現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第173話から第175話

第173話

 

 遂に最終決戦が始まった!

 

 アルビオン王党派は、ツアイツ達に援護され北側と南側の脅威が無くなった為に、全軍で東側本隊に突撃を開始した。

 先ずは、大型戦艦ロイヤル・ソヴリンとプリンセス・イザベラが進軍。敵空中船三隻に一斉射撃!

 

 元々アルビオン王国とは、空飛ぶ不条理な国。空中戦にこそ、その真価が有り操船技術はハルケギニアで一番だろう。

 

 そんな中で鍛えられ、王党派の旗艦に乗り込む連中だから、プリンセス・イザベラの砲撃が外れ下に展開している連中に被害を与えている中。

 曲射と直射を使い分けて、レコンキスタ陣営の空中船にダメージを与えて行く。

 

 所詮は戦艦と戦列艦……徐々に押し負かして行く。

 

「盟主オリヴァー・クロムウェル!こちらの戦艦が不利です。どうしますか?」

 

「ええい!我が方の火竜や風竜はどうしたのだ?あの戦艦に突撃させろ。それと傭兵共を進軍!

接近させれば、同士討ちを恐れて砲撃出来まい。密集せずに、小隊単位で行動だ」

 

 周りの将軍達が、指示を出す。戦争など門外漢だから分からんが、言ってる事は真っ当だと思う。

 

「盟主オリヴァー・クロムウェル!最悪を考えて、脱出の準備を……ダータルネス迄、お下がり下さい」

 

 この場で一番戦争面で期待していた、アルビオン王国を裏切った伯爵がそう言い出した。名前も思い出せないが、確かに形勢は悪そうだ。

 

「分かった!言う通りにしよう。護衛と馬車の準備を頼む……」

 

 命あっての物種だ!さっさと逃げよう。そう思いながら戦場を見れば、頼みの空中船の一隻が真ん中から爆発して墜落してゆく……

 

 なっ?何か大きな黒い物が、ぶつかった様に見えたぞ!暫く茫然と見詰めてしまう……

 

「盟主オリヴァー・クロムウェル!憎っくきゲルマニアの巨乳教祖。ツアイツ・フォン・ハーナウが現れました!南側から進軍してきます。ですが……」

 

 ヤツが現れただと?

 

「ですが、何だ?報告はハッキリ言え!」

 

 あの餓鬼はここで倒してしまいたい。中々発見出来なかったのは、アルビオン王党派に紛れていたのか?

 飛んで火に入る夏の虫だ!戦争のドサクサで殺してやるわ。

 

「巨大な鋼鉄製のゴーレムを操り、進軍してきます。ヤツのゴーレムから投擲される斧は、目標に当たると爆発します!此方の船もやられました」

 

 馬鹿な……人の魔法で軍艦が墜ちるだと……

 

「ツアイツ・フォン・ハーナウは悪魔だ!異端認定を私がする。ヤツをヤツを殺せ!

仕留めたヤツには賞金一万エキューと、神聖アルビオン帝国の大将軍にしてやる。ヤツを殺すんだ!」

 

 最早、ここに呑気に居られない。ヤツの最後を確認出来ないが、ここに残るなど出来ようも無い。

 

「将軍ここは任せた!私は、此からの事も考えて一旦ダータルネスまで戻るぞ。時間を稼いでくれ!」

 

 悪魔め……やはりアイツは悪魔だ。新しい宗教を立ち上げた事にして異端審問にかけてやる。

 そうこう言ってる内に、もう一隻の戦列艦もやられた。最後の船も、黒煙を上げているし時間の問題だ。

 

「盟主オリヴァー・クロムウェル!馬車の準備が出来ました」

 

 やっと準備出来たか!もう駄目だ。ロマリアまで逃げよう。

 

「嗚呼、最後の戦列艦もやられた!盟主、早く乗って下さい」

 

 頼りの戦列艦は全て沈んだ。残りは地上戦力のみだ。これは逃げ出した方が良いだろう。傭兵達は動揺している。

 もはや、我がレコンキスタ軍は崩壊一歩手前だ!

 

「逃げるぞ、全力だ。それと軍資金を積んだ馬車も急がせろ。私が居れば何時でもレコンキスタは再生する!急げよ」

 

 馬車に乗り、護衛の騎士団に守られながら逃走……いや戦略的撤退だ!まだまだ死なぬよ。

 

 レコンキスタの盟主オリヴァー・クロムウェルは逃走した!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 旗艦ロイヤル・ソヴリンの艦橋から眼下に広がる地獄を見る……もはやレコンキスタ軍は崩壊した。

 後はオリヴァー・クロムウェルを捕まえるだけだ。

 

「ウェールズ様、敵の戦列艦の全滅を確認。内一隻は、ツアイツ殿のゴーレムにより破壊。これより炸裂弾により地上兵力の攻撃に移ります」

 

「そうか……3回斉射の後、地上戦力を投入。我らは敵の上空を抜けて後方に陣取る。一人も逃がさないつもりでやれ!」

 

 こんな夜盗崩れの傭兵を散らばらせては、国内の治安が悪化する。この時点で少しでも奴らを仕留めなければ……

 

 しかし、ツアイツ殿がこんなに手練れだとは!個人の魔法で戦艦が墜ちるなど考えられん。突き抜けた漢は、何処までも規格外か……

 

「炸裂弾、準備出来ました!」

 

「なるべく密集している所に撃ち込めよ。準備が出来次第、撃ち方始め!」

 

 これで、この戦いも終わりだ。

 

「よし!オリヴァー・クロムウェルを捕まえるか倒した者には賞金を出すぞ。皆、気張れよ!」

 

 バリーが近付いてきた。

 

「ウェールズ様、漸く終わりますな。この呆れた戦いが……」

 

「そうだ!ブリミル教が引き起こした戦いが、漸く終わるのだ。犠牲は大きかったが、国内の膿も出せた。これで我々の新生アルビオン王国は強固になる」

 

 バリーと笑い合う。我らの勝利は確定している。この国の未来は明るいのだから……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 崩壊したレコンキスタ軍を追撃する王党派を見送る。これで北と南の連中は倒した。後は東側の本隊だけだ。

 

「イザベラ様は城壁の中にお戻り下さい。イザベラ隊は彼女の護衛を……

カステルモール殿はブリュルヒルデで僕と共に東側本隊に行きましょう。オリヴァー・クロムウェルの最後を確認したい。

僕が居るのが分かれば、何らかのアクションをしてきます。天敵の僕を目の前にして平静では居られないでしょうから……」

 

 この流れなら勝利は確実。しかし、オリヴァー・クロムウェルは元司教……軍人じゃないから、平気で逃げるだろう。

 差し違えとか、最後迄戦うとかはしない。だから少しでも戦場に残る様に僕がエサになる。

 

「最後まで手を抜かないんだね。良いよ、待ってるからヤツの首を持って戻ってきなよ。めかし込んで出迎えてあげるよ」

 

 レコンキスタに勝つのが、ジョゼフから与えられた試練だから……ここで気を抜かず最後まで攻めてやる!

 

「ええ、ヤツを倒してジョゼフ王に会いにいきましょうか……お姉ちゃん、居る?」

 

 ゆらりと脇に立つ彼女。

 

「ツアイツも上手く行ったのね。じゃ最後に、あのゴミを潰しに行きましょうか?

嗚呼、早く壊して主様の元へ……私のバージンロードは直ぐそこなのね。お姉ちゃん、頑張るわ!」

 

 ヤバい、目がグルグルMAXだ!

 

「おっお姉ちゃん?アルビオン大陸は壊しちゃ駄目だからね?では、カステルモール殿行きましょうか……」

 

 お姉ちゃんが暴走しない様に彼女の手を繋いでブリュルヒルデに乗り込む。ブリュルヒルデが身震いしたけど我慢して下さい。

 

 直ぐに終わるから、我慢してね……

 

 

 

第174話

 

 

 南側の敵を制圧し、東側にブリュルヒルデで移動する。彼女のスピードは素晴らしく直ぐに東側のレコンキスタ軍本隊の近くまで来た。

 

「カステルモール殿、降ろして下さい。再度ゴーレムを錬金し攻撃を仕掛けます。

お姉ちゃん、程々にね。ブリュルヒルデが怯えてるから一緒に降りよう」

 

 勇猛果敢な彼女が怯える程に、ヤンデレ化し始めたシェフィールドさんを降ろそう。

 ブリュルヒルデは僕をチラ見して、恨めしそうに一声鳴いた。ゴメンね、分かってる。もう乗せないから……

 

 敵軍から200メートル程離れた所に着地。素早くゴーレムを錬金する。

 

「クリエイトゴーレム!」

 

 本日二度目の機動な戦士の物語の量産機を錬成!此処でもモノアイを光らせ排気口から排気する。無駄だけど、無駄でないこだわりだ!

 隣を見ればシェフィールドさんが何かを周りにバラ撒いている……

 

「お姉ちゃん、何を撒いたの?」

 

 話し掛ける間にも、それらがムクムクと起き上がってくる……前に貰った牙の骸骨ゴーレム達だ!

 

「ツアイツの護衛よ。ほら、早くあの敵戦艦を墜としなさいな」

 

 お姉ちゃんは50体近いゴーレムを作り出す。

 

「分かった。錬金、黒色火薬ブーメラン!」

 

 今回は飛距離が有るので、アックスで無くブーメランを錬成する。

 

「ゴーレムよ、敵を薙ぎ払え!」

 

 ブーメランをサイドスローで投擲する。てか魔法って金属がゴムの様に伸び縮みするんだけど、この辺適当だよね。

 ゴーレムは金属では有り得ない腰の捻りを見せてブーメランを投擲!

 

「外したか!錬金、錬金、れーんーきーんー!」

 

 三枚のブーメランを錬成しゴーレムに投げさせる。三度目の正直か、三回目に投げたブーメランが見事に敵戦列艦のド真ん中に命中!

 戦列艦は爆散しながら墜落する。それに合わせるかの様に、此方の大型戦艦からの攻撃も当たり、二隻目も墜ちる。

 

 流石に大型戦艦の弾幕って凄いや。一斉射撃で艦の片面の30門位が火を噴く様は圧巻だね……

 

 あっ最後の一隻も墜ちた。

 

 鋼鉄のゴーレム使いで有る僕の情報も知れ渡っていたんだろう。

 此方に物騒なセリフを言いながら突っ込んでくる傭兵達の台詞内容に、キレたお姉ちゃんがソイツ等をぶっ飛ばす!

 今度は風石の力を制御して、前方のみに力を開放……人がゴミの様に飛んでいくんだ。

 

「私のツアイツをブッ殺すとか、ひっ捕まえろとか……空を飛んで反省しなさい、愚か者め!」

 

 ヤンデレMAX状態のお姉ちゃんに手加減は無いです。

 

 僕の賞金に目が眩んだ連中は、文字通り死のフライトを敢行。怖じ気づいた連中が、漸く欲望より命が大切と気付いて逃げ出した!

 

「ふふふ……ツアイツに敵対して逃げれるつもりなんだ?お馬鹿さんね……吹っ飛びなさい」

 

 物騒な台詞の後に手を水平に振ると、風石の力が地上を伝う衝撃波となり逃げる連中を後ろから凪払った。

 

「あー、お姉ちゃん。もうその辺にしてあげて欲しいな。後は、王党派の歩兵と足並みを揃えて進軍しようよ」

 

 シェフィールドさんの手を握り締めてお願いする。お姉ちゃんの目はグルグルの黒眼のままだ。

 

「このまま手を繋いで歩いて行こうよ」

 

 ギュッと力を込めて手を握る。

 

「そうね……ツアイツに暴言吐いた連中は殺し尽くしたから良いわ……さぁオリヴァー・クロムウェルの最後を確認しに行きましょうね」

 

 優しい微笑みと共に仰(おっしゃ)った台詞は物騒この上もない物だった……シェフィールドさんは馬ゴーレムを造り出して2人で乗る。

 徒歩は流石に時間が掛かるからと……僕が前に乗り、後ろからお姉ちゃんが抱き締める様に手綱を捌く。

 

 パカパカとレコンキスタ本隊の方に走って行く。

 

 その前を敵戦列艦を倒した王党派のロイヤル・ソヴリンが地上攻撃を開始していた。炸裂弾かな?三回の一斉射撃の後に、王党派本隊が突撃を開始!

 

「お姉ちゃん……乱戦になるから、僕らは此処までだね」

 

 既に白兵戦に突入している戦場に、中遠距離戦が主体の僕らが行っても効果は薄いだろう。

 それに彼らがオリヴァー・クロムウェルを討たねば駄目だから……

 

「ちっ!あの屑の処理はアルビオンに任せてあげるわ。私の手で始末したかったけどね……」

 

 後ろから優しく抱いてくれているのに、囁く台詞は怖いんだよね。早くジョゼフ王と幸せに結ばれて欲しいな。主に僕の胃の為にも……

 暫く見詰めていれば、漸く追いついた南側攻略部隊の王党派軍が周りを囲んでいた。

 

「ツアイツ殿、我々はどうしますか?」

 

 隊長が聞いてくる。

 

「僕らの役目は此処までです。しかし隊長達は、レコンキスタ軍を追撃して武勲をたてますか?」

 

 そう言うと、暫く考え込んでから「いえ、もう十分です。それに貴方達の常識外れな戦いも見れましたから……予定通りに本隊と合流し、指示を仰ぎます」そう言って綺麗な敬礼をする。

 

 そして整列した歩兵隊を率いて戦場に向かって行った。

 

「お姉ちゃん、サウスゴータに戻ろうか?」

 

「そうね……アルビオン王党派に後は任せましょう。お姉ちゃん疲れたわ。そうだ!一緒にお風呂に入りましょうね」

 

「いや、それは駄目だから!無理だからね、無理!」

 

 何かスッキリしたお姉ちゃんが、冗談を言って僕を困らせる。

 暫くはアルビオンに滞在し、オリヴァー・クロムウェルの最後を確認したら漸くガリアに……ジョゼフ王に会える。

 長かった彼の試練はもう直ぐ終わるのだ。何とか夏休み中で終わるだろうか……

 

 パカパカと馬ゴーレムに乗りながら空を見上げる。

 

 地上三千メートルから見上げる空は、何処までも蒼く澄んでいる。僕は、僕達の帰りを待っている同じ色の髪をもつ少女を思い浮かべる。

 

 イザベラ様……

 

 原作と全然違う少女。彼女となら、これからロマリアとの戦いも勝てる……

 

「痛い!お姉ちゃん痛いよ。もしかして抓った?」

 

「ツアイツ?お姉ちゃんと2人で居る時に、他の女の事を考えていなかったかな?」

 

「違うよ。ジョゼフ王に会ったら何を言おうかなって……本当だよ」

 

 未だに彼女の目は、微ヤンデレだ。どうやって元に戻すかが問題だ!

 

 

 

第175話

 

 

 おはようございます、ツアイツです。

 

 久し振りに、この挨拶で話が始まりました。先日の反攻作戦は大成功!レコンキスタ軍は事実上全滅です。

 今は、アルビオン王党派が逃げている盟主オリヴァー・クロムウェルの捜索をしています。

 あの後、ダータルネス方面に逃げ出したレコンキスタ軍は、トリステイン王国軍と遭遇。元々混乱し敗走していた連中の殆どが捕まりました。

 我らゲルマニアの増援は、アルブレヒト閣下から許可を貰ったツェルプストー辺境伯が直ぐに父上に連絡。

 準備をしていたハーナウ家とツェルプストー辺境伯家の常備軍が、直ぐにでもアルビオン大陸に上陸出来るそうです。

 鷹便で連絡が来ましたが、送った時には進軍を開始したとの記載も有るので既に上陸しているでしょう。

 何とか残敵掃討の手伝いにはゲルマニアも間に合った訳です。

 

 ガリア王国は非公式ながら、王位継承権第一位のイザベラ王女と新鋭戦艦に親衛隊が開戦前に到着。

 

 帝政ゲルマニアも開戦前に、先発隊を任されたハーナウ家が参戦。そして後続が残敵掃討の任に当たっている。

 

 トリステイン王国は、開戦には間に合わず壊走するレコンキスタ本隊と戦闘を行った。

 

 後は、盟主オリヴァー・クロムウェルをどの勢力が捕まえるかが問題だ。

 これは地の利が有り情報が集中するアルビオン王党派が有利で有り、そう仕向けている。トリステイン王国軍が捕まえると色々厄介だから。

 この内乱も終息し、各国に増援のお礼をしなければならないアルビオン王党派に花を持たせる関係でも何とか捕まえて欲しい。

 

「ツアイツ、おはよう!朝食に行こうよ。エスコートしてくれるんだろ?」

 

 最近遠慮無く、僕の部屋に入り浸るイザベラ様とメイドさん達……扉にはロックの魔法が掛かっていた筈です。

 スクエアの僕が全力で掛けたロックが……

 

「おはようございます。イザベラ様。今日のお召し物は、初めて会った時の物ですね」

 

 聞けば、メイドさん達は皆さんスクエアクラスだそうです。地味に国力を見せ付けるよね?流石は大国ガリアと言う事かな……

 多分、ジョゼフ王の息も掛かっていて今回の行動は筒抜けでしょう。

 

 まぁ良いかな。別にバレても困る内容は……添い寝位かな?

 

 ヤベッ!王妃になるシェフィールドさんと王女イザベラ様の両方と添い寝したよ?

 

「良く覚えてるね。そうだよ、その時のドレスさ。ツアイツから貰った服は、イベント時にしか着ないからね。

さぁ今日は一旦ウェールズ殿が討伐軍から戻ってくるし、トリステイン王国軍の関係者もサウスゴータに招かれるよ。

間に合えばゲルマニア勢も……ツアイツ、大変だね。皆に私の事を紹介しとくれよ」

 

 クスクスとメイドさんと共に笑いながら、先に食堂へと向かって行く。

 

「まっ待って下さい!」

 

 チクショウ!絶対に面白がってるな。しかし情報では、カリーヌ様やヴァリエール公爵……それにアンリエッタ姫自身が来ているんだ!

 ゲルマニア軍は、父上やツェルプストー辺境伯もアルビオン入りをしている。一堂に会したら僕はどうなるのかな?

 隣で僕の腕を組んで、朝からご機嫌なイザベラ様を見て溜め息をつく。

 

 やっと火傷の傷が完治したけど、また違う怪我を負いそうです。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 初めての行軍、初めての戦争……

 

 心身共に疲れ果てたアンリエッタ姫が馬車に揺られて城塞都市サウスゴータに向かっている。

 彼女はツアイツが、其処に居るのを知らないがウェールズ皇太子が討伐から一旦戻る情報は掴んでいる。

 

 そう!彼女の野望はこれからが本題なのだ。

 

 今回の増援の恩を如何に婚姻に結びつけるか……しかし実際の手伝いと言うか成果は低い。ツアイツ達に粗方持ってかれているから……

 それに未確認情報では、ゲルマニアの実家で療養中のツアイツ殿が居るかも知れない?

 

 捕縛した敵兵からの情報では、ツアイツしか作れない金属製の巨大ゴーレムが戦場に現れた!

 とか、賞金一万エキューの彼を捕まえる為に南側に展開していた軍隊が向かったが……返り討ちにあい壊滅したとか。

 物凄い英雄的な扱いを、アルビオン王党派の方々が話しているのを聞いたりとか……

 

「まさか、ツアイツ様が私とウェールズ様の為に!このアルビオン大陸にいらしてるのかしら?ならばお逢いたいですわ」

 

 何の根拠も無いが、何故か薔薇色の未来が広がっている多幸感を覚えたアンリエッタ姫。

 ヤバい水の秘薬とかキメてないですよね?そして昼過ぎにトリステイン王国軍はサウスゴータに到着した。

 当然、護衛を兼ねた烈風のカリンと援軍を束ねる実質的な立場のヴァリエール公爵がアンリエッタ姫を伴って……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 メイドさん情報によればトリステイン王国軍がたった今、到着したそうです。

 ウェールズ皇太子が不在の為、侍従のバリーさんが対応している筈だ。

 

「どうしようかな?先にヴァリエール公爵夫妻に会うべきだろう……アンリエッタ姫に今は会わない方が良い。

僕のセブンセンシスが、そう訴えている。最悪、ガリアVSトリステイン王女対決だ!」

 

 そして男として、イザベラ様を紹介する前に全てを話しておかなければならない。腹を括ってヴァリエール公爵夫妻の部屋を訪ねる。

 幾らカリーヌ様でも、いきなり殺さないよね?

 

「お久し振りです。ヴァリエール公爵、カリーヌ様。この度の国内腐敗貴族一掃とアルビオン王党派への増援、有難う御座います」

 

 にこやかに応接セットに通されて向かい合って座りいきなりお礼を言う。先ずは低姿勢で探りを入れよう。

 

「何を言っているんだ。八割以上が君の手柄だよ。トリステイン王国が風通しの良い国になったのは、全てツアイツ殿の手柄だ」

 

「そうですよ。義息子よ……今回の件については感謝しきれません」

 

 和やかな対応だ。まだバレてないな、イザベラ様の事は。

 

「それで、アンリエッタ姫のご様子は?出来れば僕が此処に居る事は秘密にして欲しいのですが……」

 

 先ずはアンリエッタ姫の件の言質を取る。

 

「ん?そうだね、疲れてはいるが普段と変わらないな。出来れば変わって欲しかったのだが……良い意味でね」

 

「マリアンヌ様と並べてアレだけ再教育したのに、余り変わらないのは有る意味大物だわ」

 

 何か有ったんだな……僕が聞いてはいけない大人の事情が。

 

「そうですか……国内の風通しが良くなったのなら成功ですね。

僕も嬉しいです。ならばアルビオン王国との婚姻外交には拘らないですよね、お二方は?」

 

 ウェールズ殿の為にも、この2人の言質を取る。彼女を野放しにするのは危険だけど、友となったウェールズ殿に押し付けるのはもう嫌だし。

 

「ああ、此処まで来れば構わないよ」

 

「そうですね。それについては、アンリエッタ姫ご自身が頑張れば良い話ですね。私達は手伝いません」

 

 ヨシ!これで覚醒したウェールズ殿なら危機は回避出来るだろう。

 

 おめでとう、ウェールズ殿。そして、これからが僕の方の本題だ……

 


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