現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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新章第3話

謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第3話

 

 

 

 ロマリアの教皇ヴィットーリオからの密書、開封するのに躊躇うが、覚悟を決めてハサミを入れる。

 丁寧に四つ折りにされた手紙を引き出す。

 

 それを時間を掛けて読んでいくマザリーニ枢機卿……三枚に渡る手紙を読み終えて、深い苦悩を伴った溜め息をつく。

 

 手紙の内容は……

 

 1つ目は、ヴァリエール公爵の三女が虚無の可能性を秘めているのでロマリアに差し出す事。

 

 2つ目は、ツアイツ・フォン・ハーナウに異端の疑い有り。

 帝政ゲルマニア・ガリア王国と続き、トリステイン王国も彼と深い関わりが有る。よってトリステイン王国としても、彼に異端審問を受ける様に要請する事。

 

 3つ目は、アルビオン王国にて発生したブリミル教をかたる者が起こした反乱によりブリミル教の威信と信仰心が低下している。

 これらを回復する為に、聖地奪還の為に聖戦を行う。派兵協力を要請する。

 

 4つ目以降は、寄付やトリステイン国内のブリミル教関連施設の補修要請等、何時ものタカリの内容だ。

 

 

 

 ヴァリエール公爵のご息女が虚無?証拠も何も無く言われても難しい。

 

 それは適当な理由を付けてロマリアに人質として差し出せ!そう言っているのか?

 

 ミス・ルイズは公式にガリア王国の次期王に嫁ぐ事が決まっている。

 それを差し出せとは……トリステイン王国とガリア王国との仲違いが狙いか?

 

 ハルケギニアの異端児、ツアイツ・フォン・ハーナウ……確かに彼の出現により、ブリミル教の地位は下降一直線だ。

 しかし、それは現在の腐敗神官達の利権が低下しているだけでブリミル教自体に影響は少ない。

 逆に虐げられ搾取され続けた敬虔な信者達を保護し、彼らの生活を安定させている。

 

 それを彼は自身もブリミル教徒故、同胞を助ける為に……そして敬虔なブリミル教徒は、彼をブリミルの再来と崇めている。

 確かに信仰を守り、安定した生活を与えてくれる彼は現人神だろう……嘗てのロマリアでは、絶対に有り得ない安息を与えたのだから。

 

 だからマズいのだ。

 

 今、彼を異端審問にかけても世論も各国のトップも認めない。それは現教皇の力が、弱っているのを知らしめる事になりかねない。

 

 教皇自身も承知だろう……

 

 つまり、これは私がどちら側に付くのかを問いてるのだ。

 下手をすれば、トリステイン王国はガリア・ゲルマニア・アルビオンの三国と敵対する。

 国内のヴァリエール公爵派閥も敵に回るだろう。

 ド・モンモランシ伯爵やグラモン元帥、魔法衛士隊も怪しいな。

 

 聖戦……

 

 これが教皇の一番の目的だろう。不和を纏めるのに、共通の敵を作る事は有効だ。

 それに戦争とは国力を激しく消費する。特にエルフは強大で、戦力比は10倍以上……ブリミル教の教皇が聖戦を唱え、参加を呼び掛けたら?

 

 当然、指揮は教皇が自ら執るだろう。

 

 つまり敵対する勢力のすり潰しが出来て、聖地奪還と言う目的が果たせる。

 教皇ヴィットーリオとしたら、最高の筋書き……しかし、連中が素直に従うとは思えない。

 

 何のメリットも無いからだ……

 

 私ですら、沢山の命を犠牲にして聖地を奪還する事に、意味が有るのか悩んでいる。聖職者として、無益な戦争を起こす事は反対だ!

 

「だが……私には、相談する相手が居ないのだ。マリアンヌ王妃もアンリエッタ姫も、この様な話をしたらどう動くか分からない。

ヴァリエール公爵達は、ミス・ルイズの件が有るので協力はしてくれないだろう……それも引き渡しの目的なのかもしれん。

後は……ワルド隊長の伝手で、ツアイツ・フォン・ハーナウと話し合う必要が有るだろう。

腹を割ってトリステイン王国の行く末を話すしか……」

 

 背に腹は変えられぬ。己の信仰と斜陽な国の行く末に苦悩しながら、彼は筆を取った……

 トリステイン王国の事を一番考えている人物が、一番味方が少ないと言う奇妙な体勢の国。

 

 彼の苦労は続く……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今やオッパイと言えばツアイツ!ツアイツと言えば巨乳!

 

 ハルケギニアでエロで成り上がった男は、珍しい人物からの手紙を前に悩んでいた。

 トリステイン王国の最後の良心と思っているマザリーニ枢機卿からの親書。

 ワルドズがゲルマニアに出奔した為に、マンティコア隊隊長ド・ゼッサール隊長経由で送られてきた手紙……

 

 ド・ゼッサール隊長の添え書きには

 

「ツアイツ殿、マザリーニ枢機卿は鳥の骨から鶏ガラになるまで悩み抜いて相談に来ました。どうか話を聞いてあげて下さい。彼は死にそうですから……」

 

 と、同情に溢れた内容だった。

 

 1人切りの執務室で親書を開封する。ヤバそうなら皆に知らせずに処理するつもりだ……

 

 五枚からなる手紙をじっくりと読む……聖職者だからか、元々が几帳面だからか。

 丁寧な細かい字でビッシリと書いてある文字を目で追う……苦悩に満ちた男の願いが書かれていた。

 この内容で僕に親書を送ってきた事を考えれば、彼は心情的には反教皇なのだろう……

 しかし壊れかけのトリステイン王国と、自身の信仰心に苛まれているのか。

 

 深い溜め息をついて頭を抱える……今更な異端審問認定。別に怖くもない。だから?そう突っぱねるのも可能だろう。

 

 しかし……

 

 原作でもルイズやタバサを騙したアレ。大隆起を何とかするには、聖地に有る装置が必要だ!

 しかし、聖地に装置なんて物は無い!そんな物が、有る訳ないんだよな。

 

 聖地……エルフ……

 

 確かジョゼフ王は、エルフと繋がりが有った筈だ。ビダーシャルだっけ?この世界じゃどうなのかな?

 出来ればエルフ達と敵対するつもりは無い。全く無い。

 

 しかしロマリアが、教皇が先走ってエルフと事を構えハルケギニア全土を巻き込む事もあり得る……

 あのホモ野郎には、打てる手立てが少ないからな。

 

「しかし……トリステイン王国の扱いか……義父上からは、暫くきな臭くなるけど不干渉でいてくれって言われてるんだよね……

アンリエッタ姫の扱いだけど、義父上はクーデターを起こすのかな。ヴァリエール王朝なら簡単に出来そうなんだよね」

 

 人外でバグキャラなカリーヌ様なら、大抵の障害を強引に破砕しながら進めるからな……

 一度ジョゼフ王とエルフについて話をしてから、トリステイン王国に行こう。

 マザリーニ枢機卿の思い通りにはならないかもしれないが、アンリエッタ姫は避けて通れぬ難問になってしまった。

 

「最初はウェールズ皇太子に押し付ける予定だったのに、まさか僕迄狙うとは……さて、どうするかな」

 

 出来れば彼女にも幸せになって欲しい。今の状況のアンリエッタ姫は、僕の幸せの踏み台にした感も有るから……

 


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