現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第75話から第77話

第75話

 

 ここに、風を極めし2人の変態紳士が、心の主たるツアイツの役に立つ事は何かと悩んでいた。

 先日、知り合ったトリステイン王国の魔法衛士隊グリフォン隊隊長と言う、要職に就きながらもゲルマニア貴族のソウルブラザーと懇意にしている彼。

 

 正直羨ましい!

 

 彼の自由さと思い切りの良さが。その同志ワルドから、連絡が有った。

 アルビオンの糞野郎共が、ソウルブラザーにちょっかいを掛けてきているとの事だ。

 話に聞く、レコンキスタとアルビオン王家の間者か……流石にアルビオン王家側を処理する事は問題が有る。

 しかし、レコンキスタ側は容赦はしない。ソウルブラザーには、この様な汚れ仕事を教える必要は無い。

 彼の創作意欲に影響が出ては、全ての乳愛好家達から責められてしまうし、何より自分を許せないだろう。

 だから、我ら風の紳士がその任にあたる。人知れず、処理をする為に……

 

 そして、我が遍在を同志ワルドの元に送り込んだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 トリステイン魔法学院の外壁周り。

 

 何だ?何なんだ、この学院は?今回の任務は、正直舐めていた。たかが、小国の学生を拉致るか殺すかするだけの簡単な任務。

 最初は順調だった。トリステイン王国に潜入する事も、何も問題は無かった。

 

 そして、魔法学院の塀を飛び越えた瞬間に……鋭い殺気を感じ、身を捩らねばそれだけで死んでしまう威力の風の魔法が俺を襲った。

 たまらず塀の外側に転げ落ちる、受け身も出来ず呻いてしまう。

 腐っても、貴族の子弟が集まる魔法学院。それなりの人員が配置されていたのか。

 しかし、逃走には自信が有ったのだが、その隙さえも与えてくれなかった。

 

 相手は1人。それも塀の内側に居るのかと思った。転げ落ちた後に体勢を立て直して逃走を図ろうとする。

 しかし、突然の衝撃に四肢が痺れ、そのまま崩れ大地に顔を付けた……視界の隅に杖を構えた男が映る。

 

 嗚呼……トドメを刺されるのか。ゆっくりと意識が遠退いていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何処の誰だか知らないけれど、双子の月だけが知っている黒マントのダンディー2人が、たった今捕縛した間者を見下ろしている。

 

「今回はどっちかな?」

 

「さぁ?どちらにしても、只ではすまないけどね」

 

「彼女の尋問に、耐える事が出来れば助かるかもな」

 

「アルビオン王家側なら、素っ裸で王宮に届けるそうだぞ」

 

「レコンキスタ側なら、そのまま何処かに消えるらしいな……」

 

「全く、我らがソウルブラザーも恐ろしい女を御しているものだ」

 

「……全くな」

 

「さぁ学院の連中に気付かれる前に処理しよう」

 

「ツアイツ殿には、こんな闇は見せてはならんからな」

 

「全く、あの女と良いお主と良い過保護だぞ」

 

「貴様もな」

 

「ふふふっ!まあな」

 

「さぁ運ぶか」

 

 

 何事も無かった様に静けさを取り戻したトリステイン魔法学院。

 ツアイツをどうにかしようとした連中は、彼を慕う有志達の手で闇に葬り去られた。

 片や、送り込んでも音信不通。片や、真っ裸で王宮の前に放置される。

 

 処理された間者の数が20人を超える頃には、どちらも送る余裕は無くなった。

 

 こうして、ツアイツの知らない内に間者騒動は収まった。

 生き延びた間者の報告では、全て黒衣の男2人と女1人の手練れにヤラれたと報告された。

 巨乳教祖には、黒衣の守護者達が居る。手を出すと、確実に痛い目を見る!そんな噂が、アルビオン全土に広がった。

 

 噂をする者達の中には、アレだけの著者なんだし優れた護衛が居るのも当たり前だと認識されていた。

 実際は、ガリアとトリステインの実力トップな連中が自主的に集まったトンデモな集団なのだが……

 

 世界には知らない方が幸せな場合も有る。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 日に日に状況は悪くなる。既に、間者として使える者は居ない。

 トリステイン魔法学院に送り込んだ連中は、全て音信不通だ。アルビオン貴族の取り込みは、全体の二割と少しだ。

 既に、美乳派など唱っていたのは遠い昔。金と女と、成功後の要職の空手形で取り込むしか方法は無くなった。

 幸い、あの女からは追加の資金を貰えた。

 

 20万エキュー、これなら金に物を言わせて三割は取り込めるだろう。

 

 傭兵を雇う事も始める。なりふり構わず、聖地の奪還もスローガンに入れた。

 

 私はブリミル教の司教だ。聖地奪還を唱えれば、敬虔な信者を巻き込めるだろう。

 始祖の血を引く王家と言えども、聖職者たる私を殺す事が出来るかな?教皇に問いたださねばならないだろう。

 

 その間に、攻め取ってみせるわ!

 

 私の名前も出してしまったし、後には引けぬのだ。見ていろよ!ハーナウ家の小倅め。

 アルビオンを平らげたら、次は貴様の番だ!

 

 

 

 アルビオン王国ハヴィランド宮殿

 

 

 時を同じくして、ウェールズ皇太子も上がってきた報告書を読んで、深い溜め息をついた。

 国家の諜報機関が手玉に取られた。しかも、殺さずに真っ裸で王宮前に放置とは。

 

 此方の所為だと分かってるんだぞ!と、言われたも同じだ。

 

 しかも、二度とは任務に就けない程の精神的ダメージを与えて……そして彼がやったと言う証拠も残さずに。

 

 ツアイツ・フォン・ハーナウ。

 

 何者なんだ?この私が、プリンス・オブ・ウェールズと呼ばれる私が!何の手立ても打てぬとは。

 仕方ない。彼は今、トリステイン魔法学院に居る。ならば、アンリエッタ姫を頼ろう。

 彼女が私を見る目が、猛禽類の様で余り会いたくない微妙な胸の女性だが……裏で駄目なら表で接触を図るしかない……か。

 

 ウェールズ皇太子は、執務室で溜め息をつきながら、アンリエッタ姫にどう頼むか考えた。

 他国の王女を介し、更に他国の貴族を呼んで問題無く会える方法を……やはり、園遊会等に招待しさり気なく接触する。

 しかし、ゲルマニアのハーナウ家とは、直接の伝手は無い。

 

 共通の知り合いを介するしかないか……

 

 それとも、魔法学院に生徒として適当な部下を送り込む?いやそれはそれで、問題が有るだろう。

 ぐだぐだ悩んでいるが、要はアンリエッタ姫に会いたくないだけだった。

 

 ウェールズ……情けない顔をしてるぞ。

 

 

 

第76話

 

 おはようございます、ツアイツです。

 

 今日は久し振りの虚無の日です、日本人的な感覚だと日曜日ですね。

 日頃の感謝を込めて、シェフィールドさんをトリスタニアに誘ってみました。

 

 何故か仲の良くなったソフィアは夕方に合流して、他にもルイズ達も一緒に「魅惑の妖精亭」で夏季休暇前の打ち上げの予定です。

 

 本当なら、ビスチェウェイトレスVSメイド軍団だったのだが、例の件で僕の周りがきな臭くなったので、ハーナウ家に帰しました。

 エーファ達を危険に晒す訳には行かないからね。

 さて、今回の移動方法ですが、マジックアイテムで移転ではなく、前に使った馬ゴーレムに二人乗り。今回は、僕が後ろに座ってます。

 やはり手綱はシェフィールドさんですが、長閑な初夏の日差しを浴びながら、パカパカと走ってます。

 

 この馬ゴーレム、結構乗り心地が良いんです。

 

 シェフィールドさんとの会話は普通に時事ネタが通用します、驚きです!流行の食べ物とか、衣服とか……

 こうしてると、本当に頼りになるお姉ちゃんです。転生前も姉は居なかったので、新鮮な感情です。

 

 神の頭脳!

 

 ミョズニトニルンな彼女の気を引くために、うっかりインテリジェンスソードが有ると言ってしまった……すまん!まだ見ぬ、デルフリンガーよ。

 彼女にプレゼントする予定だし、使い手じゃないけどマジックアイテムの君ならミョズニトニルンの方が、お似合いだよ。

 トリスタニアについて、先ずは気の利いた喫茶店?で喉を潤す。

 

 今日の彼女は、長い黒髪に合わせて、黒のロングドレスを纏っている。

 黒曜石から削りだした様な艶の有る黒髪に、白磁の様な滑らかな白い肌。最近良く見せてくれる、穏やかな微笑み。

 体のラインを強調するドレスは、スタイルに自信がなければお笑いレベルの逸品なのだが……完璧に着こなしている。

 

 ぶっちゃけ、客の視線を独り占めです!

 

 髪の色が違うけど、どう見ても恋人同士ではなく姉弟にしか見えない雰囲気な2人……

 周りの貴族共が、そわそわしだした……馬鹿な貴族に絡まれない内に目的の武器屋へ行く。

 原作を思い出しながら歩いていくと、良くゲームで有る板に剣と盾が描かれた看板を見つけた!

 

 迷わず入る。

 

「いらっしゃい!……貴族様?ウチは真っ当な商いをしておりやす。何かご用ですかい?」

 

 警戒心バリバリな親父が、怪しい敬語?で話し掛けてくる。

 

「ああ……問題を起こすつもりは無いんだ。こちらのレディがマジックアイテムを収集していてね。

ここに、口の悪いインテリジェンスソードが有ると聞いたんだ。見せてくれないかな?」

 

 フレンドリーに話し掛ける。親父は、改めてシェフィールドさんを見て……彼女に微笑みかけられて親父はデレデレだ。

 

「へい!ありやす。しかし、小汚く口の悪い駄剣ですから、お美しい若奥様のお気に召すか……」

 

 言葉は遠慮がちだが、ガサガサと樽の中を漁って、見せる気満々なんだが……

 

「けっ!いい年こいてデレデレするなよ親父!気持ち悪りーんだよ」

 

「五月蝿えな!大人しく行儀よくするんだぞ……若奥様、コレでやす」

 

 そう言って、恭しくシェフィールドさんに、抜き身のデルフリンガーを差し出す。

 

「あら、有難う」

 

 にっこりと微笑んで、親父からデルフリンガーを受け取る。彼女の額のルーンが、僅かに輝き出す。

 

「ネーチャン……神の頭脳か?すると隣の糞餓鬼が虚無の……」

 

 ゴギャ!っと凄い音がしてデルフリンガーの柄の部分を踏みにじるシェフィールドさん。

 

「貴方……ツアイツ様に対して口が悪いわよ。次に生意気な口をきいたら……分かるわよね、始祖の剣なら?」

 

 一転して、しっとりとした美女が凶悪な女王様に豹変した事で、親父がカウンターから飛び出して土下座した!

 

「すいやせん。許して下せえ。ほら、お前も謝れ!」

 

「おっおう!すまねぇ。もう言わないったら言わないぜ」

 

 平謝りな2人?1人と1本?

 

「シェフィールドさんどう?面白そうな剣でしょ?」

 

 シェフィールドさんはデルフリンガーを踏みつける。

 

「ええ、擬態してるけど、面白そうな剣よ。ツアイツ様、コレの本来の姿も知ってるのね?」

 

 グリグリとデルフリンガーを苛めながら、にこやかに質問してくる。

 

「多分だけど、ね。確信が無かったから見て欲しかったんだ。親父、頭を上げてよ。この剣は貰うから……」

 

 そう言って、親父を立たせ200エキューの入った皮袋をカウンターに置く。

 

「おい親父!オレを売るなよな、後生だからよー売らないでー」

 

 親父は金貨を数え終わると「毎度あり!この鞘に入れれば大人しくなりやすから」あっさりデルフリンガーは売られた。

 

「ツアイツ様行きましょう。ほら、さっさと元の姿にお戻り」

 

 デルフリンガーは、刀身を輝かせると見事な剣に変身した。

 

「おどれーた!あの小汚い剣が……」

 

 驚く親父をそのままに、僕らは店を出る。

 

「やはり本物かな?」

 

「そうですね。6000年の重みを感じます。多分ですが、初代ガンダールヴの使用した剣かも知れませんね」

 

「シェフィールドさんの役にたつかな?」

 

 彼女は首を傾げて考えて……

 

「どうかしら?私は剣を振り回す接近戦より、マジックアイテムで広範囲な殲滅戦が本来の戦闘スタイルだから……」

 

 サラッと、ヤバい発言来ました。シェフィールドさん、マジで無双出来るんだ……

 

「そうか……役立たずか、残念だ」

 

 落ち込み気味に言ってしまったら凄い勢いで抱きつかれた。

 

「いえいえ、嬉しいですわ。価値は有る物ですし。何よりツアイツ様からの贈り物ですから大切にしますわ」

 

 にっこりと微笑む抜き身の剣を持つ美女。周りが遠巻きに眺めて、何やらボソボソ話している。

 

 衛士に通報される前に、「魅惑の妖精亭」に行こう!

 

 

 

第77話

 

 

「魅惑の妖精亭」

 

 此処に来るのも久し振りだ。シェフィールドさんを伴い店に入る。

 

「すいませーん。今日は貸切なんで……あら、ツアイツ様いらっしゃいませ。少し早いですよ?」

 

 ジェシカが、笑顔で出迎えてくれる。

 

「まだ、こんにちは!かな?少し早いけど良いかな?」

 

「どうぞ!入って下さい。……あの、貴女はシェフィールドさんですか?ソフィアから聞いてます」

 

 シェフィールドさんは、最近仲の良いソフィアの知り合いで有り、多分僕に対して好意的な彼女が気に入ったのだろう。

 

「宜しくね。ソフィアの友達なのね?お名前は?」

 

 にっこりと微笑みながら手を差し出す。ジェシカはワタワタして、自分の掌をビスチェで拭いてから握手をした。

 

 真っ赤になりながら「じぇジェシカです!ソフィアとは、出身が同じ村で……タルブって言う葡萄の産地の……」んーしっかり者の彼女が、慌てているのは微笑ましいのかな?

 

「ちょっと話が有るので先に奥のテーブルに行って良いかな?」

 

 ジェシカに断って奥のテーブルに座る。シェフィールドさんに確認したい事が有った。

 

「シェフィールドさん。確認したいんだけど……」

 

「何ですか?改まって」

 

「その……虚む……」

 

「どうぞ!まだお酒は早いので、果汁水ですが」

 

 ジェシカが気を利かせてくれて、飲み物と簡単な料理を出してくれた。

 

「……うん。有難う」

 

 ジェシカは、シェフィールドさんを気にしながら……チラチラと盗み見ながら配膳すると、お辞儀してから下がっていった。

 

「シェフィールドさん人気者ですね」

 

「…………?」

 

「気を取り直して……シェフィールドさんは、神の頭脳ミョズニトニルンですよね。だから主のジョゼフ王は、虚無の使い手」

 

 シェフィールドさんは、にこやかに頷く。

 

「王家の血を引く者で魔法が苦手な者は……虚無の可能性が有る。ならば、魔法が失敗で爆発してしまうルイズは……」

 

「トリステインの虚無使いだと?」

 

 言葉を引き継いでくれた、シェフィールドさんに頷く。

 

「ほら、駄剣もお聞き」

 

 デルフリンガーを鞘から少しだけ抜いて話し掛ける。アレ?汚い剣に戻ってる?

 

「デルフリンガー、刀身が汚くなったよ?」

 

「ふん。俺様はガンダールヴが本来の使い手。

さっきはこのネーチャンに脅されて戻っちまったけど、本来は心の震えを感じて真の力を発揮するのよ!あと、長げーからデルフで良いぜ!」

 

 デルフはやはりガンダールヴにしか使えないのか?心の震えが強いと、誰でも使えるのかな……

 

「そんで、この時代の虚無は目覚めてるんだな?」

 

 僕は、シェフィールドさんを見る、黙って彼女は頷いた。

 

「我が主は、ガリアの虚無として目覚めてるわ。あと、トリステインにそう思われる娘が居るわ」

 

「虚無の覚醒と言うか、使える様になるのってどうするのかな?」

 

「さぁ?私が召喚された時は、主は虚無を使いこなしていたから……駄剣、知ってる?」

 

「駄剣はヒデェよネーチャン……いや姉さん」

 

 シェフィールドに一睨みされて大人しくなる。

 

「それで、覚醒の切欠って知ってる?」

 

「んー、何せ6000年も前の記憶だからなー?何だっけかなー?」

 

 本当は知ってるけど、教えてもらった事実が欲しいんだけどな。剣が、うんうんと唸りながら考えている。シュールだ!

 

「話は変わるけど、ブリミルや初代のガンダールヴってどんな人?」

 

「んーもう記憶も擦り切れる昔だからなー。でも使い手の娘っ子は……アイツは、アイツ等は良く喧嘩してたなー確か名前が……」

 

「ああ、先に来てましたか、ツアイツ殿」

 

「お久し振りです。ソウルブラザー!」

 

 肝心な事を聞けそうな時に風の変態コンビが来た……

 

「お久し振りです、カステルモール殿。えーと、本体ですか?」

 

「ええ、本体です。同志ワルドより、無事学業を納め夏期休暇に入られたとお聞きしましたのでお祝いと、明日以降学園外に行かれるそうなので護衛を兼ねて来ました」

 

「しかし、本来の仕事が?」

 

「大丈夫です。私も休暇をイザベラ様より頂きましたので。それに遍在も置いてきました。これが、イザベラ様よりの報告書です。

なにより、この場にジャネットが来て夏期休暇中付きまとう方が良ければ代わりますが……」

 

「イザベラ様の意地悪。分かりました。歓迎します、カステルモール殿」

 

「ツアイツ殿、折角なので、私も同行します。それにタバサ殿にも声を掛けておきました」

 

 何故か、何故だろう?得意気に報告するワルド殿を憎らしいと思うのは……

 

「トリステインの大貴族、ド・モンモランシ領に行くメンバーがコレか……先方に失礼の無い様にして下さい。くれぐれも失礼の無い様に!」

 

「「はっはっは!元より承知していますぞ」」

 

 暫く胃薬とは縁が無かったけど、明日からは必要かもしれない……がっくりと机に突っ伏した!

 シェフィールドさんが、優しく頭を撫でてくれる。お姉ちゃん、僕はへこたれそうです。

 

「安心して下さい。私も同行しますし、我々ならば大抵の貴族が攻めてきても余裕ですわ」

 

「「おう!まさにシェフィールド殿の言う通り。トリステインやアルビオンを敵に廻しても余裕ですな」」

 

 にこやかに笑い合う三人の豪傑達。この時、僕は知らなかった……彼等が既に同盟を組んで、僕を護衛してくれていた事を。

 でも、トリステインとアルビオンは滅ぼすんじゃなくて助けるからー!

 

「おでれーた!兄さん凄いお人なんだな。あんな連中を従えてるなんて!兄さん、実は使い手なんじゃないか?俺を持ってみろよ」

 

 デルフに慰められて、あの有名な「おでれーた!」が聞けるなんて……嬉しくないけど。

 

 試しにデルフを持ってみました「んー不思議な感覚だけど、ちげーな」ダメ出しされました。

 

「おや、何ですか?その汚い剣は……」

 

 ワルド殿が、何気なくデルフを持つ。すると、刀身が鈍く輝き始めた。

 

「なっ何でぃ?この心の震えは……

こっこれは、これから来るロリっ子に今夜こそ勝負を賭ける心の高ぶりと、ヒデー妄想の渦だ!ちくしょう離せ、この変態がぁ!オレをオレ様を汚すんじゃねぇ」

 

 デルフが、微妙に本来っぽい輝きを見せている。一定以上の感情なら、誰でも可能性が有るのか?

 

「てってめぇ!妄想を強化するな。誰だよエターナルロリータって?知らねえよ。そんな情報を送り込むな!やめてー、ペドはイヤー!」

 

 ワルド殿は、すっきり満足したような漢の顔で、デルフをカステルモール殿に渡した。

 

「どうやらこのインテリジェンスソードは、我ら紳士の漢度を測るマジックアイテムらしい。次はカステルモール殿の番だ!見せ付けようぞ!我らが思いを」

 

 デルフは、身の危険を感じて大騒ぎだ!

 

「やめてー!犯されるー!兄さん助けてくれー!」

 

 ごめん。興味が有るからやらせてみたいんだ。それに、妄想なら平成のサブカルチャーを修めた僕も、もう一回最後に試したいから。

 哀れ、伝説の剣も真の変態と言う漢達にとっては、己の漢度を測る道具でしかなかった。

 

「本当に、助けてー!」


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