君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

14 / 55
ども、素人投稿者です。

気分なので早めの投稿です。
気持ち長めです。平均よりは全然短いけど。


ではどうぞ


《■■》

 

 

 

 

 父さんと母さんが死んで、僕と妹は親戚に引き取られることになった。

 でも、親戚は妹――星奈だけを引き取ろうとした。

 

 星奈は賢かった。テストは常に満点を取り、一度見た物は忘れない。俗に言う天才だった。言語書を渡せば使える言語が1つ増え、数学書を渡せばどんな難問も一手間に解いた。星奈は有名で、みんな星奈を欲しがった。

 一方、僕は学力は平均より高いが全国一では無い。物忘れはよくするしテストで凡ミスもする。そこだけ見たら普通の人間だ。

 

 親戚が星奈を囲む中、父さんの弟――叔父さんが僕に話しかけた。

 

「妹と離れ離れは嫌かい?」

「嫌だよ。あそこの人達は酷く汚い」

 

 星奈の周りの人には”色”が濃く見える。汚物でももっとマシな”色”をしているほど濁っている。

 

「叔父さんが僕と星奈を引き取ってよ」

 

 だが叔父だけは違った。彼に見えたのは霧状の薄水色。彼だけは濁りが見えなかった。

 

「……ああ、わかった」

 

 僕は妹を連れて、叔父さんの家に転がり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──神は居ない。

 この時僕は確認した。

 

 血を吐いて倒れる星奈。

 

「星奈っ!」

 

 慌てて駆け寄る。意識はまだあるようで、掠れた声で僕に謝った。

 

「ごめんなさい……(にい)

「喋るな!」

 

 星奈を黙らせ、回復体位にして救急車を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星奈は大丈夫なんですか!?」

 

 医師に問い詰めると、苦虫を噛み潰したような顔をされる。

 

「星奈さんですが…………癌です」

「……え?」

 

 医師が言うには、星奈はもう末期がん――ステージ4まで進んでしまっていて、今から出来るのは精々が延命だと。

 

「…………」

 

 星奈は元々身体が弱かった。風邪もよく悪化させていたし、日頃からどこかしら怪我をしていた。でもまさか、まさかこんなことになるなんて。

 

「……それは…………確定なんですか?」

「え?」

「せめてっ! せめて成人するまでは生きられないんですか!?」

 

 噛み付くように医師の胸倉を掴む。

 

「……わかりません。ですが、可能性はゼロではないでしょう」

 

 それは蜘蛛の糸に縋るようなものだ。でも、その糸はとても輝いて見えた。

 

 

 

 

 

(にい)?」

「何?」

「アタシ…………」

 

 病室の床に伏す星奈を抱き締める。

 

「僕は何処にも行かないよ」

 

 優しく、強く、抱き締める。星奈が此処に居ることを確かめるように。

 

「ずっと……此処にいるよ」

 

 この日から、僕は時間の許す限り星奈の傍に居た。

 

 

 

(にい)、学校は?」

「……クラスメイトと喧嘩しちゃってさ、今は学校に行きづらいから此処に居させてくれないかい?」

「そういうことなら……」

 

 勿論嘘偽りだ。

 学校には事情を話して暫く休むと伝えてある。勉学なんて何時でも出来る。なんなら星奈と一緒にしている。

 

「次は何がいい?」

「えーと……、海洋生物の本がいい!」

 

 星奈は知識に貪欲だ。様々な分野に興味を持って、それをものにしていっている。……将来はきっと名のある学者になるだろう。

 

「わかった。明日持ってくるね」

 

 その明日が有ることを、僕は毎日願い乞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、星奈がまた吐血した。

 

「星奈!」

 

 白いベッドを赤く染める血。創られた紅白は綺麗な水玉模様。

 彼女は限界をとうに越えていた。

 

「星奈……」

 

 光が薄れ消える瞳。

 彼女は微笑んだ。

 

(にい)、傍に居てくれて、一緒に過ごしてくれて、…………最期まで、アタシを独りにしないでくれて」

 

 彼女は解っていた、自身の命は長くないと。

 

「ありがとう。凄い、凄く嬉しかった。楽しかった。心地よかった」

 

 ゆっくりと、緩やかに言葉を紡ぐ。

 ()()()()彼女は生きている。

 

「僕は……」

(にい)はアタシの為に色々頑張ってくれたよね。だから今度は、お嫁さんに優しくしてあげてね。(にい)はカッコイイ、アタシの自慢のお兄ちゃんだから」

「僕……は……」

 

 喉が詰まって声が出ない。

 遠くから慌てた足音が聞こえてくる。

 

(にい)のお嫁さん……見たかったなぁ。きっと綺麗で、素敵な人だよ」

 

 彼女の”色”が消えていく。

 

 

 

「アタシの為に()ってくれて……ありがとう」

 

 最期に見た彼女の”色”は、星のように眩しかった。

 目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星奈の葬式、あれから僕は”色”が見えなくなっていた。

 

「惜しい子を亡くした……」

「優秀だったのに残念ね……」

 

 誰かの声が聞こえる。いや、声だけじゃない、()()が僕の中に入り込んでくる。

 

「なんであの子が残るのかしら……」

「こんなの呪いでは……」

「やだ、忌み子だわ……」

「失敗作だけが生き残ったか……」

 

「あの子が変わりに死ねばよかったのに……」

 

 僕に入り込んできた()()で壊れる。狂わされる、染められる。

 

「うぁ……なぁ……んな……」

 

 ()()は僕に入った()()

 自我の侵色。

 染められた。呪い。

 価血(かち)遺思(いし)基憶(きおく)受要(じゅよう)欽忌(きんき)

 

 

 

 

 生き()ができない。

 

 

 

 これが、陽月(ひづき) (そう)の罪です。

 僕は咎人でした。

 なんとも愚かで、救いようがないのでしょう。笑

 

 

 

 

 

 

 

 

第終目

誰ガ為二成ル──

 

 

 

助けて、キ■■

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。