現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第135話から第137話

第135話

 

 

 小さな事から嘘から綻ぶ事を回避する為に、本当に怪我を負う事にした。

 しかし頼んだダッシュ殿のライトニングクラウドは、シェフィールドさんにより防がれた。

 

 これは危険だ!

 

 主にダッシュ殿が……超過保護なシェフィールドさんが、僕に攻撃魔法を放ったダッシュ殿を許すとは思えない!

 

「ちょシェフィールドさん違いますからね!ダッシュ殿には僕が頼んだ事ですから!」

 

 シェフィールドさんは、ライトニングクラウドを吸収し紫電をパリパリと纏っているデルフを無造作に放り投げる。

 

「姉さんヒデーっすよ!」

 

 デルフが文句を言っているが、彼女は動かない。ダッシュ殿も固まっている。早く逃げろダッシュ殿!

 

「あの、シェフィールドさん?」

 

 ゆっくりと此方を振り返った彼女の顔は、恍惚としている……何故?

 

「嗚呼……ツアイツ様……貴方も普通では無かったのね。謀略の為とは言え、躊躇無く自分に怪我を負わせる事が出来るなんて……」

 

 彼女はゆっくりと近付いてくる。普段と態度が違う。目がグルグルのヤンデレMAXだ!

 

「嬉しい。貴方も私と同じ様に、何処か狂ってるのね」

 

 そう言って僕を抱き締める……

 

「私は不安でした。己の生に無頓着で、世界に不満を募らせる主。そして、その手を血にまみれさせ狂った主に仕える私……

どんなに良くしてくれていても、ツアイツ様は私達とは根本的に何処かが違うと思っていたわ」

 

 抱き締める力が強くなる。乳圧で苦しくなる……

 

「でも貴方もこちら側の人間だったのね。嬉しいわツアイツ」

 

 力を込めてシェフィールドさんの拘束を解く。

 

「シェフィールドさん、何を?」

 

 嗚呼……あれは、危険域を突破した目だ!

 

「愛するツアイツを傷付ける者は、誰だろうと許さないわ。貴方は私が守ってあげる。でも貴方を傷付けるのも、私以外は許さない」

 

「な、何を言ってるの?」

 

「大丈夫……貴方に火傷が必要なら、私が貴方を傷付けるわ。それに駄目よ。稲妻の火傷は、特徴が有るから火のメイジには付けられないの」

 

 嬉しそうに、僕を抱き締めて頭を撫でながら……囁く様に、危険な台詞を言う。

 

「だから私の手で、ツアイツを燃してあげる」

 

 ちょ、コレってヤンデレさんに殺されるパターン?

 

「この火石を操れば、火のメイジと同じ事が出来るわ。大丈夫よ。このまま私も一緒に燃えてあげるから……さぁ準備は良いかしら」

 

 そう言って、抱き締められて密着した体と体の間に火石を挟んだ!

 

「ツアイツ、お姉ちゃんと共に燃えましょう……」

 

 そう言って火石の力を解放しようとしたので、火石を掴んで彼女を突き飛ばす!

 

 激しい熱、暴力的な爆風を受けて僕の左半身から激痛を……

 

「ぐっ……ぐあぁ……」

 

 掴んで火石を放り投げようとしたが間に合わず、左腕を付け根まで火球に包まれ、爆風で左半身に火傷を負ってしまった。

 

「くっ……ダッシュ、水の秘薬を……早く!」

 

 有りったけの水の秘薬を使い治療をする。ヤバい、激痛で意識が朦朧とする。

 しかし、子供の頃からカリーヌ様に受けた拷問と言う名の訓練が、僕に苦痛に対するタフネスさを齎(もたら)してくれたのか……

 

「シェフィールドさん」

 

「ツアイツ様、何故?」

 

 彼女は涙ぐんでいる。しかし、目はまだヤンデレだ。ここで対応を間違えれば、僕は死ぬだろう。

 

「シェフィールドさんを傷付ける奴は僕も許せないんだ……自分を含めて……だから、落ち付いて、ね。僕とシェフィールドさんは家族だから……」

 

 ヤバい、流石に意識が……

 

「ダッシュ殿、後は頼みます。僕は元々重傷だから……分かりますよね?身内に被害を及ぼさない様に、騒ぎを……抑えて…下さい……」

 

 そう言って意識を手放す。

 

 出来る事なら「シェフィールドさんヤンデレEND」なんて終わり方で無い様に……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 つっツアイツどのー!

 

 この状況で、何を私にさせようとするのですか?くっ足が、足に力が入らない……シェフィールドを見れば、呆然としている。

 私には、遠慮も無く死を与えるかも知れないが……

 

 私を一個人として見てくれたツアイツ殿の為に「しっかりしろ!」このヤンデレ女をひっぱたく!

 

 目の焦点が合って、睨まれてしまった……

 

「何をするの?」

 

 あっ足に力が入らない……

 

「つっツアイツ殿が私に託した事……それは、我々の誰にも被害が及ばない様に、この事態を纏める事……ここは、私が何とかするので、直ぐに立ち去れ!」

 

 言うやいなや、爆発音を聞いた使用人達が騒ぎ出している気配がする。

 

「しっしかし、ツアイツ様が……」

 

 ダンダンダン!

 

「ツアイツ様、今此方から凄い音がしましたが!大丈夫ですか?」

 

「早く行け!」

 

 シェフィールドは、後ろ髪を引かれる様な表情で転移して行った。さて、私はこの場をどう取り繕ったら良いのだ?

 急ぎドアに向かい、扉を開けながら考える。

 

「ワルド様!一体何が有ったのですか?きゃ?ツアイツ様!どうなさったのですか?」

 

 エーファと言ったか?メイド長が、ツアイツ殿の下に駆け寄って行く。

 

「大変なのだ!見舞い品の中に火石の罠が仕込まれていた。

私が来た時には、既にツアイツ殿が自分で治療を……しかし、応急処置だ!早く水メイジを呼んでくれ。

そしてツアイツ殿は、動揺を抑える為に内密に処理をしろ!と、言われた。サムエル殿と相談を……」

 

 ツアイツ殿専属のメイド達が、慌ただしく処理をしていく。流石に手際が良い。

 専属の水メイジが治療に当たるが、既に応急処置がなされいる為に殆どする事がないそうだ。

 

 ツアイツ殿を着替えさせ、綺麗な包帯で処置を終えると「命に別状は有りません。しかし絶対安静にして下さい。何か有れば別室に控えてますのでお呼び下さい」そう言って退出してしまった。

 

 皆の視線が、私に集中している……詳しい事情を説明しないと、許さない!そんな視線だ……

 

 

 ツアイツ殿!

 

 どうか、私の嘘がバレる前に意識を回復して下さい!もう、いっぱいいっぱいですから……

 

 

 

第136話

 

 

 ああ、ツアイツ!死んでしまうとは、何事だ!

 

 僕の切断した首を抱き締めて、座り込むシェフィールドさん。愛おしそうに髪を梳いている……

 

 ツアイツ・フォン・ハーナウ、享年15歳。

 

 ハルケギニアをオッパイで駆け抜けた、若き教祖の早すぎる死だった……

 

 

 

「ヤンデレなシェフィールドさんBAD END2」

 

 

 

「って違うわー!まだまだこれから僕のサクセスえろストーリーは始まるんだー!」

 

 あれ?生きてる……思わず首が付いてるかを確かめて、左腕の痛みで我に帰る。

 

「知ってる天井だ……それと、知ってるダッシュ殿……」

 

 目の前には、隈を作ったダッシュ殿が憔悴しきって座り込んでいた。

 

「良かった、ツアイツ殿……もう少し遅ければ、私はストレスで消滅してました」

 

 どんだけ苦労したの?

 

「それで、どれ位かな?意識が無かったのは?」

 

「まだ翌日の昼過ぎです。まる12時間は意識を失ってましたよ……」

 

 そう言って、僕が気付いた事を知らせる為に出て行った。痛みの有る左半身を確認する……酷い状態だが、指も全部有るし動く。

 顔には怪我は無いし、左上半身と左腕が中程度の火傷で済んだ。時間は掛かるが、完治する程度の怪我だ。

 

 暫くは見た目は酷いけど、結果オーライか……

 

 などと考えていたら両親とメイドズ、それとテファと本体ワルド殿が駆け込んで来た。

 

「ツアイツ、見舞い品が爆発したとは本当か?」

 

「ツアイツ、痛くない?痛いなら主治医を呼ぶわ」

 

 両親が同時に話し掛けてくる。見舞い品が爆発?ダッシュ殿を見れば……僕を拝んでいる。ああ、そう言う設定なのか……

 

「ええ……確証は有りませんが、箱の一つから煙が出てまして。 外に放り投げ様としたが間に合いませんでした……

後は、山積みの水の秘薬を有りっ丈使い応急処置を頼み、ちょうど来てくれたダッシュ殿に後を任せたのです」

 

「ほら、私は嘘は言ってませんよ!」

 

 すかさずダッシュ殿が、自己弁護し始めた。疑われていたのかな?

 

「旦那様、お身体は平気ですか?痛くはないですか?」

 

 テファが泣きそうな顔で、訊ねてくる。前にロングビルさんに重傷を負わされた時みたく、抱き付いてはこなかったが……

 

「僕も水のトライアングルですから分かります。酷い火傷ですが、完治します。時間は掛かるけど、傷も残らないですよ」

 

 それを聞いて皆が安心したようだ。

 

「少し休みますね。その前に父上とダッシュ殿とワルド殿は、お話が……残って貰えますか?」

 

 これからの対策だけは、話しておかなければ……

 

「良いだろう。皆は先に休んでくれ。テファ殿は、先程まで徹夜で看病していたのだ。後で礼を言っておけよ」

 

 今は有能な父上だ!テキパキと皆を下がらせ、ベッドの脇に椅子を3つ用意し並んで座る。

 

「さぁ話せ……」

 

 気付いてるのかな?

 

「この怪我……ちょうど良いから利用しましょう」

 

「ダッシュ殿の報告に有った、アンリエッタ姫の暴走が原因か?」

 

 ダッシュ殿を見れば、頷いている。

 

「私が大筋を話しました。しかし、アルブレヒト閣下への謁見はその怪我では無理でしょう。

なので、ツェルプストー辺境伯に使いを出して貰いました。彼に来て貰い、そして閣下に報告をして貰う」

 

 流石だ、ダッシュ殿!

 

「流石です、ダッシュ殿。父上、アンリエッタ姫は、我らでは既に制御不能……そもそも彼女を制御など、近くに張り付いて居なければ不可能でした。

不正の資料・リストを渡し、全ては義父上達に託しました。しかし、最悪の事態を考えてゲルマニアも増援を送ろうかと考えたのです」

 

 父上は、目を閉じて考えている。

 

「貴様から見て、王党派はどうだ?我が祖国を巻き込む必要が有るのか?そもそもアンリエッタ姫の恋愛成就など、もう協力する必要も無かろう!」

 

 んー父上は、アンリエッタ姫を見限るつもりかな?

 

「ウェールズ皇太子。実際お会いしましたが、有能ですし我らと同等の変態ですね。

アレは、僕達との連携の取れないアンリエッタ姫ではどうこう出来ません。

現戦力では、王党派は少し不利ですから。あと一手をトリステインに打たせ、花を持たせる予定でしたが……」

 

「あの暴走姫のせいで、精々が国内の腐敗貴族の処理で終わる……か?」

 

「増援まで、話を纏められるかが疑問です。でも増援が無いと王党派が危険だ。だから戦意高揚を含めて、僕はアルビオンに向かいます」

 

「お前が、其処までする必要は無いだろう。ゲルマニアの参戦許可がおりれば、ウチとツェルプストー辺境伯の常備軍で事足りる」

 

 親として、至極真っ当な意見だ。

 

「閣下へのお願いは、義父上が来てから話し合いをしましょう。我らゲルマニアには悪くない話ですから。

アルビオンとの軍事同盟と婚姻同盟……閣下の悲願の始祖の血を帝室に入れる事も可能ですから」

 

 アルブレヒト閣下は、ゲルマニアが始祖の血が入ってない事だけで、国力の格下連中に軽く見られるのが我慢出来ずにいる。

 アルビオン王国はハルケギニア最大の空戦力を持っているから、軍事同盟にも旨味が有る。

 それに、ジェームズ一世もウェールズ皇太子も王族としてマトモだ。彼らは、話し合いで手を組む事が出来るだろう。

 

 この国際交流は、お互いの利益が有るから問題は無い……

 

「今は少し休め……それと、先程ワルド殿から聞いたが。極上のロリっ子が、此方に向かっているそうだ。それが、ミス・ジョゼットか?」

 

 ああ、忘れてた。

 

「ワルド殿、首尾はどうだったのですか?」

 

 ワルドズの方を見ると……ダッシュ殿が目を逸らしたぞ?

 

「ツアイツ殿、取り敢えずミス・ジョゼットを彼女の意志で、セント・マルガリタ修道院から連れ出す事には成功しました。

序でに、ロマリアとジュリオに隔意を持たせる事も上手く行きました。彼女はホ〇国家と、それに情報を売ったジュリオを恨んでます……」

 

 それは……ロマリアがガリアにちょっかい掛ける芽の一つを摘めたって事かな。落ち着いたら、イザベラ姫に相談しよう。

 彼女なら、悪い様にはしないだろうし。また迷惑を掛けてしまうな……お詫びに何を贈ろうかな?

 

 などと彼女の好きそうな物を考えていたら、エーファから報告が有った。

 

「ツアイツ様、済みません。

ガリア王国竜騎士団団長カステルモール様とご内儀様以下イザベラ隊の皆様が、面会を求めていますが……どうしたら良いでしょうか?」

 

 まさかの、ガリア精鋭部隊の来訪の知らせだった!

 

 

 

第137話

 

 

 イザベラ姫の命を受けて、民間船にてハーナウ領へやって来たカステルモール様御一行……

 レコンキスタを潰す前に、ツアイツの安否をイザベラ姫に伝える。ただ其れだけの為に、やって来た一団だった。

 

「それで、彼らは何処に居るんだい?」

 

「それが、総勢32名もいらっしゃいましたので、大広間にてお待ちです」

 

 32名だって?そんなに押し掛ける程の事が有ったのかな?

 

「分かりました。では大広間に行きま……イテテテテ……」

 

「ツアイツ殿、無理はしないで下さい。代表で、カステルモール殿だけを先に通して貰えませんか?」

 

 ダッシュ、ナイスフォロー!エーファが、カステルモール殿を呼びに行った。

 

「ご内儀……奥さんだよね?エルザの紹介だけなら、大袈裟な……」

 

「ツアイツ殿、ご無事ですかー?」

 

 カステルモール殿が、物凄い勢いで室内に入ってくる。

 

「カステルモール殿、お久し振りです。どうなされたのですか?」

 

 カステルモール殿は、僕を上から下までじっと見詰めている……左腕から左半身に向けている視線が厳しい。

 

「ああ、これはレコンキスタからの刺客にやられてしまいましたが……大分良くなりました」

 

 本当は昨夜のシェフィールドさんヤンデレ化事件の傷なんだけど、ガリア組には仮病って伝えてなかったから……

 

「その傷……まだ塞がり切ってないではないですか!そんなに血が滲んで……

でも意識はハッキリしているので良かった。回復の見込みは、どうなのですか?」

 

 まさか心配して来てくれたのかな?

 

「先程、意識が戻ったんですが……僕も水のメイジ。後は完治まで、そう掛からないですよ。あの、カステルモール殿……聞いてますか?」

 

 もんの凄い殺気をたぎらせてマスケド?嘘がバレたのかな?

 

「あの……カステルモール殿?」

 

「ツアイツ殿……」

 

「はっハイ!なっ……何ですか?」

 

 この真剣な顔は……何が有ったんだ?

 

「お願いが有ります。動ける様になったら、一度イザベラ姫に会ってあげて下さい。

彼女は、ツアイツ殿の怪我を会報で知ってから塞ぎ込んでいます。せめて手紙でも構いません。無事を知らせてあげて下さい」

 

 そう言って頭を下げた。

 

「あっ頭を上げて下さい。ちょうどイザベラ様には、何か贈り物をしようと考えていたところでしたから……」

 

 カステルモール殿は、それでも頭を上げてくれない。

 

「私は、あの意地っ張りで我が儘で意地悪な姫を気に入っています。

見た目よりも、ずっと強く気高い姫を……しかし、ツアイツ殿の怪我を知ってから……

彼女が、泣きそうな小さな少女に見えてしまうのです。出来れば、直接会って無事を知らせて頂きたいのです」

 

 えーと……イザベラ様が、僕の事を心配して塞ぎ込んでいる。イザベラ様と僕は……友達で共犯で戦友?そしてアイドルとしてのプロデューサー?

 

 どちらにしても、彼女が僕を心配してくれているのは嬉しいかな。

 

「勿論です!ちょうどお会いして話したいと思ってましたから」

 

「そうですか!良かった、それなら我らが護衛の任に付きます」

 

 やっと頭を上げてくれた。

 

「折角、我が家に来てくれたのですから暫く滞在していって下さい。イザベラ様には、直ぐに手紙を認(したた)めますので……」

 

 ワルドズの方を見て「カステルモール殿達の世話をお願いしますね」そう言って、部屋から出て行って貰った。

 

 ……ヤバかった。あの勢いで心配してくれて来たのに、実は謀略で仮病でした、テヘッ!何て言える訳無い。

 カステルモール殿に頭まで下げさせてしまったからには、何としてでもガリアには行かねばならない。

 

 イザベラ様……

 

 僕の事もちゃんと心配してくれたんだ。でも立地的にアルビオンより先にガリアには行けないよな……どうしようかな?

 うんうんと考えてみるが、時間と距離の関係で難しい。

 

 そうだ!もう1人、フォローしないといけない女性が居たんだった。僕は天井に向けて話し掛ける。

 

「お姉ちゃん。居たら出て来て欲しいな」

 

 シェフィールドさんは、音もなく部屋の隅に転移してきた。

 

「ツアイツ様……」

 

 彼女の目は、まだ微ヤンデレな感じがする。

 

「お姉ちゃん。気持ちは嬉しかったよ。でも、家族が互いに傷を付けちゃダメだよ。お姉ちゃんは、ジョゼフ王のお嫁さんになるんだから、花嫁に傷が有っちゃダメでしょ?」

 

 ジョゼフ王よ。ヤンデレパワーは、全て貴方に向けさせて貰います。

 

「ツアイツ様……私の事を嫌ってないの?」

 

「何で?僕はお姉ちゃんを傷付けたかもしれない、僕の事が許せないんだ。お姉ちゃんに怪我は無かった?」

 

 よし、黒目が減ってきた。もう少しだ。

 

「私は平気。ツアイツが庇ってくれたから……」

 

「良かった、安心した……じゃあ、少し寝るね。寝るまで側に居てくれる?」

 

 シェフィールドさんの目は、慈愛に満ちた何時もの目だ……ヤンデレエンドは回避出来たぞ!

 

「ツアイツは、お姉ちゃんが居ないと寝れないのね?しょうがない甘えん坊さんね……」

 

 ベッドの脇の椅子に座り、頭を撫でてくれる。良かった……元に戻ったよね?

 何か地雷を踏んだ気がビンビンするが、ジョゼフ王に押し付けるから平気だ。

 それに普段は優しいお姉ちゃんだから……彼女を泣かせるのは嫌なんだ……でも今は、少し寝よう……

 

 体が休息を欲しがって……る…から……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 良かった……ツアイツ様が、他の連中みたいに私を化け物として見たら……どうしようかと、思ってしまったから。

 彼は、他の奴らと違う。私を恐れていたら、こんな無防備な姿は晒さないわ……

 優しくて、思いやりが有って、有能で、何処か壊れて狂っている大切な私の弟……

 

 今だって無理して私をフォローしてくれたんだわ。

 

 嗚呼……彼を、ツアイツを独占したい!私だけのツアイツにしたいわ……でも駄目よ。

 ツアイツは、私をジョゼフ様の花嫁として傷が付かない様に体を張って守ってくれたの……その気持ちを大切にしなければ。

 早くジョゼフ様と結ばれて、ツアイツをガリアに呼んで3人で暮らしたい。

 

 それには、レコンキスタはもう要らないわ。早く壊したいけど、ツアイツの頑張りを無駄には出来ないわ……

 

「あら?ツアイツが魘されているわね。大丈夫よ。お姉ちゃんがずっと側に居てあげるから……」

 

 ヤンデレエンドフラグは、まだ折れていなかった!

 


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