今回は前回と似た感じです。
スぅーっといっちゃってください。
ではどうぞ
母さんは元医療従事者だった。小さい頃に怪我をした所を、通りすがりの人が手当てしてくれた事でその道を目指した。
父さんとの出会いは深夜。酔っ払いの男に囲まれていたのを父さんに助けてもらったそうだ。当時の父さんの気迫と誠実な姿に一目惚れし、粘り強くアタックしたことで結ばれた。
結婚したことで仕事は家内で出来るものに転職したものの、それに不満を漏らす所は見たことがなかった。
母さんは隙あらば父さんの惚気話を話す。僕と妹はまたか、と思うことはあれど、話を聞くのが嫌だと思ったことは無かった。嬉しそうに、幸せそうに語る母さんをどうして止められようか。
父さんが死んで、母さんは数カ月上の空だった。母さんは転職して外に働きに行くことになり、家事は僕がほとんど
「おかえり」
「…………」
今日も夜遅くまで働いてくれた母さんが帰ってきた。目はいつまでも死んだまま。光の無い瞳には僕も妹も映らない。
「お風呂入ってるよ」
母さんはご飯の前にお風呂に入る。だからこの日も風呂に入るよう勧めた。
母さんが風呂に入って一時間が経った。気になった僕は脱衣所から声をかける。
「母さん? ご飯冷めるよ」
返事は無い。中には誰も居ないかのように静まっている。
「……母さん?」
嫌な予感がした。風呂場に入るのを本能が躊躇っている。でも、見なくちゃいけない、気付かなくちゃいけない。
「開けるよ?」
スライド式のドアを開けて中を見る。母さんは浴槽に浸かって眠っているようだ。嫌な予感は確信に変わり、僕は恐る恐る彼女の首の脈を確認した。
お湯に浸かっているはずの体は、凍りつく程に冷たかった。
医者が言うには、過労だった。近年では珍しくないケースらしく、母さんもそれに当たった。
葬式の作法も覚えてしまった。妹は塞ぎ込んでしまい、1ヶ月は部屋に閉じこもった。
涙はまた出なかった。
母さんは他人に無関心な僕をよく注意してくれた。
「人間ってのは一人じゃ生きられないの。だからみんな誰かとの繋がりを大事にしたり、誰かとの繋がりを欲したりするの」
慈愛の眼差しで母さんは語る。
「どうしたらいいの?」
幼い自分は聴いた。
「想いやりの心を持ちなさい。生きていく中で、わざとらしくとも不器用であっても、誰かを想いやって生きていくの。そしたら、あなたは本当の繋がりを得ることが出来るわ」
優しく僕の髪を撫でる母さんの声は、とても安らかだった。
母さんは語ってくれた、他人を想いやって生きなさいと。
母さんの”色”は鮮やかな暖色のグラデーションだった。
第二目
想イノ心ヲ持チテ生キヨ