長すぎたので前後に分けました。
できるだけ原作そのままの表現が嫌なので変えてます。
ではどうぞ
いつからだろう、睡魔と食欲が消え失せたのは……
いつからだろう、HPが赤くなっても何も感じなくなったのは……
いつからだろう、人を斬るのに躊躇いが無くなったのは……
今日はキリトと、とある依頼を受けて三十五層《迷いの森》に来ている。正式に依頼を受けたのはキリトだが、たまたまそばに居た僕が無理を言って同行してる。
「なぁ、ソル」
「なんだ?」
「……いや、何でもない」
歯切れの悪い。先程から同じやりとりを繰り返している。
キリトは少しづつ前を向いているが、まだあの出来事を引きづってるように見える。早く元気になって欲しいけど、僕から何をすれば良いか分からず手こずってる。
「その……この前はありがとな」
「どういたしまして」
やっと出てきたキリトの言葉。僕には心当たりは無いけど、人の感謝は素直に受け取る。
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森の中を進んでいると、小さな少女が一人で《ドランクエイプ》――猿人のモンスターに囲まれてるのを発見した。
「どうする? キリト」
「助けるぞ、ソル」
キリトの言葉を聞いた瞬間に僕は猿共に斧を構えて突っ込んだ。キリトの驚く声が聞こえたが、気にせず猿の一匹に近づいて両手斧ソードスキル〈グランドクラッシュ〉で吹き飛ばす。続いてキリトも残りの一匹を片付けた。
「大丈夫かい? お嬢さん」
囲まれていたのは、ベージュ……だろう髪色のツインテールの少女だった。赤い瞳、体格は小さく、幼い顔立ちをしている。
見るとHPは残り僅かしかなく、かなりの危機的状況だったことが窺える。
「……すまなかった。君の友達、助けられなかった……」
キリトが少女に謝罪する。
友達?。と思いキリトの視線を追うと、青い羽根が地面の上で儚くその存在を表していた。
「ピナ……」
少女は泣きながら最愛の友の名を絞り落とした。
そこで僕は彼女がビーストテイマーで、僕らが間に合わなかったことを知った。
「……すまない」
「いいえ……いいんです。……助けてくれてありがとうございます」
僕の謝罪に、彼女は嗚咽を飲み込みながら答えた。
するとキリトが彼女に歩み寄り、跪いて。
「……その羽根、アイテム名は設定されてるか?」
聞いた少女は不思議そうにしながら羽根に触れ、ウインドウを呼び出すと。《ピナの心》の文字が浮かび上がった。
「心アイテムが残っていれば、まだ蘇生できる」
「え!?」
(へぇ、知らなかった)
攻略組であるキリトは情報通だ。僕が疎いのもあるかもしれないが、彼の知らない情報の方が少ないとまで思わせる程である。
「四十七層の《思い出の丘》っていうフィールドダンジョンがある。そこのてっぺんに咲く花が使い魔蘇生用のアイテムらし──」
「ほんとですか!?」
少女が叫ぶ。失った大切を取り戻せるっていう希望が見つかったんだ、叫びもする。
……しかし。
「なるほどね。にしても四十七層か……」
「あ……」
少女も気付いたようだ。少女の装備は見た所四十七層に行くには頼りない。安全に行くことは難しいだろう。
「俺が行ってもいいんだけどなあ。ビーストテイマー本人が行かないと、肝心の花が咲かないらしいんだよな……」
キリトが困ったように言う。やはりこの男は優しい。見ず知らずである少女にここまで親身になれる奴なんて、人が良すぎる。
キリトの言葉に少女は微笑みながら言う。
「いえ、情報だけでもとってもありがたいです。がんばってレベル上げすれば、いつかは……」
「そうもいかないんだ。使い魔を蘇生できるのは、死んでから三日だけらしい。それを過ぎれば、アイテム名の《心》が《形見》に変化して……」
「まじか」
つい声に出してしまった。つまりこの少女は、後三日以内に四十七層で攻略できるようにならないといけないということだ。少女の現在のレベルが幾つかは知らないが、表情から見ると無理だろう。とうとう少女はうなだれてしまった。
僕はキリトと少女から少し離れて、できるだけ小さな声で話す。
「……どうする?」
「装備を渡して同行しようと思ってる」
「お前頭良いな」
流石はキリトくん、その手があったか。なら……。
早速トレードウインドウを使って最前線でドロップした装備を少女に渡していく。
「ソル?」
「装備は僕が出そう。僕の方が良いやつ揃ってるだろ?」
「あ、あの……」
急な展開に少女が戸惑っている。キリトに目配せして説明するよう促す。
「これで七、八レベル分は底上げできる。俺も行けば、なんとかなるだろう」
「えっ」
「おい、俺たちだろ。なんで僕省いてんだ」
僕のツッコミにキリトが揶揄いながら笑う。調子が戻ってきてくれたのは良いんだが、わざわざツッコませないでくれ。
「なんで……そこまでしてくれるんですか?」
少女は警戒するように僕らに言った。
確かに、話が美味しすぎる。何か裏がないかと思われても仕方ない。
「どうしてなんだ? キリト」
僕はキリトに丸投げする。助けたのも提案したのもキリトだ。僕も彼の優しさの根底が知りたい。
「え、ソル? ……笑わないって約束するなら」
「笑いません」
「笑うもんか」
「君が……妹に、似ているから」
少女は思わず噴き出してしまったようだが、僕は少し納得した。少女への対応から、とても大切な妹だろう。
「わ、笑わないって言ったのに……」
「僕は良いと思うぞ。妹は大切だもんな」
「ソル……」
笑われて傷付いたキリトが僕に感動してる。少女はまだ笑っているが……。
「ソルにも妹が居るのか?」
……これは僕の失敗だな。ここは正直に話した方がいいだろう。
僕は躊躇いながらも口を開く。
「ああ、愛する妹が居たよ」
「……すまん」
「いいよ。これは誰も悪く……悪くないから」
僕の言い方のせいだろうか、キリトは察してくれて、これ以上の深掘りを避けてくれた。
…………大丈夫。僕は大丈夫だから……。
「よろしくお願いします。助けてもらったのに、その上こんなことまで……」
笑い終わったのか、少女は先より顔色がよく、笑顔で頭を下げた。どうやら聞こえてないようで安心した。
少女はトレードウインドウを操作してコルの金額を入力する。
「すみません、ぜんぜん足りないと思いますけど……」
「あー、コルはいいよ。処分に困ってたやつだし」
キリトが嘘つきを見る目で僕を見てくる。いや嘘じゃないけど? ほんとだけど?
「すみません、何からなにまで……。あたし、シリカっていいます」
「俺はキリト。しばらくの間、よろしくな」
「僕はソル。よろしくね」
自己紹介を終えた僕らは、主街区に向けて歩き始めた。
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転移門広場に入った途端、シリカが囲まれた。この子は囲まれやすい性質でも持ってるのかな。
「しばらくはこの人達とパーティを組むことになったので……」
キッパリ断れて偉い。僕よりもだいぶ年下だろうに、しっかりしてるシリカを見て安心する。……キリトも妹に似てると言っていたし、妹のように意識してしまっているのかもしれない。
シリカが断ると、囲んでいたプレイヤーが僕とキリトに視線を向ける。キリトはシャツの上に古ぼけた黒のロングコート、片手剣一本、鎧は無し。僕は手と足には金属の装備があるが、胴には無し、暗褐色の布製のコイルに、斧を背負っている。
キリトは見た目優男だし、僕は生気が無い――最近よく言われるらしいので、舐められること間違いなしだ。
「おい、あんたら」
ほれ来た。面倒なことこの上ない。キリトも困った顔をしている。
「見ない顔だが、抜けがけはやめてもらいたいな。俺らはずっと前からこの子に声かけてるんだぜ」
「ずっと声かけてるのに相手にされてないとか悲しすぎでしょ」
「ブフォッ!」
「てめぇ、舐めてんのか!」
…………あれ? もしかして声に出てたのか? 恥ずかしいな。
キリトさんや、笑いすぎです。凄い笑いますね、そんなに面白いですか?
「……声に出てました?」
「この野郎!」
不味い、意図せず挑発してしまった。やむを得ん、一度ボコして沈めるか……。
「あの、あたしから頼んだんです。すみませんっ」
シリカが深々と頭を下げ、僕とキリトを引っ張ってく。
シリカに引っ張られながら、僕は少し懐かしくなって、
哀しくなった。
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シリカに引っ張られた僕らは、《風見鶏亭》と書かれた宿まで来た。
「あ、キリトさん、ソルさん。ホームはどこに……」
「ああ、いつもは五十層なんだけど……。面倒だし、俺はここに泊まろうかな」
「…………ホーム?」
僕の発言に場が凍りつく。
「……キリトさん?」
「あー、いや、ソルはこういう奴なんだよ」
今、僕は哀れみの目を向けられている。何故か分からないが解せない。
「あら、シリカじゃない」
カールの赤い髪の女性プレイヤーが声を掛けてくる。シリカの知り合いだろうか、シリカは嫌な顔をしながら渋々振り返る。
「……どうも」
シリカの反応から、面倒臭い茶番が始まると確信したので軽く瞑想する。また声に出てました、ではシリカとキリトに迷惑だ。
「おい、ソル。行くぞ」
キリトの呼び掛けに瞼を上げる。
シリカの方は……、色々言われたようだ。
「せいぜい頑張ってね」
赤髪の女が笑いを含みながら言う。……よく見たらアイツ標的じゃないか?
用事を済ませようと考えたが、今はシリカの方が優先するべきだと判断し、口を噤む。
キリトに促されて宿屋に入る。一階はレストランとなっていて、中々に広い。僕らは奥の席に腰掛ける。
「まずは食事にしよう」
ガタッ──
食事と聞いた途端席を立って出て行こうとする僕の袖をキリトが引っ張る。
「ソル。お前も食えよ」
「いや、食えねぇよ」
「食え!」
「………………」
キリトの頑固さに負けた僕は、席に座り直して三人でポリゴンの塊を口に放り込んだ。
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食事を終えた僕は、四十七層の下見に来ていた。移動するのも面倒だし、ここで時間まで狩りでもしようと思っていたら。キリトからメッセージが届いた。
『シリカに説明していた時、誰かに聞かれていた。たぶん奴らで間違いない』
聞き耳スキルか、あれ便利だよね。キリトからこんなメッセージが来たということはほぼ黒でいい。後は誘導ポイントだが……。
「手の早いこって」
立て続けに位置情報が送られてきた。隠れられる場所があり、包囲の容易な場所。後はここに細工を少し加えれば立派な監獄だ。もちろん奴らにとっての監獄だが。
「時間はある。ぼちぼちするか」
夜はまだ長い……。
何処まで原作入れていいのか分かんね。
自分で考えますね。
ではまた!
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神は居ない。少なくとも彼女を救う神は。
人は神に奇跡を乞う。愚かだろうか、醜いだろうか。
因果、結末、矢張り駄目であったようだ。