君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

めちゃんこ投稿ペース落ちて草も枯れ果てるわ。
頑張ります。


ではどうぞ


《被害》

 

 

 

 

 

 

 風が砂を運ぶ、脚が抉った跡は数秒経たず去る。

 孤島となるBoB本戦マップ、その北部の砂漠にて僕の戦闘は始まった。

 第一目標はキリトとの合流。早く合流する為、一回目の《サテライト・スキャン》までに孤島中央の都市廃墟を目指す。全振りでは無いにしろ筋捷二極特化の僕のステータスなら他のプレイヤーなんかより断然素早い。

 そもそも、敏捷性ステータス等による補正はあくまでシステム上の補佐のみだ。敏捷性特化のプレイヤーでも走り方や身のこなしが出来なければお世辞にも速いとは言えない。その点、僕はそのプレイヤースキルに自信がある。

 

「……」

 

 進行方向に居たプレイヤーが狙撃をしてきたので首を傾けて避ける。速く走る為に前傾姿勢にしている分、前後のヒットボックスは狭い。

 右手でS&W M500を抜き射撃を三回。一つは相手の左肩を吹き飛ばす。二つはよろめく相手の首に命中、頭は胴体との呆気ない別れを告げた。

 コンバートした僕のアバターが持っていたスキルは全て火力向上のものばかりだった。故に威力が有るといえど、ハンドガンであるS&W M500で易易と相手プレイヤーを屠れる。逆に命中補正のスキルは見当たらなかった為、戦闘中は絶えず《心拍連動システム》を()()()して《着弾予測円》を固定する必要があるが。

 

「……」

 

 脚は止めない。障害は未だ一丁で対処可能だ。撃った分の弾をリロードしながら最高速度を維持し、マップ中央を目指す。

 

 

~~~~~

 

 

 時刻は午後八時十五分、都市廃墟の路地裏にて、《サテライト・スキャン》の端末を取り出す。出現した輝点を片っ端からタッチする。タッチすると輝点は名前を浮かび上がらせ、僕は一目それらを注視することなく俯瞰していく。

 現時点で輝点の数は二十二、砂漠に居た三人は僕が倒したから、知らない所で五人倒された計算になる。

 

「《ステルベン》は違ったか」

 

 大会前シノンに教えてもらった三名の内《ステルベン》の名前の輝点が無かった。これで候補は《銃士X》と《ペイルライダー》になる。他のプレイヤーの可能性も十分にある為、断定することは出来ないが。

 《死銃》の正体はあの《赤目のザザ》だ。《ザ・シード》によってこのGGOが創られた時、奴は僕らと同じく既に現実(こっち)に戻っている筈だ。その時からGGOに潜っていた可能性も大いに有り得る。

 

 二人の位置を確認する。シノンは山岳地帯、キリトは例の三人の一人、ペイルライダーの近く、森林地帯に居る。

 

「銃士Xを始末の後、キリトと合流するか」

 

 《ペイルライダー》の方はキリトが確認するだろう、ならば《銃士X》を確認後、キリトと合流さえ出来れば情報含め色々と融通が効く。キリトはペイルライダーを追うだろうから、進行方向から山岳地帯と森林地帯の間に流れる川に架かる鉄橋付近が合流地点になると予測する。

 

「シノンも居るみたいだし」

 

 正直に言うと彼女には今すぐにでもゲームからログアウトして部屋の鍵を厳重にして欲しい。でもそれは彼女の誇り(プライド)が許しはしないだろう。この仮想世界でしか誰かを殺すことが出来ない《死銃》と同じように、彼女もこの世界でしか出来ないことを求めている、そんな気がする。

 

「まぁ、一にも二にもキリトだな」

 

 狙撃されるのを感じて半身回転する。目の前を弾丸が通過するのを見守りながら左手でDesert Eagle .50 AEを抜き即座に早撃ち。弾丸の向きから相手の位置を特定した方向に二度の牽制射撃。潜伏してるであろう建造物に向けて走り出す。移動の隙は与えない、廃墟の構造は感受済みだ。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 狙撃された階層に着くと、【Dead】のタグを回転させている死体がうんともすんとも言えない顔でビクともしてなかった。

 

「…………」

 

 ご丁寧に顔だけくり抜かれたアバターを見る。断面からポリゴン光が輝いてなかったらR18も背筋を凍らせるグロ具合だ。

 

「……行くか」

 

 狙って眉間に撃ち込んだ訳ではない。偶々だ、偶々放った弾丸が偶々ヘッドショットしただけ。運も実力と言える……筈。

 《銃士X》の始末を終えた僕は、キリトと合流する為に南下を始めた。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 僕が橋に到着した時、ブッシュに隠れるキリトとシノンの後ろ姿を発見した。彼らの視線を追うと、橋の上で倒れ伏す青白いプレイヤーに、フードマントに身を隠すプレイヤーが拳銃を突きつけていた。奴だ、奴こそ《赤目のザザ》だ。

 要するに、奴が行おうとしているのは……

 

「シノンっ!」

 

 出来る限りの小さな声でシノンとキリトと合流する。シノンとキリトは背後から突如現れた僕に驚いているが、それどころではない。

 

「シノン、あのぼろマントを撃て。早く!」

「え? ソル?」

「僕のじゃ間に合わない、お願いだ」

 

 真剣な眼差しで見つめる。シノンは流されるままへカートのトリガーにかける。

 

──Boom!!!

 

 轟音に刹那のマズルフラッシュ。

 奴までは目測で約三百メートル。シノンの狙撃の腕なら外すことは無い距離だ。

 

「な…………」

 

 しかし、奴は避けた。上体を大きく後ろに傾け、背中から胸部まで大穴を空けるはずの弾丸は奴の胸を掠める程度しかできなかった。

 奴の視線が僕らに向けられる、のを感じた。その眼には嘲笑と怨念が居座っていた。

 

「あ……あいつ、最初から気付いていた……私たちが隠れてることに……」

「まさか……! 奴は一度もこっちを見なかったはずだ!」

 

 動揺が広がる二人、キリトの声に、シノンは首を振る。

 

「あの避け方は、弾道予測線が見えてなければ不可能。それはつまり、どこかの時点で私の姿を目視して、それがシステムに認識されたってこと……」

 

 言いながらも次弾を装填するシノン。狙撃体勢には入るものの、迷いが感じられる。

 

「落ち着け二人とも。僕が突撃する、支援を頼む」

「待てソル! お前でも危険だ!」

「待てるかキリト!」

 

 キリトの静止を聞かずブッシュから飛び出す。拳銃では比較的パワーのあるDesert Eagle .50 AEとS&W M500でも三百メートルでは威力減衰によって詰めきれない。ロングバレルに換装した愛銃たちでもだ。

 

 《赤目のザザ》は僕らの迷いを見透かしたかのように体を戻し。再度右手の自動拳銃を青白いプレイヤーに向けると、何の気負いもなくトリガーを引いた。

 

「チッ!」

 

 銃弾は外れることなく青白いプレイヤーの胸の中央に命中した。

 

――遅かった。

 

 何かしらの拘束を受けていたのか、青白いプレイヤーが跳ね、ショットガンをザザに突き付ける。

 この大会を見ている全ての人々は次の光景を想像しただろう。

 

 銃声は、響かなかった。

 

 まるで糸の切れた操り人形のように倒れる青白いプレイヤー。胸を掴んで苦しんだ後、不規則な光に包まれ突如消滅した。

 残光が【DISCONNECTION】の文字列を作り、夕日の中に溶け消えた。

 

「…………」

 

 事を済ましたザザは鉄橋の柱に姿を消す。

 

「逃げれると思うな?」

 

 牽制にDesert Eagle .50 AEで柱を撃つ。銃声で足音を紛らわせてスライディング、柱の後ろを見ると同時に二丁で斉射。

 

「……?」

 

 しかし、そこに奴の姿は無く、弾丸は虚空に突き進んだ。

 気配を探ると、射程圏外に一人見つけた。方角は北北西、進行方向は都市廃墟。柱周辺は瞬きもせず警戒していた、見逃したとは考えにくい。

 

「アイテムか……」

 

 内心焦りがあったとはいえ気付けなかったのは痛い。奴を野放しにすれば次の被害者が出る……

 

「シノン……!」

 

 彼女も奴の標的である可能性は高い。キリトと一緒に居るが、纏めて狙われるかもしれない。

 僕は急いで来た道を逆戻りした。

 

 

~~~~~~~~~~

シノンside

 

 ソルの背中を見送りながら、私はさっきの光景に理解が追いつかなかった。

 

「………………なに、今の」

 

 ぼろマントのプレイヤーが、ハンドガンで一回だけペイルライダーを撃った。その時点では、まだHPは残っていた。直後ペイルライダーの麻痺が解け、ショットガンで反撃しようとしたが、その寸前に運悪く回線トラブルが起き、ゲームから切断されてしまった。

 自分の眼で見たことを合理的に説明しようとすれば、そうなる。

 

 だが、ぼろマントのあの余裕はあの切断が起きることを事前に予期していたかのように感じられる。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、かのような。

 

 有り得ない。ゲーム内から、他プレイヤーの接続経路に干渉できるはずがない。

 しかし、ぼろマントは、ペイルライダーが消えたことにまったく驚くふうもなく、拳銃を空中の一点をまっすぐ照準する。そこは、大会を中継しているバーチャル・カメラのレンズだ。つまりあのアクションは、無数の観客たちへのアピールなのだ。 ペイルライダーとの一戦は回線トラブルによる、いわば不戦勝。誇る勝ち方ではない。……やはり、あの消失こそが、ぼろマントにとっての勝利だというのか?

 

「あいつ……他のプレイヤーを、サーバーから落とせるの……?」

 

 掠れた声で呟く。それができるのなら、とんでもないチートだ。このゲームを根本から壊しかねない大問題だ。

 

「違う、奴はそんなこと出来ない」

 

 沈着な声が私の思考を沈める。顔を上げると、戻ってきたソル痛切に唇を噛んでいる。

 

「奴は殺したんだ。……現実であのプレイヤーをな」

「……なっ、何を……」

「奴が《死銃(デスガン)》、過去に囚われた哀れな殺人鬼だ」

 

 冷静に言葉を述べるソル。彼の言う死銃には聞き覚えがあった。

 

「……デス……ガン。それって、あの、変な噂の……? 街の酒場や広場で、確か、前の大会で優勝した《ゼクシード》と上位入賞の《薄塩たらこ》を撃って、撃たれた二人がそれっきりログインしてないっていう……」

「……その二人は、死体で発見されている」

「ソル……!」

 

 何で、彼はこんなに冷静なの? 彼の言う事が本当のことなら、今しがた一人の人間が殺されたってことになる。それをわかっていてなお、彼は何の揺らぎも見せない。

 

「いいんだキリト。もう彼女は巻き込まれてしまった。知る権利が有る」

「……お前がそう言うなら俺は何も言わないよ」

「すまんなキリト。どうやら僕は、僕のまま居られないのかもしれない」

 

 一瞬、ソルの瞳に殺意が映る。背筋が凍った。『殺す』、私の知るその言葉は街のチンピラなんかが脅しに使うものだと思っていた。私もよく使っていたが、このGGO内での話。だけど彼の()()は私の知らないものだった。

 

――”覚悟”……なの?

 

 ()()の殺し合いをする覚悟。私の求める()()と似ているけど違う、本当の強さ。それを彼は持っている。

 何があってそんなに()()なったのだろう。何が彼を……、ここまで追い詰めるのだろう。

 《死銃》のことよりも、ソルという人間が気になって仕方ない。興味とも共感とも似通ったものが胸の中を擽る。

 

「奴は都市廃墟に向かった。追うぞキリト」

「ああ」

 

 二人は私のことを居ないかのように話を進める。

 

「待って、もうすぐスキャンが行われる。それで確認してから行ってもよくない?」

「ついて来るのか?」

「もちろん。私は認めたくない。PKじゃなく、本当の人殺しをするVRMMOプレイヤーがいるなんて」

「…………君はこれ以上関わるな」

 

 ソルが一段低い声で言う。彼の虚無の視線に後退りしたのに気付いて、一歩、彼に踏み込んだ。

 

「なんで? 私じゃ実力不足とでも言うわけ?」

「…………」

「何も言わないなら勝手について行くから」

 

 黙りこくってるソルの胸倉を掴む。それでも彼は顔色を少しも変えやしない。

 

「……昔、奴はあるVRMMOで多くの人を殺した。本当に死ぬと解ってて殺していたんだ。奴は君の思う()()の人じゃない。無論、僕もだ……」

 

 淡々と、生気すら感じられずに言うソル。

 三年前――西暦2022年に発生した《あの事件》。当時VRMMOに何の興味もなかった私ですら、毎日長時間の報道のせいで詳しい知識がある。囚われた一万人のうち、帰還できたのが約六千人。実に四千人もの命が失われた事件。

 ソルはあの世界からの《生還者》だというのは間違いようがない。ソルと肩を並べるキリトもそうなのだろう。ならば《死銃》も然り。

 思考は混乱する。でも、彼の瞳の奥に見える優しさが私を正気のままに居させてくれる。

 

「……正直、そんな話すぐには信じられない。……でも、嘘や作り話だとは思わない」

「……大会が終わるまで、何処か安全な場所に隠れてくれ。後で必ず迎えに行く」

「冗談じゃない! そんな《立てこもリッチー》みたいな真似するくらいならここで自害するわ!」

 

 ソルは微笑む。まるで予想通りだと、期待通りだと安心するかのように。

 

「じゃあ、僕から離れないでくれ。別に後ろから撃ってくれても構わない。その後はキリトに任せるから」

「ソル! 危険だ!」

「キリトも諦めろ、彼女は()()。大丈夫だ」

 

 ソルの何気ない一言に、私の胸が跳ね飛んだ。新川君や所属してるスコードロンの人達にも同じような言葉をかけられたことはある。そうやって褒められるのは嬉しい。でも、彼らが褒めるのはシノン()であって詩乃()じゃない。

 けれどソルの一言は違う。芯のある声は本質を突き通していて、シノン(詩乃)に対する何の着飾りの無い言葉だった。それがどうしても嬉しくて、私のこれまでが認められた気がして、彼の横顔に見惚れてしまう。

 

「どうだソル?」

「……映らない、スキャンは使えないな。何かしらのアイテムを使用している。気を付けろ」

 

 キリトとソルが《サテライト・スキャン》を確認する。確かに、あいつはどこからともなく現れた。そんなアイテムの存在聞いたことないけど、川を泳いでる時はスキャンされないのを知らなかった身からしたら他に未知の物があってもおかしくないと納得させる。

 

「僕が先行する。キリトは殿を頼む」

「わかった」

 

 ソルが走り出そうとして、私に向き直る。

 

「ほら、行くよ。シノン」

 

 差し出された手を取って、立ち上がる。立つのを見守ったソルは何も言わずに走り出してしまった。

 

「ねぇキリト」

「? なんだ?」

「彼は……何者なの?」

「…………俺の、親友だ。いつまでもな……」

「そう……」

 

 キリトはソルのことを深く知っているのだろう。それが何だか、とても羨ましく思えた。

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