君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

やっとこさできました。
劇場版なので構成練るのは中々難しかったですね。
ソルの活躍としては妥当なものにしました。

劇場版ということで、作風も少し変えています。具体的に言うと一人称の文章じゃないです。特別感を楽しんで下さい。


ではどうぞ


オーディナル・スケール
《オーディナル・スケール》


 

 

 

 

 

 昼下がりの日差しの気持ち良い日、昨今の世間ではある物が話題をかっさらっていた。

 

『次世代ウェアラブルマルチデバイス《オーグマー》ですが、このオーグマーにはフルダイブ機能が無いとのことで、先発のアミュスフィアから技術的には退化してるように思えますが、それは間違いです。覚醒状態で使用出来るというのは、大きなアドバンテージと言えるでしょう』

『仮想現実の世界にフルダイブするアミュスフィアとAR、つまり現実を拡張するオーグマーは全く別物であると考えた方がよさそうですね』

『その通りですね。何よりオーグマーにはフルダイブマシンについて回る諸々の危険性が存在しません。むしろ、フィットネスや健康管理目的で使用するユーザーも増えているようです』

『その一例がこちらの最新ゲーム、オーディナル・スケールです』

 

「兄さんはオーディナルスケールしないの?」

「木綿季、僕はまだリハビリ中だよ。あんなに激しい動きなんて出来ないよ」

 

 横浜の病院で、ベッドの上で活発な少女とその横で林檎の皮をフルーツナイフで器用に剥く少年がテレビのニュースを見ていた。

 少女は紺野 木綿季、病気だったがメディキュボイドの臨床実験を経て、ALOで《絶剣》と呼ばれるに至った現最強の剣士。

 少年は陽月 湊、SAO生還者であり、死銃事件を解決に導いた立役者。世界で唯一の《仮想世界完全適応人類》にして、木綿季の病の治療する為に一役買っている。ちなみに、木綿季との再戦はまだしていない。

 この二人は訳あって血の繋がっていない家族となった。しかし、今のこの仲睦まじい様子を見ればきっと殆どの人が兄妹のように思うだろう。

 

『ゲームの人気拡大に一役買っているのがイメージキャラクターの《ユナ》です。世界初のARアイドルとしてデビューした彼女は、プログラムによって動くAIなんですが、言葉や表情があまりにも自然なので生身の人間が演じているのではという噂が絶えません。今月末には、ファーストライブも予定されているということですが、三万枚のチケットはあっという間に売り切れてしまったそうです』

『オーグマーとオーディナル・スケールの勢いはますます加速していきそうですね』

 

「兄さんはユナ知ってる?」

「うん、いい歌声だよね。…………また聴けるとは思ってなかったけどね」

「ん? 何か言ったの?」

「何でもないよ。ほら、口開けて」

「むぐっ」

 

 湊は思い詰めた顔したが、すぐに明るく振る舞う。切り分けた林檎を爪楊枝に刺して木綿季の口に放り込んだ。

 モゴモゴと林檎をほうばる木綿季は湊の様子を見て思案する。まだ湊のことを何も知らない自分では彼の考えていることが分からなかった。

 

 今日も二人でリハビリを頑張る日々だ。ゆっくりとだが、順調に回復している。

 《メディキュボイド》の臨床実験で酷使された湊は、医師から脳への負担を考えてVR禁止令が出ている。短時間なら問題無いと判断されているが、VRMMOなど長時間フルダイブすれば脳への負荷が無視出来ないほど深刻になるのだそうだ。

 

「なんでだろうね……」

 

 湊は眉を顰めるながら、後ろの机に置いてあるオーグマーを見る。帰還者学校と呼ばれる政府が創ったSAO事件被害者を集めた学校では、今話題のオーグマーを無料配布していた。学校に所属する湊も例外無くオーグマーを届けられていた。

 税金で配布するにしても生徒全員に配布するのは違和感が有る。()()だ、希望をとること無く全員への配布。木綿季の為に買ったオーグマーの値段を考えると疑心暗鬼に陥る。まるで、SAO事件被害者をターゲットにして開発されたかのような…………。

 

「そろそろやろうよ兄さん!」

 

 木綿季はオーグマーを大層気に入ったらしい。起動に時間を要するメディキュボイドと違い、手軽にゲームが出来るオーグマーはリハビリの休憩時間で楽しむには持ってこいだった。

 

「わかったわかった。服を引っ張らないでくれ」

 

 湊はやれやれといった様子でオーグマーを手に取り、後頭部に装着した。

 

「ちゃんと休憩もするんだぞ」

「はーい!」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「よう」

「いらっしゃい和人」

 

 黒髪黒目、中性的な見た目をした少年が手を上げて挨拶しながら病室に入ってきた。彼は桐ヶ谷 和人。湊と同じくSAO事件被害者であり、ゲーム内で名を轟かせた《黒の剣士》、《二刀流のキリト》だ。

 

「調子はどうだ?」

「ぼちぼちかな」

 

 湊と和人はSAO時代、二人並んで最前線で剣を取り戦い、和人はSAO、湊はALOから現実世界に帰還した時に接触して来た総務省の菊岡という人物の依頼で死銃事件を共に解決してきた相棒のような関係だ。

 政府の絡んだ湊の実験のことを知るのは湊の保護者である叔父と、実験をするきっかけになった木綿季と、菊岡との繋がりがある和人だけだ。湊に想いを寄せているシノン――朝田 詩乃は何とか湊の詳しい事情を知ろうとしているが、和人がのらりくらりと守秘義務を守ってるせいで一向に情報を得られないでいた。無事であることは伝えられたが、それでも心配なのだとこの頃は元気が無い。

 

「いつ頃戻って来れそうだ?」

「うーん…………。後数週間って感じかな」

「そうか。あのライブには間に合わなそうか」

「ライブねぇ……、行きたかったけど仕方ないね。木綿季も僕の退院の一週間後に退院を目処にリハビリを頑張っているよ」

 

 そういえば、と言って湊は懐から一枚のチケットを取り出した。

 

「これを詩乃に渡しといてくれ。最近元気が無いって聞いてね。彼女の歌声は元気をくれる。良い気分転換になればと思ってね」

「……ああ、了解」

 

 和人はユナのライブチケットを受け取ると、何か思い詰めた顔をした。

 

「どうかした?」

 

 湊は暗い顔をする和人を覗き込む。覇気が無いというより、何かに憂いているように感じた。

 

「いや……」

「ARは苦手か?」

「うっ、そういう訳じゃないんだが……」

「明日奈はお前の運動不足を嘆いてたぞ。ジムにでも通えばどうだ?」

「そう言うお前もそんな……いや、すまん」

「おいおい、お前に気を使われるとむず痒くなるからやめてくれ」

 

 木の枝のように細くなった腕に視線を落とす。前は逞しかったその腕は実験の影響で枯れるように変貌してしまっていた。

 和人は自身の失言に口を噤む。湊は肩を竦めて、和人がオーグマーを着けていないのに気付く。

 

「和人はオーグマー常着しないんだな。そんな嫌か、これ」

「お前も着けてないだろ」

「ドクターストップでね。オーグマーといえば……」

 

 口を開きかけて固まる。湊の考えていることは何の裏取りも無い不確かな推測だ。事軽く広めるのは如何なものか。

 

「いや、何でもない……」

「そうか? じゃあ、そろそろ行くよ」

「またね和人」

「またな湊」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「それは……本当か?」

「…………ああ」

 

 湊の電話を持つ手が震える。和人の彼女、SAO時代からの恋人である明日奈がSAOの記憶を失った。オーディナルスケールのボス戦に参加していた彼女はボスの攻撃を受けた衝撃で気を失い、目覚めた時にはもう何も思い出せないのだそうだ。SAOでのキリトとの大切な思い出……その全てを。

 

「原因は? 戻るのか?」

「色々試してはいるが……」

「…………」

 

 湊はなまじSAOから二人を見守ってきた分、失った記憶がどれだけ大事なものなのか容易に想像できてしまう。

 

「だが手がかりはある」

「危険なことに首を突っ込んでないか?」

「お前にそんなこと言われるまでもねえよ。大丈夫だ、明日奈の記憶は必ず取り戻してみせる」

 

 不安になる湊。彼は何かと巻き込まれるトラブル体質だ。しかもそのどれもが小さな物では無い為、いつの日か取り返しのつかないことになりそうな予感があったからだ。

 

「危なくなったら止めろよ」

「わかってるって」

「はぁ、わかってるのか? ……じゃあな」

「ああ、またな」

 

 不安になりながらも電話を切る湊。空には重い曇天が覆われていた。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 ユナのライブ当日。僕と木綿季は同室で同じベッドでオーグマーを着けて勉強している。

 

「むむむ……」

「ここはあの公式がー……」

「……あ!」

 

 こうしているとあの頃を思い出す。もう一人の妹と過ごした病室の一時。湊の妹である星奈も最初はよく質問してきていた、天才であった星奈は一度の経験から千もの事象を学ぶ。たった数年早く生まれた頭脳では教えることなどもはや無く、共に難しい本を読み漁ったものだと感慨に耽る。

 

『ソルお兄ちゃん!』

「およ? 珍しいねユイ、オーグマーを通して直接会うのは初めてじゃないかな」

『今はそれどころじゃないんです! 急いでアミュスフィアかメディキュボイドでダイブして下さい』

「わかった」

 

 湊は迷いなくアミュスフィアの電源を入れる。突然のことに木綿季は慌てて湊に問い詰めた。

 

「ちょちょちょ兄さん!?」

「何だい木綿季?」

「事情とか聞かないの? 急すぎない?」

「どうせ和人が何か巻き込まれたんだろ。僕には解る」

 

 そう言いつつ、湊はもう一つのアミュスフィアも起動させた。

 

「はい」

「え?」

「僕一人じゃ不安だからさ、木綿季も手伝ってほしいな」

「……まっかせて!」

 

 満開の笑顔でアミュスフィアを受け取る木綿季。そこには、湊に対する深い信頼が有った。

 

「話は接続中に頼めるかな?」

『わかりました。時間が無いので簡潔に話します』

 

 後で先生に怒られるかな、なんてことを考えながらも湊はベッドの上に横になった。

 隣のベッドに居るはずの木綿季も湊と同じベッドに入ってくる。

 

「……狭くない?」

「そう?」

「……まあいいや。行くか」

 

「「リンク・スタート!」」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「それで、僕らは何をすればいいの?」

「ソルお兄ちゃんとユウキさんにはパパとママの援護をして欲しいのです」

「だってさユウキ」

「ボクに任せてよ!!」

 

 そう言うと、ユウキは持ち前のスピードで我先にと行ってしまった。

 ソルも続こうとしたが、ユイに呼び止められた。

 

「ソルお兄ちゃんにはこれを」

「これは?」

 

 ユイの手には黄金に輝く光の珠がある。ソルがそれに触れると、黄金は彼のアバターに纏わり付き、装備へと変化した。

 紺のシャツに濃緋色のジャケット、手足には鋼の装甲、腰にはコイルをたなびかせている。

 

「これは、SAOの……」

「私に出来るのはここまでです。後は頼みます」

「任せろユイ。パパとママは必ず救い出してやる」

 

 湊はユイに感謝を述べ、光のゲートに向かうユウキの後を追った。

 

 

~~~~~

 

 

 キリト達はユナにこのイベントの真の目的がSAO被害者全員の記憶のスキャン、その結果としてこの場の全員の命が危ないことを教えられ、旧アインクラッド百層――紅玉宮のボスを倒す為オーグマーに備え付けられていた機能を使ってフルダイブした。

 

 ボスの名は《アン・インカーネイト・オブ・ザ・ラディウス》。大型の人型エネミー、右手に巨大な剣、左手には槍を携えたアインクラッド本来のボス。

 キリト達はボスの猛攻や、見えない透明な障壁に苦戦しつつもダメージを着実に与えているが、大樹を生成してその雫を受けたボスは折角与えたダメージも全て回復されてしまう。

 

 必死に戦うキリト達だが、エギルとリズベットは樹に捕らわれ、シリカはサイコキネシスで操作された岩盤に押し潰され、シノンは瓦礫の下敷きになり、キリトはボスの手に握られる。

 絶体絶命の危機に現れたのは、アスナだった。落下するように細剣をボスの左眼に突き刺したアスナが剣を抜くと、鮮やかな赤色の細光が撒き散った。

 

「アスナさん!」

「シリカちゃん!」

 

 アスナは岩盤から解放されて落下するシリカを抱き締め、ボスが生み出した樹の上に着地した。集合するようにキリト達は二人に駆け寄る。

 

「大丈夫なのか?」

「うん、私も戦う。戦えるよキリト君」

 

 大きく頷き合うキリトとアスナ。その隙を逃さず攻撃しようとするボスをシノンが狙撃で抑える。

 火力的に抑えきれないボスは剣を取り、キリト達に一直線に突進を繰り出す。しかし、剣を振りかぶる間もなくALOの風魔法が行く手を阻んだ。

 

「お兄ちゃーん! お待たせ!」

「アスナー! 助けに来たよー!」

「パパ、ママ、皆さんを呼んできました!」

 

 キリトの妹である風妖精(シルフ)のリーファ、ALOで現最強の剣士《絶剣》であるユウキ、SAOで二人と出会ったAIのユイだった。彼女たちの背後からも次々と妖精が飛び込んで来た。

 更には多数の銃撃の嵐がボスを襲う。銃火器を使って戦うGGOのガンマン達だ。

 どれもキリトたちと関わりのある顔ぶれ、皆んなが援軍として駆けつけてくれたのだ。

 

「時間が無いぞ」

「たたみかけろ!」

「大丈夫です。これを使って下さい!」

 

 ユイが光の珠を取り出して掲げると、キリト達はSAO時代の装備に身を包んでいた。シノンにはGGOの装備、へカートが装備されている。

 

「これは……」

「このSAOサーバーからに残っていたセーブデータから、皆さんの分をロードしました。シノンさんの分はオマケです」

 

「よし! みんなやろう!!」

 

 キリトの掛け声を皮切りに集まった全てのプレイヤーが攻勢に出る。一斉に攻撃を受けるボスも一切狼狽えない。激しい攻撃は更に激化する。

 

 耐えきれないと判断したのか、ボスは大樹を生成して回復を計ろうとする。

 

「あれを防いで!」

 

 アスナの指揮の下、阻止すべく各々ダメージを与えようとするも、直前に張られた障壁に吸収される。

 

「やばいよアスナ」

「くっ」

 

 絶剣のユウキでさえあの障壁は一撃では破壊出来ないものだ。このままではまた全回復されてしまう。もう時間が無い中、またボスのHPを減らしていく余裕は無い。

 

「やめろー!」

 

 二振りの剣を構えて叫ぶキリト。

 

 

 

 

 その叫びに応えたのか、空から星が堕ちて来た。

 白い光を放ちながら堕ちる星は難なく障壁を破り、ボスの雫を受ける宝石のような部位を粉々に砕いた。

 

 降り注いだ星、その姿には見覚えがあった。赤茶色の髪、暗褐色の瞳を持つ少年。彼の手には純白の剣《ウィッシュ オープン ア スター》、漆黒の盾《サン トゥ ムーン》。彼が放ったオリジナルソードスキル(OSS)は〈フォーリン・スター〉、二撃を刹那に放つ重二連撃の技だ。

 

「真打の登場……ってか?」

「ソル!」

「ソルっ!」

「遅いよ兄さん!」

 

 部位を破壊されたボスの回復は阻止され、〈スタン〉状態になった。無防備なボスに攻撃の雨が降る。

 

「時間は?」

「もう無い!」

「了解」

 

 それだけでソルとキリトは通じ合える。ソルは半身になり、剣を盾に擦らせるように構える。

 ボスが生成した多数の樹の根がソルを襲う。

 

「手伝うよ!」

 

 ユウキの援護もあり樹の根を捌く二人。ソルは受け流しつつもソードスキルをボスに叩き込む。

 

「削り切るぞ! 加速して行け!」

「行くぞアスナ!」

「うん!」

 

 ボスのヘイトはキリトとアスナに向くが、ソルが立ち塞がる。

 

「進め二人共。ユウキはアスナの援護を」

「了解!」

 

 迫る樹の根、シノンの狙撃とリーファの魔法が数を減らすがまだ断然多い。

 

「……シッ!!」

 

 しかしソル盾と剣でその全てを断ち斬る。距離を詰められたボスは槍攻撃を放つ。

 ソルはこれを全身を使って盾で槍の向きを変えさせる。

 

「スイッチ!!」

「行くよアスナ!」

「ええ!」

 

 

「「はあああああああああ!!!」」

 

 アスナとユウキは飛び上がり、剣に青紫色の光を宿した。ユウキのOSS〈マザーズ・ロザリオ〉、脅威の十一連撃。二人合わせて二十二連撃が貫く。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 キリトがスイッチでトドメの二刀流ソードスキル十六連撃〈スターバースト・ストリーム〉を放つ。

 

「これで決めるぞ」

 

 ソルはキリトにまとわりつくように踊る。ソルの持つユニークスキル《舞闘術》の本領は多種多様の武具の技を思いのままに繰り出せることにある。対人戦は勿論、対mob戦でも臨機応変な立ち回りが可能だ。その利点を利用したソルの得意な戦法はこうして誰かと共に()()ことだ。本人曰く繋がってる感覚があって良き、だそう。

 

 

「はああああ!!」

 

 キリトの最後の一撃が入りボスは爆発四散、飛び散った光の粒は大剣へと成った。

 

 

『これで完全クリアだな、キリト君、ソル君』

「茅場?」

『しかし、君にはまだやることがあるだろう?』

「行ってこいキリト」

 

 ソルが手伝えるのはここまで、これ以上は医師に言われている通り脳への負荷が看過できない程になる。

 

「またねアスナ!」

「うん、またね」

 

 ユウキもアスナに別れの挨拶を終え、ログアウトの準備を進める。

 

「待ってるからな」

「おう、すぐ退院するから待ってろ」

「あー! ボクも一緒に退院したい!」

「ふふふ」

 

 三人でキリトのお見送りをする。さてと、とソルが振り返ると、シノンが怒った顔で詰め寄ってきていた。

 

「ソル? 何か言うことがあるんじゃないかしら?」

「……心配かけてごめんなさい」

「あなたには言いたいことが山ほどあるわ。……でも」

 

 両腕で抱き締められるソル。

 

「あなたが無事でいて……本当に良かった……」

「もうすぐで退院なんだ。退院したら、真っ先に君に逢いに行くよ」

「今すぐにでも迎えに行きたいけど、……待ってるわ」

「うん……待ってて」

 

 抱擁を解いて、見つめ合う二人。

 

「兄さん! もう行っちゃうよ!」

「わかったよユウキ、今行く。……またね」

「うん、……またね」

 

 ユウキがソルの手を繋ぎ、ログアウトボタンを押した。ソルも続いてログアウトする。

 こうして、この一件は一旦の解決を迎えた。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

『先日、新国立競技場で行われたARアイドル《ユナ》のライブにおいて、オーディナル・スケールのモンスターが多数現れた事件は、イベントのサプライズ演出であると主催者発表がありました。次のニュースです。オーグマー等の運営会社《カムラ社》は本日、開発責任者である東都工業大学の重村教授の退任を発表しました』

 

 

~~~~~

 

 

「「「「退院おめでとう!!!」」」」

「ありがとう!」

「ありがとうね、みんな」

 

 落ち着いた雰囲気のお店、ダイシーカフェでは湊と木綿季の退院祝いのパーティーが開かれている。

 

「お前も大変だったなあ」

「もう体は大丈夫か?」

 

 クラインこと遼太郎と、エギルことアンドリューが湊に心配の声をかける。湊は苦笑いしながらも答える。

 

「もう大丈夫です。僕より、木綿季のリハビリの勢いはもう凄かったですよ」

「ふふん! 同時に退院出来てよかった!」

 

 湊の入院理由は公には伏せられている為、真実を知るのは和人と木綿季だけだ。

 

「にしても、湊さんってかなり強かったんですねー」

「あら? そういえば戦ってる所見たこと無かったっけ?」

「そうですねー。ALOの大会にも滅多に顔出さないので、撮ってもらった映像を見るぐらいしか知りませんでした」

 

 リーファこと直葉は湊の強さに驚き、それにシノンこと詩乃は含み笑いを浮かべる。

 

「確かに、湊はGGOに良くログインしてるからね」

「えー! そうなんですか!」

「そうよ。私と一緒によくプレイしてるわ」

「もっとALOにも来て下さいよ湊さん!」

「そうだよ! もっとALOに来てよ!」

 

 木綿季も加わり口論は賑やかになる。

 

「賑やかねえ」

「やっと戻ってきたって感じですね」

 

 リズベットこと里香とシリカこと珪子も見守る中、湊に直葉と木綿季が詰め寄る。この場に和人と明日奈の姿は無い。

 

(今頃お楽しみかな?)

 

 二人の予定を知ってる湊は宙を見上げる。

 

『いつか二人で流星を見たいなって話をしてな』

 

 いつの日か、アインクラッドで嬉しそうに語るキリトの顔は、今でも思い出せる。

 

「聞いてるの兄さん?」

「聞いてますか湊さん?」

「あー……」

 

 湊は現実逃避は難しいと判断し、目線で詩乃に助け舟を求めた。

 

「……彼とはGGOデートがあるから。ごめんなさいね」

 

 突然の爆弾投下。残念ながら、湊と詩乃は恋人のお付き合いをしている訳では無い。詩乃は猫のような妖艶な笑みを浮かべる。

 

「詩乃さん!?」

「え? 湊さん付き合って……」

「いやー……無いですよ?」

「本当に、兄さん?」

「無いですよ?」

 

 

 ちなみに、納得してもらうまで一時間程かかったとか、かからなかったとか…………。

 

 

 

オーディナル・スケール編 終幕

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