長くなっちゃいそうだったから無理やり分けたんですけど違和感どうやろ?
早くアリシゼーションまで行きたいもんです。
ではどうぞ
僕を先頭にシノン、キリトの順で縦列になって走る。西側に気配が一つ居るが、まだ気付かれていない様子。
「ねえ、どうやって《死銃》を見つけるの? あいつが使ってるのは《サイレント・アサシン》、大型のライフルでサプレッサーで音も無く狙撃してくる」
「僕かキリトが囮になる。僕が見つけれたらそれでいいけど、距離が詰められなかったら一発撃たせて特定する」
銃を構える音が聞こえた。気付かれる前に横切りたかったが、流石に三人で行動すると見つかってしまうか。
「キリト」
「ああ」
「え?」
僕だけなら避ければいいが後ろにシノンが居る。僕が避けた弾が彼女に当たったら目も当てられない。
キリトも気付いていたようで、光剣の青紫色エネルギーブレードを展開している。
僕も左手にDesert Eagle .50 AE、右手にアイトールを構える。
百メートルほど離れた岩陰から何本もの赤いライン――弾道予測線がシノンに殺到する。
「ハァッ!」
最前線で弾丸を斬るキリト。そう、
「滅茶苦茶な野郎め」
かといって、キリトが全ての弾丸を捌ける訳では無い。間に合わない弾は僕がDesert Eagle .50 AEで撃って、取り逃した弾はアイトールで弾く。撃ち出された弾丸は回転しているからナイフで斬るなんて考えない。弾くので精一杯だ。
「うっそぉ!」
「シノン、ラストショットは頼む」
「……了解」
呆けて口を開いているシノンに声かけると、ハッとして伏射姿勢になる。
「前だけ見てろ」
「了解」
キリトの真後ろにピタリとくっ付いて、Desert Eagle .50 AEをリロードする。
~~~~~~~~~~
シノンside
奇襲の弾丸の嵐を全て弾き返した光景に棒立ちになってしまっていた。キリトの光剣が残像を光芒させて、その後ろからキリトに当たらないようデザートイーグルを撃ちつつナイフで実弾を捌くソル。それは私の知るGGOの戦闘では無かった。幻想の世界で行われるような剣撃、相手の弾丸から飛び散る火花、何の合図も無しにソルが後ろから撃つ弾はキリトを避けるように相手の弾丸を押し返し、キリトが逃した弾を驚きもせず弾くソル。
襲撃者の銃がフルオートだった時点で確信していたが、スコープの向こうに見えたのは《死銃》のギリーマントではなかった。前回、前々回の大会にも出場していた《夏侯惇》というアサルトライフル使いだ。かなりの古強者だが、今はその剛毅なアバターの顎をがくんと落としている。
「うっそぉ!」
「シノン、ラストショットは頼む」
夏侯惇が岩陰に引っ込む。ソルが顔だけ振り返って短く私を呼んだ。
「……了解」
とんでもない奴らとは思っていたけど、こんなめちゃくちゃな奴らだったなんて。
そんなことを思いつつ、愛銃のウッドストックに頬を付ける。
「前だけ見てろ」
「了解」
リロードを終えた夏侯惇が二度目の乱射の弾幕を放つが、二人は顔色一つ変えずに捌く。キリトの神業、幅わずか三センチの刀身で、音速を遥かに超えて襲い来る銃弾の雨を防ぐのはいかに《弾道予測線》があるといっても至難の業だ。ソルの神業は、そんなキリトの動作を阻害せずに時には前で、後ろで銃弾を防いでいる。自分本位で動くキリトの弾斬りに合わせて舞うようにステップを踏む姿はキリトの影のようで、ダンスパートナーのようだった。キリトも凄いが、ソルの動きはもう人間のそれには思えない。
「シノン」
一心同体の連携で全弾叩き落としたソルの叫び声が私の妄夢を散らした。
自動的に右手人差し指が動き、へカートのトリガーを絞る。放たれた弾丸は夏侯惇の武者風ボディアーマーをど真ん中から貫いた。
BoB本大会では特例ルールで死体が残る。赤い【Dead】タグが回転するのを確認して、息をつきながら立ち上がる。
「急ごう、今ので他のプレイヤーも集まってくる」
「ああ」
何も無かったかのように銃とナイフを納めるソルの横顔は、紅い夕陽を受けて神秘めいていた。赤茶のポニーテールは夕陽と溶け込んで、風にたなびいてる。長い睫毛に切れ長の目は憂いを感じて、見ているだけで溜息が出そうになる。
「シノン?」
「……あ、大丈夫」
心配そうに私を覗くソルに気付き、へカートの二脚をしまう。
「行くよ」
「ええ」
頼もしい背中を追いかけて走り出す。
~~~~~~~~~~
あのプレイヤーの他に接敵することも無く、それほどの時間をかけずに都市廃墟に侵入した。
コンクリートと鉄で構成された都市廃墟は視界の隅々に砂が被り、ビルらしき建物も罅が入っていたり欠けていたりする。マップ中央の入り組んだ地形なのもあり、周囲に多数のプレイヤーがいる。
「九時のスキャンまであと三分だけど、確認する?」
「……出来れば奴より先に相手の位置を特定したいけど、時間が無い。スキャンが終わった後、二手に別れて奴を探そう」
「どう別れる?」
シノンの《サテライト・スキャン》を使うのは結果を期待出来ない為、キリトとシノン、僕の二手に別れる方がいいと提案する。
「僕は二人より敏捷性が高い。それにここはプレイヤーの数が多い、今でも誰かが襲われているかもしれない。それを発見次第妨害の後、始末する。他のプレイヤーと接敵したら不意打ちに気を付けながら倒してしまおう」
「……そう」
何処か不満気な顔をするシノン。心当たりは全く無いので首を傾げる。
「どうしたのシノン?」
「何でもないわ」
やるせない雰囲気で答えるシノン。
「キリトもシノンを頼む」
「おう、任せとけ」
端末を取り出す。九時になるのと同時に光点が出現する。二人に構わずに都市部の点を全てタップする。
「やっぱり映らない。いや、映って無いのが奴か?」
居るのを
「僕は違和感のある処に突っ込む。もし出てきたら即刻攻撃してくれ」
「あ、ソル!」
キリトの声に応える間もなく駆け出す。
~~~~~~~~~~
キリトside
「ソルっていつもあんな感じなの?」
「まぁ、大体は……」
少し呆れた様子で腕を組むシノン。確かにソルはいつも先走りたがりだ。しかも理由の殆どが俺の為だったりして、嬉しい反面心配にもなる。でも、ソルは大丈夫、SAOから一緒に居る俺が彼の強さを一番理解している。あのヒースクリフを倒した男だ、《笑う棺桶》ごときに遅れをとるわけが無い。
「大丈夫だよ。あいつはシノンを傷付けたくないだけだ」
「…………そう」
そっぽを向いたシノンの頬が少し赤いのを見て、俺は察した。VRMMO内でも学校でもあいつは裏でモテまくってる。それでも彼女が出来ないのは高すぎる人気のせいだってアスナが言っていたし、彼女が欲しいと呟くソルに向けられる女子の視線は正直怖い。シノンは見た感じ、自覚は無さそうと言った所だ。
(あいつも隅に置けないな)
親友の恋道を内心で応援しながら、俺もソルに言われたことを実行する。
「恐らくあいつが向かった先に《死銃》が居る。シノンは通りのビルから狙撃体勢に入ってくれ」
「…………わかった」
SAOで一時期俺はソルに頼りきりだった。でも、今は違う。隣で一緒に戦える。背中を安心して預けられる。それがとても嬉しい。
「独りにはさせない。お前は常にお前だ、俺がお前を変えさせない」
ソルの行った方向へ走る。
この時の俺は共に戦うことに高揚し、判断力が鈍っていた。少し考えれば《死銃》の狙っていることに気付けたかもしれない。何故ソルが三手では無くシノンに俺を付けたのか考えれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。これは俺の責任だ。
~~~~~~~~~~
シノンside
一人でビルを登る。頭の中はソルの事で一杯だった。
「何が僕から離れないで、よ。キリトもキリトで結局一人で行っちゃったじゃない」
胸の奥の奇妙な感覚に自覚する。緊張でも不安でもない……これは、心細さ?
「……何で?」
私は、BoBで優勝してこの世界で最強のプレイヤーになるという目標を達成するために行動していた。していたはずだったが、今は合理性からとはかけ離れた行動をしている。
一時の流れに身を任せ、他人と組んで一緒に行動して、いざ一人に戻ったら寂しくなる。こんなの全然
モヤモヤと考え事をしながらもビル壁面の崩壊部をくぐる寸前、背筋に強烈な寒気を感じ、振り向こうとし、それすらもできずに路面に倒れる。
(何……どうして……!?)
何が起きたのか、すぐには解らなかった。
視界の左で何かが光って……反射的に左手を上げたら腕の外側に激しい衝撃があった。撃たれたと思って咄嗟に目の前のビルに飛び込みかけたのに、なぜか脚が動かなくて、そのまま路面に棒倒しになってしまった。
そこまで認識し、起き上がろうとするが体が言うことを聞かない。眼だけはどうにか動かせる。左腕を見ると、デザートカラーのジャケットの袖を銀色の針のような物体が貫いていた。直径五ミリ、長さ五十ミリ程度。発生するスパークが全身に流れてくる。
――電磁スタン弾。
ペイルライダーを麻痺させた特殊弾とまったく同じものだ。大口径ライフルのみが使用可能、その上発射音が聞こえなかった。減音器付きの大型ライフル、そんなもの装備している者はそうそういない。
誰が、そんな問いはすぐに分かった。二十メートル離れた空間に光の粒が流れ、世界を切り裂いたかのように何者かが突如出現した。
――メタマテリアル光歪曲迷彩!!
装甲表面で光そのものを滑らせ、自身を不可視化するという謂わば究極の迷彩能力だ。でも、あれは一部の超高レベル
ばさり、ダークグレーの布地が風に翻る。ぼろぼろの長いマント、光歪曲迷彩を解いた襲撃者の姿を、呆然と見つめた。
――《死銃》。
ペイルライダーを消し、《ゼクシード》と《薄塩たらこ》をも殺したかもしれない、VRMMOの暗殺者。
…………ソル。
彼は何処かに行ってしまっている。どこかで入れ違いになったのだろうか。頭の中で叫んでも、彼には届かない。
「……ソル。お前が、本物か、偽物か、コレではっきりする」
《サテライト・スキャン》で一方的に位置を割られていた。だから彼の追跡を躱しつつここまで来れたのだろう。
切れ切れの声は無機質で、抑揚がほとんどないのに、内側に燃えるような執念を感じられる。
「あの、何処までも無慈悲な姿、憶えているぞ。この女の……、誰かの命の危機、喪失で、人殺しに狂えば、お前は本物だ。さあ……、PoHの言っていた、
言葉の意味を、理解できなかった。
――命の危機、喪失? つまり、殺す? 私を?
怒りの炎が弾ける。光迷彩なんてものに頼っているような奴が、私を殺すなんてほざくなんて。
電磁スタン弾が命中したのが命中してるのが左腕だからか、右手は頑張れば動かせる。じりじりと動き始める右手の指先に、MP7が触れる。
十字を切り終わった死銃が右手を内側に差し込み、引き戻す。死銃は確か、撃つ前に一度ハンマーをコッキングするはず、その隙に撃つ──だが……
死銃がマントから引き抜いた右手に握られたのは黒い自動拳銃。その形状には見覚えがあった。全身が凍り付く。
銃の左側面、円の中に、星。
なん…………で。なんで、いま、ここに、あの銃が。右手からSMGが滑り落ちる。その音すら、私には聞こえはしなかった。私を深い幻覚が襲う。あの男、五年前、北の街の小さな郵便局に拳銃――五四式を持って押し入り、私の母さんを撃とうとしたあの男。私が殺した――あの男の
――いた。ここにいたんだ。この世界に潜み、隠れて、私に復讐する時を待っていたんだ。
心臓の音がやけに大きく聞こえる。あの指が数ミリ動けば、ハンマーが撃針を叩き、三〇口径フルメタル・ジャケットが発射される。それは仮想のダメージを刻むのでは無い。本物の、
これは運命だ。逃れることはできない。たとえGGOをプレイしていなくても、私はどこかでもう一度この男に追いつかれていただろう。無駄だった。何もかも。過去を打ち切ろうと足掻いてきたことに意味なんてなかった。
そんな諦念。でも、諦めたくない。こんなところで終わりにしたくない。だって、ようやく解りそうだったんだ。《強さ》の意味、《強さ》のその先。戦うことの意味。彼の傍で、彼を見て、いつか、いつかきっと……。
──Boom!
轟く銃声が、思考を断ち切った。瞼を閉じ、意識が消える瞬間を待つ。
しかし、私を貫く弾丸は一向に来ない。目を瞠る、ぼろマントの右肩に、オレンジ色のダメージエフェクトが瞬いてる。誰かが《死銃》を撃ったのだ。
二度目の銃声、続く弾丸は胸上部を貫いた。死銃は
キンっ、甲高い金属音と同時に、背後から私と死銃の間に灰色の缶のような物――グレネードが投げ込まれる。死銃はさっとビル内に引っ込む。炸裂した金属缶は、私の予想に反して、大威力のプラズマグレネードではなく、ノーマルな火薬やナパームでもなく――無害な煙だけを吐き出すスモークグレネードだった。
「…………!」
逃げるチャンスだと思い、体を動かそうとするが、まだスタン効果が消えない。それ以前に、立つための闘志が根こそぎ奪われてしまっている。
煙の中でただ倒れている時、誰かに抱え上げられる。直後、とてつもない加速に体が潰れそうになる。耳元で空気が唸る。スモークを切り抜け、回復した視界に広がったのは赤だった。
漆器のように麗しい髪、吸い込まれそうな暗褐色の瞳、儚げな玉肌。
「……ソル」
声が漏れた。美しいと息を呑む美貌に、真剣……いや、必死な表情が浮かんでいる。
ソルの後ろには、私のへカートを肩にかけたキリトも居る。
(……もう、いいよ。置いていって)
そう思うも言葉にできない。全身、いや意識までも完全に痺れてしまっている。