忙しくて投稿してなかったんすねー。
やっとアリシゼーション始まります。
ではどうぞ
《幼馴染》
人界暦372年 7月18日。
自然豊かな森に一定の間隔を空けて斧を振る音が木霊する。
「……49っ」
──ゴーン。
「おっ」
一際よく響く音に黒髪の少年は起き上がり、木の枝で地面に印を付ける。
肩を上下させながらも、亜麻色の髪の少年は斧を振りかぶる。
「ごーじゅうっ!」
──カン。
「……ぷはっ!」
疲れ果てた亜麻髪の少年は仰向けで地面に倒れる。大きく息を吸いながら胸を膨らませる。
「いい音がしたのは50回中3回だったな。……えっと、全部合わせて41回か。どうやら今日のシラル水はそっちの奢りだぜ。――ユージオ」
「ふん、そっちだってまだ43回じゃないか。すぐに追い付くよ。そら、お前の番だぞ――キリト」
「へいへい」
キリトと呼ばれた黒髪の少年はユージオから斧を受け取ると、自分たちの目の前に聳え立つ巨大な黒樹に目を向ける。
「1年と3ヶ月、毎日これだけ斧を振るってるのに……やってられないなあ」
自分たちが切り倒そうとする大樹は緑が生い茂り、まるで倒れる気がしないことにキリトはため息を漏らす。
亜麻髪のユージオも息が整ったのか、起き上がって苦々しい顔をするキリトに声をかける。
「文句を言っても仕方ないさ。この《ギガスシダー》を切り倒すことこそが、僕らの《天職》なんだから」
「それはわかっちゃいるけどさ。ホント達成感の無い仕事だよな」
キリトはギガスシダーに近付くと、指でSの軌道をなぞる。すると、システムウインドウが開かれた。そのウインドウには
「えっと……この天命、前は幾つだっけ?」
「確か……235590くらい」
「たった50…………。2ヶ月こんだけ頑張って23万なんぼの内たった50!! これじゃ一生かかっても切り倒せねえよ!!」
「あはは、なんたって鉄の硬さを誇る大樹だ。僕らの前に六代の刻み手が300年頑張ってたんだからさ。後十八代、900年くらいはかかるよ」
「お~ま~え~は~、おら!」
「うわ!」
キリトはユージオに飛びつくと、勢いのままそのまま数回転して覆い被さる。有利な位置を取って、そのまま頭をワシャワシャと手で掻き回す。
「な、何す……や、やめ……こ、こいつ!」
ユージオはキリトの肩を突き飛ばして今度は自分が上になる。そしてお返しとばかりに脇腹を擽り始めた。
「そらお返しだ。この」
「うひゃひゃひゃひゃひゃ」
「どうだ参ったか」
「やったな」
足を上げた反動を使いまたキリトが上になる。密接にじゃれ合う元気な少年たちだ。
「こらー! またサボってるわね!」
「やれやれ、何やってんだよ」
そこに現れたのは幼き二人の少年少女。赤茶色の髪の少年と金髪の少女だった。
二人の登場にキリトとユージオは苦笑いを浮かべる。
「や、やあ、――アリス、ソル」
「し、神聖術の勉強は終わったのか二人とも。今日は随分早いけど」
二人の弁解を聞いて、ソルとアリスは溜息をつく。
「いつも通りだけどね」
「喧嘩する元気があるなら、ガリッタさんに言って刻む回数を増やしてもらった方がいいかしら?」
「う……」
「や、やめて……それだけは……」
二人は冷や汗をかいてアリスを止めようとする。
「冗談よ」
「結構えげつない冗談だったな」
「うるさいわねソル。さ、早くお昼にしましょ」
そう言ってアリスは手に持つバケットから敷布を取り出してソルに渡して、ソルが広げた布の上に次々とバケットの中の食べ物を置いていく。
「今日は暑いから、悪くなっちゃう前に急いで食べてね」
「「おお!」」
「こら、零すな二人とも」
アリスの言葉にキリトとユージオは待ち焦がれたパイを手に取り食べ始める。
「うーん。今日のパイは美味しいなあ」
「うんうん、だいぶ腕が上がってきたみたいだなアリスも」
「おいコラ、パイは僕とアリスの合作なんだぞ。美味いのは当たり前だろが」
「今日はソルの一手間が効いたのかもね」
ソルのツッコミに三人は笑顔になる。
「それにしても、折角の美味い弁当なんだからもっとゆっくり食べたいよな。何で暑いとすぐ悪くなっちゃうんだろう?」
「何でって」
「冬なら、生の塩漬け肉を外にほっぽっといても何日だって持つじゃないか」
「そりゃあ、冬は寒いからね」
「そうだよ。なら寒くすればこの季節だって、弁当は長持ちするはずだ」
「もうちょっと火を入れてもよかったかもな」
「火の調節は難しいわよねー」
キリトの話を他所に、ソルとアリスはパイ片手に料理談話している。
「聞いてるのかソル」
「ん? あー聞いてる聞いてる。弁当を長持ちさせるなら冷たくすればいいさ。でも、やっぱり出来たてが一番美味いだろ?」
「そ、そうだけどさ……」
「そもそも、どうやって冷やすってんだよ。絶対禁忌の天候術で雪でも降らせるのか? 公理教会の整合騎士がすっ飛んでくるぞ」
「んむぅ……」
手を組んで考え込むキリト。すると何か思いついたように顔を上げる。
「……氷だ」
「ん?」
「ぬ?」
「氷がいっぱいあれば、充分に弁当を冷やせる。そして美味い弁当をいつまでも食べられる!」
キリトは我天啓を得たりと立ち上がり声を上げる。
「あんたねえ、今は夏なのよ。氷なんか何処にあるっていうのよ。王都の市場にだってありはしないわ」
アリスに諭されるキリト。しかしキリトも諦めきれないのか、少し考えて口を開く。
「なあ、英雄ベルクーリの武勇譚、覚えてるか?」
「ん?」
「どの話?」
「あれだよ、ベルクーリと北の白い竜」
『英雄ベルクーリは、ルール川沿いを北に進んだ果の山脈の洞窟で、財宝の山とその上で眠る巨大な白竜を見つける。そして宝の中から美しい剣を手に取るが、その途端…………』
「あの話だと、洞窟に入ってすぐでっかい氷柱が生えてただろ。そいつを折ってくれば……」
「キリトぉ……」
「お前なあ……」
「……悪くない考えね」
キリトの提案にアリスだけが賛同の声を上げる。ユージオは否定的な姿勢でアリスに言う。
「あのねえ、知ってるだろ。村の掟では……」
「村の掟は、大人の付き添いなく子供だけで果の山脈に遊びに行ってはならない、よ。でも、氷を探しに行くのは遊びじゃないわ。お弁当の天命が長持ちするようになれば、村のみんなが助かるでしょ? だからこれは仕事のうちと解釈するべきだわ」
「うん、そうだな、まったくその通り」
アリスは行くのに前向きだ。キリトは腕を組んで大きく頷く。
「でもさ、果の山脈に行くのは村の掟だけじゃなくて、
「……《禁忌目録》、ね」
《禁忌目録》――《公理教会》が定めた、反することは許されない絶対の法。何人たりとも破ろうとすら思わないが、もしも違反する者が居れば、整合騎士が即刻捕らえに来る。
ソルが苦々しい顔で呟く。
「禁忌目録第1章3節11項、何人たりとも、人界の果てを囲む〈北の山脈〉を超えてはならない。もっと細かく言うと、その向こう側《ダークテリトリー》への侵入……。洞窟に入ることは禁止されていないぞユージオ」
「もー、ソルまでキリトの味方しちゃうの?」
「いや、僕は反対だ。ダークテリトリーには邪悪なゴブリンやオークが居ると言われているんだ、危険だよ」
「ダークテリトリーに行くわけじゃないから大丈夫よ」
「そーだぞ。よし、決まり! 次の安息日は」
「駄目そうだな」
「そうみたいだね」
「「はぁ……」」
アリスとキリトは行く気満々だ。ユージオとソルは顔を合わせると、大きい溜息をついた。
~~~~~~~~~~
「ふんふんふん♪」
三人の前をアリスがご機嫌な鼻歌を歌いながら歩く。後ろの三人の手には氷を入れる為のバケット、水筒、ロープを分けて持っている。
三人は小川に沿って、森の中を進む。
「まったく、荷物は俺らに持たせるんだからな」
「言い出したのはお前だろ」
「まあまあ二人とも、こうやってアリスと出かけられるのも、今だけかもしれないよ。アリスは村長の娘だから。これからはもっと色々な勉強に時間を取られちゃうだろうし」
ユージオの言葉にキリトとソルはアリスの後ろ姿を見る。
「ま、天職に就いてないのも、神聖術の才能を伸ばす勉強の為だしな」
「それに村の規範になるよう、男の子と遊ぶのも禁じられちゃうかも」
「…………それはやだな」
ソルだけは眉を顰め、アリスを眺める。
アリスは後ろの会話が気になったのか、振り返って言う。
「こら、何三人で内緒話してるのよ」
「い、いや何でもない。な?」
「う、うん。夕方の鐘までに村に帰らないといけないって話してたんだ」
「ソルスが空の真中に来たくらいで引き返そうってな」
「そう、そうとなれば……急ぐわよ!」
アリスは元気一杯に再び前進する。三人は顔を合わせて、軽く笑った。
~~~~~
「そういや知ってるか? この村が出来たばっかりの頃は、偶に闇の国から悪鬼――ゴブリンだの、オークだのが山を越えて来て、羊を盗んだり子供を攫ったりしたんだぞ」
キリトのからかうような話に、ソルは呆れた声で話す。
「勿論知ってるよ。幾ら御伽噺とはいえ、危険だって反対したじゃないか」
「今更私たちを怖がらせようとして。最後には王都から整合騎士が来て、退治してくれたんでしょ」
アリスもソルの隣で、ムスッとした顔で言う。キリトはまるで語り部のように身振り手振りで話を続けた。
「それからというもの、果の山脈のずっと上を飛ぶ白銀の竜騎士が見えるようになったのです」
その時、果の山脈の向こう、遥か上空に白く光る何かを見つけた。その光景に四人は揃い息を呑む。
「まさか……ね……」
アリスが一人、呟いた。
~~~~~
「システム・コール。ジェネレート・ルミナス・エレメント。アドヒア」
洞窟の入口に到着すると、アリスは神聖術で猫じゃらしに光を灯した。
ユージオを先頭に、四人は一列で暗闇の中を進んでいく。
「ねえ。確か、洞窟に入ってすぐ氷の氷柱が有るって言ったよね」
「言ったっけそんなこと」
「寒い……。もうすぐであるだろ」
「この寒さならきっとあるはずよ」
四人の声が洞窟内に響く。
「ねえ、ほんとに白竜に出くわしたらどうするの?」
「そりゃあ、逃げるしか……」
「大丈夫、白竜だって氷柱を取るくらい許してくれるさ。うーん、……でも鱗の一枚くらい欲しいな」
「キリトお前なぁ……」
―パキ。
ユージオが何かを踏み砕いた。光を照らされ、反射する純度の高い透き通る氷がそこにあった。ユージオが踏んだ氷には蜘蛛の巣模様の亀裂が入り、空気で白く濁る。
「あった! あったよ氷! この先に、もっとあるはずだ!」
あまりの喜びに足を速める四人。駆け抜けた先で、広い空洞に出た。
そこで四人が見たのは、幻想とも云える光景だった。轟々と佇む氷の柱。空気を内包していない透いた水の結晶。
美しい氷の空間に、四人は言葉を失う。
「これだけあったら、村中の食べ物を冷やせるわね」
「それどころか、しばらく村を真冬にだってできるぜ」
「それは流石に無理……だ……ろ…………」
キリトにつっこむソルの言葉は続かなかった。口は震え、目を瞠る。
「おい……。これは、こんなの……て……」
氷界にて唯在る巨大な骨。先鋭な爪、鋭利な牙、長い尾、翼と思われる骨もある。何かの死体の思われる骨の下には金財宝が輝きを放っている。
「白竜の……骨……?」
「死んじゃったの?」
ユージオとアリスの疑問を聞きながらソルは頭の骨に歩み寄る。
「傷だらけだ……」
「これは剣の傷だ」
キリトは足元の爪の一部を拾う。
「この竜を殺したのは……人間だ」
「え?!」
「でも……。だって、英雄ベルクーリだって、逃げることしか出来なかったのよ」
「……整合騎士?」
ソルの一言に、三人の視線がソルに集まる。
「公理教会の整合騎士が、何故人界を守る守護竜を? 目的は……? ……いや、ダークテリトリーの暗黒騎士? 村に危険は無い……。竜は英雄より強い……、人外の強さ……」
右手を顎に当てて、深い思考を回転させる。その横で、キリトは何かを持ち上げようと奮闘している。
「何してるんだキリト?」
「うお、めちゃくちゃ重いな」
「これもしかして……」
「ああ、ベルクーリが盗み出そうとしたっていう《青薔薇の剣》だろうな。一人だけじゃとても運べないよ。他にも、色々お宝があるみたいだけど」
「うん、持っていく気にはなれないわね。……墓荒らしみたいだし」
「でも、氷くらいならきっと白竜も許してくれるよな」
せっせと氷を積めるキリト達、キリトは考え耽っているソルの肩を叩く。
「戻るぞソル。いい加減戻ってこい」
「……今思い出したんだが、僕ら……どっちから来たんだっけ?」
~~~~~
「もう随分歩いたけど……」
「近い方だからってこっちの道を選んだのはアリスだろ」
「何か言った?」
「いや何も」
「……風の音?」
確かに風の通る音が耳元で鳴っていた。
「外が近いんだ! こっちで良かったんだ!」
「嫌な予感がする。待ってユージオ!」
走り出すユージオをソルは必死で追いかける。
「ちょっと、こんな所で走ると転ぶわよ!」
アリスとキリトも二人を追いかける。四人は光有る外に出ることが出来た。しかしそこは……。
赤い大地、緑の無い草木、空気も澱んでいる。《ダークテリトリー》、闇の軍勢が蔓延る不可侵の地。
空から激しい剣戟の音が響いた。空駆る二頭の飛竜、その背に跨る騎士が空中戦を繰り広げる。
「整合騎士と……暗黒騎士……」
ソルがふと呟いた瞬間に、整合騎士の弓の一撃が暗黒騎士に命中した。そのまま落下した騎士は、ソル達四人の近くに倒れた。
こちらに気付いた暗黒騎士が手を伸ばす。もう助かることは難しいと自覚しているのか、救いを求める手だった。
その手に誘われるようにアリスは一歩、一歩と進み出した。侵入することは許されない《ダークテリトリー》へと。
「駄目だアリス!」
ソルは必死に腕を伸ばす。手を伸ばしても、まだ届かない。地面を蹴って飛びついて、ようやく彼女を引き止めた。
「大丈夫アリス…………!?」
倒れる時、暗黒騎士へとアリスは手を伸ばしていた。指の第一関節の先、ほんの少しの体の一部が、
「…………!?」
「…………!?」
「わ、わたし……」
「アリ……ス。っ?!!」
ソルは何かを感じたのか、勢いよく後ろを振り向く。それに釣られてキリトとユージオも同じ方向を見ると、空間が歪み、現れたのは白い人間の顔。
「シンギュラー・ユニット・ディテクティド・アイディ・トレーシング・コーディネート・フィクスト・リポート・コンプリート」
神聖語なのか、長い詠唱を終えた人間の顔はすぐに消えてしまった。
「消えた……。今の、一体……」
「わからない。とにかく戻ろう」
「………………何が、起きてんだよ……」
~~~~~
四人は急いで村に戻った。一目散に走った四人とも肩で息をする。アリスに関しては座り込んでしまっている。
「さあ、家に帰ろうぜ」
キリトは氷の入ったバケットを掲げて、暗い顔をする三人に言う。
「じゃあこれ、地下室に入れておくね」
「僕が持ってくよ」
ソルはアリスからバケットを取り上げる。二人はキリトとユージオに背を向けて歩き出すが、アリスは振り返って、笑顔で言った。
「明日のお弁当、楽しみにしててね」
「おう」
「うん」
「…………」
夕暮れ時、解散してもソルだけは常に暗い顔をしていた。
~~~~~~~~~~
――次の日。
「……ソル? 大丈夫?」
「……何が?」
「あなた、昨日からずっと顔色が悪いわよ」
「……ねえアリス」
厨房で二人並んでパイを作っていると、外の方が騒がしくなってきた。
「何かしら? ソル、行きましょ」
「アリス……」
ソルは手を引かれてアリスと外に出る。村の噴水広場に出ると、すでに多くの村人が何事かと集まっていた。
皆が見ているのは、白い飛竜と、……《整合騎士》。
「アリス、行こう」
「え?」
ソルはアリスの手を取る。
「ソル、アリス。すぐにここから離れよう」
キリトとユージオも騒ぎに駆けつけていた。アリスが戸惑う中、アリスの父親である村長は整合騎士に近づいていった。
「お父さん」
「早く、行こうアリス」
ソルは腕を引っ張るが、アリスは一向に動く様子が無い。
「村長を務める、ツーベルクと申します」
「ウォーランガルス北域を統括する公理教会整合騎士、デュソルバート・シンセシス・セブンである。ガスフト・ツーベルクの子、アリス・ツーベルクを禁忌条項抵触の咎により、捕縛連行し、審問の後処刑する」
整合騎士の言葉に衝撃が走った。
「罪状は、禁忌目録第一章三節十一項、ダークテリトリーへの侵入である」
「っ!? 行こうアリス! 早く!」
ソルは力づくでアリスを引っ張るが、アリスは何処からそんな力があるのか、全く動かない。
そのまま拘束を受けてしまう。
「アリスぅ!」
「落ち着けソル。俺が斧で打ち掛かる。その内にユージオと一緒にアリスを連れて逃げろ」
「キ、キリト……それは……」
ユージオの体は震えている。その間にも、アリスを拘束する鎖は飛竜と繋げられてしまう。
「っ!」
キリトが飛び出す。斧を振りかぶり、数歩走り出した時だった。
「ぐあ!」
「キリト!」
突然、キリトが吹き飛ばされた。威圧の類じゃない、まるで
(今しかない!!)
ソルはこれを隙と見て、アリスに向けて走り出す。
……が、
「ぐぅ!」
横からぶつけられた
「その子供らを広場の外に連れ出せ」
「テメェ……!!!」
「ユージオ頼む! 行ってくれ!」
ソルとキリトは村人に数人がかりで押さえつけられ、動くことができない。
狼狽えるユージオだが、急に右目を抑え苦しむ。
「ユージオ! せめてこいつらをどかしてくれ! そしたら俺が! ユージオ!」
「邪魔だ!!!」
一人、ソルは拘束を無理矢理抜け出し、走り出す。
しかし、飛竜の高度はみるみる上がっていく。懸命に手を伸ばしても、アリスには触れられなかった。
「アリス!」
「ソル!」
「アリスぅ!」
すぐに村人に押さえつけられる。今度は七人がかりだった。
「アリスぅううううううう!!!」
飛竜は飛び立ち、アリスは連れ去られてしまった。広場にソルの悲鳴が響く。アリスの申し訳なさそうな顔が、ソルに目に焼き付いた。