少し雑めですが、フェアリーダンスを終わらせます。
(?)はそういうことですね。
次編から本番みたいなもんですからお楽しみに。
ではどうぞ
気が付くと、僕は知らない処に来ていた。
見える人は金髪、黒髪、茶髪の三人だ。
「コイツはねぇ、試作だよ。魂を操る神の御業の試作、その一号さ! コイツは凄かったよ。ちょーと悪夢を見せたらすーぐボロボロになっちゃって、操るのに苦労しなかったよ」
「ソル!?」
「ソル君!?」
金髪が何か言っているが、聴覚が効かないのか何も分からない。夢見心地に近い感覚を覚える。
「さぁ! シムラクルム、そこの黒い奴を排除しろ!」
身体が勝手に動く。腰の剣を抜き、黒髪に向けて構える。
「ソル! しっかりしろソル!!」
黒髪が何か言ってる。泡沫の意識の外で反響する声は、理解するには音の輪郭がぼやけ過ぎている。
「忘れたのか! アインクラッドで過ごした日々を!!!」
「……キ、リト?」
アインクラッド……、何故かその単語だけがハッキリと聞き取れた。
次第に鮮明になる意識。構えを解く。
「おい! お前! また家族が死ぬ夢を見たいのか! お前が殺すんだ、お前が、家族を殺すんだよ!」
「─っ! ああああああああぁぁぁ!!」
金髪が喚いた瞬間、激しい頭痛に襲われる。あまりの痛みに膝を着き、両手で頭を抱える。
「ソル! おいソル!」
「ハハハハハ! ほらほらぁ! さっさとそいつを排除しろぉ!」
黒く染まる思考に従って、剣を再度とる。
縮地のように一瞬で距離を詰めて剣を振る。
「くっ!」
初撃は防がれたが、左右に揺さぶりをかけて連撃を続ける。
「ソル! 聞こえるかソル!」
「……」
唯、只、剣を振るフ。
黒いのは防ぎきれずに身体を刻まれ始める。
「……」
「なっ!」
黒が体勢を崩した。トドメを入れる為振りかぶる。
「っはあああぁぁ!」
剣を手放した黒が僕の両手を掴んで、僕は押し倒される。
彼の瞳は黄金に輝いて、垂れ落ちた雫が兜の隙間に入り込んできた。
「忘れないでくれ……お前は、ソルは、俺の大切な相棒だろ? お願いだ」
「……システムログインIDヒースクリフ」
「な、なんだそのIDは!」
「システムコマンド、管理者権限を変更。IDオベイロンをレベル1に。IDソルのシャッカルスをデリート」
彼の黄金が入り込んでくる。
嫌な気はしない。ボロボロに壊れた僕の罅隙を埋め治す黄金。割れ離れた思い出が繋がっていく。
「……キリト」
「ソル……」
「助けてくれて……ありがとう」
「当たり前だ」
今の僕は泣いていると思う。
また生きて、彼に逢えるなんて。このひび割れた僕に、これ程の思いを注いでくれるなんて。
「な! 僕より高位のIDだと! ありえない、僕は支配者ぁ、創造者だぞ、この世界の王、神!」
「そうじゃないだろ。お前は盗んだんだ、世界を、そこの住人を。盗み出した玉座の上で、独り踊っていた泥棒の王だ」
「こ、この餓鬼ぃ。僕に……この僕に向かってぇ……。システムコマンド! オブジェクトID、エクスキャリバーをジェネレート!!」
虚空に手を出して叫ぶ金髪の男。
しかし何も起こらなかった。
「言うこと聞けぇ! このポンコツが!」
キリトが僕を離して立ち上がる。
「もう少し待っていてくれ、すぐ終わらせる」
キリトはかなり酷い姿にされているアスナに言うと、コマンドを唱えた。
アスナに気付いた僕は、立ち上がってアスナを拘束していた手鎖を切り離した。
「システムコマンド、ペインアブソーバーをレベル0に」
「いいのか?」
「ああ、大丈夫だ」
痛覚を押さえる働きを持つペインアブソーバーを切ったキリト。これで現実と同じ痛みを感じることになる。
「じゃあ僕にやらせてくれ」
「……わかった」
「システムコネクト、IDヒースクリフの権能を使用。オブジェクトIDエクスキャリバーをジェネレート」
システムコマンドを唱えて先程奴が欲しがっていた剣を顕現させる。
剣を奴の足下に放り投げる。
「やろうか、神(笑)」
「こ、このクソガキぃ!」
奴が剣を拾った瞬間、剣を持ってない方の手が落ちた。
「ヒギィアアア! 手が! 手が!」
五月蝿いから足先を斬る。
「うぁ!」
情けなく倒れる。なので不必要な脚を斬る。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「……やらないのならいいや」
飽きたからもうバラバラに斬り捨てる。
汚い断末魔を響かせて、金髪の敵は消えた。
金髪が消えるのを確認したキリトとアスナが安堵するのを感じる。
幾許かの会話を交わした後、キリトが管理者ウインドウでアスナをログアウトさせた。
「終わったか?」
「ああ」
向き合う二人、交差する視線は積み上げられた信頼が結んでいる。
「どうやら終わったようだね」
突如として現れた人影に咄嗟に剣を構える。
「大丈夫だソル」
キリトに諌められて剣を納める。
その人影はよく見ると、僕にも知る人物だった。
「茅場晶彦?」
「私は茅場晶彦という意識のエコー。残像だ」
エコー……、成程、目の前の者は茅場本人ではなく彼の残滓。恐らくはナーヴギアを使った電子投影といった感じだろう。
茅場は手を開くと、光の粒が照らした。
「それは?」
「これは世界の種子《ザ・シード》だ。芽吹けばどういうものかわかる。その後の判断は君たちに託そう。消去し、忘れるも良し。しかし、もし君たちがあの世界に憎しみ以外の感情を残しているのなら……」
光の種はキリトに託されると、収束されてキリトの中に取り込まれた。
「では私は行くよ。いつかまた逢おう。キリトくん、ソルくん」
することだけやって、茅場は瞬きの間に消えてしまった。まるで居たことなんて無かったかのように。
全てが終わった。
これで、僕らのデスゲームは終わったんだ。
「キリト。アスナが待ってるんだろ? 早く行ってやれ」
「いや……まずお前からだ」
「僕?」
そう言うと、キリトは管理者ウインドウを出した。
「お前もログアウトさせる。……向こうでも、すぐに逢いに行くからな」
「ああ、そうか、……ありがとう」
「では改めて自己紹介を。僕は陽月 湊」
「俺は桐ヶ谷 和人。必ず逢いに行くから……待っててくれ」
「ふふ、何時までも待ってるから焦らず来いよ」
「ああ、……またな」
「うん、またね。キリト……」
何度目か分からない意識の途絶で、僕はこの世界との別れを告げた。