現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版) 作:Amber bird
謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第8話
伝説の剣デルフリンガー……
しかし僕は、そのブリミル時代から6000年の時を重ねたインテリジェンスソードを只のインテリジェンス(エロ)ソードにしてしまった。
「ツアイツ……そんなに大切な剣なのに……何故、我が家に置きっぱなしなのでしょうか?
何なら今、持って来させますよ。本当に始祖の時代の剣なのか、聞いてみましょう。
それで貴方の気が済むのなら……アナタ、あのエロ駄剣を……」
カリーヌ様に言われて、ヴァリエール公爵が部屋を出て行った。カリーヌ様は僕をソファーに座らせると、新しい紅茶を淹れてくれた。
本当に初めて見る様な慈母の微笑みで……完全に僕が疲れて、妄想に取り憑かれたと思っていませんか?
暫くして、ヴァリエール公爵がデルフリンガーを片手に戻って来た。
「あっ兄さん久し振りっす!ヒデーっすよ。毎回忘れて行くなんて!知ってますかい?インテリジェンスソードは寂しいと死んじゃうんですぜ!」
久し振りに有ったデルフリンガーは、何とも情けない台詞を吐いてくれました。ヴァリエール公爵から、デルフを受け取る。
「デルフ……ゴメン、置き去りにして。君の本当の素晴らしさをヴァリエール夫妻にも見て欲しいんだ。久し振りに、心の震えを感じて欲しい」
そう言って、中段に構え妄想を解放する。
「兄さん、いきなりですかい?ウッヒョー!キッキター!久し振りな、この妄想がっキター!ビバ・オッパーイ」
アレな台詞を吐きながら、デルフが本来の剣の姿に戻る。神々しく輝く、本来のガンダールヴの相棒。
インテリジェンスソード、デルフリンガーだ。輝く刀身をヴァリエール夫妻に向ける。
「どうですか?これが、デルフリンガーの真の姿です」
パチパチと拍手をしてくれる、ヴァリエール夫妻。
「なる程、確かに只のインテリジェンスソードでは無いですね。膨大な魔力を感じます」
「そうだな。ガリアの次期王となるツアイツには、お似合いの剣だな……」
やっと認めて貰えた……
「「オッパイ最大教祖が持つに相応しい、オッパイソードだな(ですね)」」
「そうっす!アッシと兄さんは、心の震えで繋がっている一心同体・一蓮托生・呉越同舟な関係っす!もう置いてかないで欲しいっす」
心に広がる、何とも言えない敗北感……駄目だ、ダメダメだ。全く威厳も何も無い……確かに僕の分身としか思えないオッパイ至上主義者だ。
僕はデルフを鞘にしまい、両手を大地につけて慟哭した。
「本当なんですよ。デルフはお姉ちゃんが虚無の使い魔だと見抜き、ルイズが虚無の使い手で有る可能性を教えてくれたんです。
ルイズが水の指輪を嵌めて、始祖の祈祷書を開けば、虚無に覚醒しますから……」
かなり重大な秘密を暴露したのですが、ヴァリエール夫妻は
「今日はもう遅いですから……久々の里帰りで疲れたのでしょう。明日、カトレアやエレオノールが来ますから、ゆっくり皆で話しましょう」
そう言って、デルフと僕を私室に送ってくれた……
「おでれーた、おでれーた!
兄さん、何を凹んでいるんですかい?あの娘っ子が、虚無に目覚める方法を知ってるなんて!
今、思い出しましたぜ!確かに指輪と祈祷書ですぜ。アレ?兄さん、泣いてるんですかい?」
ヴァリエール夫妻にアレな人と思われたのが、想像以上にショックだったみたいです……涙が止まりません!
◇◇◇◇◇◇
ヴァリエール夫妻の寝室……
仄かに照らす魔法の灯り。夫婦用のキングサイズのベッドに腰掛けながら、髪を梳く夫人を見る。
「さっきの話だがな……あのボロエロ剣がブリミル時代の物だとはな」
夫に背を向けて髪を梳く手を止めずに答える。
「なる程、確かに伝説の武具を手に入れ、あの女……シェフィールドを籠絡しただけの事は有りますね。何時も何時も、想像の斜め上を行くのですから」
髪を梳く手を止めて夫に向き合う。
「でも、あの駄剣がブリミル時代の物とは秘密ですね……
あの子は、この世界に愛されています。伝説の武具すら、彼を慕っているのですから。これが周りに知られたら……
大変な事になります。何と言っても始祖に連なる品物です。周りが黙ってはいないでしょう」
そう言いながら、ベッドに近付いて行く。さり気なく体をずらして、並んで座れるスペースを空けるヴァリエール公爵……
「我が娘が虚無の使い手……前なら喜んだだろう。でも今は違うな。
知らない内に、ツアイツを中心とした新しい国造りを望んでいるからな。虚無など厄介事でしかない。
全く、マリアンヌ様とアンリエッタ姫の事を……何とかするつもりだったのに、厄介事は此方の予定など関係無く来るな」
「そうですね。国と民の為に、それに私達の為にもトリステイン王国を変える予定でしたのに……
計画を変えなければなりません。また一波乱有りますね。マダマダ孫を抱けないとは、全くルイズは何をしているのやら……」
ブツブツと言いながら、ベッドに並んで横になる……
「明日になれば、カトレアとエレオノールが来るだろう。丁度良いからな。娘達を交えて、ヴァリエール家の将来を考えようではないか!」
「ふふふふ……そうですね。全く2人共、彼に興味深々ですから。暫く鬱いでいましたが、彼に会えばエレオノールも元気になるでしょう」
デレオノールは健在。
天然お姉さんも健在。
ロマリアなど、ヴァリエール夫妻にとっては、どうでも良い些細な事だった。ルイズが虚無で無くても構わない。
伝説の剣が、駄剣でも問題無い。彼女は既に幸せを掴んでいるのだ。それを邪魔するなら、考えが有るだけだ……
「まさか娘全員を盗られるとは、な……それが悔しくないのが不思議だ。ド・モンモランシ伯爵など、今でも子離れ出来ぬと言うに……」
「私達は、男の子を授かれなかったわ。でも、鍛えがいが有って、優しくて有能でオッパイ・オッパイ言ってる変な子なのに、不思議と嫌いになれない。
幼い頃から、既に息子として認めていたのですね。あの子は、ツアイツは私達の大切な息子です」
「くっくっく……最初の頃は、目の敵みたいにシゴいていたのにな。エレオノールもな。
不思議な子だな……ツアイツがブリミルの生まれ変わりと言われても、信じてしまいそうだよ。
あの子は、ハルケギニアを統一するよ。そして皆が幸せになれる世界を造るだろう……」
パチンと指を鳴らして、魔法の灯りを消す。今夜は気持ち良く寝れそうだ……
◇◇◇◇◇◇
翌朝………
まだ朝の早いメイドさん達も起きない様な時間。デルフリンガーの件で、枕を濡らして寝ていたツアイツを起こすメイドさんが居た。
「ツアイツ君、ツアイツ君起きて下さい。もう朝ですわ。ほら双子の月が綺麗ですよ」
月が出ているなら、まだ夜中です!ユサユサと体を揺すりながら声を掛ける。
「うーん、あと五分、いや五時間……」
ベタな台詞を言って寝返りをうつ。
「はいはい。もう五年経ちましたわ。早く起きないと添い寝しますよ?
良いのですか?そうですか……では、ツアイツ君おやすみなさい」
何故かメイド服を着たカトレアが、ツアイツの寝ているベッドに潜り込んだ。それを机に立てかけられたデルフは見ていた。
「兄さん。その娘っ子は中々のオッパイですぜ!流石は兄さん。そこに痺れる、憧れるー!」
やはり役立たずな駄剣だった。