現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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幸せワルド計画第4話から第6話

幸せワルド計画 第四部

 

 遂に実行に移す「幸せワルド計画」……参加者は全て自分と自分の遍在。ある意味、セルフでお得な作戦だ!人件費は0だし。

 

 

 ワルドABC

 

「どうだ?怪しい奴に見えるか?」

 

 三人共、顔をマスクで隠している。が、蝶を象ったコスプレな感じのアレだ!

 それに口元は、マフラーを巻いている。服装は、何処からかパクった僧衣を着ている。何処かの教会を襲ったのか?

 

「怪しいと言うか……怪しい奴その物だな。我ながら妖し過ぎるわ」

 

「全くだ!変装のなんたるかを理解してないな」

 

 ダッシュが、苦情を言いながら近づいてきた……上から下までピッチリな黒タイツを着込み、やはり蝶の仮面で顔を隠している。

 ダッシュ、それは仮装だよ。本体ワルドを襲うロマリアの密偵団は、仮装の変態集団となってしまった。

 しかし、変態を嫌うジョゼットに対してならば丁度良いだろう。

 

「では、行こう!セント・マルガリタ修道院へ」

 

 ロングビルは手を振っている。

 

「ちゃんと、様子をみているのだぞ!危なくなったら助けを頼むぞ。本当に宜しく頼むぞ……」

 

ワルドズはフライで飛んでいった、残されたグリフォン二匹の顎を撫でながら。

 

「まぁ失敗しても、私は困らないからね。ぜいぜい頑張んな」

 

 全く他人事だった。出発前には、ツアイツに自分に任せろ!と、張り切っていたのに……

 

「あー動物って癒されるねぇ……私も使い魔召喚しようかな」

 

「「グルグルル(もっと撫でれ!)」」

 

 お留守番組は呑気だ。

 

 

 

 

 その頃の変態の一団……

 

「では作戦通り、上手くやってくれ……手加減しろよ」

 

「「「「……了解だ?」」」」

 

 不安顔な本体を残して配置につく。ここに史上初の本当の意味で自作自演なミッションがスタートした。

 

 

 

 定刻通り桶を持って水を汲みに来るジョゼット。鼻歌などを歌っている。

 

「では、作戦通りに……」

 

 ダッシュの指示で、三方から飛び出しジョゼットを囲むワルドABC!

 

「ひぃ……誰なんですか?」

 

 尻餅を付いて驚く。

 

「ミス・ジョゼットだな?一緒に来て貰おうか」

 

 

 ノリノリのワルドA

 

 ズリズリと、少しでも変態ズから離れようとするが「どちらに行かれるのかね?尻を擦っては、黒子が傷付くぞ」彼女の真後ろから、ダッシュが話し掛ける。

 

「お尻……黒子……なっなんで知ってるの?」

 

 余りの台詞に一瞬思考が止まるが、ハッと思い出して真っ赤になる。

 

「我ら、教皇直属の密偵団を舐めるなよ。小娘の秘密など全てお見通しよ」

 

「「「はっはっは!可愛い尻らしいな?ジュリオ殿から報告を受けているぞ」」」

 

 思わぬ名前に、固まってしまう。

 

「あの、女装して教皇の愛人になった変態のせいなの?」

 

「男の娘か……我らには理解出来ぬ変態だな。しかし、お前がガリア王家の血を引いてると調べはついている。ヤツのお陰だ」

 

 ダッシュ、相変わらずノリノリ!しかも、股間を強調したポージングでにじりよる。

 

「ひぃ!たっ助けて下さい。私は、生まれてからこの修道院しか知らないの?外の世界なんて知らない……」

 

 余りのダッシュの痴態に、貞操の危機を感じてしまった。

 

「では、同行願おうか……ロマリアまで!」

 

 強引にジョゼットの腕を掴み立ち上がらせる。

 

「引き上げろ……誰だ!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 なっなんてノリノリなんだダッシュよ。ミス・ジョゼットが涙目じゃないか。あっパンツ見えた!

 

 ふっふっふ……でかした、我が遍在よ。しかし、ズロースかな。野暮ったいぞ。あれでは、彼女の魅力が台無しだ!

 ツアイツ殿から、ぱんてぃとぶらじゃを貰ってプレゼントするか……しかし、お前のポージングは素晴らしいな!

 私も、あの衣装を着たい……いかんいかん。

 

 では、颯爽と助けに行くか!

 

 

「待てぇ!そこのイカした……いや、イカれた4人組よ」

 

「「「「なに奴?」」」」

 

「何だ……我らを追っていたトリステインの隊長さんか。4対1だが?何時もの応援は呼ばないのか?」

 

 クネクネとナイスなポージングじゃないか!私も後でやりたいぞ。

 

「黙れ、紳士達よ!その幼気な美少女から離れろ」

 

 ヨシ!ポージングばっちり。ダッシュを真似て、ポージングを披露する。

 

「そうか……では痛い目をみな!全員で袋叩きだぁ!」

 

「「「うぉー!恨みは無いが痛い目みなぁ!」」」

 

 ちょ痛い、痛いから!「ゲフゥ!」誰だ、本気で蹴るのは?「ちょ待って……グハァ」鳩尾に入ったぞ!

 

 ダッシュ、仮面で顔を隠しているのに笑顔なのが分かるのは何故だ。

 

「ゲフッ、お前ら……ひっ髭を引っ張るな、オウッ!」

 

 4人掛かりのストンピングでボロボロの本体ワルド……

 

「…………お前ら、後で覚えていろよ、ガクッ」

 

 やり過ぎたかと、視線で会話するワルドズ。だが、芝居は続くなければならない。

 

「ぐっ、しまった!トリステインの隊長で遊んでいたら、我ら紳士の変態活動時間が……今日は退くぞ!

小娘よ、良かったな。このボロ切れのお蔭で命拾いをしたな。では何れ会おう」

 

 颯爽と、ストレス解消をしたダッシュとワルドABCは、フライで飛んでいった。その姿は爽やかだったらしい……

 

「何?何なの?それに、この人をどうしたら良いの?」

 

 ジョゼットは途方にくれた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 なっ何の?私、狙われているの?でも、助かったの?このボロボロの人が助けてくれたの?

 それに、お兄様……私をロマリアに売ったのね。

 

「……ううん」

 

 いけない。助けてくれた人を放っておいては……

 

「大丈夫ですか?しっかりして下さい。今、人を呼びますから……」

 

 ぼろ雑巾の様な人を揺すってみる。

 

「人は呼ばないでくれ。トリステインの魔法衛士隊隊長が、ガリア国内で負傷は……外交的…に……不味いんだ……」

 

 ちょー、いきなり国家間問題を私に押し付けて気を失わないでー!

 

「私、どうしたら良いのー?」

 

 静かな森にジョゼットの雄叫びが響いた……誰も応えてはくれなかったが。

 

 

 

 幸せワルド計画 第五部

 

 

 まるで暴風の様な出来事だった……突然の変態の襲撃。 信じて、裏切られた人がまた裏切った事。

 そして、助けてくれた筈のボロボロの人……

 

 この人は、トリステインの魔法衛士隊の隊長と言っていた。 何故、トリステインの貴族がこのガリアの孤島にいるのかしら?

 あのロマリア密偵団の変態集団とも、因縁が有りそうだったわ。そして秘密にして欲しいって……

 国に捨てられた私が、国に配慮しないといけないの?

 

  駄目だわ。 思考が纏まらない……でも、この人は恩人だと思う。

 

 あの変態集団もそう言っていたし……あれ?なんで、あの恥ずかしい格好の変態は、わざわざこの人が恩人だなんて言ったのかしら?

 それに、あの連中と同じ臭いがするの。 実際に嗅いだ訳ではなくて、存在感が……あの気色悪いポージングとか。

 

 ジョゼットは思考に耽る余り、ワルドを放置プレー中だ!

 

「うぐっ……はぁはぁ」

 

 ワルドの呻き声で我に返る。いけない、またやっちゃった!この考え込むと周りが見えなくなる癖は治さないと駄目ね。

  取り敢えず、隊長さんを寝かせて顔の腫れを冷やせば良いのかな?

 当然膝枕などせずに、ワルドのマントを畳んで枕に……そして内側の刺繍を見てしまう。

 

「これは、私? 違うわ。 今もガリアで、のうのうと生きている姉さん?では、この人は……」

 

 肌身放さず着けているマントの内側には、振られたにも関わらずミス・タバサのウェディングドレスバージョンの刺繍入り。

 上級会員の嗜みとして、常に身に着けている癖が災いした。

 

「やはりこの人も、私の秘密を知っているの?」

 

 折角、現実に引き戻されても思考の海へと沈んでいった……ワルド、放置プレー続行決定。

 

「はぁはぁ……イテテテテ……あいつ等無理しやがって……」

 

 ワルドは自力で覚醒した!看病フラグは、たたなかった。ワルドが、まだ朦朧として周りを確認出来ない内にマントをそっと返す。

 

「えーと、有難う御座います。 助かりました。それで、貴方は?」

 

 先ずは情報を集めよう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何やら体中が、バキバキと痛い……あいつ等、手加減を知らないのか?僅かだが、気を失っていたらしい……

 気が付けば、私を見下ろすミス・ジョゼットが居た。

 

「えーと、有難う御座います。 助かりました。それで、貴方は?」

 

 彼女は私の隣に座り、見下ろしたまま質問してくる。銀色の髪が重力に負けて垂れ下がるのを左手で、かき上げながら……

 

「可憐だ……」

 

「はぁ?」

 

「いや、すまない迷惑をかけたね……イテテテテ」

 

 起き上がろうとするが、全身の痛みに思わず呻いてしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

 ミス・ジョゼットが手を貸してくれて、何とか起き上がり向かい合って座っている形になる。

 

「有難う。いや恥ずかしい所をみられたね。もう大丈夫だ」

 

 にっこりと微笑むが、彼女は赤くなってくれない。私には、ニコポ・ナデポのスキルは無いのか……

 

「あの……隊長様は……」

 

「ワルドで良い。私はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。トリステイン王国で、魔法衛士隊の隊長をしている」

 

「ワルド様ですか……何故、その様な方がガリアの孤島に居るのですか?」

 

 美少女にワルド様と呼ばれると……ゾクゾクっとくるな。しかし、どう言えば良いのだ?この質問への回答はシミュレーションしてないぞ。

 

「ああ……その、何だ……つまり」

 

「ワルド様は、私の素性をご存知なのですよね?あのロマリアの変態集団とも……因縁が有りそうでした。何故なんですか?」

 

 真剣な表現で、問い詰めてくる。嗚呼……美少女に詰問されるのに、快感を覚えるとは。

 

 はっ!

 

 私が、サードステージに進化したのか?しかし、どう誤魔化したら良いのだ……

 

「……何故、教えてくれないの?」

 

 ヤバい、ミス・ジョゼットが泣きそうだ!

 

「話は長くなるが良いかな?」

 

 彼女は無言で頷く。

 

「ミス・ジョゼット。私が君を、君の存在を知ったのは……大恩有る年下の友人からだ。

彼はゲルマニアの貴族だが、有る事件を切欠にガリア王家と関わる事になった。

彼はそこで、ジョゼフ王に趣味(オッパイ・回春)の遊戯(性癖戦争)で競う事となり……

その関係で、イザベラ王女、タバサ……ミス・シャルロットと懇意にされている」

 

 突然の話に、ポカンしていたが、シャルロットの名前に激しく反応した!

 

「シャルロット……私の姉さん、そして捨てられた私と違い、のうのうと生きている女」

 

 その目に、暗い感情が見えた……あの目は、絶望と怨念の入り混じった危険な目だ。

 

「辛い話になるが、聞いて欲しい。君の父上は、ジョゼフ王に隔意を抱き(本当は、近親相姦&同性愛の相手として好意を抱き)粛正された。

君の母上は幽閉され、家は不名誉の烙印を押され……君の姉である、ミス・シャルロットは偽名を名乗り北花壇騎士団として働かされている」

 

「私を捨てた人達は、没落したの?私には、本当に帰る家はないんだ。あはは……捨てられた家の事なのに、悲しいなんてヘンね」

 

 私は彼女を抱き締めた……彼女は抵抗せずに泣いている。柔らかいし、良い匂いがするし……

 

 はふぅ、幸せだ!

 

「我が友人は、君の家の再興に尽力している。そこで、君の存在を知ったらしい……

ロマリアは、ホ〇国家となり、始祖の子らの国々に男の娘思想を広め始めた。

君の身に危険が迫っているのもその為だ。王家の血を引く君を抑えるには意味が有る」

 

 余り、セクハラ紛いの抱擁はマイナスと思い、彼女を解放する。

 

「それで……ワルド様は、私をどうしたいの?」

 

「勿論、妻に……いや、ツマり保護と言うか、私と共にゲルマニアに来て欲しい。そして友人と会って欲しいんだ。

彼なら、君を悪い様にはしない。力になってくれる筈だ!それと……君に色々と教え込んだのは、ジュリオだね?」

 

 ミス・ジョゼットは黙って頷き、そして考え込んでしまった……済みません、ツアイツ殿。

 

 私には、説得は無理です。丸投げする様ですが、彼女の説得をお願いします。

 ワルドは、ジョゼットの説得を諦め、全てをツアえもんに託す事にした。

 

 の〇太の様に……

 

 

 

 幸せワルド計画 第六部

 

 嵐の様な、襲撃事件。そして突然の告白……しかも、私が知らない内に国家間紛争に巻き込まれている。

 私は、何を信じたら良いのかしら?誰かに相談……は、出来ないわ。巻き込んでしまうから。

 でも、このまま残れば又あの変態に拉致られてロマリア行き……兄様には、二回も裏切られた。

 

 もう信用出来ないわ。

 

 だからと言って、この隊長さんを信じて良いのかしら?ガリア王国の問題に、ゲルマニア貴族が尽力……

 それを教えてくれたのは、トリステイン王国の魔法衛士隊隊長。

 

 話だけ聞けば、スッゴいヘンよ……

 

 でも、あのロマリア密偵団の変態よりマシ!決めたわ。

 

「あのー隊長様?」

 

 長い間、思考の海に沈んでいたせいか?隊長様は、座りながら寝ていた……

 

「隊長様、起きて下さい。起きて」

 

 揺すって起こす。

 

「うーん、ムニャムニャ。ツアえもーん、後はお願いします」

 

 寝言?誰ですか、つあえもーんって?

 

「違います。お願いします、じゃなくてお願いだから起きて下さい」

 

「あっ?ああ、おはよう。突然考え込んだまま、無反応だから心配したよ」

 

 ははは、と笑っているけど熟睡してましたよね?

 

「私、貴方と共に行きます。どうしたら良いの?」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「私、貴方と共に行きます。どうしたら良いの?」

 

 ヨッシャー!ロリゲットだぜー!

 

「そうか、有難う。では……君にも準備が有るだろう。双子の月が頭上にくる時間にこの場で。応援と共に迎えに来るよ」

 

「分かりました。それと、何故隊長様はマントの内側に私?か姉?の刺繍を施しているのですか?」

 

「こっこれは……ちっ巷で人気のマントなのですよ!可愛いなぁ、と思い貰ってしまいましたが」

 

「貰って?」

 

「さっさぁ水汲みにしては、随分時間が経ってしまったようだよ。早く戻った方が良い!では今晩ここで」

 

 ボロが出る前に立ち去ろう。フライでアジトまで帰る事にする。

 

 

 

 アジトに戻ると、グリフォンを撫で捲るロングビルが出迎えてくれた。相棒よ……撫でられ過ぎで、抜け羽毛が凄い事になってるぞ!

 

「お帰り。で、どうだったの首尾は?ダッシュ達はスッキリしたって帰って来たけど」

 

「勿論、成功だ。今晩迎えに行き、そのままツアイツ殿の下へ連れて行く。後はツアイツ殿に任せるつもりだ!」

 

「つもりじゃないだろ、マダオがぁ!それ本当に成功したの?ちょっと説明しろ!正座でだよ」

 

 いきなり拳骨で殴られ、訳も分からず説教をうけた……しかも、先程の話もさせられるし。

 全てを話終わったら、溜め息をつかれるし……

 

「ダッシュに説明して、先にツアイツ様に報告させな。それと共犯者共の遍在ABCは消しときな。

いつバレるか分からないからね。変装に使った衣装や仮面も燃すんだよ。女のカンを舐めるとバレるんだからね」

 

 結局、何もしなかったこの女に仕切られて後片付けをする。

 

「それじゃ夜の迎えは私も同行するよ。このグリフォンに乗ってね」

 

 すっかり懐いてる、二匹のグリフォンの顎を撫でながら恍惚とするこの女……私が幸せになったら、仕方ないが相手を見繕ってやるか。

 動物相手に興奮しては、先が思いやられるからな。

 

 ヤレヤレ!私も丸くなったものだ。

 

 

 

 その時のジョゼット……

 

 随分長い間、水汲みに行っていたのに、周りはまた妄想してたの?で、納得されてしまった。

 今夜で、この修道院ともお別れとなるのか……でも、私が居たらみんなに迷惑がかかるから。

 

 皆が寝静まった頃にそっと起き上がる。同室の子らを起こさない様に、そっと部屋を出る。

 荷物は僅かな着替えと一冊の本しかない……私の唯一の私物の本。

 いつかこのシンデレラの様に、私も社交界にデビュー出来るかしら?このサクセスストーリーを書いた作者に会ってみたいわ。

 こんな素敵なお話を書ける方だもの……きっと素敵なおじ様よ。

 

 この本は、大切に袋に詰めて持って行く。全財産を片手で持てるなんてね……布団の上にそっと書き置きを残した。

 

「心配しないで下さい。皆の迷惑にならない様に出て行きます。今まで有難う御座いました。それと、本を一冊貰っていきます!」

 

 簡単な書き置きだが、覚悟の家出と思うだろう!この判断が、正しいか分からない。

 けど、ここに居ても何も変わらない日常を繰り返し、誰も知らない内に死んでいくだけだ。

 

 あのワルド様……

 

 何かを隠しているみたいだけど、悪い感じはしなかった。最悪、逃げ出そう。

 待ち合わせの場所に行き暫く待つと、夜空にグリフォンが二匹現れた。ワルド様と緑色の髪の女性が降りてくる。

 

「あんたがジョゼットかい?この阿呆が迷惑かけたらしいね。それで、本当に私達と一緒に来てくれるのかい?」

 

「なんだ、阿呆とは失礼だな。きちんと説明したし、承諾を得たんだぞ」

 

 何か、夫婦漫才みたいな掛け合いをしながら近付いてくる。ワルド様……ちゃんと、良い人が居たのね。

 あの掛け合いは、夫婦の阿吽の呼吸なのかしら?

 

「じゃ、行こうか!こっちに乗りなよ」

 

 何か言いたそうなワルド様を黙らせて、私を自分のグリフォンに乗せる。尻に敷いているのね。そう言われ、人生初体験となるフライトを経験した。

 

「お姉様は……」

 

「ん?ああ、名乗ってなかったね。私はロングビルさ」

 

 何か、鋭利な雰囲気の綺麗な人だな……

 

「えっと、ロングビルさん……」

 

「なんだい?」

 

「ロングビルさんは、ワルド様の奥様なのですか?」

 

 うわっ……飛行姿勢の乱れたグリフォンにしがみ付いて、落下を防ぐ。

 

「危ないです!」

 

「危ないのは、アンタの頭ん中だよ!何で私がアレの嫁なんだよ?」

 

 違ったのかしら?

 

「いえ、息の合った掛け合いに、尻に敷いている様な言動でつい……」

 

 本気で怒ってる?

 

「私には、好きな人も居るの!どっちかって言えば、アイツの好みはアンタだよ」

 

 私?この仮初めの?それとも本当の私?

 

「今回だって、アンタを不遇な環境から救う為に此処まで来たんだ。最後はツアイツ様任せにする気らしいけどね」

 

「私を助ける?」

 

「そうさ!ツアイツ様が、アンタがロマリアに利用されそうだ!

って言ったから、わざわざ此処まで来たんだ。一応、善意のつもりだから安心しな。悪くはしないさ」

 

 ツアイツ様って?ワルド様の年下の恩人の方なのかしら?

 

「ツアイツ様って、ワルド様のご友人の?」

 

「そうだよ!アイツには勿体無い程の、素晴らしいお方だよ。私が仕えているのも、その人さ」

 

 何故か……ラヴ臭?惚気?でも、ワルド様の年下って、ロングビルさんからも年下よね?ロングビルさんってショタなのね!

 

「ロングビルさんの好きな方がツアイツ様なのね?」

 

「………いや、そんな事は……私は年上だし……でも求められたら……」

 

 グリフォンの手綱捌きが、怪しくなる。

 

「ひぃー落ちます、落ちますから!ロングビルさん落ち着いてー!」

 

 恋バナは、危ない環境でしたら危ない!ジョゼットは、その話題を振った事を後悔した……

 

「お願いだから、正気に戻ってー!」

 

 ワルドの幸せは、ツアえもんの手腕にかかってしまった!ジョゼットをセント・マルガリタ修道院から連れ出す事には成功!

 ロマリアに悪感情を持たせられたし、ジュリオとの仲違いもさせられた。しかし、ワルドとの仲を進展させる事は一つも出来ていない。

 そして、愛読書の作者がツアイツだとも気付いていない。

 

 大丈夫なのか?幸せワルド計画は?

 

 

 ※本編に続きます!


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