現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版) 作:Amber bird
新章第1話
謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第1話
ツアイツ・フォン・ハーナウ襲撃から、時間を少し遡る……
ロマリア連合皇国
始祖ブリミルの弟子が興した国、ブリミル教の総本山。
魔法至上主義のハルケギニアにおいて、唯一魔法が使えない者も神職になれれば権力の座につける国。
金で爵位を買える帝政ゲルマニアも有るが、成金・成り上がりと周りからは一段低く見られてしまう。
しかしブリミル教の神官達は違う。
彼らは、大貴族達からも気を使わなければならない程の権力を持つ。
それはトリステイン王国・アルビオン王国そしてガリア王国と始祖ブリミルの直系で有り、その血筋を引く王家や貴族達にも言える事だった……
しかし、近年その御威光に陰りが見え始めた。
たった1人の少年の溢れる情熱により、連綿と6000年も続いたブリミル至上主義が崩れ始めていた。
そう!
オッパイと言う、全ての漢達の永遠の夢と理想が詰まった双子山を声高々と唱え続けたオッパイ教祖……
ツアイツ・フォン・ハーナウにより、ハルケギニアは変わろうとしている。
それが、そこに住む人々に良いのか、悪いのかは別として……
◇◇◇◇◇◇
ロマリア連合皇国、宗教庁の一室。
教皇ヴィットーリォは若くしてブリミル教の最高位たる教皇になった人物。
歴代の教皇と違い清貧を心掛け、一般信者にも気さくに接する一面も有る。
歴代教皇達に比べれば、人気の有る人物だ。
しかし、男色を好み美少年達に女装させ侍らす性癖を持つツアイツとはベクトルの違う同等以上の変態だった!
自分の使い魔で有り、お気に入りのジュリオと質素な造りの執務室で向かい合っている……
因みにジュリオの姿はミニスカのゴスロリだ!
黒を基調とし、白のフリルを多様している。
胸元の赤いリボンがワンポイントで無い胸を引き立てている、暫し愛妾の姿を見詰めてから話し出す。
「ジュリオよ。ツアイツ・フォン・ハーナウだが……私は奴が虚無の使い手だと考えている」
唐突に語られる虚無の話……確かに自身も虚無の使い魔「神の右腕ヴィンダールヴ」で有り、仕えるヴィットーリォは虚無の使い手だ。
他国で虚無の使い手の存在は確認出来ていない。それが、あの男だと教皇は言う……
「ツアイツ・フォン・ハーナウ……
確かにハルケギニアでは普通ではないと思いますが。何故、ヴィットーリォ様は奴が虚無だと思うのでしょうか?」
確かに規格外の変態だが、虚無と思われる形跡が無い。もし虚無の使い手なら、通常の魔法は使えない。
しかし奴は、水と土の魔法を使う。
「言葉が足りなかったね。ジュリオよ……私は奴か、奴の周りの人物に虚無の使い手が居ると睨んでいる。証拠はコレだよ」
そう言って、執務机の引き出しから何かを取り出して置く。
「こっこれは……確かフィギュア、ですよね?古そうですし、少し傷んでいる様ですが……これが何でしょうか?」
最近急激に広まっている、漢の浪漫本関連のグッズ。その中でも女性を模した小さな人形……フィギュアの人気は凄い。
まさかヴィットーリォ様まで持っているとは!
しかも微妙に壊れて汚れている……まっまさか使用済みなんですか?
「奴が売り出しているフィギュアに似ている。いや、その物だ!しかしコレは場違いな工芸品として過去に回収され保管された物なんですよ。
他にも何体か有りますが、無傷な物は有りません。何故、奴はコレをコレに似た物を作り出せるのでしょうか?」
良かった……ヴィットーリォ様は人形プレイはしてないのですね?
確かに、言われてみればそっくりだ。しかし女性を模した像は普通に実在する。
主に美術品として……それが貴族の子女が好む様な人形サイズにした物がフィギュアだ。
「しかし……発想次第で誰でも作れる品物です。これが虚無と関係が有るとは思えません」
確証にはならないと思う。
「ふむ、確かにそうです。
しかし歴代の教皇は、この人形の様な場違いな工芸品を集めてきたのですよ。その中には、用途が分かった物も有る。
しかし、再現が不可な物も多い。これは違う文化圏の物が流れ着くからだと私は思うのです」
ヴィットーリォ様は、虚無の魔法「ワールドドア」で別の世界を見る事が出来る。
彼の見た世界で、奴の作る物が有ると言う事か……つまり奴もヴィットーリォ様と同じ魔法が使えて、それらを模倣している、と?
「……つまり、奴もヴィットーリォ様と同じ虚無の魔法を使えると?」
「または虚無の使い手に協力して貰っているかですね。
しかし……私ですら場違いの工芸品に書かれている文字は読めません。
フィギュア……過去に場違いの工芸品と同様に違う世界から来た者が居たらしいのです。
彼らと接触した記録は残されていますが、詳細が殆ど有りません。
ですが、場違いの工芸品を見せると彼らは使い方を知っていたらしく、幾つかの品物の用途は分かったらしいです。
主に銃と呼ばれている物ですね。そして、この人形を……フィギュアと呼んだらしいのです」
フィギュア……不思議な言葉だと思ったけど、そんな秘密が?
「まさか……ヴィットーリォ様は、奴がその異世界の人間だと?」
従来のハルケギニアでは考えられない異端児だ。他の世界の住人なら有り得る話ではないのか?
「いえ……私もそれを疑い密偵団に調べさせました。奴は間違い無くサムエル卿の息子なのです。
彼を取り上げ育てた乳母などにも確認しています。既に五歳の頃から、奴は天才だったと……
それに貴族が出自の分からない子供を養子になどしないでしょう。異世界の人間が魔法を使えるとも思えませんしね」
そう言って溜め息をつくと、椅子に深く座り直した。日頃の激務で疲れているだろう、目の下に隈が出来ている。
そんなヴィットーリォ様の為に、お茶を入れ替える。ゲルマニア産の紅茶だ。
そう言えば、コレもハーナウ家が絡んでいる商品だったかな。
奴は確かに多才だ。演劇・脚本・執筆・絵画の芸術面に優れているのに、その才能を性癖へと無駄に浪費している。確か魔法もスクエアクラスの筈だ。
先の反乱で一軍を相手に一人で戦いを挑み、それに勝利したらしい。なる程、確かに始祖ブリミルの血を引くからこそ魔法が使えるのだ……
他の世界の人間が、魔法を使えるなど無理か。
「それで虚無に目覚め他の世界を覗き、これらの知識を流用していると考えた訳ですね……奴の周りは曲者揃い。
しかし、魔法の使い手ばかりですから。いや、確かヴァリエール公爵の三女が魔法の才が乏しい筈です。
確かルイズ……しかし彼女と接触したのは、奴がヴァリエール公爵とツェルプストー辺境伯との仲を取り持った以降……
それでは時期的に合わない」
ツアイツの友好関係は多岐に渡るが、五歳の頃からと言えばゲルマニアの国内だけ……
しかしゲルマニア貴族には、始祖の血は流れていないか限りなく薄い。
「密偵団も大分数を減らされました……これ以上、奴に裂ける人材は居ないのです。最近雇ったらしい、ラウラと言う炎を操る者に悉く倒されています」
本来、ロマリアには直接武力は聖堂騎士団しか居ない。それも数は他国に比べても少ない。
ただ、異端審判をする権利を有するからこそ少数ながら他国にプレッシャーをかけられるのだ。
それが無ければ狂信者の集まりでしかなく、軍事的才能は低い連中だ。
奴はガリア王国とアルビオン王国の取り込みに成功した。
既に武力対抗は難しい。 ならば、やり方を変えるまでです。