マザーズロザリオはパッパと終わらせます。
関わり? 無いです。
キリト? 無いです。
前話の伏線をどれだけの人が理解出来たのかは知りませんが、前話は結構伏線まみれでした。
ヒント:湊の設定
正直、前話は書いてて凄いことしてるなぁとか思ってたりしました。
ではどうぞ
「なんだい? 僕に用事って」
「あるVRMMOプレイヤーを救いたい」
「どういうことだい?」
菊岡と関わるのは今後爆弾を押し付けられそうな気がして嫌だが、最悪なことに彼しか居ない。
「ALOで……ユウキっていう女の子と出会った。彼女は難病を抱えていて、先は短いようだった」
「そうか……。それは、残念だね」
「そこでだ。ユウキの情報を教えてくれ」
「…………君は今自分が何を言っているのか解ってるのかい?」
「勿論、個人情報を開示しろなんて言ってはい分かりましたなんて返ってこないのは重々承知している。……交渉しようじゃないか」
「…………言ってみたまえ」
僕がきれるカードは唯一にして最大のジョーカー。命の保証の無い大博打だ。
「《仮想世界完全適応人類》」
「!?」
「お前たち政府が血眼になって探している奴だろ? SAOでカーディナルシステムに観測された。世界で唯一、仮想世界から現実世界への
「何故……何故君がそのことを……」
「簡単だ。……僕がその《仮想世界完全適応人類》だからだ」
「なっ!!」
反応から政府が探してるのは本当らしい。システムログを確認しても特定出来なかったのは茅場晶彦の計らいか。
「交渉だ。現在、臨床試験が行われている医療用フルダイブ機器《メディキュボイド》。その試験として僕自身を捧げる」
「君は、本当に自分が何を言っているのか分かっているのか!」
「解ってんだよそんなこと!! だからこその交渉だ。試験期間は……そちらで決めてもらっていい。しかし、僕で作り出された抗体を最初に投与するのは……ユウキ、彼女だ。それ以外認めない。特定は任せる。情報の開示は治ったか否かだけでいい」
「……………………」
解っている。これから僕の身体は貴重なモルモットに成れ果てる。何年、何十年、もしくは一生かもしれない。でも、覚悟なんて通り越した。
「何故……そこまでする?」
何故…………何故か…………。
「救いたい。そう思っただけだ」
「……そうか」
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(ごめん、暫くは会えないかもしれない)
学校に休学の連絡を入れ、和人たちにもメッセージを送る。僕が入るのは【横浜港北総合病院】。ここに設置されたメディキュボイドだ。
受付を済ませ、僕を出迎えたのは縁の太い眼鏡を掛けた男性医師だった。
「こんにちは、僕は倉橋といいます。紺野さんの主治医をしております。陽月さん……ですよね?」
「はい。陽月湊です」
「事情はある程度把握しております。本当に、ありがとうございます」
「……いえ」
提示された条件として、期間は無期限、定期的な試験を行うとのことだった。
僕にこれから行われる実験は、言うなら抗体の製造だ。メディキュボイドは医療用のフルダイブ機器だ、機器である以上システムが存在する。仮想世界にダイブした状態でシステムに仮想のウイルスや病原体を投与して、抗体を造る。それを僕が肉体に
「……紺野?」
「ええ、フルネームは
倉橋さんは深く頭を下げる。慌てて頭を上げてもらい、少し微笑む。
「なるほど。此処にユウキが?」
「はい。恐らく貴方が言うユウキだと思います」
此処で造って此処で投与する。非常に効率的だ。
「ユウキの話はおいおいお願いします。あなたの表情からも伝わる。もう、先が見えないんですね? 今は、時間が無い。直ぐにも始めましょう」
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「はぁ……はぁ……」
試験内容は、僕の想像を遥かに超える地獄だった。ユウキが患っているのは《後天性免疫不全症候群》、AIDSだ。発症すると、食欲低下・下痢などの症状が現れることで著しい衰弱状態に陥る。
ペインアブソーバーは効果が無かったのか、はたまた幻覚か、激しい四肢の痛みも生じた。
「……うぷっ」
現実世界で出来上がった抗体を採取する間は食事と倉橋先生との会話だ。
体調的にも食べ物なんて食えたものじゃない。かといって点滴をすれば血液が作れない。何度も吐いた、何度も口に入れる。最早食べ物の形をしていないそれを懸命に体内に詰め込む。
倉橋先生の話から、ユウキ──木綿季のことが解ってきた。両親を二年前、姉を一年前に……亡くしている。ウンディーネの女性が付き合いは二年と言っていた。ユウキが仮想世界での冒険を始めたのもその頃だと思う。姉も一緒だったってことは、スリーピングナイツのメンバーもこのことを知っているはず。
「先生、どうですか?」
「すみません。また、効果は……」
「いや、いいんです。早く次をやりましょう」
メディキュボイドの出力は医療用ということもあって、アミュスフィアの比にならない。システムエフェクトも現実に近い高度な物になる。それでも、効果のある抗体を人体から造ることは難しい。幸いにも、木綿季と僕の血液型は一致している。早く良くなって欲しいものだ。
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「全く、なんでこんなに思い切りがいいんだ……?」
メディキュボイドの仮想空間で一人呟く。傍から見たらおかしな話だ。何も知らないくせに、何も関係が無いくせに、……僕もそう思う。
でも、この胸を締め付ける痛みは何だろう。…………いや、まさか……な。
『湊君、体調はどうですか?』
倉橋先生は定期的に中に通信してくれる。僕の気持ちに踏ん張りがつくから有難い。
「大丈夫です。まだまだいけます」
『……そうですか。無理しないで下さいね』
彼は優しい医師だ。優しいからこそ、辛いと感じる瞬間が沢山あっただろう。木綿季の両親や姉こと。その責任が自身にあるなんて思っているかもしれない。でも、そんなことは無いと思う。少なくとも僕から見たユウキ――付き合いは全くと言っていいほど無いが、はALOで楽しそうにしてた。
「みんな……何してるかな」
学校には詳細は伏せて事情を話している。そもそも政府が創った学校なので、すんなり休学出来た。……もしかして、帰還者学校は僕を見つけ出す為の……? いや、自意識過剰過ぎか。
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――三月
十二月末から此処に入院しているから、もう三ヶ月が経とうとしている。雪は溶け、日差しが春の暖かみを帯び始めた。
僕も
「どうですか、先生」
「ああ、成功だ。よく……よく頑張ってくれたね、湊君」
「……間に合いましたか?」
「ああ、……ああ! 間に合った! 今からでも症状が良くなってくる筈だ」
安堵するのと、糸が切れたように体の力が抜けていった。
「つか……れた」
「……もうゆっくり休んで下さい。後のことは、僕たちに任せて」
彼女の中に渦巻く病原体全ての抗体が出来上がった。僕の身体はやせ細って、肋骨が浮き出るまで肉が落ち、骨と皮だけになっていた。
「良かった。
無意識に何か言った気がしたが、もうそんなこと気にする気力は残って無かった。
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三月も終わりを迎えるまで残り数日。僕はリハビリに大苦戦していた。SAO、及びALO事件から戻って来た時のリハビリは苦戦しなかったが、今回は訳が違う。動かない脚を何とか前に出しながら、少しずつ、少しずつ筋肉を戻していく。
こんな時こそ
病院内をフラリフラリと彷徨う。現実世界の木綿季の姿も見せてもらったことが有るが、胸の痛みが増すばかりだった。
そこでふと、何やら焦る様子で走る倉橋先生を見かけた。
「倉橋先生、おは……」
「すみません湊君!」
通り過ぎてしまった。病院内で走るなんて急患以外無い。何処も違和感は無い……筈だ。
「っ! また……痛い」
ズキリと痛む胸を抑える。胸騒ぎなんてやわなもんじゃない。
「……木綿季が?」
有り得ない、信じたくは無かった。拙い歩行で倉橋先生の後を追う。
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木綿季の容態が急変した。それでも、抗体があるからか、危険な状態にはならなかったようだ。
「先生。木綿季は良くなるんじゃないんですか?」
倉橋先生は悔しそうに唇を噛む。そんな彼を責め立てようとは思えなかった。
「恐らく、気持ちの問題です」
「プラシーボ効果ってやつですか?」
「そうです。それが悪い意味で効果を発揮してしまっているんだと思います」
「……生への執着ですか?」
木綿季に家族はもう居ない。きっと心の何処かで諦めているのだろう。自分は長くない、終わりの時はすぐに来ると。
「……わかりました。僕が、彼女に会ってみます」
「…………実はですね。結城明日奈さんが木綿季くんに会いに来てたんです」
「……え?」
「貴方と同じく仮想世界で出会ったそうです。それで、木綿季くんを沢山の場所に連れてってくれたりもしました。楽しい思い出ができ、安心したのかもしれませんね。症状は少しづつ良くなってですが、最悪なことになる可能性は捨てきれません」
明日奈と木綿季が会っていたのは初耳だった。そういえば、僕は現在政府で秘密裏に行われている実験のモルモットだったと思い出す。
「ALO……メディキュボイドの中で、一度彼女に会ってみます。どうやら時間に余裕がある訳じゃ無さそうですし」
「時間?」
「木綿季は死ぬ気です」
「なっ!」
先生が驚くのも無理は無い。折角助かる見込みが見えたのに、自ら死を選ぶのだ。もう自分の人生に満足してしまったのだろう。彼女からは満足感と疲労感が強く感じられる。
仮想世界で長い時を過ごした彼女は、もしかして
……決心が着いた。僕は
「明日ログインします。では、失礼します」
部屋から出て、スマホを取り出す。僕は一生使うことは無いと思っていたある連絡先に電話を掛けた。