現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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トリステイン編アンリエッタルート第1話から第3話

トリステイン編アンリエッタルート第1話

 

 トリステイン王家、稀代の大謀略家アンリエッタ・ド・トリステイン。

 連綿と続く腐敗体制を一掃した若き王女!腐敗貴族を粛清した女傑!そして見目麗しい巨乳姫。人々の噂とは、伝播が早い。

 

 それが待ち望んでいた物だけに尾ひれが付きまくった怪しい物も数々有る。

 烈風のカリンを従えて、バッサバッサと売国奴たちを薙ぎ倒す。

 リッシュモンやゴンドランを水の魔法で吹き飛ばして決め台詞を言う。

 

 あの清楚で美しくメリハリのあるボディだが、一度怒れば片手で裏切り者をくびり殺す……

 

 途中から、烈風のカリンと混ざった様な怪物になっている?概ね、好意的な噂だ。

 実際に捕まった奴らの領地は王家直轄となり、税率も正常に戻された。

 

 国民の期待は高まるばかり……そして翌日に発表された、始祖の血を引く聖なる王家の一つ。

 アルビオン王国を救う為に、ブリミル教の司教。

 

 オリヴァー・クロムウェルを討つ!

 

 もはや、トリステイン王国の酒場では昼間から人々が彼女を称え飲み明かしている。トリステイン王国は今、時代の転換期を迎えていた。

 

 

 トリスタニア王宮のアンリエッタ姫政務室で、マザリーニ枢機卿とアンリエッタ姫が向かい合っている。

 

「アンリエッタ姫……今回の件、私は聞いていませんでした。ご説明願います」

 

 幼い頃から、このポヤポヤした姫の面倒を見ていたのだ。悪いが、アンリエッタ姫に出来る事を超えている。

 ヴァリエール一族が絡んでいるのは明白。

 あの時、動いたのはヴァリエール公爵夫妻、ド・モンモランシ伯爵、グラモン元帥とその一門。

 グリフォン・マンティコア両隊と銃士隊……有力貴族のほぼ4割近い勢力を纏め上げた手腕は、ヴァリエール公爵とて無理だろう。

 

 考えられるのは……あの男しか居ない。

 

 しかし、厳しく監視をしていたので頻繁に連絡を取り合った形跡も無い。本人も怪我で療養中と聞いている。

 しかし、何か見落としが有るのだろう……

 

「アンリエッタ姫、答えては頂けませぬか?」

 

 詰問調になるが、トリステイン王国の行く末を担う事件だ。

 

「愛……無償の愛故に……嗚呼、私はどの様にご恩を返したら良いのでしょうか?」

 

「…………?誰が誰にでしょうか?」

 

「うふふふっ。ウェールズ様に向ける愛。私に向けてくれるツアイツ様の愛。私はどちらの愛にも応えたいのです」

 

 駄目だ、この姫は妖しい秘薬でもキメてるのか?

 

「アンリエッタ姫。この国の為に、マトモにお答え下さい!

アルビオン王党派に援軍を送るのは、クロムウェル司教に……ブリミル教に、ひいてはロマリアとの関係悪化を引き起こすのですか?」

 

 アンリエッタ姫が、やっと此方を見てくれたが……

 

「お黙りなさい!

レコンキスタは、始祖の血を引く我らに敵対したのですよ。それが、ロマリアの司教で有り教皇が正式なコメントをしないと言うなら……

影で手を貸しているのはロマリアなのでしょう。私は、私の幸せの為に彼らを討つのです。マザリーニ枢機卿……貴方はどちらの味方なのでしょうか?」

 

 くっ……言われた事は正論だ!何故、教皇はクロムウェル司教を破門しないのだ?

 確かに王家に刃向かうなど、有ってはならない事。しかし、同時にブリミル教に戦を仕掛けるなど……

 

「せめて、使者をお出しになりクロムウェル司教の真意を問い質して……」

 

「お黙りなさい!クロムウェル司教の真意など……

美乳教を広めたいのでしょう?その様な怪しげな教義など、ウェールズ様に必要無いのですわ。

準備が出来次第、私もアルビオン大陸に向かいます。宜しいですね?」

 

 くっ……言っている事は間違いではないので言い返せない。

 

「せめて私も同行します」

 

 それを言うのが精一杯だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「上手く行き過ぎた感が有るが、問題無いだろう。これで、トリステイン王国が有利にアルビオン王党派と交渉出来る下地が出来た!」

 

 ヴァリエール公爵が、見渡す面々は……

 

 カリーヌ、ド・モンモランシ伯爵、グラモン元帥、ワルド隊長(政務担当遍在)それにド・ゼッサール隊長の6人だ。

 

「あなた、私も増援には同行します。アンリエッタ姫が了承した。

つまりはトリステイン王国の方針が、レコンキスタ討伐。私が本気で潰しに行ける条件は揃いました」

 

 目を輝かせている愛妻を見て思う。この最終兵器扱いの妻が全力を出せるのは、建て前が必要なのだ。

 

 今回は国が認めたのだ。思う様、環境破壊をしても問題視されないからな……

 

「カリーヌよ。よそ様の国だからな。アルビオン大陸までは壊さないでくれ……」

 

 夫として、庇い切れぬ暴挙だけは止めておく。

 

「それで、タルブ村の前線基地化は順調だが……あと5日は掛かるぞ。兵士の召集はそれから2日以降だろう」

 

 流石はグラモン元帥。軍を動かすには、時間が掛かる。しかし一週間で、ある程度格好がつく位の兵力は揃える事が出来る。

 

「先発として、我らとグリフォン隊で攪乱するか?」

 

 ある理由により、この戦争で活躍するだけ特別なご褒美の有るド・ゼッサール隊長はやる気満々だ!

 

「構わんぞ。先に空中戦力を叩いておくか?どの道、最後は歩兵が居なければ奴らを殲滅出来ないからな。船の安全を確保しよう」

 

 ワルド(政務担当遍在)隊長が追従する。

 

「確かに一理有る。それとレコンキスタの戦力を此方に向けるにも良い作戦だな。二方面展開にすれば、奴らの戦力を分断出来るし」

 

 ヴァリエール公爵は、内心では妻が単騎突入して無双すれば片が付くと思っている。

 しかし、勝つ方法も考えなければならない。妻が1人勝ちすれば、王党派は妻にだけ感謝すれば良い。

 もっと、トリステインと言う国の機関が協力したんだ!そうしなければならない。

 

 そう考えると、ガリアにはシェフィールドが。

 

 トリステインにはカリンと言う人型最終決戦兵器を抱えているだけ恵まれているのだろう……

 

「ツアイツ殿、いや義息子よ。アンリエッタ姫は暴走したが何とかなりそうだ。其方も順調か?」

 

 この会議の報告をツアイツに送り、足並みを揃えておこう。

 長かった今回の作戦だが、漸く此処まで漕ぎ着けた!

 

 成功すれば、カトレアの治療もして貰える。気を抜かず一気に攻め滅ぼしてやる。

 

 ヴァリエール公爵は、本作最初で最後の熱血をしていた!

 

 

 

 トリステイン編アンリエッタルート第2話

 

 

 タルブ村の特設前線基地。

 

 アルビオン派遣軍の第一陣が準備出来た為、アンリエッタ姫が演説を是非やりたい!と言い出した。

 マザリーニ枢機卿とヴァリエール公爵が草案を考える。しかし、アンリエッタ姫にはそんな物は関係無かった。

 

 特別に設えた壇上に登る……

 

 その手には、折角マザリーニ枢機卿が考えて考え抜いた草案は無かった。

 後にそれを未開封の状態で部屋で見付けてしまったマザリーニ枢機卿は、膝を付いて慟哭した。

 この時のアンリエッタ姫は、色々な意味で色ボケしていたので……

 

 それでも壇上に見目麗しいトリステインの花!

 

 金色の百合をあしらったティアラに純白のレースを重ねたドレス。

 手には、トリステイン王家に代々伝わる杖を持った彼女は王女と言う寄りは女王に見える……

 沢山の歓声を片手を上げるだけで抑えた様は、流石は王家のカリスマだ!

 彼女の言葉は魔法で拡声され会場全てに行き渡る。

 

「この場に集まって下さった皆さん……私はアンリエッタ・ド・トリステインです」

 

 ただ名乗っただけだが、割れんばかりの歓声が沸き起こる。そして、彼女が頷くと歓声がピタリと止まる……

 

「今回の事件で、私とこの国の為に働いてくれた御方、そしてこれから共に戦場に向かって頂ける皆さんに最高の感謝を……」

 

 アンリエッタ姫はそう言って会場の皆に頭を下げる!これには周りも驚いた!

 人気絶頂、トリステインの姫が臣下に……名もない一兵卒や平民に頭を下げたのだ!

 

 常識では考えられない異常な行動だ。

 

 しかし、敬愛する姫にお願いされちゃった彼らの興奮は最高潮!もうアンリエッタ姫の為なら何でもやります状態だ。

 これには、マザリーニ枢機卿やヴァリエール公爵も驚いた!

 

 あのアンポンリエッタ姫が、こんな掌握術を持っていたのが信じられない。誰?アレ誰?状態だ。

 

「今回、私が私の国に巣くう腐敗貴族を一掃出来たのは……全て私の為に無償の愛を注いでくれる1人の男性(ひと)の力によるものです」

 

 そんな有能な臣下が居たか?誰だ、その者は?皆が脳裏に浮かべるのは……

 

 ヴァリエール公爵?

 

 魔法衛士隊隊長ワルド子爵?

 

 それとも、銃士隊隊長アニエス殿?

 

 どれもそれらしく、また違う様に思える……

 

「思えば私は初めて彼に会った時……彼は私の最大の悩み事を解決して下さいました。

それが出会いで有り、その後も陰ながら私の力になり続けてくれたのです!」

 

 この話の後では、アニエス隊長の線は消えた。では誰だ?皆は、アンリエッタ姫の話の続きに意識を集中する。

 

「二度目にお会いした時……

あの人は、愚かな私に王族としての在り方を教えて下さいました。そして私の失態を……全て解決して下さいました。

その手際は素晴らしく、彼にお礼をしたいのに私の立場では何も出来なかったのです。当時、私は篭の鳥でしたから……」

 

 悲しそうに俯く姫に、皆が同情する。当時の姫様は、有能なのに周りの宮廷貴族が何もさせてくれなかったのだと。

 

「そんな私に彼は……決意と覚悟を教えてくれました。この日、私は生まれ変わりました」

 

 この演説を聞いていたヴァリエール公爵は焦った。これはマズい。非常にマズい展開だ!

 

 この後に、誰だと話してしまうと取り返しがつかなくなる自体に発展する。

 

 しかし止める手立てが無い。今、強引に止めれば……この演説を聞いている全員を敵に回す。

 

 畜生!誰だアレは?あのポヤポヤが、あんな演説を出来るなんて!

 

「そして私はこの国を……トリステイン王国をより良くする為に動き始めました。しかし、連綿と続くしきたりや体制は中々変わりませんでしたわ」

 

 彼女は溜め息をついた。きっと、彼女の邪魔をする連中が多かったのだろう。

 

 そいつ等も粛清だ!

 

 群集心理とは、時に危険な暴走を始める。今、彼女が誰々に邪魔をされたと言えば。その相手はリンチを受けただろう。

 そして、彼女を良く思っていなかった連中は……この雰囲気を理解した!余計な事は言えないと。

 

「そんな私に、彼は一冊の本を贈ってくれました。報われぬ行動に疲れていた私には、何よりの励みになる物でしたわ」

 

 彼女が明るい表情をする。まるで当時の事を思い出している様に……ああ、本当に嬉しかったのだな、と。

 

「真夏の夜の夢……この秋には、トリステイン王立劇場で公演されますわ」

 

 この言葉を聞いて、ある程度の事情通は相手が誰かを推測した。まさか、我らが教祖なのか?

 

「私は彼に、彼の為に生まれ変わりました!大恩有るあの人の為に……」

 

 誰かをかき抱くように両手を広げる。アンリエッタ姫は、恍惚とした表情だ!

 この時、彼女は演説中なのをわすれ暫くトリップしていたのだが……群集は、この溜めも彼女の気持ちの表れだと思った。

 

 早くアンリエッタ姫から、その名を聞きたい!

 

「私は、帝政ゲルマニアの貴族。ツアイツ・フォン・ハーナウ様に愛されています!」

 

 本人が居ればフザケルナ!と叫びたかっただろう。

 アンリエッタ姫は、持ち前の妄想力で自分が愛されていると感じていた!

 

「ツアイツ・フォン・ハーナウ殿?まさか、我らが教祖は巨乳姫に無償の愛を捧げていたのか?」

 

「なる程、確かにアンリエッタ姫は乳もデカい美少女だからな。納得出来るぞ!」

 

「流石はツアイツ殿だ!他国の貴族ながらトリステインの為に尽力していたとは」

 

 アンリエッタ姫が、手にした杖をかざした!群集は杖の先を見る。

 

「しかし、私にはアルビオン王国のウェールズ皇太子から求愛されているのです!

彼は星降るある夜に、ラグドリアン湖の辺(ほとり)で始祖ブリミル様に愛を誓って下さいましたわ」

 

 始祖に誓った愛は絶対だ!無償の愛とは、そう言う意味だったのか。我らが教祖も報われぬ愛に生きるとは……

 

「しかし彼は、私の為にウェールズ皇太子に啖呵を切って下さいました。

どんな手を使っても、私の気持ちを叶えてくれると……そして、その結果が今の状況ですわ」

 

 彼女の恍惚は止まらない!

 

「私はトリステイン王国とアルビオン王国の為に、ウェールズ皇太子の愛を受け入れますわ。両国が、手に手を取って繁栄する為に……」

 

 アンリエッタ姫は、国の為にウェールズ皇太子を取るのか?では、我らが教祖の気持ちは?

 この国の為に動いていたのはツアイツ殿なのでは?やり切れない気持ちが芽生える。

 

 敬愛するアンリエッタ姫の気持ちが分かるから……今、群集とアンリエッタ姫の気持ちはシンクロしていた!

 

「でも私は、ツアイツ様も愛しています!ならば、2人を夫にすれば良いのですわ。

私は私の為に、ウェールズ様とツアイツ様と結ばれたいのです!皆さん協力して下さい」

 

 アンリエッタ姫の、ぶっちゃけトークに一瞬会場が静まり返ったが……数秒後に爆発した!

 

 彼女は逆ハーレム宣言をし、群集はそれを受け入れた。

 

 

 

 トリステイン編アンリエッタルート第3話

 

 

 アンリエッタ姫が、演説で盛り上がっている頃。サウスゴータの王党派は、激しくレコンキスタに攻められていた。

 王党派の総戦力は一万五千人。それに対しレコンキスタは傭兵が中心だが五万人だ!

 

 籠城戦には三倍の戦力で当たれと言うが、まさにそれだけの戦力に差が有る。

 幾ら士気の高い王党派と言えども疲労は蓄積していく……しかし、ほぼメイジの居ないレコンキスタ軍の消耗も激しい。

 

 半日の戦闘で二千人近い傭兵が戦闘継続不可能に追いやられた。王党派の損害は殆ど無い。

 何度目かの襲撃を終えた連中が引き上げるのを見ながら、ウェールズ皇太子は悩んだ。

 

 このままではジリ貧だ!今は士気も高く兵の損耗も殆ど無い。

 

 しかし、今日1日の戦いで二割近くのメイジが丸一日以上休まないと精神力が回復しない状況だ。

 

 自分も疲れた……約二千人の傭兵にダメージを与えたが、五万人の内の二千人。

 つまりは、あと25回同じ被害を与えないと勝てないのだ……

 

「ウェールズ様……夜襲の危険も有ります。少しでもやすみましょう」

 

 バリーが心配そうに、気遣ってくれる。

 

「父上からの援軍は?連絡は無いのかバリー?」

 

 バリーは首を振る。これは、負けるかもしれない……ふとアンリエッタ姫から送られた、酷い捏造手紙を思い出す。

 勝つ為には、あと一手欲しい。

 トリステインの増援がくれば、レコンキスタは二方面に軍を展開しなければならず、此方への対応は緩くなる。

 守ってばかりではなく、攻勢に……しかしアンリエッタ姫の!

 

 あの異常な愛と偽乳を受け入れなければならないだろう。

 

 くっ……ツアイツ殿の教えを実践する為にも、ここで潔く玉砕などあり得ん!

 

「誰か!トリステイン王国に使者を送るぞ」

 

 苦渋の選択だが、滅亡よりもマシだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「カステルモール殿。偵察隊が帰ってきたみたいですね。状況はどうですか?」

 

 風竜部隊が、その高速を活かし強行偵察に行って戻ってきた。

 此方の位置がバレる危険も有るが、サウスゴータに入ってしまう前に情報が欲しかった。

 そう言うと、何人かのイザベラ隊員が操舵室に入ってきた。偵察から帰ってきた連中だ。

 

「報告!サウスゴータは完全に包囲されてます。敵軍は四万強」

 

「報告!ダータルネスの近くに、トリステイン王国軍が展開しています。その数、一万」

 

「報告!オリヴァークロムウェル、サウスゴータ北側本隊に本人を確認。本隊戦力は二万」

 

 次々と報告が入る。予定よりレコンキスタの人数が多い。それに、トリステイン王国軍がダータルネスに?

 先に退路を絶つつもりか……

 

「カステルモール殿。状況は良くはないが、悪くも有りませんね。

サウスゴータに合流するか?トリステイン王国軍に合流するか?どうしましょう」

 

 カステルモール殿も悩んでいるみたいだ。

 

「我らは少数……

故に防衛戦には向きません。当初は戦意高揚の為に王党派に合流が最善かと思いましたが……

トリステインの増援が思ったより早い。このまま其方に合流した方が有利でしょうか?」

 

 んー、まだ来ない援軍の為に王党派の士気を高め籠城戦に備えるつもりだったが……既に増援が居るなら、其方に合流した方が良いかな。

 ダータルネスを落とせれば、レコンキスタへのダメージも大きい。

 

 ウェールズ皇太子には連絡を入れれば良いか……

 

「しかし、我らはゲルマニアとガリアの混成部隊。トリステイン王国軍に合流するのは問題が……」

 

「トリステイン王国軍には、ヴァリエール公爵家の旗を確認しています」

 

 義父上が来てるなら問題は無いのかな?

 

「では、トリステイン王国軍に合流しましょう。王党派には、援軍到着の知らせを鷹便で」

 

 僕はこの判断を後悔する事になる。アンリエッタ姫を本当の意味で怖いと思った……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 タルブ前線基地から続々と兵がアルビオン大陸へと上陸してきますわ。私は戦の事は疎いです。

 グラモン元帥やヴァリエール公爵が良く纏めてくれていますから平気でしょう。

 先ずは、ダータルネスを陥落させレコンキスタにダメージを与えるらしいですが……

 

 全軍で敵軍本隊に突貫した方が良いのでは?効率が悪い気がしますわ。

 

「アンリエッタ姫!お喜び下さい。

ツアイツ・フォン・ハーナウ殿が手勢を率いて姫の為に応援に駆け付けてくれました。今、中央広場に……」

 

 嗚呼、やはり私は愛されているのね。戦場にまで来て頂けるとは……

 

「直ぐに向かいますわ!失礼の無い様におもてなしして下さい。ああ戦場故、着替えも……誰か、支度を」

 

 色ボケ姫の頭の中は、戦場のロマンスで溢れていた!ツアイツ、逃げろ!

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何だ?この熱狂的な歓迎は?

 

 たかが30人程度の増援に全軍から歓迎されている様な気がするのだが……それに、アンリエッタ姫に直ぐ面会とは。

 先にヴァリエール公爵達と話をしたいのだけど……一万人と言う人の波に揉まれては、ヴァリエール公爵に会うなど不可能に近い。

 それに口々に無償の愛とか、おめでとうございます?何がめでたいのかな?

 

「ツアイツ殿ー!こっちだ、ツアイツ殿ー!」

 

 呼ばれた方を見れば、ヴァリエール公爵が両手を振っている。此方も振り替えし近くに進もうと思うが、人の波が凄い。

 そのまま、押し返されてしまう!

 

「すみません、通して下さい!ヴァリエール公爵の所まで……」

 

 ヴァリエール公爵は、何故か逃げろ?と言っている様だが?何から逃げるのだろう?その時、前方の人垣が別れて道が出来た!

 

 モーゼの十戒か?

 

 その先に、アンリエッタ姫が見える。小走りに走ってくるが……良くウェールズ皇太子の為に援軍を送るまで漕ぎ着けたられたね。

 

 愛は偉大か?

 

 その時ヴァリエール公爵の声が、言葉がハッキリと聞こえた!

 

「ツアイツ殿、逃げろ!彼女と君はデキていると捏造されている!」

 

 はぁ?そんな馬鹿な事が?と考えていたら……アンリエッタ姫が抱き付いてきて、強引にキスをされた!

 

 周りの群集の歓声が爆発した。

 


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