現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第15話から第17話・分岐第18話

第15話

 

 風魔法馬鹿は単純だったYOー

 

「静かにしたまえ諸君、最強の風魔法の授業を担当するギトーだ!」

 

 扉を開けて颯爽と教室に入ってくるギトー先生、うわぁハリポタのアレな魔法薬の先生だな……キャラが濃いわ。

 

「今年の生徒は不作だ……僅か二人のトライアングルに、疑わしいがスクエア一人、そして残りは殆どがドットだ」

 

 いやこれから習う為の学院なんだし、教師よりレベルが高かったら意味無いでしょ?

 

「そこでだミスタツアイツ、君は土のスクエアなんだろう。最強たる風の私と力比べをしようではないか?」

 

 はい、初日から教師に喧嘩売られました。

 

「構いませんがどこでやります?教室では危険ですし、外に出れば大地の上で僕が圧倒的に有利ですよ」

 

 ギトー先生、コメカミをピクピクさせて何とか怒りを我慢している。

 

「凄い自信だな!教室では不利か、では外でも私は構わないぞ」

 

「では教室で構わないです」

 

 ニヤリと笑って懐から杖を抜く。

 

「好きに仕掛けてきたまえ、全ては風で祓って見せよう」

 

 ギトー先生がマントをハラリとなびかせて構えを取る、結構様になって格好良いな。

 

「クリエイトアースファング!」

 

 僕はギトー先生を囲むように土の槍を錬金し、両足をコンクリートで固めて動きを封じた。

 勿論、槍の先は向けるだけで刺してはいないが、100本からの槍が床や壁・天井からギトー先生に牙を向けている。

 寸止めしている槍をギトー先生は風の魔法で薙ぎ払うが、僕は更にゴーレムの腕だけ錬金し掴んだ。

 両足も固めているので、槍を払ってから足の拘束を壊すまでのタイムラグで捕まえられた。

 

「風魔法が強いのは烈風のカリン様との手合せで実感しています。

しかし、四方を囲まれた狭い空間で錬金を得意とする相手では、土魔法が有利ですよ。もっともあの人は、それでも粉砕した化け物でしたが……」

 

 そう言って拘束を解いてゴーレムを消した。

 

「そうか……君はあの生きる伝説を知っているのか」

 

 しみじみと、ギトー先生が何かを思い出すように言った。

 

「ええあの風の化け物をしっているからこそ、風の強さとその対策を磨きました……死にたくなかったので」

 

「烈風のカリンは結婚してからは公の場には出ないが、現役時代を知る身としては良くアレの弟子をやってるな」

 

「強制でしたから……ノルマを達成出来なければ代価は自身の命でしたし、まさに命がけでしたよ」

 

 遠い目で答えた。

 

「そうか……何か問題が有れば相談に来るがいい、力になろう」

 

 同情されちゃったよ。

 

「では、偏在を使った戦闘訓練をお願いします」

 

 ワルド対策に一度風の使い手と戦っておきたいから丁度良いかな。

 

「風の最強たる所以の呪文だな、良いだろう!放課後の空き時間にでも指導しよう」

 

「有難う御座います」

 

 やったワルド対策ゲットだぜ!

 

 ルイズは実の母親がアレや化け物扱いで微妙な顔をしていたが、本当の事なので何も言えなかったし、クラスの皆は生きる伝説の正体の無茶さを改めて心に刻んだ。

 性格はアレだが、授業自体は懇切丁寧で分かり易い内容だった。もっとも彼的には、何も知らない小童共と思っているのだろう。

 でもこの時点でギトー先生が登場してるとなると、ヴィリエとタバサの件てどうなるんだろう?

 初日の授業を終え夕食までゆっくりしようと部屋に向かったが、窓の外で荷物を運んでくれたメイドが、何故か木に登っている。

 

 どうやら洗濯物が飛ばされて、木に引っ掛かってしまったみたいだが……細い枝にノロノロと伝っていくのは、見るからに危ない。

 

 落ちる前に助けた方が良いよな?

 

 窓からフライで飛び出すと、脅かさない様に気を付けて彼女の前に浮かび声をかけた。

 

「あーレディに、木登りは似合わないから降りようよ。君と洗濯物にレビテーションを掛けるから、心配しないで」

 

 さっさと彼女と洗濯物を下ろす、不用意に女性に触るのはタブーだ。

 

「気を付けてね」

 

 一言掛けてから先ほど飛び降りた窓にフライで飛んでいった、金髪ツインテールロリ巨乳メイドとは随分とマニアックな女の子だ。

 でも原作にあんな感じの女の子居たか?しかし随分と手が荒れていたな……

 

 この時代は洗濯機なんてないし、平民は魔法も使えないから全て人の手で行わなければ成らないので、大変だよね。

 ハンドクリームくらい、差し入れしてあげるか。実物のマルトーも見てみたいし、和食とか作ってくれないかな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 私はタルブ村の裕福でない家の4女として生まれたので、口減らしの意味も含めてこのトリステイン魔法学院に奉公に来ています。

 見た目はそこそこ可愛いらしく、村の年頃の息子を持つ家の方々からお嫁にとのお誘いも有りましたが、他家に嫁いでは実家に仕送りも出来ないので、思い切ってこの学院で奉公しています。

 貴族様は我々平民に対しては恐ろしい存在ですが、今日お会いした貴族様は気さくで優しいお方でした。

 他の奉公人の方にお聞きしたら、何でもゲルマニアからの留学生で既に色々な分野で成功を収めている方だとか。

 有能でお金持ちでお優しいなんて、凄い人なんですね。

 

 ただ私の手をじっと見てなにか言いたそうでしたが、水仕事で荒れてしまった手を見られるのが恥ずかしかったです。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 色々有って疲れて部屋に戻ってから直ぐに寝てしまったが、お腹が空いて目が覚めました。

 時計を見れば丁度夕食の時間だな、我ながら素晴らしい腹時計!

 

 身嗜みを軽くチェックして食堂に向かうと、途中でギーシュと合流しギーシュと一緒にいたヴィリエとマリコルヌとも何となく話す様になった。

 彼らは風の系統なので、烈風のカリンの弟子である自分に興味が有るみたいで色々と質問してくる。

 男4人で食堂に入ると、ルイズとキュルケがクラスの女子とテーブルの一角でキャイキャイ話していた。

 

 うまくやっているみたいだ……

 

 軽く手で挨拶してから男子が集まるテーブルの方に移動し、先に座っていたクラスメイトの話の輪に加わる。

 彼らも腐っても貴族な訳で、実家に不利になるような事は極力しないのだろう。

 いくら気に入らないゲルマニア貴族とはいえ、ヴァリエール公爵家と縁が有り、自身も有力貴族である僕に敵対的な行動がとれだけ危険なのかは理解しているのだろう。

 折角なので、ヴァリエール公爵夫妻の親馬鹿ぶりも説明しておく。

 

 睨まれたらどうなるか……と。

 

 しかしどんだけ量が有るんだこの夕食、こんな過剰な栄養摂取は巨乳に悪影響を及ぼすぞ。てか、コース半ばでリタイアでした。

 美味しいけど完食は無理でした、食後に鍛錬しないと直ぐにデブになるな。

 

 後半の料理の殆どをマリコルヌに押し付けて(彼は感謝していた)食後の珈琲を飲んでいると例のメイドさんがケーキを配膳しに廻ってきた。

 ケーキは要らないが、後で厨房の責任者に会いたいけど、何時ごろなら迷惑にならないか?と聞いたら貴族に配慮されたのが恐縮なのか、

 

「責任者はマルトーさんですが、伝えておきますので何時でもいらしてください」

 

 どもりながら答えてくれたが怖かったのかな?

 

 ふむ、料理担当なら全ての料理が出きった後なら明日の仕込み迄の間が良いかな?と思い食後に顔を出すと伝えてもらった。

 そう言えばまだあの子の名前聞いてないや。

 

 夕食後、一旦部屋に戻りハンドクリームを錬金してから厨房に向かう。

 

「今晩は!お邪魔するよ」

 

 一声掛けてから厨房に入ると恰幅の良い中年の男性が例のメイドを庇う様に前に出てきた。

 

「何か問題が有ったでしょうか?貴族様」

 

 恐縮しながら、それでもしっかりと僕の目をみて話掛けてきた。

 

 僕はメイドさんに「はいこれウチの領地で配っているハンドクリームだから、1日に3〜4回塗って」と渡し、きょとんとしている二人に

 

「食事が食べきれず残してしまうので、僕の分は朝昼晩共に減らせないか?」とお願いした。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

 マルトーさんが不安がって聞いてきた、不味いとか不興を買ったとか思われたかな?

 

「いや、料理の味は最高だけどアレを食べ続けたら普通に太るし残すと食材が勿体無いから」

 

 表向きな説明する、本当は巨乳を目指す淑女達の栄養のバランスを考えて欲しいから。

 

「貴族様が勿体無いなんて珍しい!」

 

 マルトーさんの驚きは正しい、貴族に勿体無いの考えは無い。選ばれた人間だと思ってるから……

 

「小さな事からコツコツとするのが、成功の元だよ」

 

 実体験を元に言うと笑ってくれ食事の件のお願いはきいてた。

 ただ他の貴族様との取合いが有って、自分独りだけの特別な料理は出来ないので量を少し減らしてくれるそうだ。

 目の分が妙に小さいと、貴族を侮辱しているとか過去に有ったらしい。

 淑女達の栄養バランス案はダメみたいだ。残念だが自分の分だけは何とかなりそうだ。

 

 マルトーさんと話し込んでいる間、ずっと立ちっぱなしだったメイドさんが恐る恐る近づいてきた。

 

「あのこれはどういう意味でしょうか?」

 

 物凄く恐縮してきいてきた、身分制度って恐ろしい。

 

「それは僕が調合した家のメイドさんにも配っているハンドクリームだから使ってね」

 

「こんな高価な物を頂くわけには……」

 

 遠慮しているんだろうな、多少強引に言わないと使ってくれないかも……、

 

「ウチでは使用人の健康の管理も見るのが当たり前だから構わず使う様に。週に1本ずつ渡すから遠慮無く使うように!」

 

 継続支給すると伝えて部屋に戻ったが皆さん変な目をしてた、僕が貴族社会では変な奴って事になるのだろう。

 

 

 

 

その夜の厨房のミーティング

 

 

マルトー

 

「何とも風変わりな貴族様が今年はきたな」

 

 

謎のメイド

 

「でも重たい荷物を変わりに持ってくれたり、風で飛んだ洗濯物を魔法で取ってくれたり優しい方ですよ」

 

 

モブA

 

「それは○○○に、下心が有るんじゃないか?」

 

 

謎のメイド

 

「そんな邪な感じは無いですし……それならそれで嬉しいのですが、いまだ名前も聞いてくれませんし」

 

 

モブBC

 

「○○○ちゃんあの貴族様が好きなのか……ショック」

 

 

マルトー

 

「何にしても今までの糞ったれ貴族様とは違うって事だな。それで良いじゃないか」

 

 

メイドA

 

「それにこのハンドクリーム凄いですよ。痛みやヒビがみるみる治ってるし、水につけても沁みないし」

 

 

メイドB

 

「もしかして凄い高級品なんでしょうか?」

 

 

メイドC

 

「ツアイツ様と言うのですが、相当な資産家であの人気の物語の作者らしいです。他の貴族様が噂してるのを聞きました」

 

 

メイドA

 

「それなら私も聞いた。烈風のカリン様の愛弟子なんですって」

 

 

マルトー

 

「またとんでもない御人が来たもんだな。まぁ平民に優しい方なら問題ないだろう。皆も失礼のないようないな」

 

 

 

第16話

 

 ついに謎のメイドが正体を表す。

 

 初日こそバタバタしてたけど、それなりに平凡な生活を送っているツアイツです。

 食事改善の件ですがマルトーさんが、他の生徒にバレない様に脂身の無い肉とか、サラダもふんわりよそってくれるとか地味に減量に気を使ってくれます。

 無理なのは全く手を付けずに下げた後で、賄い食に組み込んで貰うとか……有り難い事です。

 しかし朝からワインとは、現代日本だったら犯罪な風景だよね。

 

 そうそう!

 

 ルイズ達の、巨乳プログラムだけど段々と効果が出て来た娘が結構居るらしく、友人も何人か出来たみたい。

 魔法の実技もまだ成功しない奴も居るけど、全て爆発ってのは珍しい……てか異端だよね。

 

 本当は虚無だけど、今はまだ秘密だ!

 

 でも失敗しても友人が居るので、変に孤立したり意固地にならないので良かった。

 キュルケは、お洒落仲間でグループを作っている。既にメンバーは、スタイルの大変良い娘さん達で構成されています。

 

 僕は、ギーシュを中心とした微妙にモテナイ君達のグループに入っている、気楽で良いや。

 

 明日は初めての虚無の日なので、学院の近くに購入した屋敷に行こうと思っている。

 久しぶりに、ネディーネやエーファにルーツィアとシエスタ達と会いたいし、それ以上に仲良くしたいです。

 

 しかし確実に、キュルケとルイズは付いて来るとか言いそうだ……

 未婚女性が、保護者不在の未婚男性の家に行くのは問題だよね。変な噂が広まると面倒なんだよなー。

 

 さて、今日も元気に授業に行きますか。

 

 コルベール先生の授業は面白いんだが、カラクリに興味が無い連中にはつまらないだろう。例のへび君シリーズ?の何号君かな。

 原始的だけどエンジンを独学で開発するとは凄いんだけど産業革命なんて、まだまだハルケギニアでは何百年も先の話だろう。

 実はウチも例のゼロ戦を回収してから、色々と調べているけど捗ってないんだ。コルベール先生をスカウトしたいね。

 

 本当は分解して徹底的に調べたいけど復元する事が出来ないかも知れないから、怖くて出来ないのが現状なんだけどね。

 でもガソリンの練成については、何とかなりそうなのが救いだ。

 まだガソリンはハルケギニアでは危険な燃料だが、使い道は色々有る。

 今度、父上とその辺を煮詰めないと問題かも。

 

 火の秘薬は硫黄が一般的だけど、ガソリンを変わりに使用したらどうなるんだろう?

 火炎瓶とかファイアーボール位の威力が有るんじゃないかな?少なくとも現在ハルケギニアで一般的な油よりは強力だ。

 あと銃弾の火薬も何発かサンプルを取って調べさせている。

 こちらもハルケギニアの黒色火薬より強力だし、従来の銃の改良にも役立っている。

 

 現物見本とは何時の時代も有効なんだね。

 

 でもこれらの発明品は世に出すタイミングを誤ると大問題だから、厳重な警戒と緘口令を敷いている。

 どちらも強力な力だけど、このハルケギニアでは劇薬以外の何物でもないな。などと考えていると授業が終了してしまった。

 これでちゃんとした貴族になれる勉強なんだろうか……心配だ。

 休み時間に何人かからお誘いが有ったが全て領地経営について仕事が溜まっているので、明日は一日中執務室に缶詰だからと断った。

 本当は他のも溜まっているんだよ……

 

 主に下半身的な意味で!

 

 キュルケもルイズの仕事的な事を全面に出したら、流石に他家の事情なので納得してくれた。

 まぁ実際には殆ど仕事で、時間の殆どを取られちゃうんだけどね。

 最近になってやっと父上の領地経営に参加させてくれて、色々な情報も教えてくれる様になった。

 うちは商人上がりだから経営に関してはかなり細かいチェック機能が有り、中途半端な現代知識など通用しなかった。

 しかし前世のゼネコン時代に培った建設に関する見積能力や雇用条件・契約書の内容等は十分に有効だった。

 特に法令や契約書の内容がザル法なので、この辺を突いて無理を言う相手が結構いるんだよね。

 雇用条件については随分と揉めたが、高級品を買える裕福層を相手の商売は取引量も少なくライバルも多いから、一番人数の多い平民の労働者層をターゲットにしたい。

 しかし彼らには購買力が無い為、所得を増やし商品を買えるようにする。

 求人もメイジに拘らず、平民も有能な者はどんどん採用する。結果的には治安は安定し税収も人口も増える。

 

 最初は我慢だが、長い目でみた中長期計画だと説明した。

 取り敢えず自分の領地のみで実施し、効果が有ればツェルプストー辺境伯の領地でも実施する。

 ヴァリエール公爵は、良い意味でも悪い意味でもトリステイン貴族だから無理かも。

 後は他のSSでもお馴染みの、衛生面での改良で都市部の糞尿を農地に持っていって肥料化する事と、水洗トイレは無理だったけど肥溜め式にして取り出せる様にした。

 これで街が臭いとかは言わせないぞ。

 

 後はリサイクルについて幾つかアドバイスをしたが、元々物が無い時代なのでこの辺の転用は既に十分でした。

 後は教育についてだが、これは全員は無理だが有能そうな子供達は一堂に集め全寮制で教育している。

 親には幾ばくかのお金を与えてある。家から通わせると家の仕事が忙しいって来ないんだよね、学校に……当たり前だけど。

 

 実は大貴族に奉公に来るメイド達は、身元もしっかりした娘さんが多く彼女らにも計算と読み書きを教え込んだ。

 だから僕の執務室にはメイド服の部下が溢れている。

 彼女らも文字が読める事は今までは演劇を遠くから遠慮して見ていただけだが、物語も読めるようになるので頑張っている。

 待望の虚無の日だが朝から出掛けては日帰りになってしまい、彼女等との時間が余り取れない。

 

 まぁ翌日政務が終らないから……

 

 と連絡を入れておけば授業を休む事で出来るだろうが、それはあまりやりたくないし。

 なのでどうせなら夕食も向こうで食べれば良いかなと、授業が終ったら出掛ける予定だ。

 外出許可は既に貰っているので、乗馬の手配とマルトーさんに夕食は不要と伝えに行かなければ。

 乗馬の手配は簡単だ、世話係に夕方から明日の夜まで使用すると伝えて、サインするだけでその時に馴染みの馬を融通してもらう。

 

 チップに色を付ければ問題なし。

 

 マルトーさんの方は、直接厨房に出向いた方が良いだろう。

 確かに学院の食事は美味いけど、前世が日本人の性か毎回脂っこい物はキツイんですよ。

 たまには賄い食でも良いんだけど流石に貴族様に使用人の賄い食は食べさせられないと断られた。

 

「こんにちは、マルトーさん居る?」

 

 厨房に入り声を掛けると、皆がテーブルに座ったりしゃがみ込んだりして雰囲気が暗い。

 

「何か有ったの?」

 

 心配して声を掛けると、

 

「さっきソフィアが連れて行かれた。相手はモット伯だ」

 

 ソフィアって誰だっけ?モット伯メイド拉致事件って来年じゃなかったっけ?それとも毎年攫ってるのか?

 

「オールドオスマンには言ったの?」

 

 駄目元で聞いてみるが……

 

「あの人も平民には優しいが、王宮勅使の貴族様が相手じゃ無理だよ」

 

 確かに一介のメイドの人事じゃ、文句は言えないよね。

 

「運が良かった。モット伯なら交渉材料が幾つか有るから安心して……それで悪いけど、ソフィアってどの子だったっけ?」

 

「金髪ツインテールでツアイツ様の面倒を良く見てくれる娘だよ。あの子は良い子なんだ。モット伯に何かされたら、壊れちまう」

 

「どうせ家族を盾に取られたかしたんだろ。本当にこの国の貴族は腐ってるよな……まぁ、僕もその貴族の一人なんだけどさ」

 

「いや、あんたは他の貴族とは違うが……」

 

 マルトーさんは気まずそうにしていたが時間が無いな。

 

「何時ごろ連れて行かれたの?」

 

「まだ30分位だ。迎えの馬車がきたのは……」

 

 原作での距離は馬で2時間位?だっけ?フライなら間に合うかな?

 

「心配しないで!何とかするから……それと今日の夕飯要らないよ。屋敷の方で食べるから」

 

 僕は一旦部屋に戻りまだ世に出てない18禁バージョンを何冊か持って、モット伯の屋敷に先回りすべくフライで飛んでいった。

 

 

 

 結果から言えば、モット伯との交渉はすんなりいった。

 

 お土産の新作3冊と今後の新作の優先販売権を言うと上機嫌で了承し

 

「いやいや、貴殿もあの娘にご執心だったとは……横から攫う様な真似をしてすまなかったですな」

 

 なんか勘違いしてるけど、話が拗れるからこのままでいいかな。少しして、何も知らないソフィアが客間に案内されてきた。

 顔が真っ青で俯いている。きっと家族の為にと無理をして、我慢しているのだろう。

 

 声を掛けて安心させようと……

 

「娘、良かったな。

ちょっと前にお前がウチに来ると知ったツアイツ殿が、どうしてもお前を譲って欲しいと秘宝3冊と引き換えにと過分な条件をつけてくれた。

もう用は無いから帰ると良い」

 

 なんか誤解受けそうな、てかモノ扱いかよコイツ!一瞬ポカンとして顔を上げて、僕を見付けると泣きそうな顔でまた下を向いてしまった。

 

「ではモット伯、我々はこれで失礼します」

 

 もう早く連れて帰ろう。

 

「早速お楽しみですかな?では新作をお待ちしておりますぞ」

 

 何も言わず、彼女の手を取ると歩き出した。

 途中学院まで送ると言う使用人に断りを入れてソフィアを抱え、フライで近くの森の泉の近くまで飛んでいった。

 先ずは状況を説明して落ち着かせてから、送り帰さないとね。

 

「もう心配はいらないよ。全て丸く収まったから明日からね。学院で働きたければ、オールドオスマンに口利きもするから」

 

 にっこり笑ってそう話しながら、魔法でガラスのコップと真水を錬金し彼女に渡した。

 両手でしっかり受け取りながら一口飲むと、彼女はとんでもない事を言い出した。

 

「ツアイツ様が私をモット伯様から買い戻して頂いたのに、学院に戻るなど出来ません。秘宝を3冊なんて、働いても返し切れません。

もうこの身を捧げても返しきれない大恩を受けてしまったので、せめてお側にお仕えさせて下さい」

 

 とてつもなく真剣な顔でお願いされてしまった。

 

 コレナンテ、エロゲフラグダ?

 

 

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多分何人かの個人ルートを書いてから、ハーレムエンドにします。

 

取り敢えず一人分は粗方書いたので、この後に何話か進めてから分岐しようと思います。

 

 

第17話

 

 藪をツツイたら蛇が出たのか?それとも棚からボタモチか?

 

 

 絶望だった。

 

 使用人の中では、気に入った女性を強引に攫っては手篭めにし、飽きたら捨てる最悪の噂のモット伯様。

 今までも実際に何人かの女性がメイドにと強引に攫われて行ったが、その後の話では働き続けている人は殆ど居ないらしい。

 自分には家族に仕送りをしなければならないし、逃げたり逆らったりしたら家族に迷惑が掛かってしまう。

 どんな仕打ちを受けても我慢する覚悟で新しいご主人様のもとに向かえば、何故かツアイツ様が笑って居た。

 何も考えられずにいると、私の為に秘宝を渡してまで助けに来てくれた、と。

 しかも私の事を気に入っていてくれて、取り戻しに態々本人が掛け付けてくれるなんて……嬉しい。

 

 ツアイツ様の良い噂は色々聞いていますし、実際に学院の貴族様の中では異常な位に平民に優しい貴族様です。

 ゲルマニアでは普通だとお薬を無料でくれたり、怪我をした使用人が居れば無料で治癒をしてくれる不思議な人。

 

 多分、憧れていた初恋の人。でもどんなに優しくても身分が許さない。そんな雲の上のお方。

 

 でも今回は、私をモット伯様から買い戻してくれた。

 つまりこの身はツアイツ様の物であり、これから生涯お仕えしなければならないお方。

 もう魔法学院で働く理由はないけど、学院には専属メイドを置くことは許されていません。

 近くにお屋敷を構えたとおっしゃってましたから、そちらに住み込みで働くとなると、ツアイツ様に会えるのが殆どなくなります。

 やはり学院にて専属メイドとして働かせて貰えるように、学院長さまにお願いしましょう。

 私は既に身請された体ですから、ご主人様から離れるわけにはいきませんので。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ヤベーもうこれ以上メイドを増やすのは、色んな方面の方々からお叱りをうけそうです。

 

 特にヴァリエール夫人やエレオノール様など「「まだ増やすのですか汚らわしい……」」とまで言われましたし。

 

 シエスタを迎えた時の苦労も凄かった……後悔はしてないけど。

 

 しかしソフィアは一旦、マルトー達に合わせて安心させないと、明日とかに連れて行ったら間に合わなかったのかとか誤解しそうだし。

 

 

「取り敢えず学院に一旦戻って、マルトー達を安心させよう。心配していたよ」

 

 

「解りましたご主人様、マルトーさん達には心配をかけて申し訳ないです」

 

 良かった納得してくれた。でもご主人様は……良いかも!

 まだ学院までは距離があるので、再び彼女をお姫様抱っこしてフライで飛んでいく。

 ソフィアは両手を僕の首にまわし落ちない様にしているが、オッパイが胸の辺りに強く押し付けられているし首筋や髪の良い匂いがしますYO-!

 

 ヤバイ……

 

 理性が段々無くなっていく。唯でさえ溜まってるんですよ。そうだ、素数を数えるんだ……今度は魔法制御がおざなりに……

 

 しっかりしろツアイツ!

 

 でも何かを考えてないと、無意識にソフィアを意識してヤバイ形状に暴れん棒が…… そうだ、カリン様&エレオノール様の冷笑を思い浮かべるんだ!

 暴れん棒が萎えて気持ちも冷静にはなったけど……悲しい気持ちで一杯にになってきた。

 学院の正面門少し手前で降りて、あとは歩いて取り敢えず厨房に顔を出しに行く。

 

 もう精神力は底を尽きそうだ……普通フライでは、こんな長距離は飛ばないから……2大ドS女王様の想像も。

 

 もう嫌だ!心底疲れ果てた。

 

 今日は屋敷に行くのは諦めて、明日一番で向かおう。厨房に無事にソフィアを送り届けてからは、凄い歓待を受けた。

 それもそうだろう。一度貴族に攫われた平民が、無事で戻るなんて有り得ない国だから。

 

 このトリステインは……

 

 ただメイド仲間からの抱擁を受けていたソフィアが、爆弾発言をしちゃったりしてくれました。

 

「ご主人様はモット伯様から私を取り戻すのに、秘宝を3つもお渡ししてくれました。

どれほどの価値かも想像もつきませんが、このご恩を少しでもお返しする為に、これからはツアイツ様の専属メイドになる事になりました」

 

 なにそれ決定ナノー?

 

「秘宝って……俺達が頼んだからって、そんな物までモット伯に渡してしまったのか……」

 

 いや元手無料だからね。

 

「あんた凄いよ、どれだけ俺たちの事を大切に思ってくれているんだー!」

 

 マルトー抱きつくなー!マルトーを引き離そうとしたら、ソフィアが黒化した。

 

「マルトーさん駄目ですよ?許可無くご主人様に抱きついては……メキョ」

 

 ソフィアが般若の笑顔で、マルトーの肩を握りつぶして引き剥がしてくれました。 女性でも肉体労働に従事していると、逞しくなるのね。

 

「僕は事の顛末をオールドオスマンに報告してくるから……」

 

 取り敢えず逃げよう。

 

「あっご主人様、私も専属メイドの件で、お願いが有りますので同行します」

 

 何か吹っ切れた笑顔で、ソフィアも付いて来るって。肩を抑えて蹲るマルトーさんに今晩夕食、食べるから宜しく!と言って学院長室に向かった。

 

 

 マルトー哀れなり……

 

 

 

 

 

「失礼します。学院長」

 

 学院長室に入ると……アレ女性秘書が居ますよ?あの緑の髪は、土くれのフーケだよね?アレアレレ?

 

「どうしたミスタ・ツアイツ。それにメイドも同行しているが、何じゃな?」

 

 ヤベェ一!

 

 一瞬固まってしまったよ。

 

「いえ……ご存知かとは思いますが、モット伯の所に勧誘されたソフィアです。

ごく平和的な話し合いで取り止めて貰いましたので、ご報告と再度この学院で雇って貰えないかな……と」

 

「ほぅ!あの色狂いめをどうやって説得したかが気になるが、再雇用は問題ないぞ。明日からでも働いてもらおうかのう」

 

「お待ち下さい。学院長様、既に私はツアイツ様……ご主人様に買い取られた身ですので、ご主人様専属メイドでお願いします」

 

「ソフィア、その事は気にしなくて良いと言っただろう」

 

 まだ気にしているのか、律義な娘さんだなぁ。

 

「それでは身請けとしてモット伯様にお渡しした秘宝のお返しが出来ません。もうご主人様以外に、お仕えする気も有りません」

 

「なんじゃ?ミスタツアイツは、その子を取り戻す為に相当無茶したんじゃな」

 

 ニヤニヤするな、お前が何とかしないから僕がしたんだよ!

 

「いえ……例の新刊を何冊か渡しただけですよ」

 

 ムカムカ。

 

「なんじゃと!あの秘宝をむざむざモット伯に渡したじゃと……なんでワシに言わんのじゃ!1冊500エキューででも引き取ったのに」

 

「アレだから、あのモット伯もゴネずにソフィアを渡したんですよ。他の物だと後日改めてだとか言われて、間に合わなくなってしまうから」

 

「しかし……惜しいのう……アレが奴に渡ってしまうとはのぅ……」

 

 メソメソ。

 

 ソフィアは自身の純潔の為に、学院長がアレだけ悔しがる物をあっさりモット伯に渡したツアイツの度量に感動して腰砕け状態だ。

 

「ではソフィアは今日は休ませますので、待遇はまた明日にでも話しましょう。今日は色々疲れたので……これで失礼します」

 

 ソフィアを連れて部屋を出る。その時、一瞬だけロングビルと目が合うが、軽く会釈して問題事を先送りした。

 

「ソフィア、夕食前に起こしにきてくれ。それまでは君も休んでいて良いから」と自室に入り、ベットにダイブした。

 

 兎に角、ソフィアの純潔は守れたから良しとしよう……どうしようもなく眠かったzzz

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 この学院に潜入したのは、気に入らない貴族のボンボンの集まる所から「破壊の杖」って宝物を盗んで奴らに一泡吹かせたかった事。

 もう一つは全長18m級の鋼鉄のゴーレムを操るメイジが居ると聞いて、同じゴーレム使いとして興味が有ったからだよ。

 

 直ぐに色んな噂が入ってきたね。

 

 信じられない物も多かったけど、平民に優しく芸術性に優れ魔法もスクエアの優等生。

 学生と領地経営の二足の草鞋を履いて、あの生きる伝説の烈風のカリンの愛弟子とか……一体どんな完璧超人かと思えば、底抜けなお人好しだねこりゃ。

 

 たかがメイド一人の為に、どんだけ散財してるんだか……しかもそれを気にしてないばかりか、逆にメイドに気を使う始末だ。

 

 貴族らしくない貴族……か。でも嫌いじゃないね。それだけの力を持っているんだから……ティファニアの事も守ってくれないかねぇ?

 

 でもどんなに善人でも、ハーフエルフやエルフにまでその優しさを向けてもらえるとは限らない。

 その辺の意識調査もしたいけど、接点がないから難しいねぇ。

 ただ気になるのは、最初に部屋に入ってきた時に、私を見て一瞬だけど驚いた様な表情をしたね。

 

 普通なら、前任の秘書と違うから驚いた……と思うだろうが、私の勘がなにか怪しいと告げるんだ。

 些細な事だが、盗賊家業を始めてこの勘に助けられた事が何度もあったしねぇ…… 危険とか危機とかじゃないと思うんだけど……どうにも気になる。

 

 やはり早期に偶然を装って、接触し調べるべきだ。

 善人だけど、それじゃこのトリステインやゲルマニアでは勢力を伸ばせない。

 何かを隠しているか、私程度じゃ読みきれない実力が有るのか。危険と判断したら、この学院も去る位の覚悟が必要だね。

 

 もし味方か最悪でも敵対の意思は無いならその時は、ティファニアの事を相談しても良いか……いやそれは危険だ。

 

 こちらは盗賊!

 

 本性がバレたら、通報や拘束はされないと思うけど、味方にはなってくれないだろう。

 雇って貰うのも一つの考えだが、孤児も含めて生活する給金は貰えないだろうね。

 全く……何でこんなに気になるんだろうねぇ。

 とっとと、彼が居ない時にでも破壊の杖を盗んでトンズラすれば、関係ないのにね。

 

 

 

 

 

 

 その頃、これだけロングビルを悩ませているツアイツは無用心にも鍵を掛けず、大鼾で熟睡中。涎も出てます。

 そして部屋の隅には、専属メイドとなったソフィアが(内緒で進入し)控えていた。

 彼女にはツアイツのだらしない姿も、自分の為に苦労してくれたんだと思うと、それは感激すれども幻滅にはならなかった。

 添い寝癖が有る事を知ったら、彼女は迷う事なくベットに潜りこんだだろう。

 ツアイツはこの後、色々な女性陣に報告と言う苦労をしなければならないのだが、今はゆっくりと休ませてあげよう。

 

 

 

分岐第18話

 

※この話の後でルート別END話が続きます。その後に本編18話が続きます。

 

 

腎虚で死んでしまえ主人公!

 

 

「起きて下さいご主人様、もう直に夕食のお時間です」

 

 ゆさゆさと優しく身体を揺すって、ソフィアが約束通り僕を起こしてくれる。

 

「おはよう?かな夕方だけど……有難う」

 

 僕はある程度、精神力が回復し疲労も取れた事を体感で確認しながら起き上がった。

 屋敷に行くのは、明日の朝一で馬で行こうかと考えていたら

 

「先ほど厩舎に行き、明日の朝一で馬車の手配をしておきました」

 

 ソフィアから報告が有ったが……馬車?乗馬でなくて?

 

「僭越ながら私は御者も出来ますので、大丈夫です。一応朝食後直ぐに出発と思ってますが、宜しいでしょうか?」

 

 ソフィアにっこり。同行する気満々ですね。

 てか、早い時期にナディーネ達には顔合わせしておいた方が良い気がする。

 

「有難う。それで良いよ。あーお腹空いたね。今日の献立は何だろうね?」

 

 などと話しながら、扉に歩いていくと部屋の隅に椅子が?

 

「アレ?こんな所に椅子なんて置いたかな?」

 

 ソフィアが申し訳無さそうに報告してくれる。

 

「実は直立で、お部屋の隅に控えているつもりでしたが。起こすまで休んで良いとのお言葉でしたので……」

 

「えっ?この部屋に居たの?何時から?」

 

 おぃおぃ……恥ずかしいぞそれは!ルーツィアの時みたいだな。

 彼女も小さい頃は眠るまで手を繋いでくれていたが、今では夜伽して貰ってるんだぜ。良いだろ!

 

「馬車の手配後、直ぐにお部屋に伺いましたので……もしかしてご迷惑でしたか?」

 

 めっさ不安そうな顔で見上げてくる。金髪ロリ巨乳ツインテールメイドの不安で見上げるお願いポーズは……破壊力抜群だ!

 ツアイツはあっさり折れた。

 

「いや構わないよ。向こうにいるナディーネ達にも紹介するから」

 

 シエスタの時の苦労は、すっかり忘れてお気楽に言ってしまった。ソフィアの先導で、アルヴィーズの食堂に向かう。

 基本他の貴族が居る時に彼女からは話し掛けてこない。後姿を見ながら黙って歩いていると……こうお姫様抱っこの時の感触が蘇ってくる……

 

 でへへ!

 

 ちっちゃいけど出る所は出てるし、可愛いし金髪ツインテールだ。もしかしなくても、ウチで引き取れたのは当りかな。

 でも手を出すのは控えないとな。流石にモット伯から守ったけど、自分がご馳走様しました!じゃ不味すぎるだろう。

 

 ソフィアの感動丸潰しの思考をしながら、彼女のお尻を凝視して思いに耽っていた。

 

 妄想中…妄想中…妄想中…

 

 はっ!

 

 気が付けば、既に自分の席についていた。

 見回せば休日前の為か、のんびりした雰囲気が漂っていて結構な数の生徒が、既にワインを傾けながら思い思いに談笑したり、黙々と食事をしたりしている。

 

 今日も豪華だな……

 

 でも元日本人としては、和食が食べたくなる時が有る。味噌や醤油の製作は難しい。

 このハルケギニアには同じ発酵食品のチーズは有れども、流石に麹菌などの製法は確立されておらず、自分も錬金に挑戦したが上手くはいかなかった……

 タルブ村に和風ベースの料理は有っても、調味料は流石になくこればかりは再現が難しい。

 僕にも製法の知識なんて全く無いから、多分無理だろうな……残念。

 遠い魂の故郷に思いを馳せていると、微妙にモテナイーズがギーシュを先頭に食堂に入ってきた。

 軽く手を上げて挨拶すると、僕の周りに集まってくる。

 

「あれツアイツ?今日は夕食は食べずに、屋敷に行くとかいってなかったっけ?」

 

「ああギーシュ。ちょっと問題があって、明日の朝食後に行く事に変更したんだ」

 

「なんだ……残念だよ。折角夕食は二人分食べれると思って、楽しみだったのにさ」

 

 現在、マリコルヌを餌付け中です。飼わないけど……食べ切れず手を付けてない魚料理の皿をマルコリヌの方に押しやる。

 何気に、こいつ僕の隣が定位置になっている。

 

「君の屋敷には綺麗どころのメイドが20人以上居るんだろ。羨ましいな。他国にまで屋敷を構えるなよ」

 

 ヴィリエ君絡みますね。あれは僕の夢の城だから、招待はしないよ。

 

「確かに屋敷の規模以上にメイドが居るけど……殆どがヴァリエール公爵夫人からの派遣?だから断れないんだ」

 

「えっ?なんでヴァリエール公爵夫人が、君にメイドを派遣するのさ?」

 

 本当の事は言えない(まさか巨乳プログラム成功の女性陣を全員押し付けられたとは言えないから)

 

「多分気を使ってくれたんだろ。自国から大量の人員を派遣する事は国防上、許可が難しい。

現地雇用だと今度は、我が家の方が機密を扱う為の屋敷だから……防諜上の身元確認とか大変だし」

 

 

「ヴァリエール公爵家にそこまで気を使わせるとは……凄いんだね」

 

 ヴィリエが、うんうん感心している。

 

「だって在学中に婚約者を見付けないと、エレオノール様と婚約を強行されそうなんだ」

 

「うわぁ……それ絶対、監視目的も入ってるんじゃないかい?」

 

 それはないけどね。皆信者だから僕の味方なんだからさ。

 

「考えたくはないけどね……」

 

 カモフラージュには良い言い訳かな?

 

「エレオノール様……はぁはぁ……罵って下さい。嗚呼、僕を飼って下さい女王様」

 

 マリコルヌ、自重しろよ。しかしあの女王様振りは、M素養が有る奴には堪らないのかな?

 最近はギーシュ・マリコリヌ・ヴィリエそして僕と言うメンバーでの行動が多い気がするんだ。気楽だけどね。

 

 

 こいつ等について考える……

 

 

 先ずはギーシュ

 

 グラモン家の四男で土のドットメイジ。相変わらずの気障男だけど、原作との違いはモンモンと上手く行ってない。

 と言うかモンモンにアプローチしているが、相手にされてないと言うか……原作開始迄になんとか口説くのかな?

 他の女子にもアタックし続けているが、成功例を僕は知らない。

 

 

 次にマリコルヌ

 

 グランドプレ?家だっけ。風のドットメイジ。毎食事時に餌付けしているせいか、丸っこく懐いている……

 原作だと良くルイズに突っ掛かっていく描写が有るが、そんな事はないんだよな。

 可哀想だが、女性陣からは恋愛対象には見られてない感じがする。

 

 

 最後にヴィリエ

 

 風の名門ロレーヌ家の長男。プライドが高いが、原作ほど酷い性格じゃない……と思う。

 こちらは原作通り、タバサの事を意識している感じがする。

 実はこのメンバーの中では、いかにもトリステイン貴族らしい性格だが、腐っても名門の一角。

 一目置いている女子は意外に多いのに、本人があまり意識していないのが勿体無い。

 原作では女子と共謀してタバサやキュルケにチョッカイ掛けるのだが、その辺の女子への折衝力は有るのか?

 尊大だが、面倒見の良い性格で、常識を持っている奴だった……びっくりだ。

 

 

 僕自身には……

 

 余りに女性の影が多い為か、ルイズ・キュルケに遠慮してか?

 会話は普通にしてくれるが、アプローチはモンモンが割りと話し掛けてくれる位かな……寂しくなんかないぞ。

 

 

 食事後は直ぐに休みたかったのだが、オールドオスマンが居れば早めにソフィアの待遇を決めておかないと問題になりそうなので学院長室にむかった。

 

 ノックをしようとすると「使い魔に私のスカートの中を覗かせようとしないで下さい!」あの有名なやり取りが聞こえた。

 

「そうかそうか白か。もう清楚で逝ける年でもなし、黒でセクシーさを押出した方がよいのではないかね?」

 

「このエロジジィが……死ね死ね死ね!」

 

 気を取り直してノックする。

 

「あー学院長、宜しいでしょうか?」

 

 ガタガタと慌てた音がして静かになり暫く待たされてから声が掛かる。

 

「入りたまえミスタ・ツアイツ」

 

「失礼します……」

 

 何時もの片付けられた室内だ……先程の狂態の跡は見受けられない……ロングビルさんも澄ましている。

 

「どうかしたのかね?こんな時間に?」

 

「夜分すいません。明日朝から出掛けてしまうので、ソフィアの待遇だけでも決めておきたいと思いまして」

 

「君が身請けしたんじゃろ?だが此方にも負目があるしの……

学院の使用人室にそのまま居て貰うが、基本的にお主の世話を専属でして貰おうかの。なに給金はお主持ちじゃが、部屋代は取らぬよ」

 

「有難う御座います。あまり周りに言わない様にお願いします。その分、手すきの時間には学院の仕事も手伝う様にします」

 

「それだけなら急ぐ話ではないじゃろ?」

 

 不思議そうに聞いてくる。そうそれだけなら問題はないのだが……

 

「モット伯の件も有りますし、ハーナウ家に仕えると言う事は、我が家の使用人の待遇になりますから」

 

「それがどうしたのかな?」

 

「今回の様にチョッカイかけてくるなら覚悟しろよって意味です。例えそれがトリステインの有力貴族だったとしても……我が家の雇用条件には、使用人の保護も入っていますから」

 

 ニッコリと念を押しておく。

 

「つまりは今後同じ様な事が有れば、ハーナウ家が動くという事じゃな。どうしてそこまで平民に入れ込むんじゃ?」

 

「普通ですよウチでは、父上も納得してます。雇用者が被雇用者を守るのは当たり前でしょ」

 

「その当たり前が通用しないのが貴族と平民の壁なのだが、あっさりと言ってくれるよのぅ……」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 驚いたねぇ……この若様だけでなく、現当主まで納得済みの対応とは……有りえないねこりゃ!

 ここまで厚遇されたら、使用人の忠誠と結束は凄いもんだろうね。

 平民を人として扱う貴族なんて、このハルケギニアにはいやしないと思っていたよ。

 私だって没落してから感じて、学んだ事だからね。

 これはトリステイン魔法学院に潜り込むより、ハーナウ家に就職した方が良いかもしれないね。

 

 

 

 

 

 その晩の事。

 

 ツアイツから自室に来る様に言われたソフィアは、期待に胸を膨らませて向かった。

 

 が、雇用契約書やら生命保険やらなんやらにサインをさせられ、一抱えも有る雇用条件書を渡され目を通しておく様に言われ半泣きになっていた。

 字が読めない事を伝えたら、今度読み聞かせるからと二人の時間が持てた事を喜んだ。

 この書類にサインと判を押した事で、どれだけ自分が守られる事になるかなど思いもせずに……

 




明日以降でルート別ENDになります。 次はエレオノール&ソフィアルート編となります。

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