現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

39 / 111
第96話から第98話

第96話

 

 こんばんは!ツアイツです。

 

 現在、ヴァリエール公爵家に滞在中で寝室にて夢の世界に旅立とうとしてます。

 昨夜は、急な園遊会の件で睡眠時間が少なかった。

 昼間は、カトレア様のハルケギニア版ムツゴロウ王国に連行されたキュルケとシェフィールドさんを救出したりと忙しかった。

 やっと皆から解放され、宛てがわれた部屋で寝る所でした!

 

 思えばこの部屋もヴァリエール家に訓練に来た時から同じだなー!カリーヌ様も僕に気を使ってくれてるんだなー!と、現実逃避中。

 目の前に居る筈のない人が居ますから……

 

「ツアイツ様?ツアイツ様、どうしたんですか?独り言をブツブツと……」

 

 そう!アルビオン大陸にて工作中のロングビルさんと遍在ワルド殿が目の前に居ます。

 

「ロングビルさん。何故此処に居るのですか?」

 

 ロングビルさんはニヤリと笑い「元土くれのフーケですからね。貴族の屋敷に忍び込むなんて簡単ですよ」クスクスと笑ってくれた!

 

 因みに遍在ワルド殿は、気まずそうに頭を下げてくれた。本体より余程空気の読める遍在だ!

 

「それで?わざわざ出向いてくれた用件は何でしょう?」

 

 そろそろ本格的に眠いのですが……

 

「アルビオンでの工作ですが、一段落です。既に己の性癖に自負の有る者達にとって、美乳派に入るなど考えられない事でしょう。

レコンキスタに組した者は、金の亡者と信念無き色狂いばかり……

それにクロムウェルは、そろそろ勧誘に見切りを付けています。傭兵団に接触し始め、物資の調達・備蓄を始めました」

 

「ロングビルさん。取り込み妨害工作はこれで止めましょう。潮時ですね」

 

 ロングビルさんは何故か不機嫌そうにしている。

 

「誇り有る変態達の殆どが、ツアイツ様の例の会員になってますから……

最近は攻略の妨害は殆どせず、奴らから財宝を巻き上げる事ばかりしてましたから。確かに潮時ですわね。

それにもう、アルビオンの貴族で己の性癖に自負が有る連中は、レコンキスタに組する事は無いでしょうし……」

 

 どうやら会員制度は成功したみたいだな。

 

「でも、何でロングビルさんは不機嫌なの?」

 

 彼女は、鞄から特典第一弾のフィギュア

 

「完全版ティファニア・プリンセスバージョン」をテーブルにドンっと置いた。

 

「で、そいつ等が必ずこの人形を持ってるんですよね?ツアイツ様は、テファを保護すると約束した!しかし、この人形が出回っては危険では無いのですか?」

 

 ロングビルさん、本気で怒ってる。ヤバいなぁ……

 

「静かに……この人形がテファを守ってくれる布石なんですよ。この人形……フィギュアと呼んでますが、凄い人気です。既に売れ行きも上々です」

 

 彼女は、まだ不信顔だ……

 

「このフィギュアは、プリンセスバージョン……モード大公の血を引いている王国に連なる正当な立場のテファです」

 

 ロングビルさんは、声は潜めているが口調はキツい。

 

「それは秘密にしたいって言っているではないですか!」

 

 もしバレて、追われる様になるかも?って不安なんだろう。

 

「秘密は何時かはバレます。隠し通せればそれでも良いですが、幾つか手を打っておこうかと……

彼女の姿を模したフィギュアは人気絶大だ!まだモデルが居るとは発表してないけど、隠してもいないからその内知れ渡るでしょう。

僕の婚約者として。ゲルマニア貴族の娘として。それが真実と周りは受け止めるでしょう」

 

 ロングビルさんは黙って僕を見詰める。

 

「テファの過去の偽造も、粗方工作済みです。孤児で修道院に居る所を僕が見初めて、配下の貴族の養子とし嫁がせる。

ある程度調べれば辿り着く情報。巨乳派教祖の僕ならば、随分我が儘だが納得はするでしょう。そしてその話は、ハーナウ家ではタブーな感じにしています」

 

「……なる程。どうせバレるかも知れないなら過去を偽造し、それを真実と思わせるんだね。

なら何でプリンセス何だい?巫女とかシスターじゃないのかい?その流れなら……」

 

 大分落ち着いてくれたかな?

 

「一つ目は人気を得る為に、彼女の高貴さは隠しきれない。

二つ目は、最悪アルビオンにバレた時……ジェームズ一世やウェールズ皇太子と戦う事になっても、此方にも正当な血筋は流れている。

アルビオンの歴史は続く事を知らしめる為に。

三つ目は……」

 

「ちっ一寸待ちなよ!あんた、テファの為ならアルビオンと戦争する事も考えているのかい?」

 

 ロングビルさんは最悪僕がテファの為に、アルビオンと事を構える覚悟が有る事を知って逆に驚いた様だ!

 

「当然ですよ。どっちが大切なんて分かり切っているでしょ?それに最悪の場合であって、その手前に幾つか対抗策も有りますよ」

 

「アンタって……いや、ツアイツ様を頼って本当に良かったよ。本当に……だって、国と戦って迄守ってくれる気だったなんて……」

 

 彼女は俯いて泣き出してしまった。

 

 ポンポン!と、肩を叩いてハンカチを差し出す遍在ワルド殿……この遍在ワルド殿、本体より女の扱いが上手いんだけど?何が有ったんだろう。

 

「有難うよ……アンタもハンカチ、助かったよ。ツアイツ様、本当に有難う御座います」

 

 深々と頭を下げるロングビルさん……

 

「僕達は家族じゃないですか!大丈夫、守り切ってみせますから。アルビオンでの工作は終わりにしましょう。

先にハーナウ家に向かい、暫くテファの相手をしてあげて下さい。

僕は予定が変わり、ラグドリアン湖での園遊会に出てから帰ります。遍在ワルド殿は、どうしますか?」

 

 遍在ワルド殿は、一言「本体の元に戻る」と、言ったが彼はガリアでエターナルロリータの捜索中の筈だが……

 

「本体ワルド殿は、ガリアで私用で出掛けてますから……良ければ、ロングビルさんを送りながら我が家で遊んでいて下さい。

サムエル愛の資料館や、僕の書斎を自由にして良いですから」

 

 遍在ワルド殿は、頭を下げて了承の意を表した。

 

「そうだ!ツアイツ様、言い忘れましたが、クロムウェルの接触している傭兵の中に厄介な奴が居ます。

白炎のメンヌヴィルと呼ばれている凄腕の火のトライアングルメイジです!」

 

 

 

第97話

 

 白炎のメンヌヴィル……かつてトリステインのアカデミーに所属していた、元魔法研究所実験小隊の副隊長。

 炎蛇のコルベール隊長に復讐を誓った盲目の狂人か。確か、原作でもトリステイン魔法学院を襲撃した賊のリーダーだったな。

 本来なら戦争が始まってからの襲撃だが、此処まで原作ブレイクしちゃってるから、明日にでも暗殺しに来てもおかしくない。

 

 しかし、コルベール先生との絡みは……

 

 キュルケも頂いちゃってるし、蛇君シリーズも余り誉めてない。つまり全くの生徒と先生の関係だ!

 三人娘襲撃の時にはお世話になったから、少しは仲が良いと思っても良いかな?確実に奴は、僕の所に襲撃に来るだろう。

 

 クロムウェルの恨みは、僕と父上……

 

 ハーナウ一族に向いている筈だから。

 

 

 

 

 おはようございます!ツアイツです。

 

 ロングビルさんから、衝撃の報告を貰ってから一夜明けました!園遊会迄は、ヴァリエール領に居候決定な今日この頃です。

 

 今日の予定は……「ツアイツー!そろそろ出掛けるわよー」これから、カトレア様の領地に出掛けてきます。

 

 ラ・フォンティーヌ領は、体の弱いカトレア様の為にヴァリエール公爵が用意した景色の良い領地。

 今年23歳になる彼女は、このラ・フォンティーヌ領主な訳です。

 

 領地に向かう馬車の中で、一寸した騒ぎが有りましたが……

 

 兎に角、動物大好きムツゴロウさん的な彼女の馬車は移動する動物園!

 

 乗せて貰っている僕の頭と肩には小鳥が、膝には猫が乗っています。彼女の人徳なのか、動物達は仲良くしていますね。

 普通、猫に捕食される小鳥とか騒ぎますよ。元々前世が鳥好きだったので気にしないのですが、フンはしないでね…… 

 僕の向かいには、カトレア様にルイズと小熊。僕の両脇には、キュルケとシェフィールドさん。

 

 ん?小熊?何故小熊?

 

「あらあら、大人しくしてなくてはダメよ」

 

 結構な重さの小熊を抱き上げて膝にのせ、ナデナデするカトレア様……どんだけ力持ちなの?

 

 ルイズ!羨ましそうに見ない。

 

 キュルケは僕の肩に頭を乗せて現実逃避の居眠り。

 シェフィールドさんは若干のヤンデレオーラを放出する事で、動物達を近付けない様にしています。凄い応用力!

 

「あの……カトレア様、重くないですか?」

 

 ニコニコと優しい笑みを浮かべながら「ん?」とか首を傾げて返事をする彼女は、可愛いです。年上とは思えない程に……

 

 しかし、今迄は意図的と思える程に接触が少なかったのに、今回のヴァリエール家の訪問中は良く接してくるんだろう?

 この、優しいけど押しの強い彼女は少し苦手だ。あの目でみられると、全てを見透かされてる様な錯覚に陥る。

 

 原作でも、ホームシックに陥ったサイトに「お姉ちゃんになってあげる!」宣言をしてるし、サイトが異世界の住人で有る事を見破ったのも彼女。

 

 ヴァリエール公爵家の中で有る意味一番警戒しているのが彼女だから。

 

「お姉ちゃん、でしょ?ルイズと一緒になるなら、私はお姉ちゃんよね?」

 

 はっ恥ずかしい台詞を言われたぞ。

 

「カトレア様……」

 

「お姉ちゃん、でしょ」

 

「いえ……はい。お姉ちゃん」

 

 カトレア様は、僕にお姉ちゃんと呼ばれたからかご機嫌だ。春の日差しみたいな笑顔です。

 

「良かったですね?お姉ちゃんが増えて」

 

 シェフィールドさん?アレ?普通だ……ヤンデレ化もしてないし、黒いオーラも無い。此方も慈愛溢れる微笑みだ。

 

 だけど……カトレア様の膝に乗っていた小熊が、ルイズの方にワタワタと避難しているし、何故か此方はキュルケが魘されている。

 

「えーと、シェフィールドさn」

 

「ツアイツ、お姉ちゃんでしょ?私達はもう家族なんだし」

 

「お姉ちゃんが増えて嬉しいなぁ……」

 

「ふふふふふっ!そうよねツアイツ……」

 

「そうですね。ツアイツ君、うふふっ……」

 

 嗚呼……共に20代の方や天然お姉ちゃん。方やしっかり者のお姉ちゃん。普通なら、嬉しくて堪らない筈だけど……

 やはり、ヤンデレは混ぜちゃいけなかったんだ!

 

 しかし、この破壊力は凄い物が有る。これは、創作意欲が湧いたぞ!書く、書くぞ!

 

 ヤンデレ作品を。そして造るぞ!フィギュアのヤンデレお姉ちゃんズを!

 

 などと現実逃避をした……

 

 脳内でプロットが固まった頃に漸くラ・フォンティーヌ領に到着。不思議な空間から解放された……動物って敏感なんだね。

 今までジッとして動かなかったのに、馬車の扉が開いたら凄い勢いで飛び出して行きました……ちゃんと戻ってくるか心配ですが。

 

「あらあら。元気に遊びに行ってしまったわね」

 

 アレをあの逃げっぷりを遊びと言い切ったぞ!

 

「飼い主に似ずに元気なのねぇ?」

 

 ナチュラルに毒を吐いたよね?

 

「ラ・フォンティーヌ領へようこそ!新しい家族達。歓迎するわ。さぁ入って下さい」

 

 シェフィールドさんの口撃をスルーして屋敷に入っていくカトレア様……

 

「ちいねえさま待ってー」と走って腕を絡めているルイズ。

 

 僕は、妙に疲労困憊なキュルケの手を引きながら後に続いた。

 

 キュルケが小声で「ヴァリエール一族の女性陣は短気でプライドが高いのが多いのに、あの人は違うわね……やり難いわ」と、僕も思っていた事を零していた。

 

 天然系お姉ちゃん。周りに居なかったタイプだ!エーファも近いけど、似て非なる物だ。

 

「シェフィールドさ……お姉ちゃん、大人しくして下さいね」

 

 名前で呼ぼうとしたら、悲しそうな目で見られてしまったので、思わず言い直す。

 

「ツアイツ、大丈夫よ。敵対しなければ大人しくしているから……さぁあの偽物を追いましょうね」

 

 僕の手を繋いで歩き出した。カリーヌ様ともそうだったけど、カトレア様も混ぜるな危険だ……

 どうか無事に園遊会まで保ってくれ。僕の胃と神経よ……

 

 この日、初めてブリミル様に祈った!しかし、浮かんだのは巨乳巫女テファだった。

 

「早く帰ってこないからですよ?もう知りません!」

 

 と、プンプンと両手を腰に当てて怒っているテファに、横を向きながら言われてしまった電波が返ってきました……

 

 

第98話

 

 夢の中でテファに叱られたツアイツです。

 

 あの後、ラ・フォンティーヌ領の庭園やらお花畑やらメルヘン&アニマルを堪能し疲れ果てて屋敷に帰ってきました。

 そしてマナーは余り関係無い砕けた夕食を頂いている訳です。今回はシェフィールドさんとソフィアも同じテーブルです。

 ソフィアは恐縮しまくりですが、シェフィールドさんは流暢な仕草で食事をしています。

 聞けば、王妃となる為にジョゼフ王に恥をかかせない為に訓練しているそうです。

 

 流石はお姉ちゃん!努力を怠りませんね。

 

 昼の疲れか、食後は皆さん宛がわれた寝室に向かいました。

 僕は眠れずに、テラスに設けられたテーブルセットに座り双子の月を眺めてます……シェフィールドさんのくれた牙の腕輪を弄ぶ。

 指には、これも貰った指輪……ポケットには、木の札。随分と大切にされていると思う。

 

 此方の世界に来てから、この双子の月を眺めながら考えに浸る事も多くなったし……でもお月見って雰囲気は無いんだよね。

 ただ眺めならがボーっと考える。

 

「あら?ツアイツ君、眠れないの?」

 

 なにやらカップを2つ持ってカトレア様が後ろに立っている。カップを2つ持っている時点で、僕に話が有るんだろうね……

 

「双子の月が綺麗でしたから……何か僕に話が有るのですね?」

 

「あら?何故分かったのかしら?」

 

 僕は、カトレア様の持っている2つのカップを指差す。

 

「ホットミルクに少しお酒を垂らしたのよ」

 

 カップの1つを僕の前に置きながら向かいの椅子に座る。

 

「…………頂きます」

 

 カトレア様は、ニコニコと僕を見ているだけ。2人して、無言でホットミルクを飲む。

 半分程飲み終えた所で、沈黙が辛くなった僕の方から話し掛けた……

 

「それで、お話とは?」

 

「随分と怖い腕輪ですね?何の牙かしら?」

 

 シェフィールドさんから貰った牙の腕輪を指差して聞いてくる。

 

「マジックアイテムです。バラまけば、ゴーレム兵士となり守ってくれます」

 

「その指輪も?」

 

「ええ……自身の魔力を底上げしてくれます」

 

 カトレア様は、何やら考え込んでます。普段は、直感で話を進める彼女がまるで考えながら言葉を選んでいる様な……

 

「昔はマジックアイテムなど身に付けてませんでしたわ。最近なのかしら?」

 

「そうですね……ひと月位、前でしょうか?」

 

「…………ツアイツ君。私の病気を治す手立てって危ない事をするのね?」

 

 アレ?ヴァリエール夫妻には説明してあるけど……

 

「カリーヌ様からは聞いてないのですか?」

 

「…………ツアイツ君。初めて会った時から既に、貴方は私を警戒してた。違うかしら?」

 

 ……やはり何かを気付いている。

 

「昔の事ですから、よく覚えてません……ただ、ヴァリエールの一族の方としては優しい人だと感じてましたが」

 

「そうかしら?常に警戒されていたと感じたわよ。とても子供とは思えなかったわ」

 

 疑われてるのかな?

 

「自分でも早熟だとは感じてましたけど……警戒してるなんて酷いですよ。逆に僕が避けられていたと思ってましたよ」

 

 カトレア様は僕を見ていない……ずっと月を見上げている。

 

「公爵家の娘に生まれながら体の弱かった私。公爵家の義務も果たせず、若くして死ぬ事を理解していたわ……

それを私を警戒している貴方が治すのは……何故かしら?」

 

 不信感なのかな?分からない……この人の考えは、何を知りたいのか?

 

「カトレア様は……僕が怪しいと思ってるのですか?」

 

 初めて目を合わせて「お姉ちゃんでしょ?」と、宣った!

 

「僕は、ヴァリエール家の人達は家族と思ってます。ならば……お、お姉ちゃんの病が治る手立てを見付けたら実行するのが普通ですよね?」

 

 目を逸らさないカトレア様を逆に見詰める。何時ものフワフワした彼女じゃない心の底を見透かす様な危険な目……

 

「何故かしら?君は、君からは年上のイメージしか流れてこないわ。それにハルケギニアには存在する筈が無い……東方でもエルフでもない不思議な人」

 

 やはり……覚悟をしていたから、動揺はしなかった筈だけど。理屈じゃなくて感覚でバレたって事かな。

 

「結構酷いです。確かに僕は、ブリミル至上主義の世界では異端なのは理解してます。

オッパイ教祖ですから……しかしこの世界での自分を全否定された気持ちです」

 

 そう言って下を向く。これ以上、目を見るのは危険だから……

 

「ツアイツ君の見詰める先には、何が見えるのかしら?」

 

 おどけて誤魔化すか。

 

「そうですね。巨乳で綺麗な奥さんを沢山貰って自堕落に暮らしたいです。苦労と努力は今回でおしまいにしたいから……」

 

「ふふふっ。やっぱりエッチで優しい子なのね。私ね、小さい頃から決めていた事が有るのよ」

 

 えーと、女性なら嫌に感じるニートでハーレム願望を伝えたんだけど?

 

「何ですか?」

 

「私を助け出してくれた、白馬の王子様が現れたら……その人のお嫁さんになろうって!

良かったわ。ルイズ以外要らないとか言われなくて。宜しくお願いしますわ」

 

 そう言って、本気とも冗談とも思えない顔で頭を下げると去って行った……何?何なの?考えが纏まらない?

 この人騒がせな巨乳天然美人は、翌朝会った時はそんな素振りも見せなかったので冗談と思う事にした。

 流石に、ルイズを嫁に貰うのにカトレア様も……は、貴族の立場的に双方の家が不味い事になるし。

 何より、カトレア様にヤンデレの素養を見出したから。アレはシェフィールドさんと同じレベルだ。

 

 後からデルフで刺されるかもしれない。そんな未来予想図を感じさせる視線だった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 先程迄の事を考える。

 

 ツアイツ君……修行の為にと、何年か我が家で家族同然に過ごしてきた不思議な子。

 常に周りに気遣い、大人顔負けの能力と行動力を持っている。このハルケギニアでは異端だと思う思想を持った……

 だけど、悪い子ではなく寧ろ底抜けに善人なのに抜け目のない子。

 

 この子と関わった事で、ヴァリエール家の繁栄と存続に影響がでている。病弱だった私には、勘が人一倍強い。

 彼が、ヴァリエール家の未来を握っているのが分かるわ。しかし、逆に彼の存在が危険とも感じている。

 

 悪い子ではないの……

 

 しかし私を危険視している事も分かるの。そして彼に私も嫁ぐ事になるとも感じている。

 現在の状況では、準王家の私達が他国の……それも始祖の血を引かないゲルマニアに嫁ぐ事は有り得ない。

 ルイズの場合は、三女で有り魔法が苦手な事も有るから。

 ヴァリエール家とツェルプストー家の融和政策の立役者としてゴリ押しした感じだけど……2人となれば無理だわ。

 それが可能になるのは、今のヴァリエール家に二つの未来が有ると思うの。

 

 つまり王家に近い権力を握るのか……

 

 全く逆に落ちぶれて彼を頼るのか……

 

 どちらかは、今の私では分からないわ。でも、諦めていた未来が、とてもワクワクした事になるのは間違いないわ。

 しかし、エレオノール姉さんの未来が不確定に感じるのは何故なのかしら?

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。