現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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レコンキスタ対決・実行編
第161話から第163話


第161話

 

 ガリア王国両用艦隊。

 

 空中船で有り、水上船でも有るガリア王国の主力艦隊だ。質量共にハルケギニアでトップクラスの精鋭。

 個々の能力ではアルビオン王立空軍に劣るが、数は圧倒している。

 

 原作ではレコンキスタに止めを刺した……

 

 イザベラ王女の命令で、最新鋭の戦艦が突貫工事で偽装されている。

 就役して間もない、まだ近隣諸国に御披露目をしていない船なので偽装もそれ程難しくない。

 両用艦隊総司令官クラヴィルは、偽装されていく船を見ながら溜め息をついた。

 

 巷で噂の巨乳派教祖ツアイツ・フォン・ハーナウ殿が……まさかジョゼフ王の特命を受けて暗躍していたなど。

 

 しかしイザベラ王女自らが艦隊司令部に赴き、あの黒衣の魔女が同行するならば確かなのだろう。

 理由はイザベラ王女が欲しければ、レコンキスタを殲滅せよ!

 しかし既にアルビオン王党派とトリステイン王国には布石を打っている。

 この偽装戦艦でアルビオンに乗り込むのは、駄目押しの戦果をあげる事なんだろう。

 あのツンデレ姫が、顔を染めながら嬉しそうに話していたし力になろう。

 

 軍人とは国に仕えるが、俺は王家に仕えている。何の問題も無いな……

 

 それにゲルマニア貴族のツアイツ殿とコネが出来る。即ちツェルプストー3姉妹と繋がりを持てるのだ!

 軍属として赤毛の戦女神との繋がりは大切だ。この船の舳先にも特注の飾りが付いている。

 

 船の安全を祈る女神を象った物が……

 

 これは艦隊総司令官としての俺が最後はごり押ししたが、会議は紛糾した。

 

 スタンダードに戦果を祈るヘルミーネ孃か?それとも癒やしと航海の安全を願うイルマ孃か?しかし気紛れな海と空の女神リーケ孃も捨てがたい。

 

 よって3人が絡み合う様なデザインを発注!ツアイツ殿自らが錬金してくれた逸品だ。偽装の為とは言え、コレを外すのは気が引ける。

 

「クラヴィル司令官!我らの女神像を外すとは本当ですか?」

 

 突然声を掛けられる!縦社会の海軍で、この無礼は問題だ。振り向けば、ヴィレール少尉が顔を真っ赤にして肩で息をしている。

 

「そうだ!しかし口を慎めよ、ヴィレール少尉。これはイザベラ王女からの厳命だ」

 

 しかしヴィレール少尉は黙っていない。

 

「偽装!だからこそ女神像を付けていればゲルマニア船籍と勘違いを……」

 

「黙れ!貴様、イザベラ王女の想い人の祖国に疑いが掛かる様に仕向ける気か?これは無国籍艦だ……」

 

 漸くヴィレール少尉も落ち着いたみたいだな。

 

「ツンデレ姫の想い人と言えばゲルマニアの……」

 

 ニヤリと笑ってやる。

 

「そうだ!今晩、乗船するのだよ。我らが教祖が」

 

 ヴィレール少尉は、綺麗な敬礼をする。

 

「失礼いたしましたサー!」

 

「うむ。しかし、これは機密だ。それとリュシー神官にはバレない様に。色んな意味で面倒臭いからな」

 

「サーイェッサー!」

 

 全く現金な奴よ。さて……舳先から女神像を外すなら付け替えるのはコレだ!それはそれは、立派なドリルだった!

 

「天を突くドリル……男子の逸物の象徴だ。これはこれで素晴らしい……」

 

 何処までも漢道を貫くクラヴィルだった。そんな漢達満載の海軍造船所で偽装戦艦は仕上がっていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 おはようございます、ツアイツです。

 

 イザベラ様のご好意で、アルビオン迄の足と味方が増えました。今晩、偽装船にてアルビオン王党派に向かいます。

 そして、お姉ちゃんがナチュラルに僕のベッドに寝ています……お互い着衣の乱れは無いし、下半身に疲労感も有りません。

 

「あの?シェフィールドさん……起きて下さい」

 

 んんんっと寝返りを打つ彼女から、良い匂いがします。

 

「おはよう、ツアイツ」

 

 そう言うなり、ガバッと抱き締められて押し倒された!

 

「おおおっお姉ちゃん?」

 

「エーファから聞いたわ。ツアイツは添い寝が好きなんですってね。くすくす、少しお姉ちゃんとお話ししましょう」

 

 そう言って双子山を押し付けてくる。

 

「あっその……」

 

「ツアイツは動いちゃ駄目よ。お姉ちゃんね、少しツアイツの為に働いてきたのよ」

 

 うー胸が、胸がぁ……

 

「それはどんな?」

 

「ふふふっ。ガリア両用艦隊のクラヴィル総司令官に偽装戦艦の件を念押し。それと私が同行出来る様に工作を。クラヴィルね。

貴方が送った女神像を舳先に付けたままにしようとしたのよ。あの赤毛の三姉妹のを」

 

 赤毛の三姉妹?舳先の女神像?

 

「それって?ガリアの海賊船長って両用艦隊の総司令官なの?」

 

「あん!ツアイツは動いちゃダ・メ・よ。アレ、高かったんでしょ?」

 

 確か自分の船の安全の為に、どうしてもって頼みに来たんだよな。一万エキューとか馬鹿言ったから怒ったんだけど……

 

「いや僕が1日で作ったから、実費込み五百エキューだったよ。一万エキューとか馬鹿な事を言い出したから怒ったんだ」

 

「怒る?逆じゃないの?私が見ても立派な女神像で羨ましかったわよ」

 

 ああ……スリスリしないで……お姉ちゃん、どんどん可愛くなってる。

 

「お姉ちゃんの女神像も今度作るね。

男の浪漫本シリーズは商売としてよりは、対レコンキスタの為の布教に近いんだ。薄利多売で良いの。

転売は厳しく制限してるし、ベースが安く沢山有るから転売の意味は薄い。

買う方だって、ポイント制で昇格なのに他人から買う意味が無い。昇格には審査も有るからバレる。バレたら追放だから……」

 

 説明の最中に、ナデナデしないで!

 

「流石はツアイツね。貴方の信者を増やす作戦だから、兎に角広めるのが大切か……」

 

「うん。貴族から平民まで普及させるには、ね。これは僕らの幸せの布石だから……ブリミル教とは敵対するけど、イザベラ様と手を組んだから対抗出来るし」

 

 しまった!この状況で他の女の話はマズかったかぁ……あっあああ、胸がグニングニンと……

 

「はい、ご褒美おしまい!ツアイツ、朝食だから早く降りて来なさいね」

 

 カステルモール殿の屋敷なんだが、我が家の様な振る舞いで部屋から出て行った……

 

「朝から御馳走様でした!」

 

 シェフィールドさんの出て行った扉に向けて、取り敢えず拝んでおく。

 

 

 

第162話

 

 

 僕とシェフィールドさん。カステルモール殿とエルザちゃん。不思議な取り合わせで朝食を食べる。

 カステルモール殿もエリート集団の団長だけあり、屋敷も立派だが食事も質量共に中々だ。

 

「カステルモールお兄ちゃん、アーン!」

 

 今日はエルザちゃんが食べさせる方か。仲が宜しい事で。シェフィールドさんが、チラチラ此方を見ている。

 

 これは……して欲しいんだろうか?

 

 貴族的マナーでは有り得ないんだけどな。付け合わせのポテトをフォークで刺してシェフィールドさんの口元へ運んでみる。

 

「お姉ちゃん、アーン!」

 

 満面の笑みで食べてくれました。

 

「はいツアイツ、アーン!」

 

 うわっ!思った以上に恥ずかしいぞコレは……給仕のメイドさんが、クスクス笑っているし。結局、朝食を食べきるまでアーンを交換した。

 

 何て羞恥プレイ?

 

 夜迄は暇だ……そして僕以外は準備やら何やらで忙しい。

 

「ツアイツお兄ちゃん暇だよ!エルザと遊ぼう!」

 

 実年齢は年上なんだが、結局エルザをちゃん付けで呼ぶ様に懇願された。

 まぁ見た目幼女に僕が敬語を使っては、どんなお嬢様なんだと話題になるからね。

 エルザちゃん相手にミニゴーレムで劇を見せる、好評だったよ。

 

 暫くすると、シャルロット様とジャネット殿が訪ねてきた。

 

「ツアイツ様、こんにちは!」

 

「ミスタ・ツアイツ、こんにちは……」

 

 シャルロット様とは久し振りに会うな。

 

「シャルロット様、ジャネット殿、久し振りですね」

 

 取り敢えず貴族的作法に則り挨拶をする。

 

「私は2日程盗み見てましたよ」

 

「タバサで良い。学院に戻った時にボロがでるから……」

 

 えっと?

 

「もしかしてジャネット殿は……覗いていたの?」

 

 ニッコリと可憐な花の様な笑顔で覗きを肯定してくれました。

 

「ではミス・タバサで良いですか?」

 

 此方は、無表情で頷いてくれた。

 

「それで、今日の来訪の目的はなんでしょう?」

 

「「背中の幼女を下ろしてから!」」

 

 アレ?随分軽いんだけど?

 

「よっと!だめだろエルザちゃん、カステルモール殿以外の背中によじ登っちゃ。てか随分軽いけど?」

 

 エルザちゃんの脇の下に手を入れて持ち上げる。

 

「へへへっ!これも魔法なんだよ」

 

 高い高いな格好だが、足をぶらぶらさせて喜ぶ。ヒョイと飛び降りて部屋の外へ走って行った。

 

「ツアイツ様は子供好きなんですか?」

 

 何だろうニヤニヤだが?

 

「性的な意味で好きでは有りませんよ。それにエルザちゃんは、カステルモール殿のご内儀様ですし」

 

 何故かホッとしている?

 

「イザベラから聞いた。ミスタ・ツアイツがお母様の病を治せるって!本当なの?」

 

 流石はイザベラ様、行動が早いな。

 

「本当だよ。条件は幾つか有るし、場合によってはミス・タバサの身分を偽って別人として暮らすかも知れないけど……確実に治してみせるよ」

 

 頭に手を乗せてポンポンと叩く。彼女は、透き通った涙を流しながら僕の手を取り頬に添えた……

 

「あ、ありがとう……」

 

 取り敢えずハンカチを差し出して、手を抜いた。

 

「お礼ならイザベラ様とシェフィールドさんに……僕は大した事をしてないから」

 

 何か照れ臭いよね?お礼を言われるってさ。

 

ジャネット殿が、人の肩をバンバン叩く。結構本気で痛いんだけど。

 

「かーっ!何、何が大した事をしてないだって?ツアイツ様が一番苦労したんでしょ?

もっと恩に着せて従姉丼喰っちゃえって!何なら私も付けるから。その方が絶対楽しいから」

 

 この娘って、こんな性格だっけ?何となくムカついたので、胸をムギュっと揉んでみた。

 

「ん……Cの82いや83かな?」

 

 彼女は真っ赤になって、胸を押さえ後ずさると

 

「ツアイツ様のエッチ!イザベラ様に、有る事無い事言い触らしてやるー」

 

 そう言って走って行った……

 

「反省してないが、後悔はしている。イザベラ様、すみません」

 

 プチトロアの方に向かい頭を下げる。

 

「ミス・タバサ、何を?」

 

 僕の手を掴んで、グイグイ自分の胸に押し付けようとしている?

 

「……お礼。小さくてツマラナいかも知れないけど……」

 

「いやっ駄目だから!君はそう言う扱いをしては駄目な娘だから!」

 

 急いで手を引っ込める。危なかった……危うくアレでナニな連中を敵に回す所だった。ミス・タバサは、何やらご不満のようだ!

 

「お礼は心配しなくても大丈夫だから、ね?」

 

「でも、気が済まない」

 

 こんなに律儀な娘だったかな?

 

「じゃ貸し1つで!何か困った事が有ったら頼み事を聞いてね」

 

 初めて彼女の笑顔を見た!はにかむ様な、それでいて心の底から嬉しい感じで……彼女には、もう1つプレゼントが有るんだ。

 

 双子の妹、ジョゼットの件だ!

 

 でも未だ言わない。準備が整って、オルレアン夫人が納得してからだ。ジョゼットだって家族と暮らした方が良いだろう。

 でも引き合わせるのは、ジョゼットが会いたいと言えばだね。これは言葉は悪いが、捨てられた方に決定権があるからさ。

 

 ミス・タバサとは、余り会話は進まなかった。

 

 元々無口だし、仕方ないのかな?彼女は、暫くして帰っていった。

 

 これで原作と違い、早い段階でオルレアン一家は幸せになれるだろう。しかし不自由な生活が待っている。どうしたら良いかな?

 

 イザベラ様は任せろって言ったけど、ガリアよりゲルマニアで爵位を買って暮らした方が楽かもね。さて、夜に備え暫く眠ろうかな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 黒衣の魔女シェフィールド……

 

 お父様が召喚した使い魔で有り、ツアイツが姉の様に慕う女。恋敵にはならないが、身内然とした立場は危険な感じがする。

 

「何ですか、イザベラ様?私を睨んで?」

 

 何故か私の政務室に座ってお茶を飲んでいる。

 

「いや、何故一緒に艦隊司令部に行ってくれたんだい?アンタはお父様から直接の手伝いを止められているだろう」

 

 この女は、お父様とツアイツ以外の為には動かない筈だ。

 

「レコンキスタ……もう要らないの。だから壊す手伝いをしてあげるわ。それにガリアにツアイツを呼ぶには貴女とも協力しないと……

知ってる?トリステインのヴァリエール一族もね、ツアイツを狙ってるの」

 

「ああ、婚約者の1人が居るんだろ?でもツアイツの身内に手を……」

 

 何だ?手を上げて言葉を遮るとは不敬な!

 

「分かってるわ。ツアイツは身内に甘い。だから私と貴女でガッチリ捕まえてしまうの。どう?手を組まない。ツアイツを半分こしましょう」

 

 ああ、この女も謀略系か……しかし悪くない。基本的に、この女はお父様狙い。ジャネットやシャルロットより頼りになるし、敵でもない。

 

「お母様と呼んでやる。しかし、ツアイツの第一夫人は誰にも譲らない」

 

 シェフィールドに向かい手を差し伸べる。

 

「それで良いわ。あの子はガリアで私達と暮らすのが幸せなのよ」

 

 艶然と微笑みを称え、ガッチリと握手する2人。この凶悪コンビに立ち向かえるのか!

 

 ヴァリエール一族よ?

 

 

 

第163話

 

 

 カステルモール殿に案内され、両用艦隊司令部まで来た。確か隠密行動だったはずですよね?しかし現実は……

 

「ようこそ、ツアイツ殿。両用艦隊総司令官クラヴィルです。いや、ガリアの海賊船長と名乗った方が分かり易いですかな?」

 

 ナイスミドルがフレンドリーに握手を求めてきた。

 

「ああ、いつぞやの女神像発注の……その節は、有難う御座いました。そして、これからアルビオン迄宜しくお願いします」

 

 握手に応じると、周りから拍手が沸き起こる。コレ本当に隠密作戦なのかな?周囲にバレバレなんだけと……

 

「ミスタ・ツアイツ!航海中の貴方の世話係のヴィレール少尉です」

 

 同世代位の男が目の前で敬礼している。

 

「此方こそ宜しくお願いします」

 

 取り敢えず、握手を求めてみるが……「はっ!感激で有ります」何だろう?両手で握って振り回された……この連中の中で、僕の位置付けってどんなの?

 

「ヴィレール少尉よ、落ち着け!さてツアイツ殿、案内しますぞ。我がガリアが誇る両用艦隊の最新鋭戦艦に」

 

 クラヴィル司令官に案内されて見た物は……

 

「天を突くドリル……何と御立派な!衝角(ラム)ですね!」

 

 舳先にドリル状の衝角を取り付けた両用戦艦を見上げる。

 

「流石はツアイツ殿!男の浪漫を理解していらっしゃる。本来この甲鉄艦は、ガリア初の装甲戦艦です。

ネームシップであり、プリンセス・イザベラ号が正式名称です。しかし、イザベラ様からどうしてもコレを改装しろとの厳命を受けましてな」

 

 イザベラ様、流石は大国を表で仕切る才女……やる事が半端ない!

 

「しかし……この船でアルビオン迄乗り付けて、あまつさえレコンキスタと戦闘などは……」

 

「流石はイザベラ様の想い人……イザベラ姫が心配ですか?

心配ご無用!この船は新造戦艦で有り他国に情報は未だ無い。つまりは無国籍艦。

しかし、このクラスの戦艦を保有できる国は限られている。どの道疑われるなら、最新鋭を用意しろ!と言われましたよ」

 

 疑わしいが証拠が無ければ、どうにでもなるか……イザベラ様はスケールが違うなぁ!

 

「クラヴィル司令官!1つ伺いたいのですが……この衝角、まさか?」

 

 クラヴィル司令官は、ニヤリと笑い

 

「ドリル回転させろー!」

 

「「「アイアイサー!」」」

 

 見事に回転式ドリルだ!

 

「グレ〇ラガン……クラヴィル司令官、お読みになられたのですか?」

 

 天元突破グレ〇ラガン……

 

 僕が子供向け熱血小説としてアレンジしたんだ。舳先にドリルを付けた空中戦艦の熱き艦長の物語を……

 ドリルだけグレ〇ラガンで内容は、スペースシップ・ヤ〇トをハルケギニアに合わせたんだけど。

 最後に敵戦艦を下からドリルで突き破ったラスト……再現する気は無いですよね?

 

 まさか今回の戦闘では……

 

「これですな!サインをお願いします。いやツアイツ殿は、海と空の漢の気持ちを良く理解しておられる。

我らは船乗りですが、大海原にも天空にも愛を持っております!この本は素晴らしい。我が両用艦隊のバイブルです!」

 

 随分と擦り切れた本を渡された。相当、読み返してくれたんだろう……サラサラとサインをして渡す。

 

「船には男の浪漫が詰まっています!クラヴィル殿、アルビオン迄お願いします」

 

「任せて貰いましょう!出航するぞー!」

 

「「「アイアイサー!」」」

 

 随分と賑やかな隠密作戦の始まりだった。そのまま、艦橋まで案内される。流石は新造戦艦!僕も空中船は何度か乗ったが、純然たる戦艦は初めてだ。

 接舷された桟橋から、風石の力により船が上昇していく。余り外を見るとトラウマが発動するので、なるべく艦橋の中央部分により前だけを見る。

 

「どうですか?この船の乗り心地は」

 

 クラヴィル殿が気を使って話し掛けてくれた。

 

「良いですね!こう……力強さと安定感を感じます。そして先端のドリル。この船は白兵戦も想定してるのですか?」

 

 敵戦艦に突き刺して、乗り込みそうだよね?

 

「ははははっ!旗艦が特攻など最後の手段ですがね。それに、この船にはガリア最新鋭の武装を施しています。

側面に127㎜(70ポンド)単装砲30門。279㎜(300ポンド)単装砲8門。

風竜を40匹積める大容量のスペースも有ります」

 

 これって、コルベール先生のオストラント号よりも凄くね?もうジョゼフ王は、エルフと接触してる感じがする。

 

 ビダーシャルだっけ?

 

 この権力と財力と、エルフの知識・技術が合わせればエライ物が出来るよね。ヨルムンガルドとか、アイデア次第では汎用人型決戦兵器だよ。

 

「チョッとした空中要塞ですね」

 

「気に入ったかい?私の名前の船はさ?」

 

 なっ?イザベラ様……とシェフィールドさん?

 

「イザベラ様と、お姉ちゃん!不味いですよ、戦場にガリアの王女が出向いちゃ国際問題だ!」

 

 アレ?ちょっと不機嫌だぞ?

 

「ツアイツ?今、シェフィールドの事を、お姉ちゃんってナチュラルに言ったね?私の事は、イザベラと呼べってお願いしたのに様付なのに!

それに私はアンタのプロデュースしたツンデレアイドルとして行くんだ!ずっと一緒って言ったのもツアイツだよね?だから付いて行くよ」

 

 どうするんだ、どう説明しようか?ウェールズ皇太子に?まさか他国の王女を同伴で応援に来たって、正気の沙汰じゃないぞ。

 

「大丈夫だよ。替え玉も置いて来たし、周囲に護衛も多めに配している。仕事も片付けてきたから半月位なら誤魔化せる」

 

 これだから有能な姫様は……反論の余地が無い、でも何故シェフィールドさんが同行してるの?

 

「分かりました。僕も腹を括りましょう……しかし何でお姉ちゃんが一緒だったの?」

 

 何だろう……素早く目線を合わせて笑ったけど?

 

「「女には女の付き合いがあるのよ(んだよ)」」

 

 まぁ、仲良くしてくれるなら良いけどね。

 

「さぁ暫くは空の旅を楽しんで下さい。到着予定は……」

 

 クラヴィル殿が、気を利かせて話題を変えてくれた。到着まではやる事もそう無いからね。ゆっくりと船旅を楽しもう。

 


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