現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第93話から第95話

第93話

 

 アンリエッタ姫、今回も暴走する。

 

 トリステイン王宮のベランダから、城下町を見下ろしながら思う。愛するウェールズ様の事を……

 嗚呼、あの雲は私に笑いかけるウェールズ様の様だわ!

 そして、他国の貴族ながら一番信頼しているミスタ・ツアイツの事を。

 何時でも私に的確なアドバイスをしてくれる、大恩ある他国の貴族。

 そして、明らかに今迄より一回りは確実に大きくなった我が乳!

 まだ、ウェールズ様を落とすには心許ないが、巨乳の階段を登り始めたわ。これで、ウェールズ様は私の虜に……

 

 

※妄想が終わる迄、暫くお待ち下さい。

 

 

 ……はっ?最近時間の経つのが、早くないかしら?

 

 

 今朝の報告書では、ド・モンモランシ伯爵から、水の精霊との交渉役を娘が成し遂げた、と。

 ラグドリアン湖は、私とウェールズ様の馴れ初めの場所。最近増水騒ぎで、その大切な場所が酷い事になっていると聞き心を痛めてましたが……

 これで又、園遊会をかの地で行う事が出来ますわね。園遊会……

 

 そうだわ!

 

 新しく交渉役になったと言う、彼女の御披露目を合わせて大々的に園遊会を催してもらいましょう!

 他国の王族や、彼女はトリステイン魔法学院の生徒……なら学生のお友達も呼んでも不自然じゃないわ。

 

 久し振りに……いえ、初めてウェールズ様から私信を頂いたわ。

 

 何でも、最近ゲルマニアの演劇に大変興味が有り一度その作者……トリステイン魔法学院に留学中のミスタ・ツアイツに会って話がしたいと。

 これは、ウェールズ様に会えるチャンス!しかも、愛している御方と信頼している御方に挟まれて演劇とか見れたりして……

 

 嫌だわ!アンリエッタ、困っちゃうわ。

 

 

 城下町を見下ろせるバルコニーで、一国の姫がイヤイヤと身を悶えている。

 見下ろせる=見上げる事も出来るのだが、幸い彼女の痴態を見ていたのはアニエス隊長だけだった。

 彼女が、脳内疑似両手に花デートの妄想を堪能中、アニエス隊長も色ボケしていたりする。

 

 こちらは、一度だけお会いした黒衣のお姉様。シェフィールド様の事を……

 

 因みに彼女のお仕置きは、減給とある工作を行う時に銃士隊をあげて全面協力をする事。

 工作とは、恋文の搬送役として銃士隊を使う約束をさせた事だ!

そんな色ボケた2人の思いは、思い人に会える機会はド・モンモランシ伯爵よりもたらされた。

 

「アニエス隊長!お母様の所に行きます。ド・モンモランシ伯爵のご息女が水の精霊との交渉役になれたとか。

これはトリステイン王国の力を各国に知らしめる事が出来るわ。

大々的にラグドリアン湖にて遊園会を行い、その場にて公表する必要が有ります。これから忙しくなるわよ」

 

「ははっ!して、遊園会にはあの変態もお呼びになるので」

 

 アンリエッタ姫は、自分の信頼するミスタ・ツアイツを未だに変態と呼ぶアニエス隊長に眉をしかめたが……他国の貴族を警戒する。

 これも隊長の仕事だと割り切った。

 

「勿論ですわ。ウェールズ様からもミスタ・ツアイツとの会談の機会を与えて欲しいと……私に、直々にお手紙を頂きましたから。国賓としてお呼びしますわ」

 

 アニエス隊長は渋い顔だ!

 

「流石にそれは……あの変態でも、立場が有りましょう。姫様、自重して下さい」

 

 ミスタ・ツアイツの立場?また失敗してしまったのかしら……

 

「…………?そうなのかしら?では、普通に招待状を送りますね。さぁお母様に報告しなければ」

 

 いそいそと、マリアンヌ王妃の部屋に向かうアンリエッタ姫の後を慌てて追いながらアニエス隊長は溜め息をついた。

 いくら気に入らぬ変態でも、最近のアンリエッタ姫の口から出るのはあの男の誉め言葉ばかり……

 流石に他国の貴族を誉めちぎるのは、姫様にも変態にも良くない事だ。

 

 何とかしないと……お姉様にも被害が及ぶかも知れないし。まさか私が、あの変態を気遣う事になるとは。

 苦笑しながら、アンリエッタ姫と共にマリアンヌ王妃の部屋に向かった。

 

 

 

 ヴァリエール公爵邸に有る巨大な池?

 

 

 

 中心に島も有り、橋も架かっている一寸小さい湖みたいな池の前に、沢山の人が集まっている。

 これから久し振りに、キュルケと水のゴーレムの演劇を披露する為に。

 思えば、ロミオとジュリエットが初めての演劇だったな……

 うっかり両親やツェルプストー夫妻に見せてしまったから、周りに言い触らし廻られて大変だった。

 

 そして、二作目の演目はシンデレラだった!しかもツェルプストー辺境伯邸に軟禁されて仕上げた作品だ。

 

「レディース&ジェントルメン!今日の演目はシンデレラ。これは私の二作目にして、一番小説が売れたお話です!では、お楽しみ下さい!」

 

 目線でキュルケに合図を送り演技を開始する。原作との違いは、スタート時に虐げられていたシンデレラ……

 キュルケが演じると、ゴージャスボデーにこの美貌。全然悲壮感が無いです。

 

 しかし、キュルケの演技は素晴らしく灰被りの少女からダンスパーティーで注目を浴びるレディへの変身は見事!

 ヴァリエール家のメイドさん達から、溜め息が漏れていました。僕の魔法制御も、それなりに上達したので中々の盛況でした。

 思えば、最近は暗躍する事が多かったから良い気分転換になりました。シェフィールドさんには初めて見せたのだが、随分と魅入ってくれましたし。

 それだけでも演劇をして良かったかな。

 

 それと……

 

 久し振りに、カトレア様も気分が良かったと庭に出て鑑賞してくれました。

 

 エレオノール様は……

 

 心此処に有らず?何やら悩み事が、有りそうなので聞いてみよう。

 こうして考えると、ヴァリエール公爵家の皆さんには、随分世話になってるよね。

 この一件が片付いたら、何か恩返しをしないといけないね。等とツアイツが考えていた頃……

 

 この一家は、ツアイツを何とかトリステイン王国と縁を強めようと行動していた。

 全て、シェフィールドさんの掌の上で……

 

 エレオノール頑張れ!

 

 

第94話

 

 おはよう、私は、大国ガリアの王位継承権第一位。

 普通なら何不自由なく、皆に蝶よ花よ!と扱われる筈の、プリンセス・イザベラさ。

 

 最近、自分でも飲酒の量が増えてヤバいと思っている。しかし、飲まないとやってられない事が多過ぎなんだよ!

 それに、ツアイツが贈ってきたタルブ産ワインと水の秘薬「そるまっく」がね……

 

 二日酔いに効くもんだから、つい痛飲してしまう。このままじゃイケないね。

 

 お父様は無能王と呼ばれ娘がアル中姫じゃ情け無いよ……

 ツアイツに意趣返しを含めて、カステルモール以下の極めて変態度の高い連中をレコンキスタ関係の報告書を添えて送り付けてやったんだ。

 あいつ等の相手をしなければならない私の苦労を少しは思い知れ!って意味でね。

 

 しかし、ヤツは凹む所か、コイツ等をより強力な変態にして送り返してきやがった!

 

 しかも、どう見ても私をイメージした……ふぃぎゅあ?それと、会員特典マント?の裏地に私の色々なバージョンの豪華刺繍を施したマントを配布してやがる。

 

 この特典効果が強力だ!信じられるかい?今まで無能王の娘として、親子揃って魔法が苦手な連中と陰口を叩かれていた私にさ……

 

 公式ファンクラブの申込みが3団体も有ったんだよ。

 

 それに、竜騎士団や北花壇騎士団以外の、私から距離を置いていた連中も、何かと私に接触に来やがる。

 そして、色々なパーティーへの出席の依頼。こんな事は初めてさ。

 

 正直言って私だって年頃の娘さね。

 

 嬉しいのは、嬉しいんだけどさ。呼ばれたパーティー会場の護衛に必ず……断っても断っても同行したがる、黒いマントの一団。

 アイツ等が、マントを翻す度に周りが盛り上がる。コレって何か違うんじゃないかい?

 

 今では、ガリアのツンデレプリンセスとして「大きなお友達」からの忠誠が凄い事になってるんだ。

 

 会員数も既に1600人を突破したよ、会報も毎週出ていて私にも届くんだよ。中心は、ツアイツに送り付けた連中だ!

 ツアイツに報告書の中で、文句を書いておいたが……

 アイツ、私の人気は私の魅力による物だから、これを機会にガリアの次期女王としての地盤を固めろって言いやがった!

 確かに、人気の無かった腫れ物扱いの私がさ……こんな人気者になれるなんてさ。

 

 お父様ですら驚かれて、しかも嬉しそうに誉めてくれたんだよ。今では、エレーヌよりも人気者だし旧シャルル派の連中からも接触が有る。

 

 しかし……しかしだよ……

 

 私が斜に構えたり、毒舌を吐く度に今日はツンツンですねモエー!とか、周りが盛り上がるのはどうかと思うんだ。

 

 ツアイツ……

 

 アンタが作り上げた、このガリア産の変態共を引き連れて会いに行ってやるよ!

 報告書に書いて有った、ド・モンモランシ領の復興と水の精霊との交渉の件、見事だね。

 アンリエッタ姫から、ラグドリアン湖で遊園会を催すと招待状が来たからさ。

 

 必ず私が行くよ。

 

 やっぱりアンタはぶん殴るよ!周りは、今日のツンツンはバイオレンスだー!とか、盛り上がるんだろうねぇ?

 まだ、レコンキスタも潜伏してるし忙しくなる前に、アンタとはキッチリと拳で話を付ける必要が有る!

 このままだと、歴史に刻まれる女王になる事すら難しく無いと思うよ。歴代ガリア王族の中で、一番皆に愛された女!

 

 ツンデレプリンセス・イザベラ、とかさ……

 

 

 

「失礼します。イザベラ様、今週の会報です。それと、イザベラファンクラブの集いが、今夜プチトロア中庭で催されます。

ソウルブラザーから、フィギュアで着せた衣装と同じ物が贈られて来ましたので参加時にお着替え下さい。それと、これが今週分のファンレターとプレゼントです。

全てディティクトマジックにて確認しましたが、異常は有りません。来週ですが、東花壇騎士団への慰問について……」

 

 ジャーマネみたいな竜騎士団員が、トップアイドルさながらの予定を読み上げて行く。

 

「来週は、トリステインに行くよ。お前らの大好きなソウルブラザーも来るラグドリアン湖の遊園会に呼ばれてね。スケジュールはコレが最優先だ!調整しな」

 

 ジャーマネは、メモ帳に予定を書きながら……

 

「来週ですか?んー難しいですが政務を優先しなければなりませんね……了解しました。

それとイザベラ様の護衛の件ですが、カステルモール団長が不在の為に、副長とイザベラ隊が行います」

 

 ん?なんか、今変な単語が聞こえたけど……

 

「一寸待ちな!カステルモールのヤツが不在って……私は任務を与えてないよ?それにイザベラ隊って何さ?」

 

 ジャーマネは眼鏡をくぃと持ち上げながらほざいた。

 

「団長は、ワルド殿とサビエラ村に向かわれました。クーデレ様のトリステインに向かう日迄には戻られるそうです。

イザベラ隊とは、ソウルブラザーより中級会員以上のツンデレプリンセスマントを贈られた連中の集まりです!

皆、魔法と武術に長けた所属を超えて集まった漢の一団です」

 

 なっななななな……

 

「ばかー!所属を超えるなー!問題有るだろー」

 

 嗚呼……罵倒すると恍惚としやがって、この変態共がー!

 

「今日のツンは困った感が出ていて可愛らしい……はぁはぁ!はっ!しかし、イザベラ隊設立の要望書を正式にジョゼフ王に提出・承認を承けておりますれば……」

 

 お父様が?何を考えているのですかー?

 

「ジョゼフ王は、イザベラ様の護衛は貴様等に任せた。と、笑顔で言われました」

 

 ツアイツ……やっぱりアンタは、グーで殴るよ。アンタが、謝るまで殴るのを止めないからね!

 

「まぁ良い。楽しみだねぇ……ツアイツに会えるのが、さ」

 

 思わず拳を握っちまうよ。殿方の事をこんなに思うなんて初めてさ。殺意が湧く程にね……

 

「はっ!ソウルブラザーには、ご指導願いたい事がマダマダ沢山有りますので」

 

 ……これ以上、アンタ達の変態度を上げたら私の血液は飲み過ぎでワインになっちまう。

 

「それと、ソウルブラザーよりイザベラ様に今週の贈り物です。何でも、アイスワインと言って一度材料の葡萄を氷結させ絞る事で甘みの強いワインだそうです。それと……」

 

 律儀に毎回贈り物をしてくるけどさ。そんな事で許されるレベルは既に超えているんだよ。しかし、アイスワインか……ちょっと美味しそうじゃないか。

 

 

 

 イザベラが、大国ガリアのアイドルとして君臨する日は近い!

 

 アンリエッタ姫とはまた違う、比較にならない人気と熱狂的な信者を集めている!

 

 シャルロット……タバサは、まだその存在を知る者が少ない為、知る人ぞ知るアイドルとして少しづつ人気が上がっている。

 

 彼女達の人気を不動の物とする男の浪漫本……「2人はマジカルプリンセス・第1章 禁断の従姉妹姫」は完成しているが、まだ世に出回っていない。

 

 

第95話

 

 

 おはようございます、ツアイツです!

 

 寝不足で有ります。今朝は、ヴァリエール公爵家より御挨拶です。

 昨夜遅く、ド・モンモランシ伯爵の家臣の方から駆け込みで報告が有り、明け方近くまでヴァリエール公爵と話し合いをしていたので……

 あの姫様、あろう事かモンモランシーの交渉役就任をラグドリアン湖にて盛大な園遊会を兼ねて発表したいのです!と宣った事を、王宮勅使のモット伯が伝えに来たそうです。

 

 モット伯も、我が「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う名の紳士の集い」の上級会員。

 

 昇格時に、かなり厳しく性癖を改めて女性に対して優しくする様に指導した!

 最近では、紳士によるオッパイ嗜好対談で僕を唸らせる提案をする位に……

 そして、彼も随分と王宮と言うかアンリエッタ姫に対して妥協案を提示してくれたらしい。

 

 主に、予算と人員だ!

 

 普通は、各国王室を招待するなんて何ヶ月も段取りにかける物だし、招待状も来週催します!って、こちらの常識を疑われる日程だぞ……

 準備に当たり、僕で手配出来る分とヴァリエール公爵より予算と人員を追加で送る。

 それでも間に合うか?微妙なラインだ……ハーナウ本家にも、要請をする。

 

「ツアイツ殿、折角の休暇なのにすまんな」

 

 ヴァリエール公爵は、自国の姫の奇態振りに申し訳なさそうに苦笑しながら謝ってくれた。

 

「いえ……一寸急ですが、御披露目は早い方が良いですから。僕は呼ばれないと思いますが……その辺はド・モンモランシ伯爵も察してくれていますから」

 

「そうだな。しかし、アヤツの事だ!娘に悪い虫が付かない様に婚約発表をするかもしれんぞ?」

 

「まさか、それは無いですよ」

 

 笑い合う僕とヴァリエール公爵!只でさえ、トリステイン貴族から妬まれているのに、公式の場でそんな事を言わないだろう。

 と、思っていたから……しかし、暴走特急アンリエッタ号は甘くはなかった。

 僅かな睡眠の後、ヴァリエール夫人&愛娘ズとキュルケとシェフィールドさんで朝食後の紅茶を楽しんでいた。

 

「ヴァリエール公爵も大変ですね」などと、カリーヌ様に話したり「ツアイツ殿、どうですか?午後に手合わせなどは?」とか、一部危険な単語も有ったが概ねノンビリムードだ……

 

 因みにヴァリエール公爵は自ら、ド・モンモランシ伯爵領に家臣を率いて手伝いに向かった。

 何だかんだで、共に陣頭指揮を執るみたいだ!ド・モンモランシ伯爵とは仲が良いんだな。

 夏の日差しをテラスで浴びながら寛いでいると、見知った顔の……

 

 アニエス隊長自らが、ヴァリエール公爵及び僕に(僕はハーナウ家としてではなく、モンモランシーの級友と言う事で)招待状を持って来た……

 

 アニエス隊長は、シェフィールドさんに熱く艶めかしい視線を送っている。邪魔したくないが、仕方が無いので声を掛ける……

 

「アニエス隊長、申し訳無いが国に戻るので園遊会には欠席で……」

 

「へんた……いや、ツアイツ殿。それは無理だ。アンリエッタ姫は、園遊会で貴殿とウェールズ皇太子を引き合わせる約束をしたらしい。

最初はアンリエッタ姫直々に国賓として招待したいと言うのを私が止めた」

 

「貴女が?何故?」

 

 アニエス隊長は、なにやら照れてモジモジしている。

 

「シェフィールドお姉様にも被害が及びそうだし、何よりアンリエッタ姫の立場も悪くなる」

 

 話の前半はスルーして、後半のアンリエッタ姫の立場も悪くなる……に、アニエス隊長が普通の判断も出来る事に安心した。

 

「そうですね……僕もですが、アンリエッタ姫も自身の立場を良く考えて頂きたいのです。このままでは……」

 

 アニエス隊長は憮然とした顔だ。

 

「言うな!承知しているのだが……最近の姫様は浮かれ過ぎている。足元を掬われなければ良いのだが」

 

 このガチレズネーちゃんも、隊長迄上り詰めるだけの事は有る訳か……

 

「アンリエッタ姫に伝言をお願いします。何故、ウェールズ皇太子が僕に会いたいのか?他国の貴族に関心を向けすぎるのは危険な事。

例の手紙の件、下書き等はまだ駄目です。もし有るなら全て焼却処分をする事。以上三点をお願いします。

それと、園遊会はあくまでも級友として参加します。余計なサプライズは要りませんから」

 

 アニエス隊長も、言われた事を「すまん。覚えられんから、手紙にしてくれ」と、脳筋振りを発揮した!

 

「僕が、アンリエッタ姫に手紙をおくる事が周りに知られたら、危険な事は分かりますよね?」

 

 頼むよ、隊長殿。

 

 アニエス隊長は、恥ずかしそうに「いや……大切な話だから忘れては駄目だと思ってな」とか言ってる。

 

「私が姫様にお手紙を認める(したため)わ。お友達の私なら問題無いでしょ?」と、助け舟を出してくれた。

 

 アンリエッタ姫……

 

 早くアルビオンに、ウェールズ皇太子に押し付けないと大変かもしれないぞ。アニエス隊長は、ルイズの書いた手紙を持って王宮に帰っていった。

 カリーヌ様とエレオノール様は、難しそうな顔をしていた。しかし、あの顔は何かを企んでいる時の顔なんだよなー。

 しかも、大抵被害は僕が被る種類の顔だ……

 

 見詰めているとカリーヌ様は目を逸らし、エレオノール様はニッコリと微笑んでくれた。益々怪しい。

 

 あのカリーヌ様が目を逸らしたなんて……

 

「カリーヌ様何か?」

 

「そうだわ!ツアイツ様、今日はこれから私のお友達達をキュルケさんとシェフィールドさんに紹介したいのですが……」

 

 あの、ハルケギニア版ムツゴロウ王国に連れて行くだとー?ぐいぐいと2人の腕を掴んで自室に連れて行こうとするカトレア様。

 

「ちょおま、待って……」

 

 慌てて追い掛ける。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「カトレアの機転で疑いが有耶無耶になったわね。ツアイツ殿のリスク回避スキル……本当にやっかいね」

 

「でもお母様。やはり、アンリエッタ姫にこの国を治める事は無理かしら?」

 

「しかし……ツアイツ殿は、ガリアに行かれる可能性が高い。この国の要職にも就く可能性も低いし……何より本人が辞退するわね」

 

「「何か良い方法は無いかしら?」」

 

 こちらの母娘は悩んでいたが、王宮の母娘は呑気な物だった……

 


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