必要ですかr」

 

「お黙り!今夜は飲むわよ。付き合いなさい」

 

 さて、部屋で呑むか外に繰り出すか……どうしましょう?先ずは、トリスタニアのレストランで豪華に2人きりで夕食。

 その後、アカデミーに送って貰い、私の部屋で飲み明かしましょう。彼の計画には、全面的に協力するわ。

 

 でもね。アンリエッタ姫の恩人となり、トリステインに貢献するって事は、アルビオンの危機を救うって事も合わせるとね……

 

 貴方は、トリステインとアルビオンを救った英雄になるのよ。しかも、計画が成功した時の、アンリエッタ姫の影響力は絶大になっている。

 彼女が、イエスと言えばね……言わせるけどね。始祖の血を引く私達を娶ろうとも文句は出ないのよ?

 

 何処からも、文句は言わせないわ。今回の件で、貴方の見返りが殆どないのは、余りにも可哀想だから……仕方ないから、私もご褒美に付けてあげる。

 家督は元気になった、カトレアにあげるから平気ね。

 

 さてと、今夜は美味しいお酒が呑めるかしら!

 


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