現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第141話から第143話

第141話

 

 こんにちは!ツアイツです。

 

 昼食後に、ツェルプストー辺境伯が到着しました。

 

「義息子よ!不用心だぞ、怪我を負うとは。君は今回の件の要なんだぞ」

 

 会うなり、挨拶もそこそこに叱られました。

 

「すみません。油断しているつもりは無かったのですが……」

 

 取り敢えず、応接室に通してお茶を出す。ソフィアが、紅茶を入れて皆に配るのを待つ。

 メンバーは、父上とツェルプストー辺境伯と僕だけ……これは、ゲルマニアの問題だから。

 

「義父上、お呼び出ししてすみません。この有り様で動けないもので……」

 

 左腕を上げてみせる。

 

「大体の話は、手紙で読んだが……アレか?トリステインの姫とは、オツムが足りないのか?」

 

 頭に人差し指を当てて、クルクル廻すジェスチャーするが……

 

「はぁ、何とも……」

 

「息子に言われても、何ともならんな。しかし、当初の計画通りにウェールズ皇太子に押し付けるのは無理かもしれん」

 

 父上がフォローしてくれる。

 

「ウェールズ皇太子にジェームズ一世が、想定より大分出来が良いですね。

彼らは愛すべき変態です。あの紳士達に、アンリエッタ姫1人で立ち向かっても無理でしょう……」

 

 溜め息と共に言う。

 

「我らの助力を待たずに暴走したのだ。これからは、我らの利益にも関わるからな。まぁ残念だったな、アンリエッタ姫は……」

 

 無言で頷き合う父上ズ。既に、アンリエッタ姫を見限ったか。

 

「しかし、実情はアルビオン王国の王党派の損失は軽微ですし、民意の殆どを得ている。レコンキスタに加勢するは、時勢を読めぬ愚か者よ」

 

「僕は、当初アルビオン王家を甘く見ていました。彼らは我らゲルマニアの同盟国として申し分ないですね。

だから、出来るだけ力になりたいのです。僕は、ガリアでイザベラ姫にお会いした後にアルビオン王国に行きます!」

 

 イザベラ姫に誠意を見せて、ジョゼットの件も相談する。時期的にガリアに着くのは、トリステインの売国奴が捕まった頃だろう。

 失敗すれば、レコンキスタは勢いづく。アンリエッタ姫が増援を送らなければ、ゲルマニアを頼るしかないが……

 此方も閣下を説得した後に動員だから、時間が掛かる。ならば、戦意高揚の為にも僕が顔を出す方が早い。

 僕が前線に居れば、シェフィールドさんも当然居る。カステルモール殿もイザベラ隊も力を貸してくれる。ワルド殿もダッシュ殿もだ。

 

 そして、ゲルマニア貴族たる僕がアルビオン王国に助力する事は、同盟国だから文句は出ない。

 

 もし文句を言われたら……後から来た、ゲルマニア正規軍に手柄でも何でも譲れば良いだけだ。

 

 僕達は何もしていない。だから文句を言われる筋合いは無い。王族の紳士2人が僕の実績を知っていてくれれば、褒美などくれてやる。

 

「馬鹿者!戦地に息子を送れるか!」

 

「そうだぞ。義息子よ、危険過ぎる」

 

 うん。反対された。

 

「危険は承知してます。しかし、作戦は詰めの段階まで来ています。サウスゴータは決戦の地。

流石に墜ちれば、王党派も負けるでしょう。勝つには増援が欲しい。

しかし、トリステインはアンリエッタ姫の暴走により不確定だ。ゲルマニアだって、義父上のこれからの交渉次第。

此方の成功は疑ってませんが、正直時間が掛かる。最速で効果の有るのは、僕が乗り込む事により、付いて来てくれる面々……」

 

「ああ、あの女か……確かに五千人程度の増援より確実か」

 

「それとガリアから、竜騎士団長とイザベラ隊なる名前はアレだが、どうみても精鋭中の精鋭が30人も来ている。

ワルド殿も遍在をトリステインに配置しているが、頼めば本体が同行してくれるだろう……そう言う事だな?」

 

 流石に僕の切り札の事もバレてら……

 

「そうです。遊撃隊として、レコンキスタの横っ腹に食らいつく戦力としては申し分ないはずですよ。

何たって、トライアングル以上のメイジが34人も居るんですから」

 

「確かに、一撃離脱の破壊力としては申し分ないか……しかし、何故ガリアに寄るのだ?」

 

「今回カステルモール殿がウチに来たのは……例の仮病、今はちゃんと怪我してますが。それを聞いたイザベラ様を泣かせてしまいまして……

それで一度顔を見せて欲しいと、彼等が頼みに来たのです。まさかイザベラ様にまで心配して貰えるとは、嬉しいですよね」

 

 ははは、と笑って頭を掻く……義父上ズに溜め息をつかれたぞ?あれ?もしかして王族を泣かせたのマズかったかな?

 

「ツアイツよ、そろそろ治療の時間だ。処置して、また戻ってこい。てか、少し外せ」

 

「そうだな。義息子よ、少しサムエル殿と話が有るから外してくれないか」

 

 やっぱり、大国ガリアの姫様を泣かしたのは不味かったのか……彼女に会ったら土下座するしかないかな?

 

「……はい、分かりました。では失礼します」

 

 父上ズに言われては仕方ないか。一礼して、退出する。

 

 

 

 

 残された父親ズ……

 

 

「おい?」

 

「ええ……困りましたな、アンリエッタ姫には」

 

「違う。困ったのは、お前の息子だ!誰が、ガリアの姫を口説けって言ったんだ?なんで態々、使いを寄越してまで会いに来いとか有り得んだろうが!」

 

「知らんわ、それにお前の義息子でもあるんだろ。ああん?どうするんだ?

アレで傷付きながら逢いに行って、これからレコンキスタを潰す為に戦場に行くとか言ったら……」

 

「「すがって止める様な姫じゃないぞ!絶対違う対応をしてくる」」

 

 2人して、ソファーに深く座り込む。

 

「あの姫は、ツアイツ殿が手助けする前はガリアで腫れ物扱いだったんだろ?

それを一躍トップアイドルまで押し上げたんだよな。今では国民的アイドルだ、しかも有能だぞ」

 

「ああ、一度は刺客まで送られたんだが……何だかんだで、今では個人的な贈り物や手紙の遣り取りまでしてる様だ。

フィギュアのモデルを引き受けた時点で、もう普通の関係じゃなかったかもしれん」

 

 父親ズは立ち上がりながら文句を言い合う。

 

「何で、この世界の姫君達は何かしら問題が有るんだ……で、どうするんだ?」

 

「どうするとは?」

 

 ツェルプストー辺境伯は、机を両手でバンバン叩く。

 

「ツアイツが認める位、有能な姫だ。きっとゴリ押しじゃない手立ての一つや二つは使ってくるだろう。

お前の息子は女に甘い。ガリアの狂王を義父上と呼ぶかも知れないんだぞ!サムエル殿も彼と親戚になるんだよな?

ゲルマニアでの立場とか微妙だし、ウチの娘の旦那でも有るんだ!影響がどう出るかなんて分からないぞ」

 

「お前の娘が、もっとツアイツを繋ぎ止めていれば良かったんだろーが!」

 

 立ち上がり、無言で睨み合う……

 

「「外へ出やがれ!」」

 

 オッサン2人の拳を使った、漢言語の話し合いがもたらされた……

 

 その時のツアイツは「エーファ、もう少し優しく秘薬を塗って下さい。しみますよ」

 

「駄目です。最近はテファ様とばかり遊んでいる罰です」と、巨乳メイドと宜しくやっていた!

 

 

 

第142話

 

 

 久し振りに、エーファ達とイチャイチャして戻ってみれば……庭で殴り合いの喧嘩をしている父上ズを発見した。

 ウチの父上と義父上は、年も近く若い頃から良くつるんでいたとは聞いていたが……

 

「良い大人が、殴り合いの喧嘩とは何をしているんですか?」

 

 全く、親がアレだから子供は苦労するぜ。ヤレヤレだぜ。な、ポーズを決める!

 

「「お前のせいだろーが!ガリアの姫を口説き落とすなど、聞いてないわー!」」

 

 あれ?イザベラ様が僕と?

 

「何を言っているのですか?それは無いですよ。本人も笑って否定してましたし……

彼女の旦那さんは、ガリアに有益な者がなるんだと。きっと有能な奴なんでしょうね、羨ましい」

 

「「お前なぁ、あんなにイザベラ姫と仲良くしておいて、それは無いだぁ?よし、お前も外に出ろ。世間の常識を教えてやる!」」

 

 失礼な人達だなぁ……

 

「はいはい。でも僕は怪我人ですし、騒ぐとシェフィールドさんが現われますよ?それで、今日の内にガリアに出発しますけど宜しいですか?」

 

 キョロキョロと周囲を見回す父上ズ。

 

「「いいかツアイツ!くれぐれもイザベラ姫と、変な約束はするなよ。分かってるよな?」」

 

 変なって……

 

「無事を知らせて、ちょっと相談するだけです」

 

 幾ら僕でも、イザベラ姫は無理だと思うぞ。大国の姫と他国の貴族の嫡子……物語の中だけの出来事ですよ。そんなラブストーリーは!

 そして、ツェルプストー辺境伯は閣下の下へと旅立っていった。男の浪漫本の新刊を3部づつ持っていったが……一族幽閉のエーさんは、健在のようでした。

 

 

 

 お買い物軍団ズ

 

 

 名も無き我が領地の街を歩いている。トリステイン王国のブルドンネ街よりは、よっぽど賑やかだ。

 この辺は、ハーナウ一族が商人出身なのも関係が有るだろうか……

 

 街に繰り出したメンバーはワルド殿・ダッシュ殿・ロングビルさんの大人の護衛チームにテファとジョゼットだ。

 最も、テファは既に街中の人が知っているツアイツの大切な人だから……

 

「若奥様、今日は何かお求めですか?」

 

「ティファニア様、ツアイツ様が喜びそうな物が入荷しましたよ」

 

「新作が入りましたので、後で寄って下さい」

 

 などと、歩く端から声が掛かる。既に、ツアイツの婚約者だと知れ渡ってるし、特に威張っている訳でもない。

 見目麗しく物腰の柔らかな彼女を嫌う者はいないだろう……

 

「テファさん、すごーい!街の人達の人気者なのね」

 

「テファ……お姉ちゃんより先に若奥様かい。ツアイツ様、早く私も貰ってもらわないと……マダオより後なんて我慢できないからさ」

 

 残りの女性陣の反応はマチマチだ。

 

「いえ……街の皆さんには、良くして貰ってますから」

 

 真っ赤になって弁解する彼女を見て、市民達の好感度は上がっていく。

 

「そっそれよりジョゼットさんの衣服を揃えましょう。本当なら屋敷に商人さんをお呼びするのですが……あっこの店です」

 

 衣服を扱う商店を指差す。それなりの店構えの小綺麗な店だ。

 

「こっこんな店?私、無理です無理。お金無いですから……」

 

ワタワタと慌てるジョゼットに「旦那様から、これ位使って良いと言われてますよ」と片手を広げて見せる。

 

「5エキュー?」

 

「いいえ。暫く滞在するのだからと500エキューです。この店ですと、一着安くても30エキューはしますし……あっ倒れた?」

 

 ジョゼットは、後ろに倒れ込みそうになりダッシュが支えた。

 

「そっそんな……服で500エキューとか無理ですぅ」

 

 倒れたジョゼットを見ながらしみじみと話し出す。

 

「ツアイツってさ……こんな所が、やっぱり貴族様だよね。軽く買い物に行けって、平民の三年分近い予算を出すし……

アルビオンの不正貴族から巻き上げたお金は要らないって言うし。やっぱりハンサムで有能でお金持ちって良いわぁ……」

 

 ロングビルが、遠い目をしている。

 

「お姉ちゃん!それがツアイツ様の優しさなの。私の時は、全てご自分のデザインをオーダーで作らせたから。金額を聞いて驚いたわ!

だって、お屋敷が買える位ですもの……笑って余り使う事が無いからって、言ってくれたけど」

 

 テファの時は、きっと0が1つ多かったのだろう……

 

「どちらにしても、これ以上の買い物は彼女には無理だろう。明日にでも屋敷に呼んで見立てて貰おうか。

店主に話をしてくる。皆はジョゼットを連れて先にお茶でも飲んでいてくれ」

 

 良い所を見せたいワルドが、そう言い出した。

 

「そうだね。じゃ頼むよ。ジョゼット、ほら驚いてないで起きな。お茶を飲みに行くよ」

 

 庶民派のジョゼットには、女性陣に優しくお金持ちのツアイツの親切は……メンタル的に辛かったみたいだ……

 喫茶室と言う、貴族だけでなく平民も利用出来る価格帯のお茶を出す店に行く。

 

「うー落ち着きません。どう見ても周りの方が気になってしまって……」

 

 確かにこのメンバーは人目を集めるだろう。美女・美少女が三人に、双子みたいな(黙っていれば)美丈夫が居るし……

 

「大丈夫です。私も未だに馴れませんが、周りの人達は皆さん親切ですし、ね?」

 

 天然さんは強かった!

 

「ミス・ジョゼット。ツアイツ殿に悪気はないのだ。少し驚くかも知れないが、素でああ言う態度だからな。

慣れる事だね。これから、お世話になるのだろう?」

 

 ロングビルが、誰こいつ?みたいな顔で見る。

 

「ワルド様、今日は格好良いですね!」

 

「はははっ!そうかい?照れるな」

 

 テファのお世辞にも、爽やかに応えている。概ね好印象を与えられただろう。

 

 頑張れ、ワルド!

 

「でも、本当にお世話になりっぱなしで良いのでしょうか?私、何も持ってないし何も出来ません……」

 

 俯いてしまうジョゼット。

 

「ツアイツ殿が言っていたよ。

ミス・ジョゼットは、このままでは国の都合で扱いが酷くなるだろう。ならば、利害が一致している我々の所にいるのが、私にとっても都合が良い。

だから気を使う必要なんてない……ってね。だから、君は此処に居て良いんだよ。居なくなる方が大変なんだ」

 

「ワルドさま……やっぱりツアイツ様って素敵!こんな私にまで、気を使ってくれてるんですよね?

テファさんいーなー!あんな旦那様なら私も欲しいです」

 

 ダッシュが、ワルドの裾を掴んで囁く。

 

「本体、ツアイツ殿を持ち上げるのは良いが、すっかりツアイツ殿の方を気にしてるぞ?自分をアピールしなくて、どうするんだ?」

 

「嗚呼……しまった、つい……」

 

 本末転倒か?恋心より忠誠心が勝ったのか?ジョゼットの中で、ツアイツの株は急上昇!

 しかし、大人の対応のワルドの株も上がっていた。このまま、変態紳士がバレなければ上手くいくかも知れない。

 

 

 

第143話

 

 

「私の名前は、アンリエッタ・ド・トリステイン。偉大なる始祖ブリミル様の血を引く王女ですわ。でも今は1人の恋に悩む哀れな女……

私は、天空の高貴なる人に恋をした地上の姫でしたわ。彼のハートを鷲掴みする為に努力してきました。

しかし、私の成長を見守り強力な援護をしてくれている殿方の存在を認めてしまった……

あのお方は何故、私の為に無償の協力をしてくれるのかしら?もしかしたら、私の事を好きでいてくれてるの?

彼の気持ちに応えなくてはならないのでは?でも、私のお友達の婚約者でもあるわ。

嗚呼……友情を取るか?恋を取るか?私は、その事を考えると夜も眠れませんわ。

始祖ブリミル様!私はどうしたら良いのですか?」

 

 トリスタニアの王宮のベランダで、毎夜行われる幸せな姫様の一人芝居。銃士隊の連中は、この姫の痴態を隠す為に苦労を強いられていた。

 

「ねぇねぇ?今夜の姫様は、ツアイツ様よりな気持ちなのね」

 

「昨夜はウェールズ様との結婚を決意して、ツアイツ様に決別の思いを伝える迄行ったものね」

 

 キャイキャイと、うら若き銃士隊員達はアンリエッタ姫の一人芝居の感想で盛り上がる。

 

「でもウェールズ様って、お国が大変じゃない。噂では連戦連敗だそうよ……

それに比べて、ツアイツ様は著書の人気も凄いわ。やはりボンボンより社会に出て稼いでる殿方の方が私は良いかも」

 

「えー、でもツアイツ様ってエロい本も書いていて、そっちにはファンクラブまで有るそうよ。

ちょっと気持ち悪いわよ。私なら、サラブレッドの王子様を狙うわ!」

 

 それぞれに支持者が居るようだが、基本的にはアンリエッタ姫の妄想話だ!

 

「おい!無駄話せずに周りを警戒しろ」

 

 アニエス隊長とミシェル副隊長が、若い隊員を窘める……

 

「しかし、アンリエッタ姫のお相手ってどちらが良いのかしら?隊長なら、ウェールズ様とツアイツ様のどちらと結婚したいですか?」

 

「ああ?どっちもお断りだ!しかし能力的には、あの変態の方だな。ボンボンじゃこの国も危ういぞ」

 

 ガチレズねーちゃんだから、男全般を敵視しているが、どちらがこの国の為かと聞かれれば……

 自国も纏められず、内乱を押さえるのに四苦八苦してるボンボンより、どんな手でも使ってくるツアイツの方が頼もしいと思っている。

 

 実際に園遊会で会ったウェールズ皇太子は……アンリエッタ姫から逃げるだけの、情けない男だったし。

 

「意外ですね。アニエス隊長が、ツアイツ殿を選ぶとは……やはり園遊会で、手を繋がれていたと聞きましたが。お好きなのですね?」

 

「はぁ?手を繋ぐ?ばっバカもの!あれは逃げるアイツを姫様の下に連れて行く為に仕方なくだな……」

 

「アニエス隊長が、殿方の手を触れるだけでも大変なのは、皆が知ってますよ。それをしっかり握り締めて走るなどと……」

 

「ちっ違うぞー!」

 

「お静かに!アンリエッタ姫が、室内にお戻りになりました。

今夜は、ツアイツ様への気持ちを確認したが、国の為にウェールズ様に嫁ぐ!で終わりましたね」

 

「周囲を確認して、撤収するぞ!」

 

「「「「了解しました」」」」

 

 綺麗な敬礼をして散らばって行く隊員を見て、溜め息をつく……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「全く、他人の恋愛は面白い……か……しかし、あの変態め。姫様の心を乱しおってからに」

 

 アンリエッタ姫が、ウェールズ皇太子に向ける気持ち……それは憧れだ!今は恋心も本物だろう。

 しかし、他に魅力的な対象が現れたら?その思いが続くのかが不明だ。

 

 では、あの変態に向ける思いは?それは依存だと思う。

 

 何時も、的確な方向性を示し、彼女のお願いや悩み事を全て解決する。

 しかも、あの園遊会の時にアルビオン王国の皇太子に対して、一介の貴族の嫡子が……アンリエッタ姫の為なら、手段を選ばす彼女の思いを添い遂げさせる!

 

 なんて啖呵を切ったんだ。王族にだぞ。

 

 それが、どんなに重い事なのか知っているのか?あの変態は、実はアンリエッタ姫をとても大切にしている。

 あっ愛しているのではないのか?ならば、あの行動も理解出来る。自分の書いた脚本だって、タダで献上したと聞いたぞ。

 

「アニエス隊長、赤くなってどうしました?噂では、ツアイツ殿は刺客と戦い怪我を負ったとか……心配なのですね?」

 

 ミシェルめ。何を言い出すかと思えば……

 

「別に心配などしていない。怪我を負ったのは事実だろうが、あの変態が死ぬ訳がなかろう」

 

 あの腹黒い、用意周到な変態が只でやられるか!主犯は倒したそうだし。どうせ、軽症なのを周りが騒いでいるだけ。

 シェフィールドお姉様が、付いていらっしゃるのに……嗚呼、あの鋭利な眼差しで又見詰められたい。

 

 お姉様は、今何をしてらっしゃるのかしら?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「アニエス隊長?どうしました、トリップしてませんか?」

 

 目の前で、掌をヒラヒラと翳すが反応が無い。どう見ても、目をウルウルとさせて上気した表情を浮かべているのだが?

 これは、本当にゲルマニアの少年に惚れているのかもしれない。

 

 しかし、女性隊員を片っ端から部屋に呼ぶ変態だと思っていたが……男女共に喰える変態か!

 

 しかも相手は15歳の少年と聞くが……アレか?巷で噂のショタコンか?この間は、私を押し倒そうとしたのに。

 あんなに真剣に私を口説いてくれたのに……本気なのかと思えば、遊びだったのだな。

 

 もう知らないから……

 

 妄想姫の腹心は、やはり妄想娘だった。しかも、ミシェルは隊長なら体を許しても良いかな?とまで思っていた。

 しかしこの痴態を見て、それは幻想だったのだ!と、理解しアニエス隊長を放って任務に戻る事にした。

 

 残念、アニエス隊長!

 

 君のレズハーレムは、当分無理だろう。周りも、君がショタコンのツアイツ狙いと思い始めている。

 まぁガチレズよりショタコンの方が、ほんの少しだけマシかも知れないぞ。

 

 

 

 マチルダルート完結

 

 このお話は139話からの分岐で有り、ロングビルことマチルダさんのツアイツ様ゲットだぜ!のIF物語です。本編とはリンクしていません。

 

 

 IFルート・逆襲のマチルダ「行き遅れはお断りだよ編」

 

 

 お腹がパンパンのジョゼットを客間に運んで貰い、ロングビルさんを誘ってベランダでお酒を飲む。

 見上げれば、赤と青の双子の月。お月見な風情は全く無い。何処か作り物めいた景色……

 現代日本から転生した僕としては、中々馴染めない眺めだ。

 

「ロングビルさん、お疲れ様でした。ワルド殿とミス・ジョゼットの距離は微妙ですが……

彼女がロマリアに利用されるのは防げた。同時にガリアへの工作の芽も詰めたかな?」

 

 彼女に労いの言葉を掛ける。正直、原作の流れは既に無い。ガリア王家とは、仲良くやっていける筈だ。

 あのイザベラ様をフォローして、シェフィールドさんと連携すれば怖くない。

 ジョゼフの狂王イベントもシェフィールドさんの無理心中事件も無い。

 

「ツアイツ様?マダオの彼女を探しながら、そんな策略を……もしワルドが失敗したら?どうするつもりだったのですか?」

 

「いや、ロングビルさんが付いて行ってくれたから、心配してませんでしたよ」

 

 ニッコリと笑う。

 

「そうですか……しかし、最近ツアイツ様の近くで仕事をしてませんよ。

アルビオン王国の工作の後に、直ぐマダオの為にガリア王国の孤島に行きましたし……人使いが荒くないですか?」

 

 いや、ガリア行きは自分から志願しましたよね?

 

「そうですね……暫くは、ハーナウ家で寛いで下さい。特に仕事もないですから」

 

 そう言って、ロングビルさんのグラスにワインを注ぐ。これはタルブ産の赤ワインだ。

 ワインの味など良く分からないのだが、飲みやすいと思う。だから量を飲んでしまうのだが……

 

「そうだ!もう偽名も要らないんですから、マチルダって呼んで下さい」

 

 体を僕に預けながら、そう言ってくる。

 

「マチルダさん……飲み過ぎましたか?」

 

 下を向いて黙ってしまった。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 飲ませ過ぎたかな?

 

「ヅアイズざま……ぎもぢ悪いでず、うっぷ……」

 

 吐くの?リバースしちゃうの?

 

「ちょ、ちょーっと待ってー!まだ駄目だからー」

 

 慌てて彼女にレビテーションをかけて、ご婦人用トイレに連れ込む。個室に押し込み暫く外で待つ……そんなに飲ませたかな?

 

 暫く待つ……

 

 待つ……

 

「あの?マチルダさん?」

 

 返事が無い。ただの屍のようだ?じゃなくて。

 

「マチルダさん?入りますよ……」

 

 恐る恐る中に入ると、洗面台にもたれ掛かって眠っていた。こうして見ると、綺麗なお姉さんだよね。

 没落しなければ、領地持ちのお嬢様だし。スヤスヤと呼吸も楽そうだが、軽く治療魔法をかけておく。

 

 レビテーションで……と思ったが、折角なのでお姫様だっこで客間まで運ぶ。

 

 彼女はメリハリの有るボディなので結構重い。お尻は安産型だな……などと失礼な事を考えながら部屋へ運ぶ。

 どの部屋か知らないから、一番手前の部屋……は、灯りが点いていたからその先の部屋へ。

 ベッドに寝かせて、帰ろうとした所で手を掴まれた!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今回の作戦……ツアイツ様の中ではマダオの為だけで無く、もっと壮大な計画の一部だったらしい。

 ガリアとの関係が有るみたい?この子の頭ん中って、どうなってるのかね?きっと二手三手以上先の事を考えているんだろう。

 こんなに先読み出来るのに、何で私の思いには気が付かないんだい?

 

 まさか放置プレイ?

 

 それとも、ツアイツ様は受け専?

 

 ま、マグロって言うんだっけ?

 

 私も、もう適齢期ギリギリなんですけど……もう良いわ。今夜襲います!

 

 でもこのワイン、飲みやすいわね。勢いを付ける為にもっと飲むか……ぎぼぢわるい。

 

 ツアイツ様が慌てて運んでくれて……間に合う様に我慢する!

 

 うう……いい年こいてリバースしちゃうとは。良く濯がないとね。

 

 ああ、眠いわ……

 

 …………

 

 ………

 

 ……

 

 お尻を撫でられる感触で目が覚めた。ツアイツ様が、お姫様だっこで運んでくている。

 ああ、その部屋はジョゼットのだよ。

 

 私は隣だよ……

 

 ツアイツ様。私のお尻を撫でましたね?では責任を取って頂きます!

 オールドオスマンには鉄拳制裁だったけど……腕を掴んで引き倒す!

 

「ツアイツ様……美味しく頂きます!」

 

 ベッドに引っ張り込んで抱き付く。慌てるツアイツ様に一言……

 

「暴れると吐きますよ?少しお話ししましょう」

 

 体を横にズラして並んで横になる。

 

「ツアイツ様は……テファに構いっきりで酷いです。私は放置プレイですか?」

 

 何か言い出そうな彼の口を人差し指で塞ぐ。

 

「元々テファの保護の見返りに私が妾になると言いました!それが何もしないって男的にどうなんですか?」

 

「いや、彼女を救う為にマチルダさんの体を求めるのは……」

 

「お黙り!理由はともかく、適齢期の美人を放っておくのが駄目だと言ってます。

私はツアイツ様以外の男に体を許すつもりはありません!なのに全然夜伽のお呼びがかからない?ツアイツ様、不能?」

 

 彼の〇〇〇(ピー)を探ってみる……なんだ、反応してるじゃない。

 

「ちょマチルダさん?」

 

「ツアイツ様……ちゃんと反応してますよ。何故、私に手を出さないのですか?」

 

 くにくにと弄りながら話し掛ける。何だろう?このシュチュはドキドキする。

 

 そうだ!これはツアイツ様の書斎に有った男の浪漫本の「プライベートレッスン・禁断の女教師編」と同じなんだわ。

 

 だから、ツアイツ様はウブな男子生徒……「お姉さんが、優しく教えてあげる」そう言って、ツアイツ様に襲い掛かる。

 

 焦らされ続けた思いを受け止めて貰います!

 

 

 

 

 

 …………結果から報告します。

 

 

 

 

 所詮、男性経験の無い私が百戦錬磨のツアイツ様に適う訳も無く。翌朝まで散々攻められてしまいました。

 

 まるで男の浪漫本「いとしのエリー・魔法学院編」の内容そのものでした。

 

 翌朝、体中がダルいのでベッドで休ませて頂いていたのですが……

 メイド長のエーファが、書類の束を抱えて部屋に入ってきて「おめでとうございます!7人目ですよ。これから、待遇が変わります。先ずは手当てが……」って説明が始まった。

 

 ツアイツ様。

 

 何故か私達の情事が知れ渡ってますが?妾って、こんなにお金貰えるの?ハーナウ家に専用の部屋まで貰える。

 でも、普通は別宅じゃないのかしら?しかも、7人目?それって、専属メイド5人の他に私と誰?まさかテファかい?

 

 ツアイツ様、姉妹丼?

 

「マチルダ様、聞いていますか?側室は初めてなんですよ。まだまだサインをしてもらう書類が……」

 

 まぁ適齢期ギリギリだけど、貰ってくれたから良しとしようかな。マダオよりも後だけは、我慢出来なかったからね!

 この後テファに襲撃され、自分の事の様に喜んで貰えた!

 

 そして……「2人でツアイツ様に、ご奉仕しようか?」は、流石にまだ言えなかった。

 


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