君ガ為ニ剣ヲ振ルフ   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

まじ書ける時にパッパと進めます。時間が無さすぎてやべえ。


《氷の洞窟》

 

 

 

 蝶の夢を見た。

 空に浮かぶ鉄の城。魔法と妖精の国。銃と硝煙の荒野。

 僕は姿を変え、得物を変え、突き進んだ。巨大なモンスター、強力な剣士、手強い銃士、全てを下した。隣にはいつも黒い剣士が居て…………

 

「ぉぃ……ぉい…………おいソル!」

 

 ()()()()()、その最中で僕は呼び出された。

 

「……おはようキリト」

「まったく、寝起きが悪いな」

「…………ふわあ」

 

 どうやらセルカは僕を起こす気は無かったらしい。目を擦りながら、必死に頭を回す。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「まったく、お寝坊さんなのは変わらないわね」

「そう言ってくれるなセルカ。結果起きれたんだから問題無いよ」

 

 午前の神聖術の勉強を終え、ユージオとキリト達への弁当を作る横でセルカも料理を作る。

 

「……ねえ、アリス姉さまのこと、ユージオはまだ気にしているの?」

「…………気にもするさ。セルカからも何か言ってやれよ」

「無理よ、私は避けられてるから」

「…………じゃ、僕はもう行くね」

「……ええ、行ってらっしゃい」

 

 重苦しい空気に耐えられず、僕は逃げるように教会を後にした。

 

 

~~~~~

 

 

「なあソル。アリスってのは誰なんだ?」

 

 つい、食事の手を止める。ユージオも同様に驚いたように僕を見る。

 

「……いつ喋ってた?」

「い、いや。お前が寝てる時、魘されながらずっと呟いていて……」

 

 溜め息が出た。キリトに悪意が無いのは解ってる。でも……

 

「アリスは僕とソルの幼馴染だよ」

「っ! ユージオ!」

「大丈夫だよソル。キリトになら、話しても良いと僕は思うよ」

「…………」

 

 渋々、僕は《ギガスシダー》にもたれかかって目を瞑った。ユージオも僕が納得したのを確認してから話し始めた。

 

 アリスと一緒に果ての山脈を越え、ダークテリトリーに触れたこと。セルカがアリスの妹なこと。最近、おかしな事が起き始めていること。

 

「……なあ、ソル。お前なら一人でも王都に行けたんじゃ……」

「キリト!!」

 

 ユージオが大声で叫ぶ。

 

「っ!」

「ソル! 待ってくれ!」

 

 ユージオの静止を聞かずに森の奥に走った。

 解ってる。僕一人なら王都に行けるってことくらい。でも、でも…………

 

 

~~~~~

 

 

「システム・コール…………」

 

 陽は沈み、神聖力が不足したことで神聖術もろくに使えなくなった。

 

「置いては……行けないよ……」

 

 アリスもユージオも、どっちも大事な幼馴染だ。でも……もしアリスが生きていなかったら、そう考えると怖くて仕方ない。事実を知るのが……恐ろしい。

 

「言い訳を並べてることくらいわかってる」

 

 所詮僕は臆病なだけだ。失うのが怖くて、傷付きたくなくて、誰かを置いてくことすら出来ない。

 

「無駄に神聖術の腕だけは上がったな」

 

 アリスが連れ去られてからセルカの要望で毎日神聖術を教えているが、それが僕にアリスを護れなかった現実を突きつけているようで。

 

「どうしたら……」

 

 木の上で一人、月に照らされる。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 そのまま僕は木の上で一晩過ごした。太陽の光に目を細めると、ふと誰かの足音が聞こえた。

 

(こんな朝早くから誰だ?)

 

 脳裏に昨日ユージオが言ってたゴブリンの話を浮かべ、警戒しながらゆっくりと音のなる方を見ると。たった一人で森を進むセルカの姿があった。

 

(……セルカ?)

 

 あの方角は確か果ての山脈。シスターはこのことを知ってるのか?

 

 あまりにも心配だから、後をつける。

 

 

~~~~~

 

 

「システム・コール、ジェネレイト・ルミナス・エレメント」

 

 指先に光素を生成する。それを浮かしてセルカの周りを回らせ、足を止める。

 

「ソル?」

「どうして一人でこんな場所に来たんだ。危険だぞ」

「ごめんなさい。私……」

「……深くは聞かないことにする。危険だと思えばすぐ連れ帰るからな」

「……ありがとう」

 

 恐らくキリトが口を滑らせたんだろう。諦めて同行することにする。

 

 

 洞窟を進み、……昔見た氷の空間に出る。

 

「ここが……」

「ベルクーリの話は本当だったんだよ。確か……」

「きゃあ!」

「セルカ!? ぐっ!」

 

 セルカの悲鳴に振り向くと、棍棒で殴られる。

 

「ギャハハ! イウムの餓鬼か」

「女だけでいい、男のイウムは要らん」

(ゴブリン!?)

 

 咄嗟に両腕で直撃を防いだが、衝撃で震える。

 顔を上げるとセルカは縄で縛られている。

 なんとかゴブリン共の間を縫って視界の端にあった剣を取る。

 

「この〈トカゲ殺しのウガチ〉様と本気で戦うつもりか? お前ら、さっさと肉にしろ」

「手前ぇら、その子に手を出して……覚悟は出来てんだろぉな?」

 

 一際図体のデカい奴の声に呼応してゴブリンが襲いかかる。僕は剣を振ったことは無い、あの氷の剣だってユージオと二人で小屋まで運んだんだ。怖い、手が震える、だけど……。

 

「アリスの妹に手ぇ出されて、黙ってられるかよ!」

 

 息を吹き切り、剣に身を任せる。何故だかわからないが、自然と体が構えをとった。

 

「フゥ…………」

 

 ざっと見て数は三十、右七、左九、前十六。

 走り出す、速度を落とさず横薙ぎ。横からの鉈を躱しつつ腕を斬る。

 

「何もたもたしてやがる。囲んで殺せ!」

 

 八体斬った所で囲まれる。焦りは無かった。寧ろ、

 

(懐かしいな)

 

 そう思い、構えると。

 

「ソル!!」

 

 キリトがどこからともなく飛び出してきた。スライディングで篝火を消すと、一直線にデカいのに突っ込んだ。

 

「ユージオ! 近付く奴を追い払うだけでいい!」

「そんなこと言ったって!」

(ユージオも?!)

 

 何より今、隙が発生した。周りの十体の首を裂く。

 

「ユージオ!」

 

 ユージオは手に持つネコジャラシの光で牽制している。狼狽えるゴブリンを一体、また一体と斬る。

 

「うわ! ぐ、があああ!」

「キリト!」

 

 左腕を斬られたのか、血を流すキリト。それでも彼は立ち向かう。しかし、繊細さを欠くキリトは吹き飛ばされる。

 

「キリトぉぉ!!」

「ユージオ!」

 

 ユージオは立ち向かう。それは今までとは違う、乗り越えた姿だった。

 

「今度こそ! 僕が! 守るんだ!」

「ユージオ逃げろ!」

 

 剣を握ったことの無いユージオは少しの抵抗しか出来ない。巨大な剣で斬られるユージオ。

 

「「ユージオ!!」」

 

 腹の傷は深く、血を吐く。

 

「ああああああああ!!!」

 

 僕は発狂しながら剣を振るう。

 

「しっかりしろユージオ!」

「子供の頃、約束したろ……。僕とキリトとソルと、アリスは生まれた日も、死ぬ日も一緒…………今度こそ、僕が守るんだ」

 

 後ろで声にある景色を思い出す。四人はいつでも一緒。そんな遠い、護れなかった、約束の景色……。

 

「あ、ああ。あああああああああ!!!」

 

 僕の剣は更に加速する。皮膚を斬り、筋を斬り、相手の動きを鈍くする。

 

「キリトぉ!!」

「はあああぁぁぁぁ!!」

 

 

「ソードスキル、〈ソニック・リープ〉!」

 

 二人、黒い剣士と赤い戦士の猛攻に、ゴブリンは為す術なく首を落とした。もうこの場にゴブリンは居なかった。

 

 

 

「キリト! セルカを起こせ! システム・コール・ジェネレイト・ルミナス・エレメント!」

 

 傷はまったく塞がらない。もう普通の神聖術では治らない。

 

「連れてきたぞ!」

「ユージオ!」

「セルカ! 取り敢えずキリトと手を繋げ! キリト! 手を出せ!」

「わかった」

 

 深呼吸する。焦って失敗してはいけない。慎重に迅速にが求められる。

 

「システム・コール、トランス・ファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライトアンドセルフ・トゥ・レフト」

 

 神聖術は問題なく発動した。後は……

 

「くっ…………」

「ソル、遠慮するな。俺のもユージオにやってくれ」

 

 今にも気絶しそうな意識の中、ふと体が軽くなった。

 

『ソル、キリト、ユージオ、待ってるわ。いつまでも。セントラルカセドラルの天辺で、あなた達をずっと待ってる』

(アリ…………ス)

 

 最後に、ユージオを治せた感覚で僕は意識を失った。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「ユージオ、傷の具合はどうだ?」

「うん、丸一日休んだらすっかり治ったよ」

 

 昼過ぎ、僕らは《ギガスシダー》の麓でいつも通りユージオの天職を手伝っている。

 

「なあユージオ、覚えてるか? あの洞窟でお前妙なこと言ったよな。俺が……ユージオとソルとアリスと、ずっと昔から友達だったみたいな」

「覚えてるよ。キリトとは出会ったばかりなんだからそんな訳無いんだけど、何だかあの時は凄くはっきりそう思えたんだ。僕とキリトとソルとアリスは、この村で生まれて、一緒に育って、アリスが連れていかれたあの日も……一緒にいたような」

「そうか。そういえば、ソルがお前に神聖術を使った時誰かの声が聞こえなかったか?」

「いいや、僕はまったく意識が無かったから。何か聞いたの?」

「ソルはどうだ?」

「……思い出せない」

 

 あの日から僕は少しおかしくなった。まるで誰かと()()()()みたいな、言い様の無い感覚が続いている。

 キリトとは既に仲直りはした。これも、何だか昔を思い出して……

 

 

 

「さて、仕事しないと」

 

 そう言ってキリトは小屋の剣を抜いた。

 

「おいキリト。使えるのかい、その剣が?」

「…………」

 

 キリトが構えると、その剣身は輝く。

 

「せやああぁぁぁ!」

 

 目が眩む輝きで繰り出された一撃は、あの《ギガスシダー》を斧とは比べようもない程斬り抜いた。

 

「な?」

 

 予想通り、といった顔をするキリトにユージオは声も出ない様子。

 

「ユージオにも振れると思うぜ」

 

 そう言いつつユージオに剣を手渡すと、確かにユージオは今までとは違い剣をしっかりと構えることが出来た。そうして、覚悟を決める。

 

「キリト、ソル。僕に、僕に剣を教えてくれ」

「えっ」

「なっ」

「僕はアリスを連れ戻したいんだ。僕のせいで、アリスとアリスの家族は不幸になった。この六年間……ずっと、ずっと後悔してた。何で僕はアリスを助けられなかったんだろうって、何で僕はソルを一人で行かせてあげられないんだって」

 

 目から涙を零しながらも、ユージオは力強く言う。

 

「僕は、強くなりたい! もう、二度と同じ間違いを繰り返さない為に、無くしたものを取り戻す為に、ソルを…………一人にさせない為に! だから、僕は剣士になりたいんだ!」

「わかった。教えるよ。俺の知る限りの技を」

 

 キリトの言葉にユージオの顔は明るくなる。

 

「でも修行は辛いぞ」

「望むところだよ」

「そういえば、君の剣術の流派は何?」

「俺たちの剣は……《アインクラッド流》だ」

(そう……()()()()()()()……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや待て待て待て待て待て!」

「どうしたのソル?」

「どうしたソル?」

「何で僕も師匠なんだよ! キリトだけでいいじゃん!」

 

 僕の言葉に肩を竦ませる二人。

 

「でもソル洞窟で凄い剣使ってたじゃん」

「逆にお前に教えることなんて無いぞ?」

「な……なんか解せねぇ!」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 今宵の村は宴騒ぎだ。皆火を囲み、踊り、楽器を鳴らし、食事を手に酒を飲む。洞窟の件から月日が経ち、とうとうユージオが《ギガスシダー》を切り倒したのだ。

 

「あれ、ユージオは?」

 

 キリトと串肉を堪能していると、シスター服ではなく、おめかししたセルカが居た。

 

「ユージオなら村長に呼ばれたよ。待ってな」

「……そう」

 

 残念そうに顔を付すセルカ。そうだよな、折角おめかししたんだもんな。

 

「セルカ、今日のふくそグハっ!」

「ん?」

「いやーナンデモナイヨー」

 

 余計なことを言いそうになるキリトの横腹を肘で殴る。

 

「何するんだよソル」

「阿呆か、何の為にセルカがオシャレしてると思ってる」

「…………?」

 

 駄目だこいつ早くなんとかしないと。

 

「みんな! 聞いてくれ! ルーリッド村を拓いた父祖達の大願がついに果たされた! 悪魔の樹が倒されたのだ!」

 

 観衆の集まるステージの上に村長とユージオが居た。村の皆も、ユージオの成し遂げた偉業に歓声を上げている。

 

「掟に従い、見事天職を果たしたユージオには、自ら天職を選ぶ権利が与えられる。さあ、なんなりと己の道を選ぶがいい」

 

 真剣な眼差しで、剣に触れるユージオ。

 

「僕は剣士になります! 腕を磨いて、いつか王都に上ります!」

(ユージオ…………)

 

 つい泣きそうになるが、グっと堪えた。

 

「ルーリッドの長として、ユージオの新たな天職を剣士と認める!」

 

 今一度の歓声に包まれて、晴れてユージオは剣士となった。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「二人ともお待たせ」

「よう」

「挨拶は済んだか?」

 

 剣と荷物を持ち、三人は村を出る。

 

「じゃ、行こうか」

「ああ」

「忘れ物は無いだろうな?」

 

 これから始まる旅は紆余曲折、困難や苦難の待ち構える旅路だろう。それでも、三人の間には確かな信頼と、希望があった。

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