SAOが面白くて書きました。
語彙力は本を読んで書いていけば上がるってばっちゃが言ってた。
まあ程々に楽しんで下さい。
ではどうぞ
《チュートリアル》
悲鳴が、怒声が、広場に響きわたる。
空の特異な紅さは閉じ去り、夕やけ本来の橙が僕らを見下ろす。
この場に居る人の内どれほどの人が今起きた現実を受け入れられただろうか。
茅場晶彦と名乗った謎のローブ姿の巨躯が告げた《チュートリアルの終了》は僕らにこの世界で生きることを強要した。一回の死も許されず、この世界の怪物相手に百層まで上り詰めろと。それは広場に集められた約一万人のプレイヤーを絶望させるには十二分だった。
二千二十二年十一月六日。
こうして、〈ソードアート・オンライン〉はデスゲームとなった。
~~~~~~~~~~
冴える青空と腰下まで丈のある草原が組み交わされたフィールドで、少年は一人この世界で生きようとしていた。
敵エネミー――イノシシの姿をした――が少年に突進してくる。
少年は慌てず短剣を逆手持ちにしてシステムに定められた構えをとって、剣が光り輝くのを待つ。短剣が淡い水色に輝きだすのを確認すると、突進を紙一重で左に躱し、システムに身体を委ねて敵エネミーの右眼を斬り裂いた。
「発動前でも結構動けるんだな」
片眼を失った敵エネミーは左右に大きく揺れ動いてから側方に横転した。
「細かい部位の欠損もできると」
少年はぶつぶつと独り言を言いながら四肢を忙しなく動かしてもがいているイノシシの背側に移動し、先程と同じ構えをしてから剣を振り抜いた。
イノシシの首に命中した剣撃はイノシシの上に浮かぶゲージの色を急速に減らし、ゲージが無くなった途端にイノシシは幾何学模様のポリゴン片と化して消滅した。
「命中部位によって威力は幾らか増減するのか」
少年は満足そうに頷きながら次の獲物を探す。
少年の名前はソル。もちろん本名ではなくプレイヤーネームだ。ウルフカットの赤茶色の髪、目は切れがあって知的な印象を受け、長い睫毛と暗褐色の瞳は女性のような美しさを感じる。顔は整っており、美人な男性ともカッコイイ女性ともとれる容姿は街を歩けば人目を引くだろう。
彼は不幸にもこのデスゲームに参加せざるを得なかったプレイヤーの一人だ。昨日告げられた《チュートリアルの終了》によって死と隣り合わせの世界に閉じ込められ、楽しみにしていたVRMMOが鉄の城の監獄になるなんて予想していなかった。
「立ち直るのに一晩を費やしてしまった」
ソルが実証するようにイノシシを狩っているのには理由がある。この世界、《ソードアート・オンライン》は一般に──1万本と限られた数だが販売されたゲームだ。サービスを開始するに当たってベータテストも当然行われたが高すぎる倍率故に落選、後に本ソフトを運良く手にすることができると事前情報無しでやってやると情報収集を怠ったことが原因だ。
何事にも言えることだが、情報は優劣をつける決定的な要因になりやすい。既知と無知の間には絶対の壁が有る。この世界がデスゲームとなったからには少しの油断も怠惰も許されない。知らなかったから死んだでは遅いのだ。
「朝早くから出て正解だったな」
周囲を見渡す。広大な草原が広がるだけで人影は見当たらない。もしかしたら居るのかもしれないが、フィールドの広さが認識できない程の間隔を生み出しているのだろう。
「これからどうしよう」
手の中にある短剣を眺める。絶望から立ち直ることは出来たが、一晩という短い時間では明確な方針を決められなかった。力を付けたら細々と生きながらえることも出来るだろう……だが。
「……進むしかないか」
自分が百層まで攻略できるとは思っていない。それでも、ここで足を止めてはいけない、そんな気がする。僕は見つけられるのだろうか。
ソルは次の狩り場に向けて足を進めた。
~~~~~~~~~~
あれから一ヶ月が経った。ベータテストの時と違い、僕らプレイヤーは未だに一層を攻略できずにいるが、これは仕方のないことだと捉えられる。誰が好き好んで死地へと突撃できるだろうか、いや出来ない。ゲームの中からは確認しようが無いが、ゲームオーバーは本物の死だ。死にたくないのは当然だろう。
しかし、攻略してないからと言って死者が出ない訳ではない。誰が調べたかは知らないが既に2千人死んでいるらしい。ここで何か動きがないとプレイヤーは無意味に減少し続けるだろう。
それに、百層全てを攻略したら現実に帰れるらしいので、攻略は人々の希望となるだろう。茅場晶彦はこの状況を作った時点で目的を達したと言っていた。ならば何処かで状況の変化を楽しんでいることだろう。……見つけたらボコそう。
僕は《トールバーナ》の広場で行われる攻略会議に来ている。自分はこの場にいる人達より効率的にレベリングなんかを出来たかと聞かれるとNOだが、一ヶ月もあれば時間がその差を埋めてくれる。最近知ったことだが、外に出て剣を振っている人の割合は案外少ないらしい。……不味い、所持している情報がうやむやすぎる。後で信頼できる情報屋を探しておこうかな。
「今日は俺の呼び掛けに集まってくれてありがとう! 俺の名前はディアベル。職業は気分的にナイトやってます!」
ディアベルと名乗った男が仕切って集まった者たちに演説を始める。違和感のある誠実そうな輩だ。だが、今はそんなリーダーシップが求められているのだろう。
そして恐れていたことが……
「それではパーティを組んでもらう」
来てしまった。ここでソロの弊害が。どうしよ、連携とか練習したこと無いんだけど。そもそも入れてもらえるかな?
入れてくれそうなパーティを探していると、離れた場所で二人組のパーティを見つけた。二人なら入れてもらえるだろうと話しかける。
「すみません」
「あ、はい」
話かけたのは中性的な顔の黒髪黒目の少年、見た感じ同い歳だろうか。その後ろにはフードを被った女性プレイヤー。顔はよく見えないが、綺麗な姿勢、歩き方から教養はかなり高いと見る。
「二人はパーティですか? 出来れば僕も入れて欲しいんですけど」
「え? あー……」
「私は大丈夫」
チラリとフードのプレイヤーを見やる。男女のペアパーティに混ざるのは慎重にしなくてはならない。もし仮に二人が良い感じの関係だった場合気まずくなるのが確定しているからだ。だが、見たところそんな雰囲気は無い。これならば大丈夫だろう。
「そうか、俺はキリト。よろしくな」
「……よろしく」
キリトに……アスナ、か。二人共言葉が自信に満ちていることからプレイヤースキルは高いのだろう。これはいい所に入れたかな?
「あ、僕の名前はソル。今までソロだったからパーティの連携とか諸々教えてくれると助かる」
このまま会議は順調に進む……と思われたが。
「ちょお待ってんか!」
何とも奇抜なトゲトゲ頭の男が突然割って入ってきた。てか髪型もっとどうにかならなかったのか?
「ワイはキバオウってもんや。仲間ごっこをする前に、この中にワビ入れやなアカン奴がおるやろ!」
「詫び?」
ディアベルはキバオウに問う。かくいう僕も何のこと言ってんのか検討もつかない。
「ベータテスターや! ベータテスター! アイツらは美味い狩り場やクエストやらを独占してビギナーを見捨てた! せやからワビとして溜め込んだコルやらアイテムやら吐き出して、死んでもうた2千人に土下座でもしてもらおうやないかい!」
うーん、この。本当に意味が分からない。ここまで日本語を理解出来ないのは初めてかもしれない。それに、ここに来て集団を分断させるような真似は悪手にも程がある。冗談はその髪型だけにして欲しいものだ。仕方がない、空気が呑まれてしまう前に手を打つしかないか。
「はい、少しいいかな?」
「君は?」
ディアベルが反応してくれた。無視されなくて良かった。横のキリトたちが驚いてる、注目を集めてしまったのは申し訳ない。
「僕はソルです。えーっと、キバオウさん……でしたっけ?」
「な、なんや」
「さっきから何を言ってるんですか?」
「ベータテスターの卑怯者たちは謝るべきや言うてんねん」
「何故です?」
「は?」
キバオウが間抜けな顔をしている。まじ何だこいつ。とにかく自説を唱えるしかない。
「何故ベータテスターが謝らないといけないんです? この世界がデスゲームであることを忘れたんですか?」
「で、デスゲームやからや! デスゲームやからこそ助け合って……」
「じゃあ先ずあなたが皆に手持ちのコルやらアイテムやらを出すのが礼儀では?」
「なんやと!」
「だってそうでしょう? 持ってる者が持たざる者に与えよと、あなたは仰っているのはそういうことですよね? 与えた物が有れば自身の身を守れたかもしれない、そんな状況を作りたいんですか? 死んだ人は自己責任です。ここはデスゲームですから」
「ぐ、ベータテスターは情報を独占してたんや! その分を……」
「オレも発言いいか?」
手を挙げたのは筋肉モリモリマッチョマンの男だ。肌は褐色でスキンヘッド、体格もあって凄いイカつい。
「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、見捨てた云々はともかく情報はあったんだぞ。あんたも始まりの街でこのガイドブックを貰ったはずだ」
(何それ知らないんだけど!)
「これを作ったのはベータテスターで、少なくとも情報に関してはビギナーたちにも共有されているはずだ。それでもまだベータテスターに死んでしまった人の責任を擦り付けようってのか?」
「…………」
キバオウは正論――僕が知らなかった情報により完全に撃沈した。
暫くして会議が終わり、各自攻略前の準備に取り掛かる。僕もさっさと寝ておこうと宿に向かおうとした時、キリトが話しかけてきた。
「ソル、さっきの大丈夫か?」
「さっきの?」
「ベータテスターのこと庇ってただろ」
「庇ったつもりはないよ。ただ、あの人の発言にイライラしただけさ」
「そうか、ありがとな」
「何故感謝したかは聞かないでおくよ」
「あっ」
「あはは、そう身構えないでよ」
どうやらこのキリトくんは抜けてる所があるらしい。この世界で人と会話するのは初めてだ。でも、歳が近いのもあって話やすい。……死んで欲しくないな。
これが、僕とキリトたちとの出会いだった。
あの日のことは忘れられない。キリトのお陰で、僕はこれからこの世界で
こんな感じで進んでいきます。
お口に合った人はお気に入りや評価や感想お願いします(強欲)。
ではまた!
■■ ■
死にたいのではない、生きたくないのだ。
咎人は生を享受する、生きているはずだ。
約諾をさせて欲しい、生きていたいから。