現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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ベアトリス姫殿下頑張る(前篇・後編)

クルデンホルフのアイドル・ベアトリス姫殿下デビューする!

 

「お兄ちゃん達ー!元気してたー?私は元気だったよー」

 

「「「ウォー!ベアトリスちゃーん」」」

 

ステージの上で千人以上の観客に応えるベアトリス姫殿下……

元祖ツンデレプリンセス・イザベラの妹分としてガリア国内で活動し今日、凱旋ライヴを祖国クルデンホルフ大公国の特設ステージにて公演。

多くのファン(大きなお友達)に迎えられた。

 

 公演は大成功だろう……

 

「ツアイツ様、公演のご成功おめでとう御座います」

 

「ツアイツ様、我が姫も中々のツンデレ振り。流石は奥様のご指導の賜物で御座いますな」

 

 何故か僕の背後に控え、僕を主と崇める……

 空中装甲騎士団の隊長達に話し掛けられる。かつて衰退するトリステイン王国から財力をもって自治権を獲得し、大公国として独立国家として認められたクルデンホルフ大公国……

 

 その防衛の要である筈の空中装甲騎士団。しかし彼らは僕を主とし、当然の様に振る舞っている。

 

「マイマスター!そろそろ公演も中盤に差し掛かります。ベアトリス妃殿下の衣装変えの間、信者達にお声をお掛け下さい」

 

 こちらは元アルビオン王国の空軍所属の竜騎兵だ。

 

「我らが王よ。ささ、こちらに……既に準備は出来ております」

 

 こっちはガリア王国の花壇騎士団だ。僕は帝政ゲルマニアの新興貴族だ。

 しかも爵位を継いでいない長子だから直属の家臣など居ない。皆父上の家臣だ。

 

 ハーナウ家は三代遡れば商人だった家系だから譜代の家臣とかは居ない。

 今の家臣団も、どちらかと言えば武より商に傾倒した連中だ。

 

 先の大戦の時は、それでも最狂の……いや、最強の護衛であったお姉ちゃんが居たから何も問題は無かった。

 

 他にもワルド殿やカステルモール殿が居てくれたから、こと安全に関しては心配しなくてよかったのだが……

 お姉ちゃんは、ガリア王国の王妃としてジョゼフ王にベッタリだ!

 

 そして、これからもベッタリでいて欲しい。

 

 ワルド殿とカステルモール殿は仕えていた国を後にして、貧乳教団のカリスマ会員としてゲルマニアのハーナウ領に行ってしまった。

 イザベラ親衛隊は、基本的にイザベラの周りから離れない。そして最近は特使として各国に飛び回る僕の護衛問題が深刻化した。

 

 僕は巨乳教団の教祖だから、貧乳派や美乳派からは選抜し辛い。

 

 心配した我が友であるウェールズ皇太子が、各国の巨乳派に声を掛けた。

 ハーナウ家に所属し僕の家臣団として、また護衛として働いても良いと言う連中を……

 

 幸いにして、漢の浪漫本ファンクラブは売上好調!財力ならかなりの物だから、家臣を養う事は出来る。

 しかし、ゲルマニアの新興貴族に家臣として仕えても構わないと言う連中は少ないと思っていた。

 実際に直接申し込みに来た連中は、実力は中々の者達だったが少なかった。

 まぁいくら次期ガリア王と言えども血統や歴史を尊ぶのが貴族だから仕方ないし、来てくれただけでも良しと思っていたよ、最初は。

 しかし実際は各国から予選を勝ち抜いた選抜メンバーだったのだ、彼らは。

 

 当然、乳に対する思い入れと実力を伴った漢達だった。しかも全員が武闘派だ!

 内政連中は、教団に雇われるから直接僕の所には来ない。そして各国から選り抜きの猛者達が……

 

 ツアイツ親衛隊と言う、最強の巨乳騎士団が生まれた。

 

 彼らは自らをボインズ・ナイツと呼称!

 

(※貧乳騎士団は有りません。ナインズ・ナイツも存在しません。念の為に……)

 

 白と金で統一された鎧とマントを装備し、黒と赤で統一したイザベラ親衛隊と双璧をなした強者だ。

 国籍を問わず集まってくれた彼らは有能だし、各国の騎士団とも交流を持っていた。

 

「ああ、そうですね。ベアトリス姫殿下が着替える間の時間にファンクラブの皆さんと交流しましょうか」

 

 そう言って彼らに先導され、漢の浪漫本ファンクラブの集いに参加する。

 ライヴやファッションショーを行う彼女達と違い、僕はサイン会や握手会が主な仕事だ。

 

 当然、新作への執筆が一番の仕事だが……

 

 こうしてクルデンホルフ大公国での興業は大成功の内に幕を閉じた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ライヴを終えたベアトリス姫殿下が休憩室に戻って来た。頬を染めて興奮醒めやらぬ感かな?

 

「お疲れ様でした、ベアトリス姫殿下。ライヴは大成功でしたね」

 

「あっお兄様!有難う御座います。

お陰様でクルデンホルフのアイドル・ベアトリスとしての自信と地位が固まった手応えを掴めましたわ。

これならトリステイン王国からの圧力にも対抗出来ますわ」

 

 以前のクルデンホルフ大公国はトリステイン王国の紐付きだった。

 空中装甲騎士団は擁していても、歩兵戦力はトリステイン王国に依存していた。

 しかしイザベラ繋がりで、ガリア王国と繋がりを持った事を宮廷貴族やアンリエッタ姫は良く思っていない。

 あの後、僕とウェールズ皇太子がアンリエッタ姫から意図的に離れてから、彼女はやさぐれてヴァリエール公爵やド・モンモランシ伯爵等の僕よりな貴族達を遠ざけ始めた。

 

 今の彼女の周りには粛正を逃れた怪しい貴族達しか居ない。

 

 義父上達も意図してか、アンリエッタ姫の傍から離れて何かしている。焦臭い感じがしていますよ、トリステイン王国は!

 そこを敏感に嗅ぎ分けたクルデンホルフ大公が、急速にガリア王国に取り入った訳なのだが……

 

 ベアトリス姫殿下も、その辺の事情を言い含められているのかな?以前よりも僕に対して、警戒をしていない。

 

 それはイザベラの教育の賜物でも有る訳だが……

 

「それは良かったですね。しかし、これからが大変ですよ。

アイドルを公言したからにはロマリアから目をつけられますからね。それにトリステイン王国の動きも怪しい」

 

「ええ、お姉様から聞いています。

アイドルとは偶像・崇拝の象徴……ブリミルを崇めるロマリアにとっては不敬にあたる。

偶像とはブリミルを自分の都合の良い様に作り替える事も出来るから。

それを崇拝させる事は……自分をブリミルとすり替える事も出来る。ですわよね?」

 

 うん、大変良く出来ました!イザベラの対ロマリア教育は成功している。

 

「そうだね。僕らはロマリアを……

今の間違ったブリミル教と戦わなければならない。それには君の協力も必要だ!共に頑張ろう」

 

「はい、お兄様!私も頑張りますわ。腐れホ○野郎を駆逐しましょう!」と尊敬の眼差しを向けて慕ってくれる。

 

 だから比較的、彼女とのコミュニケーションは上手く行っている。

 向かい合ってソファーに座り、紅茶を飲みながら雑談に花を咲かせる。ほのぼのとした雰囲気だ……

 

 そこへ巨乳騎士団の1人が訪ねて来た。

 

「すみません我が王よ。そろそろ懇親会の準備が整いましたので、ベアトリス姫殿下をエスコートして会場までお願いします」

 

「やれやれ、もうひと働きしようか?」

 

「ええ、お兄様!」

 

 特徴の有る腰まで伸びたツインテールを揺らしながらソファーから元気よく立ち上がる。

 

「ベアトリス姫殿下。私めにエスコートをする大役をお申し付け下さい」

 

 恭しくお辞儀をする。

 

「ええ、ツアイツお兄様。宜しくお願いしますわ」

 

 差し出されたその手を軽く握りながら、彼女を会場へとエスコートする。

 さて、今回集まっている観客はクルデンホルフ大公が各国に招待状を送った。故に色々な思惑の連中が居る。

 

 僕がエスコートするベアトリス姫殿下を見て、彼らはどう思うかな?

 

 

 

妹属性はハルケギニアのロリコン共の急所を直撃だ!

 

 

 クルデンホルフ大公国。

 

 かつて財力によりトリステイン王国から自治権を勝ち取った国だ。

 しかし国防のかなりの部分をトリステイン王国に依存し、かの国の貴族達にお金を貸す事により発言力を高めていた。

 しかし依存先のトリステイン王国の雲行きが怪しい。かつての大口の顧客達が粛正されたのだ。

 

 残ったのはヴァリエール公爵を始めド・モンモランシ伯爵やグラモン一族等、僕の関係者達だった。

 彼らはクルデンホルフ大公にお金を借りずとも、漢の浪漫本ファンクラブ関係の事業で財を成していた。

 

 故にクルデンホルフの影響力は低い……

 

 しかし娘がガリア王国のイザベラ王女と知り合った事を切欠にトリステイン王国を見限り、ガリア王国へと鞍替えを企んだクルデンフ大公を誰も責められはしまい。

 貴族とは、家の繁栄と存続が大切なのだから……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 パーティー会場の入口に、ベアトリス姫殿下をエスコートして立つ。

 会場に居た貴族達が、一斉に僕らに注目する。かなりのプレッシャーだ。

 

 ベアトリスちゃんの様子を見れば、イザベラと共にライヴで人前に出る事に慣れたのだろう。中々の毅然とした態度だ。

 

 衛兵から「ガリア王国、ツアイツ・フォン・ハーナウ次期王!クルデンホルフ大公国、ベアトリス姫殿下の入場!」との掛け声と共に、ゆっくりと会場に入る……

 

 途端に周りを貴族連中に囲まれる。ベアトリス姫殿下には、見目の良い貴族の男達が。

 僕の周りにはクルデンホルフ大公と、その他オッサン貴族達が。ムサいオヤジ達に囲まれて嫌だ!

 

 しかし、彼らの目的は僕との繋がりを持ちたい事。

 

 ガリア王国へ太いパイプを持つベアトリス姫殿下の心象を良くする事。なので、こうなります。

 僕に取り入る為に美女・美少女を……なんてサプライズは有りません、ええ全く。

 

「ツアイツ殿?煤けているが、平気か?今夜は紹介したい連中が沢山いましてな。先ずは……」

 

 流れ作業的に紹介され、握手をして次の相手へ。彼らはクルデンホルフ大公国の主要な貴族だ。

 

「それで……ベアトリスの、娘のフィギュア化について注文が有りましてな。是非とも我が領内にて生産を行いたいので、工場建設の援助を……」

 

「それは良い!クルデンホルフとガリア、それにゲルマニア・アルビオンとも連携が……」

 

「建設場所の提供なら私が……勿論、無償です」

 

「ははははは……その件は持ち帰り、妻と協議します。教団幹部とも調整が必要ですので……」

 

 現代の政治家に似た答弁が慣れてきた気がします。

 オヤジ達との話し合いを終えて、一息つく為に室内からベランダへと出る。

 夜風に辺りながら、暫しボーっと屋敷の庭を眺める。良く手入れがされているのが、夜間でも分かる。

 屋敷から零れる照明が、庭を昼間の様に照らしているから……チラホラとボインズ・ナイツも見える。

 

 彼の装備は基本的に白と金だから、隠密作戦は不向きだが……この手の護衛には映えるな。

 

 彼らに手を振って、ベランダに出る際に貰ってきたシャンパンを煽る。これも上等な品なんだろうな。

 クルデンホルフ大公国も、取り込みに成功だろう。金の力で成り上がった国は、金の力に弱い。

 

 ウチとトリステイン王国とを比べたら、どちらを取るかは、ね。

 

 これからトリステイン貴族への借金の返済要求が始まるだろう……袂を分かつ迄に、取れる分は取るだろうから。

 

「ツアイツ様、此方でしたか?皆さんお探しですよ」

 

 呼び声に振り返れば……どこぞの貴族の令嬢だろうか?着飾った貴婦人が立っていた。

 逆光で見辛いが、令嬢には珍しく髪を短く纏めた娘だな……残念、彼女は貧乳っ子か。

 

 ん?んんん?何だ?オッパイスカウターが働かない?

 

 おかしいな……普段なら貧・巨・美乳を問わず、発動するのに?

 

「……いえ、人に酔いましてね。少し外気に当たり冷やしていた所です。失礼ながらレディは、私を探しに来たのですか?」

 

 クスクスと笑いながら、僕の隣りまで近いてくる彼女……

 

「ええ……少しお話が有りまして」

 

 微笑む彼女は確かに可愛いのだが、無性に近くに居たくない気がする。

 どんな女性に対しても紳士的に振る舞える、漢の浪漫本ファンクラブ会長の僕がだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 クルデンホルフ大公は、娘を使いガリアとゲルマニア・アルビオン各国と協力なコネの有るツアイツを自国に招き、招待客に彼と友好的な雰囲気を見せられたのを満足していた。

 これでトリステイン王国から、緩やかに距離を取れる。あの国以外の後ろ盾を得られそうだから……そんなご機嫌の彼に、怪しい報告が入った。

 

 豪華な料理を楽しんでいた時だ。

 

「大公様、来客リストにロマリア皇国からの出席者の中にジュリオ助祭枢機卿の名前が……しかし会場内には見当たりません」

 

「何だと?ロマリアの関係者など呼んでないぞ」

 

 そもそも反ロマリア皇国を掲げるガリア王国に取り入るのだ。わざわざロマリアの関係者など呼ぶ訳がない。

 

「いえ……正規の招待状をお持ちでしたので、衛兵も不審に思わなかったそうです。彼は複数の共を連れて来ています」

 

 招いた覚えの無い、ロマリア皇国の、教皇の愛人で右腕が此処に?

 

「空中装甲騎士団と衛兵の配備を強化しろ。ツアイツ殿と娘の所に、それとなく配置するんだ。狙いは儂か娘、それとツアイツ殿しかいるまい。早くしろ!」

 

 報告に来た衛兵に指示を出し、自らも今夜の主役たる娘とツアイツを探す。

 

 娘は……ベアトリスは直ぐに見つかった。相変わらず、若い貴族が周りを囲んで居るな。

 アレなら安心か……若い貴族?誰の子弟達だ?イケメン揃いだが、全員見た事が無い。

 

 おかしいぞ!

 

 1人2人なら分かるが、今夜の招待客は身元が確かな貴族と、その長子達だ。儂の知らない若者が、あんなに居る訳が無じゃないか!

 

 

 

 ジュリオ来襲!男の娘部隊出撃指令有り。

 

 

 クルデンホルフ大公国にて催されたベアトリス姫殿下凱旋ライブ!

 

 その慰労会と言う名の、僕への取り込み工作が主な披露宴。綺麗どころは居なくて、オッサンばっかりが集まっていたのに……僕を探しに来た美少女。

 貴族の令嬢としては珍しくボーイッシュで新鮮な感じの美少女なんだが……

 

「ツアイツ様?どうなされましたか?」

 

 彼女がすり寄ってくるのを後ろに下がってかわす。ん?、な感じで首を傾げる所作は完璧な美少女だ。

 

「何故さがるのでしょうか?何か私に至らない所が有るのでしょうか?」

 

 寂し気な顔で此方を見詰める……周りを見れば、ボインズ・ナイツ達が親指を立ててエールを送っているし。

 

 お前ら空気嫁過ぎだ!

 

「いっいえ、未婚のレディとこの様な場所で2人切りは宜しく無いでしょう。誰かに勘違いされては……」

 

 やんわりと断ったのだが、その笑顔は変わらない。

 

「クスクスクス……ツアイツ様、私は敬虔なブリミル様の信者です。

最近のツアイツ様の動きは、ブリミル様を蔑ろにしてませんか?ツアイツ様はブリミル教をどうしたいのでしょうか?」

 

 ブリミル教の信者だって?クルデンホルフ大公国はトリステイン王国と同じ様にブリミル教の影響が強い。

 これはクルデンホルフ大公国の貴族の令嬢の直談判?

 

「僕も勿論ブリミル教の信者です。ハルケギニアに住む貴族の習いとして……ただ、今の教皇の教えには賛同出来ない!

彼の教義は、緩やかに人類が死滅する。次代を担う子供達を生み育てる女性達を蔑ろにする教えは、ね」

 

「それが答えなのですね?ヴィットーリオ様の崇高な理想を理解しないのですね?貴方はやはり危険な存在です」

 

 ヤバい、教皇派の信者か?笑顔を絶やさずに居る彼女は、一層不気味な……彼女?

 

 しなだれかかる様に近付いて来た彼女の手にはナイフが握られている。しかし周りは外遊中のラブロマンスにしか見えていない!

 

「チッ!君は刺客かっ?」

 

「ツアイツ様?お避けになると、ベアトリス姫殿下が危ない目に合いますよ?」

 

 彼女と睨み合う……

 

「ベアトリス姫殿下の周りには、イケメン貴族が群れていたよ。彼らが盾になるさ」

 

 彼女に取り入りたい連中が囲んでいるのだ。暴漢が襲えば彼らが助けるだろう……

 

「クスクスクス……彼女の周りには美男子ばかりが居たでしょ?皆、綺麗な顔をしてたでしょ?美少年と言うには、育ち過ぎた人達が……」

 

 ロマリア聖歌隊……201人全てが美少年で、男の娘として教皇に仕えている。

 しかし入れ替わりが激しく、ある程度成長して美少年から美青年になると教皇の寵が離れる……

 

「ヴィットーリオの元愛妾達か……君も男の娘だったのか?」

 

 睨み合いは続く……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ジュリオとツアイツが静かな戦いをしている頃、クルデンホルフ大公も娘の周りに居る連中が怪しい事に気が付いた……

 

 アレは誰だ?

 

 彼女は、イケメンに囲まれてご機嫌だ。しかし、思い出そうにも彼らが誰の関係者かも分からない。ゆっくりと娘の方に近付いて行く。

 

「ベアトリスよ。宴を楽しんでいるか?」

 

 無難に声を掛ける。

 

「はい、お父様!皆さんお話がお上手で……とても楽しんでますわ」

 

 娘は何も気付かずにご機嫌そうだ。周りの男達を見れば、皆にこやかに微笑んでいる……気持ち悪い連中だ。

 

「そうか!それは良かったな。さて、お前にも紹介したい者が居るのだ。良ければ案内したいのだが?」

 

 彼らを見ながら笑い掛ける。顔の筋肉が引きつってる感じで、上手く笑えているか分からない。

 

「お父様が、わざわざ紹介したいなんて……誰かしら?分かりましたわ。それでは皆さん、きゃ?何を……」

 

 イケメン貴族達がベアトリスを取り囲み、彼女を拘束した。

 

「やはり!お前らは何者だ?衛兵!奴らを取り囲め」

 

 会場の中と外で攻防戦が始まった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 室内が騒がしくなったのを横目で確認する。

 成る程、ベアトリスちゃんの周りを固めていたのは、ロマリアの連中か……しかし、詰めが甘いな。

 彼女を拘束したが、武器は持っていない。まぁ杖を構えているから魔法は使える連中か。

 

「ツアイツ様、ベアトリス姫殿下に危害を加えたくはないのです。分かりますよね?」

 

 こっちの美少女も、当然男か。いや教皇風に言えば、男の娘かな。

 

「そうだね。彼女を捕らえたのは流石だけど、全員が杖を構えてるけど?あの近距離で取り囲まれているのに……

馬鹿だな。漢の浪漫本ファンクラブの怖さを知りなよ。イケメンに成れなかった連中のさ」

 

「…………?何を言ってるの?」

 

 彼女が言葉を言い終わる前に、イケメンに囲まれて近付けなかった……

 格好良く無いけど、ベアトリスちゃんの信者達が群雲の如くイケメン達に襲い掛かった!

 

「なっ!ならば貴様だけでもシネ!」

 

 作戦の失敗を悟ったのか、玉砕覚悟で突っ込んで来た男の娘に、正面からヤクザキックで応戦する。

 

「きゃ!痛い……」

 

 何処までも女性らしく倒れ込む。翻るスカートの中を見てしまった……

 

「なっ?ノーパンか!貴様!そのなりで立派なブツをぶら下げやがって。男の純情がズタズタだ!」

 

「なっ?ヴィットーリオ様にしか、見せた事が無いのに!この変態、痴漢、性犯罪者!」

 

 顔を真っ赤にしながら、暴言を吐いてベランダから飛び降りた。

 

「ちょ!待て、取り消せ!貴様の方が変態だろうが!おい、待てよ」

 

 手摺りに飛びかかる様にして身を乗り出し、飛び降りたヤツに叫ぶ!しかし時既に遅く、ヤツは飛竜を巧みに操り逃げて行った。

 

「飛竜、男の娘……アイツがジュリオ助祭枢機卿か。そして虚無の使い魔か。

直接、僕を殺しに来るとは流石だが……

男の娘か。恐ろしい相手だ。ヤツの逸物を見なければ、未だに女性より女性らしいと思ってしまう自分が怖い……」

 

 男の娘……流石は平成の世に、一大ブームを巻き起こしただけの事は有るね。

 アレはうぶな奥手貴族だと、太刀打ち出来ないだろう……それに、ただ暗殺に来ただけじゃないだろうな。

 お互い謀略系だし、必ず何かを仕込みに来た筈だ……

 

 この時期に直接手を出すのは、即開戦でも可笑しくないのに……

 

 何故、自分の腹心を直接送り込んだのかな?

 

 僕がロマリアの底力と教皇の分からない謀略に恐怖を覚えていた頃、ベアトリスちゃんもイケメンに群がりリンチを加える自身のファンに恐怖していた。

 

「みっ皆さん、もうその辺でお止めになっては?なっ何故、彼らの顔だけをビンタで痛めつけるのですか?」

 

 恐怖の余り、丁寧語だ!

 

「「「イケメンは悉く滅ぶべし!」」」

 

 ベアトリスファンクラブの結束は、更に固まった!

 




明日からは新章となりますが、修正が思ったより進まず1日1話掲載となります。

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