君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

今回からファントム・バレットです。
言ってませんでしたが、シノンがヒロインです。
え? カプタグがない?
……なんででしょう?(すっとぼけ)


ではどうぞ


ファントム・バレット
《死銃》


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、話はなんですか?」

 

 和人と僕は目の前の男――菊岡誠二郎の呼び出しで銀座の喫茶店に来ている。カフェオレとチョコレートパフェを注文し、優雅を気取って紅茶を飲む菊岡に本題を急かさせる。

 

「御足労願って悪かったね。キリトくんにソルくん」

「そう思うなら銀座なんざに呼び出すなよ」

現実(こっち)でその名を呼ばないで頂きたい」

 

 この人とは真面に付き合ってはいけない。雰囲気もそうだが、僕の()()もそう告げている。

 

「これは手厳しい。君もキリトくんも、目覚めた時真っ先に駆け付けたのは僕じゃないか」

「真っ先に見たのがあんたの顔とか、気落ちした僕の気持ちは到底分かるまい」

 

 この男はかつて政府の《SAO事件対策チーム》所属、現在は総務省のVRワールド管轄部門、通称《仮想課》の国家公務員。パッと見は唯の怪しい眼鏡だが、立場のある政府の犬だ。…………いや、皮をかぶっているのかもしれない。

 

「ま、話ってのは」

 

 タブレットを取り出して机に置いた。画面には男の顔と、個人情報らしき文字列。

 

「先月、十一月の十四日。東京都中野区の某アパートで掃除をしていた大家が異臭に気付いた。電子ロックを解錠して調査してみると、この男、茂村 保、二十六歳が死んでいるのを発見した。死後五日半だった。部屋は散らかっていたが荒らされた様子は無く遺体はベッドに横になっていた、そして頭に……」

「アミュスフィアか……」

「その通り。変死ということで司法解剖が行われた。死因は急性心不全となっている」

「心不全ってのは心臓が止まったってことだろ? なんで止まったんだ?」

「わからない」

 

 話は和人が反応してくれるので、僕は来たカフェオレを飲みながら外の天気でも見る。

 

「死亡後時間が経ちすぎていたし、犯罪性が薄かったこともあってあまり精密な解剖は行われなかった。ただ、彼は二日間何も食べないでログインしっぱなしだったらしい」

「その手の話はそんなに珍しくないだろ。何があるんだこのケースに?」

「インストールされていたのはガンゲイルオンライン(GGO)。知ってるかい?」

「そりゃもちろん。日本で唯一プロがいるMMOゲームだからな」

「彼はGGOで十月に行われた最強者決定イベントで優勝していた。キャラクター名はゼクシード」

 

「ふわぁ……」

 

 見事な快晴に気の抜けた欠伸が出る。この後日向ぼっこするのもいいかもしれない。

 パフェを一口、高いお店なだけあって上品な風味のチョコレートを使っている、二度は無いと思って味わう。

 

「死んだ時もGGOに?」

「いや、MMOストリームという番組にゼクシードの再現アバターで出演中だったようだ。ログで時間がわかっている。で、ここからは未確認情報なんだが。丁度彼が発作を起こした時刻にGGO内で妙なことあったってブログに書いているユーザーが居るんだ」

「妙?」

「とある酒場で問題の時刻丁度に、一人のプレイヤーがおかしな行動をしていたらしい。なんでも、テレビのゼクシード氏に向かって裁きを受けろ等と叫んで銃を発射したということだ。それを見ていたプレイヤーの一人が偶然音声ログを取っていて、動画サイトにアップした。ファイルには日本標準時のカウンターも記録されていて、テレビへの銃撃と、茂村くんが番組出演中に突如消滅したのはほぼ同時刻だった」

「偶然だろ?」

「もう一件あるんだ」

「何?」

 

 

 今日やる課題は全て提出済み。オンライン課題なんて、最先端で助かるわぁ。そういえば行ってみたかった古本屋もこの辺りだったか、日向ぼっこの前に寄ってみるかな。

 

 

「今度のは十一月二十八日、埼玉県さいたま市某所、やはり、二階建てアパートの一室で死体が発見された。新聞の勧誘員が中を覗くと、布団の上にアミュスフィアを被った人間が横たわっていて、同じく異臭が……」

「オホンッ!!」

 

 

 これだけ天気が良いと睡魔が強いなぁ。公園まで無事辿り着ければいいけど。

 

 

「ま、詳しい死体の状態は省くとして、今度も死因は心不全、彼もGGOの有力プレイヤーだった。キャラネームは薄塩たらこ。今度はゲームの中だね。彼はその時刻、グロッケン市の中央広場でスコードロン……ギルドのことらしいんだけど、の集会に出てたらしい。そこで乱入したプレイヤーに銃撃された」

「銃撃した奴はゼクシードの時と同じなのか?」

「恐らく、やはり裁き、力と言った後に同じキャラクターネームを名乗っている」

「どんな?」

「……《死銃(デスガン)》」

「デス……ガン?」

 

 

 ……あ、飛行機雲。

 

 

「この二人の心不全ってのは確かなんだろうな?」

「というと?」

()に損傷は無かったのか?」

「僕もそれが気になってね。司法解剖を担当した医師に問い合わせたが、脳に異常は見つからなかったそうだ。それにね、かのナーヴギアの場合は信号素子を焼き切る程の高出力マイクロウェーブで脳の一部を破壊した訳だけど、アミュスフィアはそんなパワーの電磁波は出せない設計だって、開発者たちは断言したよ」

「随分と手回しがいいな菊岡さん。こんな偶然と噂だけで出来上がってるようなネタに」

「まあ、九割方偶然かデマなんだろうとは僕も思うよ。だから、ここは仮定の話さ。キリトくんは可能だと思うかい? ゲーム内の銃撃によって、プレイヤー本人の心臓を止めることが」

「不可能だ」

 

 話も終盤だと思い口を挟む。

 話を聞く限り、二人とも偏見が過ぎる。和人はまだしも、菊岡がそんなんでは世の中不安だ。

 

「即答かいソルくん」

「いい加減言われたことくらい実行しろよ菊岡。それに、エリート集団様にかかればこんな事件ササッと解決して下さいよ。情けないと思わないんですか? 僕や和人みたいな学生を呼び出しでこんな話をすることが。帰ろ、和人」

 

 呆気にとられてる和人の袖を引っ張って退店しようと席を立つ。

 

「待った待った! お願い! ケーキもう一個頼んでいいからさ! あと少し付き合って!」

「………………」

「え? 湊?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、ソルくんがズバッと言い切ってくれてほっとしたよ」

「口を縫い合わされたいならそう言えよ菊岡。生憎、今手元に裁縫セットが無いから縫えないがな」

 

 ショートケーキを口を運びながら菊岡を睨む。いい大人なんだからいい加減プレイヤーネーム呼びは辞めて欲しい。

 

「実は僕も同じ考えなんだ。この二つの死は、ゲーム内の銃撃によるものではない。ということで、改めて頼むんだが。GGOにログインして、この《死銃(デスガン)》なる男と接触してくれないかな」

「ハッキリ言ったらどうだ菊岡さん。撃たれてこいってことだろ?」

 

 これには和人も反論。うんうん、確かにその通り。

 

「いやーまぁー」

「やだよ! 何かあったらどうすんだよ!」

「学生に頼むなんて恥ずかしくないの?」

 

 食べ終わったので、今度こそ退店しようと立ち上がる。

 

「ままま待ってくれ! その可能性は無いってソルくんが断言してくれたじゃないか! それに、この《死銃(デスガン)》氏はターゲットにかなり厳密な拘りがあるようなんだ!」

「拘り?」

「ゼクシードと薄塩たらこはどちらも名の通ったトッププレイヤーだった。つまり、強くないと撃ってくれないんだよ。多分「おいコラ」。かの茅場先生が最強と認めた君たちなら……」

「無理だよ! GGOってのはそんな甘いゲームじゃないんだ。プロがうようよしてるんだぞ!」

 

 和人の言い分は少し怪しい。君もプロ級、いやもっと上澄みのトッププレイヤーだろ?

 

「それだ! そのプロってのはどういうことなんだい?」

 

 案の定指摘された。これで和人は反論出来ない。自分の言い訳が成立しないと交渉では死兵同然、成仏してくれよ。

 

「文字通りだよ。GGOは全バーチャルMMOで唯一、ゲームコイン現実還元システムを採用してるんだ。GGOのハイレベル連中ってのは、他ゲームより比較にならないくらい時間と情熱をゲームにつぎ込んでるのさ。俺なんかがノコノコ出ていっても、相手になるもんか。他を当たってくれ」

 

 和人の言ったゲームコイン現実還元システムとは、ゲーム内の通貨を現実の通貨と交換、ゲーム内でお金を稼げるシステムだ。

 

「待ってくれ! 他の当てなんかないってば! ソルくん、君もキリトくんを説得してくれ」

「いやいや、ソル呼びしてる時点で誠意を感じれないなぁ? 誠二郎の誠は飾りですかぁ?」

「湊くん! この通り!」

「やーです」

 

 いい笑顔で断ってやる。誰がタダで命を差し出すもんか。

 

「なら調査協力費ということで報酬を払おうじゃないか!」

 

 菊岡の言葉に和人も僕も足を止めてしまう。二人ともまだ学生だ、やりたいこと、買いたい物が沢山あるが手持ちの少ない学生だ。菊岡の言葉は、僕らにはあまりにも効果的だった。

 

「これだけ」

 

 和人の唾を飲む音が聞こえる。

 菊岡が提示したのは三本指、つまり……

 

「三百万……」

「え?」

「え?」

 

「……え?」

 

 おかしかっただろうか? 三百万なら命の危険がある事件に巻き込まれる対価としては妥協点だろう。

 

「……ですよね?」

「…………」

 

 菊岡が固まってしまった。今頑張って脳内勘定してるんだろうか。

 

「……実は、上の方が気にしていてね。フルダイブ技術が現実に及ぼす影響というのは、今や各分野で最も注目されている。この一件が、それを規制しようとする勢力に利用される前に事実を把握しておきたい。その確信が欲しい。こんな所でどうかな?」

 

 思っきしスルーされた。

 

「運営に直接聞けばいいんじゃないか?」

 

 お前もか和人。

 

「GGOを開発、運営してるZASKARはアメリカサーバーにあってね。現実の会社の所在はおろか、電話番号やメールアドレスすら未公開、《ザ・シード》公開以来、怪しげなバーチャルワールドは増える一方だよ」

「へぇ」

「ほぉ」

 

 金額は後で追求するとして。流れとしては受ける流れなので説明は最後まで聞く。

 

「そんな理由で、真実の尻尾を掴もうと思ったらゲーム内で直接の接触を試みるしかないんだよ。勿論、最大限の安全措置はとる。銃撃されろとは言わない。君達から見た印象で判断してくれればそれでいい。行ってくれるね?」

 

 

 結果として、和人と僕は菊岡の依頼を受けることとなった。この事件は、かつてアインクラッドで行われた殺人を想起させ、人々のトラウマを呼び覚まそうとしているように感じる。それか、過去に囚われた憐れな仮想人の仕業か……。

 

 ――この時は思ってもいなかった。

この事件は、僕の中に沈澱した”色”を再び呼び起こし、今一度、僕を染めようとすること、()()()()()()が必要になることを。――

 

 

 

 

 

 

 

「菊岡? 三百万ですよね?」

「………………」

「………………」

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