現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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三人娘の暴走・長女と次女の思惑

三人娘の暴走!人気者は誰かしら?

 

 

 夏休み。両親がアルビオン王国へ、王党派の増援に行ってしまい留守番を強いられたルイズ……

 カリーヌから安全の為に外出禁止を言い渡されていたが、出掛けられないなら呼べば良いじゃない。

 

「肉まん無いの?じゃピザまんで!」又は「パンが無いの?ならケーキを食べれば良いじゃない!」くらいのノリで考え付いた。

 

 良いアイデアと思ってモンモランシーとキュルケに手紙を出した。暇だからウチに遊びに来ないかと……

 

 これが大正解!

 

 レコンキスタを討伐しカトレアの治療をしに来たツアイツに、久し振りに皆が会えた。その場でレコンキスタは前座。

 真の敵はロマリアの教皇と、その神官達だと教えられる。彼らに対抗する為に、夏休みが明けたらガリアの魔法学院に転入する事になったと……

 当然ルイズはツアイツに同行すると言い出し、事前に情報を掴んでいたキュルケは実家とも話をつけていた。

 唯一、モンモランシーだけが水の精霊との交渉役という大役を担っていた為に問題が有りそうだったが、何とかなりそうだ……

 ヴァリエール家のベランダでお茶を楽しむ三人。久し振りに友人達と話の花が咲く……しかし話題は自分達の婚約者の事。

 

 ツアイツ達は既にガリアへと向かった。ツアイツが居なくなったので、正装を脱いで幾分楽な服装に着替えている。

 

「イザベラ姫に良い所取られちゃったね?」

 

 幾分悔しそうな顔のルイズ。如何に公爵令嬢でも一国の王女には対抗出来ない。

 

「私は元々三番目だったし、正妻は諦めていたから構わないけどね」

 

 モンモランシーはルイズとキュルケに割り込んで来た関係上、正妻は諦めていた。

 それに貴族として格下か同列なら業腹だが、王女じゃ仕方ないかと……

 

「確かにね。私達が束になっても勝てないでしょうね。権力・財力・地位……どれをとっても無理だわ」

 

 改めて現状を確認し考え込む三人……新しい恋敵は強力だ!

 

「でもさ……それ以上に厄介なのが、ファンクラブよね」

 

 その言葉で想い浮かべるのは、黒マント集団と原色のオタファン。既にイザベラ姫の人気はガリアで収まり切らず国外にも信者が溢れている……

 

「私のね、腹違いの姉様達もファンクラブが凄いの。国内外から贈り物や結婚の申し込みが有るのよ」

 

 何と言うフィギュア効果!

 

「…………私達もさ。ツアイツに頼んでみる?」

 

 あの恥ずかしい人形が出回り、大きなお友達が量産されるのは女として考える事が多いだろう。

 しかしメリットもデカい。このままイザベラ姫と、まだ会った事が無いテファと言う神胸の娘だけが独占するのは……

 

「それに原型師はツアイツのみ。つまり完成品は別として、生身の恥ずかしいポーズや衣装を見せるのはツアイツだけ……

刺激的な衣装で二人きり……うふふっ、良くない?」

 

 三人の目線が絡み合う。

 

「「「やりましょう!」」」

 

 ガッチリと手を握りあう。

 

「でも衣装はどうするの?ちょっと考え付かないわ」

 

「そうよね……今まではツアイツが用意していたと思うの。つまり……」

 

「「「男の浪漫本ね!」」」

 

 ルイズが突然立ち上がる。

 

「お父様の書斎に沢山あるわよ。アレを見て私達の特徴に似合う衣装の挿し絵を探しましょう。

見付けたら出入りの服屋で仕立てさせるの。出来た衣装を着てツアイツにお願いしましょう!」

 

 善は急げと、ヴァリエール公爵の秘蔵書庫に乱入!秘蔵の棚を強引に開ける……有るわ有るわ、山のように男の浪漫本が。

 試しに一冊手に取って読んでみる……

 

「うわっ!こっこんなにエッチなの?

前にツアイツの屋敷に遊びに行った時に見付けたヤツと全然違うわよ。うわぁ……これは熱狂的な支持を受けるわよね」

 

 前に探した時は、本はエーファ達が、原典(18禁)を隠し写本(15禁)しか手に入れられなかった。

 しかし、ヴァリエール公爵の秘蔵本はツアイツより贈られた総てのタイトルが並んでいる。

 異変を察知してヴァリエール公爵が来てみれば、愛娘と友人達が自分のコレクションを読んでいる。

 

「「「オジサマ(お父様)?良いですよね?」」」

 

 と話し掛けてきた表情は軽蔑の白い目だ……お前達の婚約者が書いたんだぞ!と叫びたいヴァリエール公爵。

 そんな涙目の公爵を傍目に男の浪漫本を漁り、気に入った衣装を着ている挿し絵のページを切り取っていく。

 

「ねぇ?私はこの水着のシリーズが良いわ。ちょうど水メイジだし、ラグトリアン湖の水の精霊の交渉役だしピッタリだと思うの……」

 

 手に取った本は「ケンコー全裸系水泳部ウミショー」その挿し絵はツアイツから贈られた、ぶらじゃとぱんてーその物の水着?を着た女の子だ。

 

 それにソフィアが良く着ているセーラー服……

 

「ヤバくね?てかヤバいでしょ?」

 

「キワドイわ……貴女本気?」

 

 ドン引きの二人。

 

「この本によればビキニって言うらしいわ。

これにワイシャツを羽織ったりパレオを腰に巻くの……扇情的よね?これで勝負に出るわ!」

 

 男の浪漫本を握り締め、熱血の表情を浮かべるモンモランシー。瞳の奥に炎が見える気がする……

 

「モンモランシーは直球、エロモードか……」

 

「一歩間違えれば痴女ね……」

 

 酷評だった!モンモランシー涙目だ。

 

「良いのよ。ツアイツに喜んで貰えれば……貴女達はどうなのよ?」

 

 2人に吠える!

 

「私、私はコレにしますわ」

 

 何故か優雅な仕草で、本を持ち上げる……「ているず・おぶ・ですてぃにー2」その挿し絵は赤毛の長髪をツインテールにした、弓を構えた下着ばりの衣装を着た女性。

 

 ナナリーたんだ!

 

 肩と胸しか覆わない鎧にホットパンツ。やたら長い手袋に太ももまであるロングブーツ……それに腰からヒラヒラの前全開のスカート?

 確かに勝ち気なキュルケに似合いそうだ。一応、戦装束っぽいから、武門のツェルプストー家にはお似合いか?

 

「何て言うか……らしいわね、半裸蛮族をお洒落にしたみたいな?」

 

「うわっ!これで戦場に行くの?直ぐに捕まえたい殿方が溢れそうね。エロエロアーチャーね」

 

 こちらも酷評だ。特に先に評価されたモンモランシーは……例えがひどくね?

 

「最後は私ね……私はこれよ!」

 

 ルイズの手には「ぎゃらくしー・えんじぇる」ミルフィーユたん!ピンクの髪の天然さんだ。

 

 彼女は明るくお気楽、天然ボケで周囲に迷惑をかけまくる……男の浪漫本を読みながら、納得顔の2人。

 

「「なるほどねー!でもルイズだけ、可愛い衣装って何で?」」

 

 ツアイツを惹き付けるには、インパクトが弱いのではないか?

 

「いや、ポロリ担当は2人に任せようかなって……」えへへ!っと舌を出して笑っている。

 

「「フザケルなー!アンタも露出度の高い衣装を着るのよ」」

 

 そう言って、2人が片方づつのホッペを摘まんで引き伸ばす。

 

「いらぃ、いらぃよぅ……」

 

 制裁を終えた2人は、ルイズに似合う衣装を探す為に男の浪漫本を漁りだす……

 

 この少し後に新しくシリーズ化されたコスプレシリーズは「教祖ツアイツの婚約者色々バージョン!」として、そこそこのヒット商品となる。

 

 余りブレイクしなかった理由には、原型師とモデルが部屋に籠もりっきりで制作が進まない事。

 両親からの監修が入り、是正項目が多かった事があげられる。

 特にモンモランシーの水着シリーズは、貧巨乳連合教団本部のツアイツ執務室にプロトタイプ・シリアルナンバー001のみが展示されるだけの貴重な逸品だったとか……

 しかし着実に新人を世に送り出しオッパイ教団は、その勢力圏を広げていった。

 

 

 

 長女と次女の思惑……

 

 

 ヴァリエール公爵家の三姉妹は何かと話題になる事が多い。

 

 長女エレオノール。

 

 トリステイン王立魔法研究所の評議会議長であるゴンドランが失脚した今、アカデミーの実質的なトップは彼女だ。

 才女で有るが故に、自分と目線が同じであり更にタフネスな相手にしか興味が無いお姉様。

 性格は母親似で有り、胸もそっくりだ。ちっパイでツンデレな彼女は、ナイスバデーに変貌してしまったルイズの代わりを務めている?

 

 

 次女カトレア。

 

 生まれつき体が弱く、天寿を全う出来ないと言われていた。せめて美しい景色の有るラ・フォンティーヌ領で安静に暮らして欲しい。

 そんな願いで子爵として父親から領地を与えてもらった。ポワポワとして笑顔を絶やさないお姉様。

 しかし押しが強くカンが鋭い。常に沢山の動物を侍らす、ハルケギニア版ムツゴロウさんだ!

 しかし不治の病と思われていたが、ツアイツにより完治した。母親からは髪の色しか受け継いでいない、優しい巨乳さんだ!

 彼女達はカトレアの治療が終わった後で、なんとなく2人きりでお茶を飲む流れになった。

 

 エレオノールの私室で……

 

 女性の部屋とは思えない程、本やメモに埋もれた部屋。しかし整理整頓は出来ずとも清掃は行き届いている。

 設えた応接セットに腰を下ろし、先ずは治療の成功を喜び合った。

 

「カトレア、本当に良かったわね。でも貴女を治せる程の指輪か……研究したかったわ」

 

 研究者として、あの2つの指輪は諦め切れないみたいだ。

 

「ダメよ、エレオノール姉さん。ツアイツ君も私の為に、危ない橋を渡ってくれたのよ。これ以上の迷惑は掛けたくないわ」

 

 やんわりと窘める。

 

「しかし、聞けば聞く程無茶をしたわね。軍人でもないのに、レコンキスタ軍傭兵一万と戦うなんて……話を聞いてる途中で心臓が止まる位驚いたわ」

 

 ツアイツは見た目は華奢な優男だ。それに戦いを好む性格ではない。

 

「ツアイツ君……それだけ私の為に無理をしたのよ。後二〜三年しか生きられないと思っていたのにね。延命じゃなくて完治したなんて驚きだわ」

 

 そう言った後、沈黙が流れる……冷えた紅茶を入れ替えて、一息つく。

 

「ねぇ?ツアイツ……ルイズを連れてガリアに行くそうね。寂しくなるわね。まさかイザベラ姫を籠絡するって何よ!胸なのね?私には胸が足りないのね?」

 

 何処からか怒りが沸々と湧き上がってくる。何でルイズなのよ!

 

「そうね。ツアイツ君、色々と浮気してるしエッチだし……でも不思議な子。

私ね、彼から警戒されていたの。私のカンの良さに、何か秘密を嗅ぎ付けられるかも知れないって……

そう思っているみたいだったわ。そんな子が私を治療した。何故かしらね?」

 

 カップを弄びながら、独り言の様に呟く……

 

「警戒?カトレアを?何かしら?確かに隠し事の多い子だけど悪意は無いわよね?」

 

 流石に転生の秘密には辿り着かないが……

 

「エレオノール姉さん。私達が、あの子と結ばれるのにはどうしたら良いと思う?命の恩人に何か恩返しがしたいわ」

 

「今となっては無理ね。ガリアの王女と正式に結ばれるのよ。もうゴリ押しも出来ない。

ルイズの場合はイザベラ姫が受け入れたからよ。私達はどうこう出来ないわよ。

それに完治した貴女には、ヴァリエール公爵家を受け継いで欲しいわ。まだギリギリ適齢期よね、ア・ナ・タ・は!」

 

 少し、イヤかなり恨みの籠もった目でカトレアを見詰める。

 

「あらあら?長子が継ぐのが、貴族の習わしよ。私は子爵位を拝していますし……エレオノール姉さんも頑張れば旦那様を見付けられるわよ」

 

 ニコニコと微笑んでいるが、言ってる内容は酷い?

 

「ちょ、なんで私が!私の恋人は研究で良いわ。あの子よりマシな男なんて居ないじゃないこの国。

それに跡取りならお母様が頑張ってもう1人産めば良いのよ。この家の存続の為に、適当な男と結婚なんてイヤ!カトレアが継ぎなさいよ」

 

 この話を両親が聞いたら微妙だろう……なにせ、もう一人子供を作れって内容だし。

 

「エレオノール姉さん……私の考えに乗る?」

 

 ニコニコと微笑んでいるのは同じだが、何か黒く渦巻く物が見える。

 

「か、カトレアさん?何か背負ってるわよ」

 

 実はここ一番で押しが弱いエレオノール……そして怖がりな一面を持つ可愛いお姉さんだ!

 

「私ね……

ツアイツ君が良いわ。でも普通に考えれば、結ばれるのは無理よね。それこそガリア王国と戦争になるわよ。

次期ガリア王になるツアイツのお嫁さんになりたいなんて……でも私は側室やお妾さんになりたい訳じゃないの。

ツアイツ君の傍に居れば良いのよ。だからツアイツ君の教団で働くわ。恩返しを込めて……

それで男女のゴニョゴニョになっても責任を取れとは言わないわ。あの子は押しに弱く、優しいから……私はそれだけで良いのよ」

 

 聖母の微笑みで、のたまった!

 

「きっ汚いわよ!近くで恩返しの為に働く健気さを見せて、あらあら・まぁまぁ!

で男女の関係に……でも身を引くわ!って言えば、あの子は優しいから何とかするって事?

でも、それは根本的には変わらないわ、駄目よ。ツアイツに迷惑が掛かるから……」

 

 途中経過が変わっただけで、結果は同じ。ヴァリエール公爵家から男女の関係を持った娘が、ツアイツの下へ行くだけだ。

 

「エレオノール姉さん、違うわ。別に関係を公表しろなんて言ってないわ。ただ結ばれるだけで良いのよ。周りには秘めたる恋人よ」

 

 つまりアレか?ツアイツにとって、都合の良い女になる訳か……でも、とうの昔に結婚なんて諦めている。

 

 今更、他の男となんてお断りだ!

 

 なら秘密の恋人でも……良くね?仮に子供が出来ても、貴族なら御落胤なんて普通だ。

 育てる自信も有るし、お母様の養子にしてヴァリェール家を継がせても良いし。

 

「なる程ね……その案に乗るわ。でもヴァリエール公爵家の事も考えなければいけないし、私達だって直ぐには自由に動けない。なら、どうする?」

 

 聖母の微笑みを浮かべるカトレア。対するは邪悪な笑みを浮かべるエレオノール。

 

「簡単なのは、ツアイツ君の教団で働く事ね。接触は容易よ。

またはルイズが妊娠して里帰り。付き添いにくるツアイツ君……とか色々よ。何かの用事で会える機会を探せば良いの」

 

「「くすくすくす……なる程ね、色々ね」」

 

 妙に仲が良くなった2人姉妹……

 

「いっそトリステイン王国が、ガリアに併合されたりしたら……同じ国内だし良くないかしら?」

 

「あら?トリステイン王国のトップに立って、ガリアに属国化されるのも良くないかしら?」

 

 ドンドンと妖しい打ち合わせに発展していった。

 翌日、ガリアに向かうツアイツを送り出す時に妙にエレオノールとカトレアはくっ付いて妖しい笑みを浮かべていた。

 ツアイツが悪寒を感じる位に妖しい2人姉妹……

 

 ツアイツ、君は狙われている!

 


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