君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

アンケートではオーディナルスケールやりそうですね。
一話ですよ? 短いですよ? 薄いですよ?
まあ、やるならやるで手を抜く気は無いんですが。


ではどうぞ


《星奈》

 

 

 

 

 

 

 僕の叔父はALOを運営するベンチャーの役人だ。彼には管理人用アミュスフィアを手配してもらった。勿論タダじゃない。条件は三百万の寄付で済んだ。死銃事件の報酬全て、安い買い物だった。

 

『……君は何故その子に手を差し伸べる?』

 

 依頼する時、彼にそう聞かれた。何度も理由を自身の中で探した。その度に()()()がチラつく。

 ユウキはユウキだ、()()()じゃあない。そんなの当たり前だ。その筈……なのに。

 

『兄……』

 

 ベッドで血に塗れる妹の姿が脳裏をよぎる。救えなかった、届かなかったこの手が……今回は届いた。

 僕は彼女を妹――()()と被せてしまってるんじゃないか。そんな疑問は僕の中でずっと蝕んでいる。

 

 僕は彼女を、ユウキを救ったんだ。誇るべきことだ、胸を張っていいはずだ。なのになんで…………

 

 

~~~~~~~~~~

ユウキside

 

 メディキュボイドの外、仮想空間よりずっと狭い病室のベッドで目が覚める。何も無い無機質な病室、なのにボクはこの光景に感動している。

 

「木綿季君、少しいいかな?」

「はーい」

 

 扉が開いて、倉橋先生が入室してくる。先生の隣には、知らないおじさんも一緒に入って来た。

 

「こんにちは。君が木綿季さんかな?」

 

 表情筋の動かない無愛想な顔に圧されて、少したじろいた。

 

「ああ、ごめんね。威圧するつもりは無かったんだ。ただ生まれつき顔が厳ついだけだよ」

 

 笑ったつもりなのか、一層と眉を顰めた顔は逆に怒ったように感じる。

 

「自己紹介をしよう。私は陽月(ひづき)颯人(はやと)、陽月湊――ソルの保護者だ」

「ソル?」

 

 彼の本名は初めて聞いたが、ソルの名前で分かった。一度剣を合わせただけだが、何故かボクの頭の中に残る顔を思い出す。

 

「入れ」

「……失礼します」

 

 澄み渡る声を響かせて、ドアから一人の少年が入室した。赤茶色のウルフカット、暗褐色の瞳。何処か儚げな雰囲気を持つその少年と目が合うと、優しく微笑んだ。

 

「初めてましてに、なるのかな?」

「ソル……さん?」

「うん。僕がソル。陽月湊です。よろしく木綿季」

 

 ソル……湊さんはおじさんの隣の椅子に座る。

 

「木綿季さん、今日はあなたに一つ話があって来ました」

 

 颯人さんが声のトーンを落として言う。心無しか目付きも鋭くなっている気がする。

 

「木綿季さん……私達と、家族になりませんか?」

 

 突然のことに目を丸くする。ボクが……家族?

 

「養子縁組……ということになる。すまないが、君のことは少し調べた。……血縁者も保護者も居ない君はこれから、大変な苦労をすると思う。それを私は支えたい。書面上家族になるだけで、君の家族が君のお母さんやお父さん、お姉さんであることは変わらない。無理に親密になる必要は無いと考えている。……私はね」

 

 颯人さんは視線を湊さんに向ける。湊さんは面食らったように驚いた顔をする。

 

「僕が?」

「君が救ったんだ、誇りなさい。…………彼女は木綿季さんだ。君は木綿季さんを救ったんだ」

「…………」

「少し彼女と二人きりで話がしたい。いいかな?」

 

 颯人さんの要望で倉橋先生と湊さんが退室する。退室する時、湊さんの横顔を見た。その頬には、一粒の涙が流れていた。

 

 

「さて、彼について話をしたいんだが、独り言だと思って聞いてくれ」

 

 何かを思い出すように指を組んで、ゆっくりと颯人さんは語り出した。

 

「湊はね、私の甥なんだ。彼にも家族はもう居ない。父は事故死、母は過労死、妹は……病死だった。傍から見ただけだが仲の良い家庭だった。最後に残った唯一の血の繋がった妹を、それはもう大切にしていた。最期の時、彼は妹と一緒に居た。私が急いで駆けつけた時に見た光景は、血を吐いて倒れる妹と、唯それを眺める湊の姿だった。湊が壊れ始めたのは妹の葬式からだった。頻りに自殺を図り、生きることを諦めた眼をしていた」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をする颯人さん。

 

「私では……湊に何もしてやれなかった。ならばこそ私はせめて彼が死なないように環境を整えた。家の刃物は全て処分、食事も無理矢理摂らせた。少しでも興味がある物がないか、楽器、スポーツ、あらゆる物を与えた。…………ナーヴギアもそうだ。ニュースを見て、私は絶望したよ。湊がデスゲームの中になんて入ったらきっと自殺してしまう、そう思ったからだ。でも、湊は帰ってきてくれた。死にたいとも言わなくなっていた。でも、私は詳しい話は聞こうとは思わなかった。それから少し経って、彼は生き生きとし始めた。私が勝手に様子を見ているだけだったが、彼の変化が私は嬉しかった」

 

 それが心からの本音であることは、颯人さんの硬い表情からも伝わってきた。

 

「そんな彼が、君を救う為に初めて私を頼ってくれたんだ。この口は冷たく言い離すことしかできないが、内心ではとても感動したもんだ。湊はいつも一人で物事を解決しようとする。誰かを頼ることが出来なかったんだ。無論、見返りなんぞを求めず協力してやりたかったが、しかし私も立場というものがあった。湊からの多額の寄付を受けることで他の役員を黙らせたが、全く何処でそんな金額を稼いだものか、危ないことに巻き込まれていなきゃいいが」

 

 興が乗ってきたのか颯人さんはだんだんと早口になっていく。

 

「……っと、これぐらいにしておこう。つまり、湊は良い子だ。仲良くして欲しい」

「は、はあ」

 

 最初の印象との違いに戸惑いつつも応える。

 

「仲良く……なれるかな?」

「安心しなさい。湊は面倒見が良い。どんどん甘えなさい」

「……うん!」

 

 素敵な家族だと思った。ボクは幸せ者だ、こんなに優しい人と家族になれて、優しい兄を持って。アスナと仲間たちと、これからも一緒にもっと沢山の思い出を作れる。

 

「彼と話てみるといい。君の言葉で、今の彼の悩みは解けると私は思っている」

「うん! ありがとうおじさん!」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 自分の病室に戻って、ベッドの上から窓の外を眺める。学校に復帰するにもリハビリは長い期間が必要だと先生に言われたから、もう暫くはここのお世話になる。

 窓から入る明かりだけが照らす病室で、何も考えずにただ空を眺める。星はまだ見えない。

 

「失礼します」

 

 入口を見ると、杖にしがみつきながらもゆっくりと此方に近付く木綿季が居た。

 

「いきなり家族だなんて、吃驚したでしょ?」

「ううん。とっても嬉しいよ!」

 

 彼女の笑顔はまるで太陽で、暖かかった。

 

「……僕は君を、妹に重ねて見ていたかもしれない」

 

 僕が何を思って、感じて行動したのか、彼女は知るべきだと思った。木綿季を直視することは出来なくて、下を見て話す。

 

「自分でも変な奴だと思うよ。会ってすぐにプライベートを暴かれて、挙句に深く干渉した奴なんて、かなりの不審者だな」

「そんなことないよ! 湊さんのお陰で、ボクは今生きてるんだ!」

「……」

 

 まだまだ体はひ弱なままなのに元気に話す木綿季を見て、僕は複雑な気持ちになる。

 

「君には……姉が居ただろう? 僕が兄になることに抵抗は無いの?」

「……湊さんは湊さんだよ。それに、ボクはまだ湊さんのこと全然知らない。ボクの為に沢山苦しいことをしてくれたことを先生が話してくれて、申し訳なくなったんだ。こんなボクの為に……そんなことする必要なんてあるのか、って」

「必要はあったよ。僕は後悔していない。君を救えて……本当によかった」

 

 そう言うと、木綿季はニッコリと笑った。

 

「やっと笑ってくれた!」

「え?」

「いつもつまらないって顔してたから、笑わないのかなって、おじさんと一緒で。でもよかった! やっぱり笑ってた方が良いよ、()()()!」

「!」

 

 

『兄!』

 

 

 ……切り離さなくても、いいのかもしれない。星奈も木綿季も僕の大切な妹だ。それで……いいのかもしれない。

 

「……おいで」

 

 手で木綿季を招く。懸命に寄ってきた木綿季を両手で抱きしめる。

 

「よく……頑張ったね。これからは楽しいことがたっくさん君を待っている。……もし何かあったら、僕を頼ってくれ」

「うぇ、え!」

 

 まだ力の弱い彼女は僕を突き放せない。それどころか、逆に僕の背中に手を回した。

 

 

 

 

 

 どれだけそのまま抱き合って居たのか、陽はもう沈み、夜空には星と月が暗闇を照らしていた。

 もう僕には悩む必要は無かった。今にも壊れそうなこの心を治していくのは長い、永い時間が掛かるかもしれない。でも生きてさえ居れば和人や詩乃、木綿季と出会えたように僕は変われる筈だから。

 

(星に手を伸ばし続ければ……何時か…………)

 

オーディナルスケールいる?

  • やれよ
  • はよアリシゼーション行けよ
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