君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

マザーズロザリオ開始です。
キャリバーは無いです。


ではどうぞ


マザーズ・ロザリオ
《絶剣》


 

 

 

 

 今日はALOにログインしている。キリトに誘われて始めたこのゲームは、妖精のファンタジー世界だ。羽根を使って空を飛び、魔法を使って戦う。音楽妖精族(プーカ)を選んだ自分好みの戦闘スタイルが確立し、僕もこのゲームでもキリトと並ぶことが出来た。

 

 新生アインクラッド第二十四層の主街区の北にある大樹の小島。季節だけは現実世界と同期させた粋な運営の計らいによって凍り付くような空気に白い息を吐きながら、剣を振るう。

 独自のリズムでステップを踏みながら、剣を右手へ左手へ移しながら空中に線を描く。今しているのは《オリジナル・ソードスキル(OSS)》の構想だ。このゲーム

を買収した新興ベンチャーはSAOのシステムを多くALOと融合させるという大胆な方針を掲げた。ソードスキルは改良を加えられたが、違和感を感じる程では無かった。そんな中OSSは、『本来システムアシストなしには実行不可能な速度の連撃技を、アシストなしに実行しなくてはならない』という矛盾を抱えた代物だ。

 僕はと言うと、各武器に最低一つのOSSは創った。従来のソードスキルだって、僕の理想の動きをするには違う技を連続で繰り出すしかなかったのだ。初見殺しは幾つあっても困らない。

 

「…………っ!」

 

 最後の叩き付けを決めて、両手斧のOSSを追加する。斧の柄を地面に刺して、止めていた呼吸を再開する。

 

「ふう」

「お兄さん凄いね!」

 

 何処からともなく拍手が聞こえてくる。武器をしまい、振り向くと、小柄な少女が居た。種族は闇妖精族(インプ)、赤紫色の瞳、パープルブラックの長いストレートの髪は艶がかっている。胸部を覆う丸みを帯びたアーマー、その下のチュニックと、ロングスカートは青紫。腰には黒く細い鞘。

 

「どうも」

「ねえ! お兄さんボクとデュエルしない?」

 

 活発なボクっ子少女が、キラキラとした目で見上げてくる。

 

「いいよ」

「やったー!!」

「ルールはどうする? 地上戦と空中戦とか」

「何でもありでいいよ! お兄さんの好きなように」

「じゃあ両方、何でも有りかな」

 

 ジャンプしながら喜ぶ姿に微笑みながら、一番頻繁に握っていた両刃槍を装備する。

 

「あれ? 斧じゃないんだ?」

「一通り触ってるからな。斧がよかった?」

「いや、何でもいいよ! 凄いねお兄さん!」

 

 話しながら距離を取る。少女がシステムウインドウを操作すると、視界にウインドウが出現した。

 【Yuuki is challenging you】。名前はユウキかと思いながらもOKボタンを押す。モード・オプションは《全損決着モード》を選択。もう命の危険はもう無い、迷わず選択した。

 

 ウインドウが閉じると、十秒のカウントダウンが始まる。

 

「では尋常に」

「尋常に!」

 

 ユウキは左腰の剣を握り、勢いよく抜き放った。細めの片手用両刃直剣。鎧と同じ黒曜石のような深い半透明の色合いだ。

 中段に構え、半身の姿勢を取るユウキに対して、僕は両刃槍を地面と平行に構える。

 息を吹き切って呼吸を止める。カウントがゼロになる。【DUEL】の文字が光るが、お互い動き出しは無い。

 

「……」

 

 両刃槍を左手で持ち、歩く。自然に、自身をこの世界と同化させながらゆっくりと、気配に騒音(ノイズ)を加える。

 

 耐えきれなかったユウキが距離を詰めてきた。突然の挙動をせず、左手の両刃槍で突きを放つ。剣先は僕の前、ユウキの踏み出した右足の直前に突き刺さる。

 

(速いな)

 

 ユウキは動じずに剣を振りかぶる。

 僕は高速で右に回転、左手を下から振り上げて剣先を地面から抜きつつ右手で逆手持ちに横薙ぎを放つ。逆L字の直角薙ぎだ。

 

 自信のある初見殺しだったが、剣で剣先を受けられた。

 

「凄い反射速度だな」

「お兄さんえぐい動きするね」

 

 軽いのか、防御したユウキごと振り抜いて十五メートル程飛ばした。蝶の翅を展開して、低空飛行で接近して鍔迫り合いにする。着地はさせない。

 

「速っ!!」

「君も、だろう?」

 

 ALOはレベル制では無い、スキルを育てて高レアリティの装備を装備するのがゲームパラメータの強さに直結する。つまり、レベルという数値の暴力が使えない。そのプレイヤー自身の能力が大きく出るシステムだ。

 アバターの速度を上昇させるアイテムも存在するらしいが、僕は見たことがない。背中の翅を使った飛行技術の練度の個人差はかなり顕著に出る。わかりやすい例を上げるならキリトの妹の直葉ことリーファは僕の知り合いの中で一番速い。その差は、レースをすれば僕より一秒早くゴールする程だ。正直勝てない。

 でも短距離、瞬発的な加速と急停止は僕に軍配が上がる。デュエルも僕の勝ち越しだ。自信過剰だが、このゲーム内で負け越した相手は居ない。負けない訳じゃないが勝てない訳じゃない。

 

 まだデュエルが始まったばかりだが、数多くのプレイヤーとデュエルしてきた僕が断言しよう。ユウキはこれまで戦ってきたプレイヤーで最強だ。

 

「シッ……!」

 

 思い切り上空に打ち上げる。流石のセンスか、勢いを上手くいなしながら体勢を整えられる。

 

「────────」

「……っ!」

 

 高速で詠唱した魔法で自身に能力上昇(バフ)をかける。

 急降下してくるユウキを見て、両刃槍を両手で中段に構える。赤いエフェクト光を出すのを確認し、翅の操作だけで接近する。

 

「……」

 

 オリジナルソードスキル《フラット・ソウル》を発動。右手、左手と握る手を交代しながら突きを二撃。 

 滑らかな剣捌きで剣の横面で逸らされ、硬い金属音が鳴る。

 両刃槍を半身になりながら背中を通して逆刃で突く。半身を反らして避けられる。

 

 空中である利点は足場が無いことだ。突きの勢いを殺さず翅を巧く使い、体を回転しながら両刃槍を回す。三次元な空中だからこそ出来る連撃。地上では地面を踏む為の足が、翅で移動出来るから攻撃に織り交ぜられる。蹴りの渾身の一撃が横腹に入る。

 

 

 反応速度は速い。剣筋も正確だ。だが、対人戦に馴染みがある太刀筋では無い。

 トドメの斜め斬り、をフェイントを挟んで放った。

 

(入った)

 

 首を狙った斜め斬りは、吸い込まれるように曲線を描く。

 

――背筋が強ばった。

 

 赤紫色の瞳は剣先を正確に捉え、口元は右の口角が上がり笑っていた。少女の黒曜石の剣が青紫色の光を帯びた。

 

(カウンター、ソードスキルッ!)

 

「やあっ!」

 

 凛とした声を発して、鋭い直突きと斜め斬りが衝突する。ソードスキルの光が激しく混ざり、衝撃が襲う。

 

「くっ!」

「てやぁっ!」

 

 僕のソードスキルはアレで最後だ。システム硬直が僕を金縛りにする。

 続くユウキの四連撃。もろに胴に喰らう。斜めのダメージエフェクトの痕から血のように赤色のポリゴンが漏れる。

 硬直が解けるが、間に合わない。ユウキのソードスキルは終わらない。続く五連撃もクリーンヒット。

 

 この時点で紙装甲な僕のHPは吹き飛んでいる。しかし、無慈悲なユウキの十一連撃目が、胸の中心を貫いた。

 

「お見事」

 

 感嘆の声を漏らしながら、赤紫の瞳を見つめた。

 

 

~~~~~

 

 

 《残り火(リメインライト)》から一応蘇生してもらうも、大の字で寝転がる。空を見ながら先程の十一連撃を脳裏に写す。

 

「お兄さん良いね! ……うん、お兄さんに決ーめた!」

「……何が?」

 

 デュエルの結果は僕の負け。文句も出ない見事な剣技だった。負けたのは久方ぶり、気分は沈み気味だ。

 

「ねえお兄さん、この後時間ある?」

「……ナンパ?」

「違う違う! えー……、まあ、ちょっと付き合ってよ!」

「おわっ!」

 

 翅を展開したかと思うと手を取られる。何も分からず突っ立っていると、まるでロケットかのように急発進した。急な展開だが時間はある、諦めて元気活発な少女について行くことにした。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 やがて、僕らはアインクラッド二十七層に入る。主街区の《ロンバール》の広場に降りて狭い路地を通って宿屋の戸口をまたぐと、五人のプレイヤーが陣取っていた。

 

「早っ! もう見つかったの?」

(…………)

 

 サラマンダーの少年の驚嘆が人気の無い酒場兼レストランに響く。

 

「紹介するよ。ボクのギルド、《スリーピング・ナイツ》の仲間たち。で、…………」

「初めまして。ソルです?」

「なんで疑問形?」

 

 丸眼鏡のレプラコーンの少年がツッコミを入れてくれる。そんなこと言われても、僕からしたらこの状況がよくわかってない。説明求ム。

 

「どういう状況?」

「あ、ボクまだ何も説明してないや!」

 

 五人が喜劇ばりなズッコケを披露してるのを見て、気が和む。

 紹介されたメンバーを見渡す、全員が手練だ。ALOではあのリーファよりも強いだろう。

 

「それで、僕に何をして欲しいの?」

「……あのね、ボクたち、この層のボスモンスターを倒したいんだ」

 

 腕を組んでやや考える。層攻略の手助けはこれまで何度も請け負って来た。だから僕には相応のコネクションが有る。この六人を連結部隊(レイド)に加えるのはわけないだろう。

 

「解った。連結部隊(レイド)には入れるよ」

「え、あ。えっと、ね。そういうのじゃないの。……ボクたちと、ソルさんの七人だけで倒したいんだ」

「…………は?」

 

 新生アインクラッドのボスモンスターはSAO時代の物とは別物と言っても過言じゃないくらい改造されている。通常攻撃、特殊攻撃、範囲攻撃、どれも頭の悪い奴がバランスを考えずに創ったと言われる程の理不尽さを持つ。それを、たった七人で倒そうって言うのだ。

 

「何を言ってるのか解ってる?」

「うん。実は、二十五層と二十六層のボスにも挑戦したんだ」

「結果は?」

「ぜんっぜん! 駄目だったよ!」

「何で七人?」

「あ、それは……」

 

 怒涛の質問攻めに、ウンディーネの長身の女性が助け舟を出す。

 

「それは私から説明します。実は、私たちはこの世界で知り合ったのではないんです。ゲーム外のとあるネットコミュニティで出会って、すぐ意気投合して、友達になって……。もう、二年ほども経ちました」

 

 思い出すかのように言葉を切って、また紡ぐ。

 

「最高の仲間たちです。みんなで、色々な世界に行って、色々な冒険をしました。でも、残念ですが、私たちが一緒に旅をできるのも多分この春までなんです。みんな……それぞれに忙しくなってしまいますから。そこで私たちは、チームを解散するまえに、ひとつ絶対に忘れることのない思い出を作ろうと決めました。無数に存在するVRMMOワールドの中で、いちばん楽しく、美しく、心躍る世界を探して、そこで力を合わせて何かひとつやり遂げよう、って。そうしてあちこちコンバートを繰り返して、辿り着いたのがこの世界なのです」

 

 他の五人も大きく頷いて同意する。彼女の言葉に嘘では無い。でも……

 

「話は大体解った。そういうことなら協力は惜しむつもりは無い。でもその前に……」

 

 ユウキの細い小さな腕を掴む。

 

「ユウキに話が有る。ちょっといいかな?」

 

 五人の顔は僕の疑問に検討がついてないようだ。店の外に連れ出して、人気の無い路地に入る。五

 

「な、何かな。ソルさん……」

 

 当の本人は僕が勘づいてることを察しつつあるのか、笑顔も引き攣っているように見える。

 

「……見込みは?」

「え?」

「助かる見込みは?」

 

 ウンディーネの彼女に感じた悲壮感、目線からユウキが何かしらの厳しい病状だと推測するのは簡単だった。

 

「…………」

「……ごめんね。こんなこと言うべきじゃないし、聞くべきでも無いことは解ってる。でも、どうしても、僕はその()()が苦しくて堪らないんだ。見てられない。じっとなんてしてられない」

 

 しっかりと、彼女の肩に手を乗せる。

 

「君は望んで無いかも……いや、望んで有ろうと無かろうと関係ない。僕はこれから、勝手に君を救う」

「え?」

「少しだけ待っててくれ。いずれ、君に問う。その時には…………君の本心を、望みを教えてくれ」

 

 自分でも滅茶苦茶なのは自覚してる。会ったばかりの女の子に何故こんなに熱くなってるのか、僕にも解らない。

 システムメニューを出して、ログアウトボタンを押す。

 

「協力するのはその後。待ってて」

「え、ちょっと!」

 

 僕らしくもない。手荒い操作で無理くりに仮想世界との接続を切断した。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 アミュスフィアを乱雑に投げ捨て、目当ての連絡先に電話を掛ける。四度のコール音で通話が開始され、通話時間の時間表示が現れる。

 

「君から掛けてくるなんて初めてじゃないか?」

「緊急の用事だったんでな。あんたにしか頼めない

 

 

 

 

 

 

…………菊岡」

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