現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第81話から第83話

第81話

 

 

 ド・モンモランシ伯爵領

 

 ラグドリアン湖の一角と領地が接しており、ハルケギニア一の景勝地として有名で有り、過去に何回も他国の王族も招いた遊園会が催された土地で有る。

 今でこそ開拓事業に失敗し、水の精霊との交渉役も辞した形になってしまったが、伯爵本人も家臣団もそれなりに有能な人物だ。

 

 ド・モンモランシ伯爵は怒り狂っていた!

 

 娘に害虫が付いた、苦労して育て、トリステイン魔法学院に送った娘から……会わせたい男性が居る。と、手紙が来たのだ。

 何でも相手は、ゲルマニアからの留学生で有り、あのヴァリエール公爵家と懇意にしてるらしい。

 かの家と、ゲルマニアのツェルプストー辺境伯家との経緯は聞いている、暫定だが融和政策を実施し貿易で黒字を出しているらしい。

 

 そして三姉妹の1人を嫁がせるようだ。

 

 その相手と、中心的役割を果たしたのがハーナウ家の次期当主。つまりツアイツ・フォン・ハーナウ本人だ!

 

 忌々しい……

 

 儂は、ヴァリエールの阿保たれの様には騙されないぞ。向こうの娘達は、いき遅れの長女、病弱な次女。そして魔法が使えない三女と、どれも問題児だ。

 押し付けるのと訳が違うのだよ、ウチの娘は!

 

 何処に出しても恥ずかしくない、出来の良い子なのだ。むざむざと嫁にはやらん!

 腐っても伯爵家、この日の為に領内から選りすぐりの使い手を集めた。のこのこと来てみろ!叩き出してやる。

 

「旦那様、配置は完了です。あと奥様がお呼びです」

 

 古参の家臣から声を掛けられ我にかえる……

 

「すまんな。興奮してしまった。妻が呼んでいるとは……アイツは娘に甘いからな。モンモランシーの味方をしそうで危ないぞ」

 

 呆れた顔で家臣から「この日の為に、領内中から腕の立つ家臣団をお呼びになった旦那様よりですか?」苦笑しながら諌められた……

 

 子供の頃から仕えている彼には頭が上がらない。見渡せば、この日の為に選りすぐりの強者達が苦笑いして列んでいる。

 

 総勢10名の全てトライアングルの使い手達だ!

 

 皆、領地にて盗賊や亜人討伐担当の武闘派連中。武門ではないが、我が家の中では最強の連中よ!

 

「さぁ来いツアイツ!このワシが、このワシの家臣団が叩き出してやるわー!」

 

 高笑いを始めた、ド・モンモランシ伯爵!

 

「旦那様……そろそろ奥様の元へ行きましょう。大分待たせてますよ」

 

「……そうだな。行くか」

 

 威勢の良い、ド・モンモランシ伯爵も妻には頭が上がらなかった……

 

 妻の待つ庭に設えたテーブルセットに向かう、彼女は優雅に紅茶を飲んでいる。

 

「何だ?ワシは忙しいのだぞ!」

 

 妻は落ち着いている。

 

「あなた、落ち着いて下さい。自分の娘が選んだ相手が信じられないのですか?」

 

 何を呑気に言っているのだ!

 

「ああ、信じられん。眉唾な誇大妄想に近い調査報告だそ!」

 

「私も、女としての情報網で調べてみました。実際に学院に通っている娘を持つ親達に……調書は全て本当みたいですよ」

 

「あんな報告書がか?学院の一年生に君臨しているとか、我が国の魔法衛士隊隊長と仲が良いとか……

演劇の名作を何本も書く傍らに、男の浪漫本なる怪しい本を手掛ける文豪。

女性の悩みを解決するバストアッパー!学院の二年生を粉砕したとか……出るわ出るわ、怪しい物ばかりが!」

 

 はぁはぁと、肩で息をしながら妻に詰め寄る。

 

「しかし、事実として受け止めなければ……

あの子には私達が不甲斐ない所為で、物心ついた頃から金銭面で苦労をかけています。だからこそ相手は、見てくれ等では選ばない、完全能力主義な子なのですのよ」

 

 何を呑気な……

 

「あの子は優しい子だ!騙されているんだ!」

 

 深いため息をつかれたぞ。

 

「兎に角、失礼が有っては我が家など、お家断絶の危機なのですよ。それに我が家の復興のお手伝いを申し出てくれたとか……落ち着いて下さい」

 

「しかしだな……」

 

「旦那様、お取り込み中すみません。先ふれと称してグリフォン隊隊員の方が到着しました。直接の面会を求めていますが……」

 

「グリフォン隊だと?王族の方が来られるのか?まさかアンリエッタ姫か?ちっ!この忙しい時に……仕方ない、お通ししてくれ!」

 

 この大事な時に王家絡みとは……あのアホ母娘が、もっと国の為に動かないからこんな事になるのだ!全く面倒臭いな。

 

 颯爽と1人の青年貴族が現れた。

 

「お初にお目に掛かります。ド・モンモランシ伯爵!ゲルマニアのツアイツ・フォン・ハーナウ殿がこれからみえられます。準備は宜しいか?」

 

「貴殿は先ふれと伺ったが……トリステイン王家の関係ではないのか?」

 

「ああ……私達は休暇中です。ツアイツ殿がこちらの領地の立て直しをすると聞き及び、微力ながら手伝いを申し出たのです」

 

「はぁ?私達?貴殿は伝統有るトリステインの魔法衛士隊員であろう。何故、他国のゲルマニアの貴族の手伝いなど?」

 

 魔法衛士隊の若者は、爽やかに笑っている。

 

「友情に国の違いなどありませんな。最初に言っておきます。今回のメンバーは、みなツアイツ殿の人望故に自然と集まった構成員ですよ。

ド・モンモランシ伯爵も驚かれるが良い!そろそろ見える頃ですな……」

 

 はぁ?何をとち狂ってるんだ!この若者は……そんな訳が有るか!

 

「あなた!グリフォンと風竜の一団が向かってきますわ!」

 

 空を見上げる……なんだ?数が多い。10……11……12……15騎は居るぞ。

 

「皆の者、警戒態勢を……お前とメイド達は屋敷の中へ」

 

「落ち着いて下さい。ド・モンモランシ伯爵!あれは、ツアイツ殿の一行です」

 

 苦笑を噛み殺す様な……してやったりの表情で、魔法衛士隊員は言いやがった。

 

 遠目でも分かる、巨大なグリフォンと風竜。あんなものを連れ回す奴とは……

 

「さて、そろそろ着陸態勢ですな」

 

 呑気に手を振るコイツを絞め殺したくなる。気が付けば、我が家臣団がワシの周りに集まっている……

 

 初手は負けを認めよう。だが、これからが勝負だ!

 

 

第82話

 

 

 ド・モンモランシ伯爵邸……

 

 この日、我が娘を誑かしたゲルマニアの小僧を懲らしめる為に選りすぐりの家臣を集めた。

 全員が盗賊や亜人の討伐をこなしている、心強い実践慣れした連中だ!どんな奴が来ても叩き潰すつもりだった……

 しかし、今彼らはワシの周りに集まり密集した防御陣形を組んでいる。

 つまり、まともに向かっても勝てず、守りを固めるしか手段がないと理解しているからだ……

 

 最初に現れたのが、現グリフォン隊隊長ワルド子爵を先頭に逆V字編隊を組んだグリフォン隊の連中だ!

 

 国を売りおってコイツ等め……買収されたのか?

 

 次に現れたのが……デカい!デカいぞ、この風竜は!

 

 何とも立派な風竜を後列に配しV字で着陸態勢に入って来た。

 

 この統率された一団は……ただ者ではないな。

 

 見慣れぬ連中だが、正規の訓練を受けているのは動きを見ればワシでも分かる。奴め、自国から援軍を呼びやがったな!

 するとゲルマニアの風竜部隊か。そして、その巨大な風竜から降り立った若者が……

 

 ヤツなのだろう。

 

 風竜を操っていた隊長格の男を従え、先に降り立った隊員達が左右を固めながら此方に向かってくる。

 

 何と?ワルド子爵まで、ヤツの脇を固めていやがる。しかも自然な感じで……ゴクリと生唾を飲む。

 どうみても普通じゃない連中を20人近くも従えて来るなんて。ワシの家臣達が杖を握り締めている。

 マズいぞ。暴走されては、一方的にやられかねん。

 

「待て、待つんだ!動くなよ……様子をみよう。今、仕掛けては此方が不利だ」

 

 最後に竜籠が降りて、遠目でも分かる我が愛娘と……赤・蒼・桃・黒・金色の女性陣が現れた!

 

 赤は、ツェルプストー!

 

 蒼は、ガリア絡みか?

 

 桃は、ヴァリエールだな。

 

 黒は、東方か?

 

 金は、メイド服だからメイドだな。

 

 娘が、モンモランシーがフライでワシの胸に飛び込んでこようとしておる!

 

 はっはっは!両手を広げて向かい入れてやらねば。やはり父親の愛は分かるのだ?

 

「ツアイツー!これが私の両親よ」

 

 モンモランシーが、ワシじゃなくアヤツの腕を抱き締めながら紹介しくさりやがった!

 

「ただいま!お父様、お母様。彼が手紙に書いたツアイツ・フォン・ハーナウ殿よ!私の旦那様なの」

 

 嗚呼……輝く笑顔で、なんて事を宣言するんだ。父は……父はな……

 

「お初にお目に掛かります!ゲルマニアのサムエル・フォン・ハーナウが長子、ツアイツです」

 

 くっ……爽やかに挨拶などしおって!

 

「あら、想像よりずっとハンサムね。娘から色々聞いているわ!」

 

 何を和やかに、握手などしておるのだ!ワシは広げた腕を所在無げにブラブラさせてから、ヤツを睨み付ける。

 

「娘から、色々聞いておるが……素直にハイそうですか!などと、娘を貰えると思うなよ。何処の馬の骨とも分からん若造が!叩き出してやる」

 

 啖呵を切った瞬間、周囲の温度が下がる……我が家臣達が、ワシを守る様に前方に密集した!皆、もう杖を構えている。

 

 正面を見れば……デカい風竜の使い手が遍在を展開し、風竜部隊の連中も臨戦態勢だ!

 

 ワルド子爵は、杖剣に利き腕を乗せている。

 

 他のグリフォン隊員も、立場を考えてか、あからさまな敵対行動は取らぬが、同様に何時でも動ける態勢を取っている……

 そして、ヤツの真後ろの黒髪の女!殺気が半端じゃない。何て連中なんだ……誰かが動いたら、一触即発だ。

 

「みんな、落ち着いて!昨夜も話したけど、僕等は戦争に来たんじゃないんだからね。杖を納めて!ほらカステルモール殿も落ち着いて」

 

「しかし……この無礼者は気に入りません。我等がソウルブラザーに、あの様な暴言を」

 

 周りの竜騎士団員も頷く。

 

「良いんだ。いきなり娘が、男を連れてくれば普通の反応だから……ド・モンモランシ伯爵、ここは一つ休戦と言うか、話をさせてくれませんか?」

 

「……分かった。取り敢えず歓迎しよう。ツアイツ殿、ド・モンモランシ領へようこそ」

 

 仕方なく、本当に仕方なく握手をして屋敷に招き入れる。

 圧倒的な戦力差に引き下がった訳ではないが、あのまま意地を張れば、容赦なくヤラレテイタ……特にあの男女の目はヤバかった。

 まるで、立場など考えない、ただ目の前の敵を処理する目だ。

 

 一体何者なんだ。

 

 くっ……第2戦は引き分けだ!ワシが譲歩したのだからな。次が勝負だ。って、何和気あいあいと屋敷の中に、ワシを残して行くの?

 

「旦那様、どうしますか?我等では、傷一つ付けられるか?ですな……」

 

「暫くは様子を見よう。警戒を怠るなよ」

 

 家臣にそう言い含めて、急いで追い掛ける。あれだけワシが、険悪な態度だったのに、和やかに談笑しながら歩いていかないでくれ!

 

 ワシが虚しくなる。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 移動の時に、誰の使い魔に乗るかで揉めましたが、能力的にもカステルモール殿のブリュンヒルデが一番大きかったので乗せて貰いました。

 辛かった……地上30mを越えると、トラウマ的な何かが発病してしまうのですが。

 空の上には、同乗者のカステルモール殿しか居らず、抱きついたら大変な事になるから我慢しました。

 これなら、女性陣の竜籠にすれば気が紛れたかも。気を落ち着けて見渡せば、見事な技量で飛行する変態達!

 

 変態が編隊を組む……

 

 ヤバい。これじゃオヤジじゃないか。自重しよう。

 

 そして、遠目に見えるあれがラグドリアン湖か……確かに綺麗だな。さて、そろそろ目的地が見えてきた。

 思いもよらず、こんな大袈裟なメンバーで押し掛けちゃうから、気を悪くしないように気を付けないいとね。

 どうも、カステルモール殿もシェフィールドさんも、僕等がトリステインと揉めても構わないと考えている節が有るんだよな……

 それでも、ねじ伏せられる位に思ってそうで怖い。

 娘の恋人がいきなり押し掛けてくる状況で、如何に両親と平和的に話を進めるか……

 モンモランシーに聞いた所、父親の娘ラブ振りは病的レベルだ!

 

 しかし、恐妻家でも有るらしい……突破口は、母親だね。

 

 さて、我々の未来の為に頑張るかな。

 

 

第83話

 

 こんにちは!ツアイツです。

 

 現在、カステルモール殿の相棒で有るブリュンヒルデの背に乗せて貰いド・モンモランシ伯爵邸に降りようとしています。

 先ふれで、グリフォン隊の方に先行して伝えて貰ってますから、この非常識な一団でも警戒されないと思います。

 そして、トリステインでは信用ある魔法衛士隊隊長であるワルド殿以下、隊員達に先行してもらい最後にこの風竜騎士団が降りる……

 

 完璧な順番だ!

 

 もう既に屋敷に人影が見えるし、先ふれの彼も手を振ってくれてるから……上手く説明してくれたんだね。

 

「では、我々も降りましょう!カステルモール殿」

 

「了解です!ソウルブラザー。野郎共、降下するぞ!」

 

「「「ヒャッハー!了解だぜ、ダンチョー!」」」

 

 掛け声はアレだが、見事な操竜技術で降下していく……振動など殆ど無く大地に降り立った。

 僕は、感謝の気持ちを込めてブリュンヒルデの背中をポンポンと叩くとフライで地上に降りる。

 

 因みに、ブリュンヒルデは牝、レディだ!風竜的には美人さんらしい。

 

 良く他の風竜から言い寄られているが、全て力でねじ伏せて振るらしい……

 話はそれたが、正面の壮年の男性が、ド・モンモランシ伯爵なのだろう彼に近いていく。

 何故か周りを竜騎士団とグリフォン隊の皆が固めてくれて、ワルド殿とカステルモール殿が左右に居る。

 シェフィールドさんは真後ろだ……

 

 何この威嚇行動?

 

 ド・モンモランシ伯爵の家臣の方達が警戒して、防御陣形になってしまった。

 やれやれ……ここは、にこやかに挨拶をするかな。

 

 アレ?急にド・モンモランシ伯爵が笑顔で両手を広げたけど……まさか僕をハグするつもりか?

 

「ただいま!お父様、お母様。彼が手紙に書いたツアイツ・フォン・ハーナウ殿よ!私の旦那様なの」

 

 モンモランシーが、僕の腕に抱き付きながら爆弾発言をカマした!

 ド・モンモランシ伯爵は、一瞬悲しそうに、そして明らかな敵意の籠もった目で睨み付けてくる。

 

 あっ当たり前なんだけど辛い……気を取り直して、笑顔で爽やかに挨拶をする。

 

「お初にお目に掛かります!ゲルマニアのサムエル・フォン・ハーナウが長子、ツアイツです」

 

 父親には無視されたが、母親は好意的に接してくれる。やはり攻略の鍵は母親だ!

 

「あら、想像よりずっとハンサムね。娘から色々聞いているわ!」

 

「いえ、そんな事は……それより申し訳有りません。この様な大人数で押し掛けてしまって」

 

 彼女の手を握り、先ずは非礼を詫びる。その時、ド・モンモランシ伯爵が吠えた!

 

「娘から、色々聞いておるが……素直にハイそうですか!などと、娘を貰えると思うなよ。何処の馬の骨とも分からん若造が!叩き出してやる」

 

 嗚呼……やはり怒るよね。ここは、平謝りで誠意を見せて……

 

 ちょちょっと、何戦闘態勢を取ってるの?向こうの家臣の人達が、スッゴい警戒してるー!

てかカステルモール殿、何その今から襲うぞゴラァ!的な、殺気と陣形は!端っから友好的じゃないよねー?

 

「みんな、落ち着いて!昨夜も話したけど、僕等は戦争に来たんじゃないんだからね。杖を納めて!ほらカステルモール殿も落ち着いて」

 

 僕の為なのは嬉しいけど、これ位で怒ってたら大変だから!

 

「しかし……この無礼者は気に入りません。我等がソウルブラザーに、あの様な暴言を」

 

 周りの竜騎士団員も頷くな!止めてくれ!

 

「良いんだ。いきなり娘が、男を連れてくれば普通の反応だから……ド・モンモランシ伯爵、ここは一つ休戦と言うか、話をさせてくれませんか?」

 

 ド・モンモランシ伯爵は、本当に嫌そうな顔で「……分かった。取り敢えず歓迎しよう。ツアイツ殿、ド・モンモランシ領へようこそ」と、手を差し出してくれた。

 

 良かった!しかし、風竜騎士団とシェフィールドさんは……僕が、トリステインと揉めても全く問題無いと思ってない?

 まさか、ガリアに引っ張るから平気だぜ、ヒャッハー?

 

 ……落ち着け。先ずは、ド・モンモランシ夫人と友好的になってこの難局を乗り切るぞ!

 手伝いに着てくれてる筈なんだけど、苦労が増えてるよ。まぁ良いや。ルイズ以下、女性陣を引き連れて行こう。

 

 

 

 応接間に向かう廊下にて……

 

 

「モンモランシー、この髪の色がバラエティーな方々はお友達かしら?」

 

 ド・モンモランシ夫人が娘に聞いている。そう言えば、自己紹介まだだった……

 

「初めまして、おば様!私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。キュルケと呼んで下さい」

 

 優雅に一礼する。流石は大貴族の令嬢!

 

「私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。ルイズと呼んで下さい」

 

 こちらも、負けず劣らず優雅な挨拶だ。ド・モンモランシ夫人も目を細めて娘の友人を見る。

 そして、視線でミス・タバサを促すのだが……

 

「……タバサ」しか言わぬ彼女にビックリだ!

 

「かっ彼女は人見知りが酷いので、お許しを」

 

 思わずフォローしてしまう。そして、シェフィールドさんとソフィアを見る。

 

「彼女達は僕の身内です。黒髪の美しい人が、シェフィールドさんで僕の護衛兼秘書。此方はソフィア。専属のメイドをしてもらってます」

 

 ソフィアはワタワタとお辞儀をし、シェフィールドさんは優雅に一礼をする……シェフィールドさん。

 宮廷の礼儀作法とか、何で知ってるのかな?

 

「まぁまぁ、ツアイツ殿の周りは華やかなのね?モンモランシー、頑張りなさいね」

 

 この面子を見て、笑えるこの夫人も只者じゃないな……

 

「「私達もツアイツとは、正式に婚約してますから。私が先ですよ!」」

 

 ルイズとキュルケの告白に、一瞬キツい目線を送るド・モンモランシ夫人。

 

「あらあら、それは大変なのね?ねぇツアイツ殿?」

 

 言葉は丁寧だが、含まれる感情は……大変宜しく無いです。嗚呼……胃薬の日々よ。

 

 また、こんにちは!

 


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