アリシゼーションは原作準拠でいくと量が凄いのでアニメ基準でいきます。
これ以上はアベマで無料になるまで進められんなぁ。
何とか頑張って書きます。
ではどうぞ
今日は生憎の雨。傘をさして校門の前で待つ。片手が傘で塞がってる為、本を取り出して読むことは出来ないが、雨音は好きなので耳を澄まして聴き耽る。
目を瞑れば、最近見た夢を思い出す。
金色の美しい蝶々。手を伸ばしても届かない遥か高い空に吸い込まれる。その蝶々が見えなくなるのを、赤、黒、青の蝶々と共に見守った。
気が付くとそこは燃える花畑だった。蝶々を逃がそうとしたけど、
夢にしてはやけに現実味があって、何時も赤い蝶々だけが消えていく。金、青、黒に迫る焔を一身に纏い、そのまま焦げ朽ちていく。
(……哀しくは無い)
もし、赤蝶々が他の蝶を庇うことが無ければ、一緒に火の手から逃げ切れたかもしれない。でも、他の蝶達が燃え落ちるかもしれない可能性があるから、赤い蝶々は庇った。それが何故だか僕には解った。その蝶々は、
「お待たせ」
彼女の声に、僕の意識は現実に戻る。校門の方を見れば、詩乃が居た。
「おつかれ、行こうか」
「あなた……少し痩せた?」
「うん? そうかな?」
「顔色も悪そうよ。無理してない? 今日はやめときましょうか?」
今日は二人で買い物をする約束だった。雨が降ったのは予想外だったが、僕の体調が悪いことはない。楽しみにしていたのに、お預けされるのは勘弁だ。
「天気が悪いからかな。大丈夫、無理もしてないし具合が悪いなんてことはないよ」
「……そう? ならいいけど」
「ほら、今日はあの古本屋に行くんだろ?」
~~~~~~~~~~
買い物を終え、雨の街道を二人で進む。和人と明日奈が何処から聞いたか知らないが、詩乃との買い物を知って何故かニヤニヤと僕をからかってきたのを思い出す。その時は軽く受け流していたが、彼らの言いたいことが解らないでも無い。自身に睡る気持ちの正体には……とっくに気付いていた。
「またボーっとしてる。危なっかしいわよ」
そう言うと同時に彼女は僕の手を取る。彼女の温もりが雨水に温度を奪われた手に浸透する。その熱が伝ってきたのか、僕の頭の奥がジンと熱くなった。
「…………」
「どうしたの?」
彼女の瞳が僕を映す。動悸が激しい。必死に平静を取り繕う。
何時から? 何時からだろう? いや、もしかしたら最初からだったのかもしれない。自覚をしたのはつい最近、ふとした瞬間、嗚呼これが…………。
「……これ」
「?」
足を止め、鞄の中から小包を取り出す。そして、疑問の顔をしている彼女に差し出す。
「受け取ってくれないか?」
「なによ急に」
「……なんとなく?」
何故今日なのかは自分でもわからない。でも今日じゃないといけない気がした。
「これは……」
中身は太陽を模したペンダントだった。詩乃の手からペンダントを取って、彼女の首に着けた。
「うん。似合ってるよ」
「そ、そう?」
彼女は恥じらう。手で顔を隠し、伊達眼鏡越しに僕の顔を見る。それがなんとも愛おしく、大切な光景だった。
~~~~~
「今日はありがとう」
「送ってくれてありがとう。……また行きましょ」
「…………うん。またね」
彼女をアパートまで送り届けて、自分も帰路に着く。まだ電車は動いてるので、駅に向けて歩を進める。雨はとっくに止んでおり、閉じた傘を杖のように片手で持つ。
(……?)
違和感を感じて周りを見渡す。街灯が歩道を照らすだけで、人影は見当たらない。しかし、何者かの視線を感じる。
(…………)
歩く速度を上げる。早歩きは駆け足に、でも取り憑く視線は振り解けない。
駅までは程なく着くといった所で、人通りの多い道に出た。少し安堵して、歩く速度を落とす。
─キキィ!
横を通り過ぎると思ったワゴン車が真横で急停止する。
「え?」
勢いよく飛び出した手に服を掴まれる。そのまま丸太ほどあるんじゃないかという太さの腕に無理矢理車内に連れ込まれる。非日常な不意打ちに対応することなんて出来ず、目隠しを着けられ、手足も縛られてしまう。
「Mission complete.Go」
聴覚に集中すると、屈強な男どもの話が聞こえた。少なくとも日本人では無い。……アメリカ?
車が発進したのか、慣性がかかる。懸命に拘束を解こうと藻掻くが、解ける気配がない。
─Boom!
耳に響いたのはGGOで聞き慣れた音、銃声だ。僕を捕らえた男どもも焦っているのか、声に落ち着きが無い。
「ぐっ!」
車が急停止したのか、何かに強くぶつかった。車のドアが開く音が聴こえたかと思うと、銃声は絶え間無く響く。
(……やばい)
ここは仮想世界では無い。銃弾を喰らえば勿論死ぬ。和人にも詩乃にも木綿季にも、明日奈にも里香にも珪子にもアンドリューさんにも壷井さんにも逢えなくなってしまう。
(まだ……まだ死ねない!)
しかし、現実は非情だ。仮想世界で僕は確実に強い部類に入る。そんな僕でも現実では簡単にこうして拘束されて身動き一つ取れない。逃げることが出来ない。
短い悲鳴の後、銃声の数が段々と減っていく。そして次第に聴こえなくなっていった。
(……来た)
誰かが車の中に入ってきた。こいつらが僕に危害を加えないとは限らない。身構えようにも出来ない僕は身じろぐ。
足音が目の前で止まると、目隠しを外される。銃声で聴こえなかったが、波の音がする。どうやら此処は港のようだ。人気は無く、使われている様子は無い。
「怪我は?」
「……無い」
人数はおよそ十四人。何処かの部隊なのか、統率された動きで周囲を警戒している。
「あんたらは?」
「君を助けに来た。対象の保護を確認、撤退だ」
正体ははぐらかされてしまった。でも保護が目的ならば、危害を加える気は無さそうだ。トランシーバーで連絡を終えた隊員?に話しかける。
「僕を襲ったのは……」
「…………」
どうやら何も話す気は無いみたいだ。車から降りようと車体の外に手をかけた時、右前方に倒れていた男が左手の銃口を向けているのに気付いた。
何も考えれなかった。何も感じれなかった。何も……………………わからなかった。
三発の銃声、倒れた状態から銃口だけを向けた射撃。GGOで銃を触ったからわかる。そんなので当たる訳が無い。ましてや負傷して意識が朦朧とした状態でなんて、引き金を引くことすら出来ない。
でも、三つの銃弾の内二つは…………僕の肉体を抉った。右胸部と腹部だろうか、湧き水のように僕の体から血が漏れる。着ていた服は深紅に染まり、手で触れればベトリと嫌に指先に纏わり付くそれは、確かに僕の血液だった。
(……ごめんね)
心が思い浮かべたのは謝罪だった。
(本当に…………ごめん)
まだ生きたかった。彼女と一緒に居たかった。木綿季に色々な体験をさせてあげたかった。
体は支えを失い、そのまま地面にうつ伏せに倒れる。
(……眠い)
もう力が入らない。抜け出る僕の命が小さな池を作っている。ゆっくりと瞼を下ろしたら、